HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード36

『・・・・・』

 

『・・・・・』

 

この場に今までにないほどの重圧を肌で感じる。それもそのはず、テーブルを挟んで座る一誠の目の前にはまるで映し鏡のように座っている―――赤い髪の兵藤誠輝がいるからだ。誠や一香たちがこの家に訪れて早十分。誰一人も喋らず、喋ることもできないこの緊張感と重苦しい空気に圧迫され、気が擦り減っていく一方だった。

 

「久しい、ドライグ」

 

『ああ、オーフィス』

 

「ここに何をしに来た?」

 

『それは相棒たちが言うだろう。俺から言うことは何もない』

 

オーフィスとドライグの会話も雀の涙程度でしかならなかった。

 

『はははっ、ここまで兵藤一誠が無言でしかも怒りや敵意を抱いているのは本当にドライグの宿主のことが心底嫌っている証だな。逆に愉快過ぎて笑いが出る』

 

『私は納得できる。散々兵藤家の者たちや自分の兄に罵倒や暴力を強いられ続けていたのだ。今さら安息できるこの家まで来て一体何を話しする必要がある?』

 

『どうせくだらないことだろう?だが、せっかく本当の意味で家族が揃ったんだ。ここは仲良くするのも―――』

 

「くらだらねぇことを言うんじゃねぇよアジ・ダハーカ」

 

凄みの利いた声を発する一誠を聞いて和樹と龍牙、清楚、カリンが内心驚いたのを気付かず言い続ける。

 

「向こうから兄弟の縁を切っているんだ。俺の真似をして髪を赤く染めた自称最強さんとは赤の他人に過ぎない。

俺は昔から兄なんていやしないんだよ。ああ、誰よりも最弱で理不尽な罵倒と暴力で泣きじゃくっていた時からな。だからアジ・ダハーカ、しばらく黙れ」

 

『・・・・・』

 

『物凄くアジ・ダハーカが落ち込んでいますが主・・・・・』

 

『言ってくれるなメリアよ。こいつの自業自得に過ぎない』

 

最強の邪龍に対して何て言い草をするんだろうと誠輝の中から見ているドライグは空いた口が塞がらなかった。

 

「父さん、母さん。どーしてこいつらを連れてきた?」

 

返答次第ではいくら大好きな二人でも怒るぞとばかり凄みを利いた睨みで訴える。

誠輝と兵藤家を毛嫌いしている事を熟知しているにも拘らず連れてきた両親にだ。

誠は頬をポリポリと掻きながらバツ悪そうに口を開いた。

 

「あー、本当だったら悠璃ちゃんや楼羅ちゃんだけここに連れて来ようとしたんだが・・・・・ついてきてしまったんだ」

 

「追い返せばいいだろう。二人ならできたはずだ」

 

二人の強さを少しだけ知っている一誠にとっては跳ね除けることぐらいできたはずだと風に述べた。

それをどうしてしないのか理解に苦しんでいた一誠に―――誠輝が不敵に口を開いた。

 

「次期当主と現当主の娘の護衛を兼ねて―――それが俺たちがここにいる理由だ化け物くんよぉ」

 

自分を化け物呼ばわり、人間ではないから自覚あるものの嘲笑いを浮かべる誠輝が言えば

一誠の目が据わるように細まり誠輝を見詰める。

 

「なんだ、父さんに一蹴された兵藤家チームのリーダで自分は最強だーと言ってたくせに負けて恥ずかしい思いをした赤龍帝」

 

「何時までも過去のことをほじくり返して女々しいどこぞの化け物に何を言われても何とも思えねぇよ」

 

「・・・・・力ばかり自慢しているから脳まで筋肉になっているんじゃないか?考えていることは力と女って典型的なバカだって知ってる?」

 

「最強のドラゴンに守られている弱い化け物が良く吠えるな」

 

「その最強のドラゴンと戦うことになったらお前は確実に負け決定だけどな。ああ、俺は自覚しているぞ?お前なんかに言われるまでもないわ」

 

本当に強大なのかと疑う子供並みの罵倒。聞く度に相手に対する罵倒が出るわ出るわ・・・・・・。

 

「(和樹さん、ここまで仲の悪い兄弟って聞いたことあります?)」

 

「(多分、この二人だけだと思うよ)」

 

「(気持ちは分からなくもないが・・・・・あまりにも酷い)」

 

「(居たたまれなくなっちゃうね)」

 

ヒソヒソと声を殺して言葉を交わす和樹たち―――に一誠がギロリと睨んだ。

 

「帰りたかったら帰って良いぞ止めはしないから。いても何も変わらないだろうからな」

 

「一誠、そんなことを言ってはいけないぞ」

 

誠が一誠に窘めたものの眉間に皺を寄せて言い返された。

 

「・・・・・俺がこんなに不機嫌になっているのは知っているだろう父さん。さっきから俺は我慢しているんだけど。―――目の前の俺と同じ髪に染めた男をこの力で消滅したいんだからな」

 

装着した黒と紫が入り乱れた籠手を見せ付け、禍々しい魔力のオーラを滲みださせる。

 

「前は金髪だったのに今度は赤い髪だ?何のつもりだよ」

 

「俺がどんな髪に色を染めようがお前には関係ないだろう化け物」

 

「お前の口から化け物って言葉しか聞こえないな。それしか言えなくなったのか?」

 

「はっ!人間じゃない奴に化け物と言って何が悪いんだ?知らないだろうがな、兵藤家の間じゃお前のことを化け物や兵藤家、式森の異端者、半端者だって言われているんだぜ?だからお前は―――」

 

誠輝は発した。「お前は完全に兵藤家じゃないただの化け物に成り下がった出来損ない」と。

 

『・・・・・』

 

 

刹那―――――。

 

 

この空間に殺気とプレッシャーが充満し出した。それには思わず誠と一香が敏感に反応して立ち上がり、一誠たちに制止の呼びかけをしようとしたが、一誠の手がゆっくりと上がって殺気を放つ家族を制した。

 

「出来損ない・・・・・ね。お前らもそう思っているんだな?」

 

誠輝の背後に立っている少年と少女に問いを投げた。ギラギラと獲物を狙うような鋭く目を輝かす猛禽類の双眸がはぐらかすことを許さないと訴える。問われ、一人の少年が言った。

 

「・・・・・俺たちは別に思ってはない」

 

「ふーん?じゃあ兵藤家は俺を受け入れてくれると?お前の一言で兵藤家全員の気持ちがそうだということになるがそこんとこどうなんだ?」

 

「っ・・・・・」

 

少年は口を噤んだ。下手に言えば周りからの非難されるのは明らかだ。誠輝の言う通り、周囲の兵藤家の大人たちが口を揃えて一誠に対し揶揄している。少年自身はどうでもいいことだが、自分の一言で周りの大人も皆そうだとありもしない気持ちと考えになってしまう。

 

「―――自分で言ったことを責任持てないんなら言うんじゃねぇよ」

 

怒気が孕んだ低い声音。

 

「どうせお前らも俺のこと見下しているんだろうな。そうでもなかろうと俺は兵藤家を許すつもりはない。恨みはするが憎むつもりもない」

 

「上から目線で随分と偉そうに言うじゃねぇか」

 

「本心を言ったまでだ」

 

「あっそ、でもまぁ、お前は兵藤家の奴じゃないから次の兵藤家の当主は必然的に俺になるだろうな。なんたって俺は父さんの息子だ。化け物の息子がいるなんて世間に知られたら日本や俺たちの評判が悪くなるって」

 

嘲笑する誠輝に一誠は訊いた。

 

「・・・・・俺は父さんと母さんの息子じゃないとそう言いたいのか赤龍帝」

 

「昔からそうだったろう。俺は弱い兄弟がいたなんて認めた覚えはねぇ!俺しかいなかったんだよ父さんと母さんに子供がいたという事実をさ!誰が化け物の子供がいるなんて言えるよ。魔人なんて力を、式森の魔法の力を振るえる兵藤家の人間になんてよぉ、いてたまるかってんだ」

 

―――久し振りに聞いたな。胸の内で漏らした。自分を弟して認めない言葉をまた聞いた。

別に今さらな事だしなんと思わない。

 

「しっかし、お前は随分と良い思いをしているんじゃねぇか。女に囲まれてよ」

 

「だからなんだ。お前も女の一人や二人いるだろう。ああ、どうせ相手の意思の尊重も無視してな」

 

「わかってるじゃねぇか。強者は弱者を蔑ろにできるってんだからな。この世界にいる弱者の女は俺たちみたいな強者の慰み者として扱われるのは当然の摂理だ」

 

「それが兵藤家の考え方か?」

 

「ああ、そうだぜ。兵藤家の人間じゃないお前には関係のないことだがな」

 

ゲラゲラとゲスな笑いをし、一誠をどこまでも嘲笑う現赤龍帝の兵藤誠輝。一誠はまた少年と少女たちに目を向けて発する。

 

「お前らもそんな考えだったとはな。全然気付かなかったよ」

 

「なっ、俺たちは違う!」

 

「赤龍帝がそれが兵藤家の考え方だって言ったんだぞ?兵藤家であるお前らもそう言う考え方をしていると思われても不思議じゃない。お前らがなにを言ったところで強者は弱者を蔑ろにすると風な兵藤家の教えだったはずだ。

その教えの下で生きて強くなったお前らがなにを言っても説得力はない」

 

「人権を剥奪する気か!?」

 

「―――そんな権利なんてあったか?言っておくがお前ら・・・・・ああ、そこの二人の少女を除いてお前らは一度俺を虐めてた連中だってことを覚えているからな」

 

っ―――。

 

少年たちは言葉が咽喉につっかえて言えなくなった。それが事実だということを認めたことで和樹たち四人は目を丸くし、信じがたい気持ちで兵藤家の少年たちに目を向けたところで誠輝が嘆息した。

 

「高が虐めを受けた程度で喚いてんじゃねぇよ」

 

「事実を再確認させただけだ。もう昔とは違うんだからな」

 

「へぇ、どう違うってんだよ。テロリストに情けなく殺された化け物さんよ」

 

不敵に漏らした誠輝の顔に影が差した。その影に気付いた時には一瞬だけの鈍い感触と壁と衝突して激しい痛みを一拍遅れてようやく自分が誰かに殴られたのだと察した時だった。

 

「さっきから聞けば・・・・・誠輝、お前、護衛と言う役目を軽い気持ちで思っているだろう」

 

堅く握られた拳を、腕を横に伸ばした状態で誠が感情が籠っていない声音で発した。

 

「誰が喋って良いと言った?護衛は護衛らしく俺たちの身の周辺の危険性を極力減らして黙って守っていればいいんだよ。それすら分からないのか」

 

尻目で背後に立つ少年と少女たちにも向けて言った。

 

「お前には、お前たちには護衛なんて役目は向いていないようだな。次期当主の俺を差し置いてべらべらと勝手に喋る。しかも相手を罵倒するばかりだ。お前は何さまのつもりだ。護衛の分際で偉そうにしているなよ」

 

「せ、赤龍帝の俺が護衛でいれば誰にも襲われずに―――」

 

「一時的に神をも上回る力を発揮でき、一定時間に力が増幅する。力に固執するお前にはピッタリな神滅具(ロンギヌス)だな。―――それがどうかした。赤龍帝だからって宿主がダメなら宝の持ち腐れに等しい。現状で満足しているって言うならお前はこれ以上強くなる見込みはハッキリ言ってない」

 

誠輝の顔色が初めて変わった。赤龍帝の自分が・・・・・?もうこれ以上強く成れないだと?

 

「お前たちもだ少年少女くんたち。兵藤家の教えが全てではない。兵藤家と言う卵の殻の中に閉じ籠っていると本当の強さなんて絶対に身に付けない。そんなお前らと対照的に一誠は世界中で修行して強くなった。

お前らと一誠の違いは世界を見ているか見ていないかの差だ」

 

徐に立ち上がり誠に一香も続いて立ち上がる。

 

「悠璃、楼羅。二人は今日この家に泊まって良いぞ。クソ親父には俺から言っておく」

 

「既成事実を作ってもいいからね。それじゃ」

 

誠と一香がさっさとリビングキッチンからいなくなった後。

 

「早く来いよっ!自分から護衛を買って出たくせに護衛する対象者に身の危険を晒して帰らす気か!?満足に護衛もできず、役立ちたいと意識していないようだな!護衛は遊びじゃないんだぞこのクソガキ共が!」

 

『はっ、はいっ!申し訳ございません!』

 

怒声で我に返った少年少女たち、誠輝の両腕を掴んで引き摺りながらリビングキッチンからいなくなった。

 

「・・・・・初めて聞いた。父さんが怒っている声」

 

「そ、そうなの?」

 

唖然と呟いた一誠の声に和樹が確かめるように訊けばコクリと頷いた。

 

「・・・・・化け物か」

 

意味深な呟きと共に息を零す。そして自嘲的な笑みを零した。

 

「ま、そうだろうな。悪魔、天使、堕天使はともかくドラゴンなんて昔から化け物として扱われているからな。

 今更な事だが、周りから俺を見てすれば化け物なんだろう」

 

リーラと咲夜が背後から一誠を優しく抱きしめた。オーフィスとアルトルージュが膝の上に乗りだして身体を一誠に寄せた。

アラクネーが一誠の右手を掴み、ティファニアが一誠の左手を掴んで包みこんだ。

クロウ・クルワッハ、ルクシャナ、シャジャル、ヴァレリーが側によると

 

「・・・・・ありがとう」

 

化け物でも自分の傍にいてくれる。言葉で発しなくてもこうして行動で示してくれる家族に心から感謝し、

涙を流した―――。

 

 

「兵藤くん・・・・・辛かったんだね」

 

「僕たちが思っていた以上に、ね」

 

「三人の姉がいる私でもあそこまでは悪くないのに・・・・・」

 

「どうしてあそこまで歪んでしまったんでしょうね」

 

今まで見守ってきた和樹たちが喋り出した。一誠の過去の一部を知り、意味深に周りから家族に抱き締められている一誠を見詰める。

 

「式森家は主に魔法の基礎理論や構築などの研究で一日を過ごす。だから実力主義じゃないから虐めなんてないんだけど、兵藤家は体術や武術が主だから必然的に実力主義になっちゃうのかなぁ」

 

「・・・・・あの赤龍帝が学園にやってくるようなことになればますます兵藤家のやつらが態度を大きくするぞ」

 

「ははは、カリンさん。冗談でもそれはないでしょう」

 

「うん、あの人たちだって立場があるだろうし学校には来ないよきっと」

 

有り得ないとカリンの言葉を否定し、苦笑いを浮かべた。しかし―――その言葉が現実となることを和樹たちは気付かないでいた。

 

―――○●○―――

 

「兵藤悠璃、いっくんとは幼馴染の関係だよ」

 

「兵藤楼羅です。一誠さまとは妹の悠璃と同じく幼馴染の関係です。以後お見知りおきを」

 

二人が挨拶を済ませたことで一誠、リーラ以外の面々は軽く歓迎した。

 

「イリナとヴァーリ以外にも幼馴染がいたのね一誠?」

 

ルクシャナは一誠に確かめるように言い放った。彼女たちの存在は知っていた。あの―――一誠が死んだときに。

こうして改めて名乗られたのは今回が初めてで肯定と頷く一誠を見て納得した。

 

「リーラ、イリナ、ヴァーリに続いて俺と昔から交流のある幼馴染だ。兵藤家の中では唯一、信用と信頼できる同年代の二人なんだよ。何時も励ましてくれた」

 

「そうなの。だから正直言って赤龍帝たちは嫌い。死んじゃってくれないかな」

 

「あの方の思考には私たちと同じだと思われたくないです。最近の兵藤家は質が落ちていると父も嘆いています」

 

片や過激な暴言、片や現状に憂いている父の心情。

 

「父は真新しい変化を求めていました。今のままでは確実に兵藤家は没落する。兵藤家の栄光と威光を嵩にして

欲望のままに人生を送る現代の兵藤家を見て確信しております」

 

「国のトップも大変ね。私たち吸血鬼の二大派閥も似たもんだわ」

 

アルトルージュが肩を竦め気持ちは分からなくないと漏らした。今ではどうなっているのか分からないけどと胸の内で付け加え呟いた。

 

「吸血鬼の世界の事情など知りませんが、ええ、確かに新しい変化を求めているのはどの世界も国も同じでしょう。―――だからこそ、父は内心では一誠さまに次期当主としてなって欲しかったかもしれません。あくまで予想ですが」

 

「どうして?」

 

「ドラゴンの身体を持つ兵藤の者に式森の血を受け継いでいるからかと。もしも一誠さまが私と悠璃との間に子供が生まれたとします」

 

「―――色々と突っ込みたい仮定だけど。まぁ、続けて」

 

と、アルトルージュが促す。

 

「熟知しておりますが、一誠さまはドラゴンです。ドラゴンのDNA、遺伝子が受け継がればより強い子供が生まれる可能性はあります。体術、武術など長けている兵藤家からしてみれば理想的な結果でしょう」

 

「まぁ、強い子供が生まれるのだけは確かだろうな」

 

何気なく同意したクロウ・クルワッハは一誠に視線を向けた。

 

「子供を作ると遺伝子が受け継がれるか・・・・・ふふっ」

 

「なんだ、その意味ありげな笑みは」

 

「いや?面白そうだなと思ったまでだ」

 

何が面白そうなのだと思った一誠だが、これ以上聞けば地雷を踏みそうな予感を察知して楼羅に視線を変えた。

 

「だけど、俺は成れなかったけどな」

 

「そうですね。でも、元の鞘に収まった形で元当主でした一誠さまのお父さまが次期当主と言う肩書を得てお戻りになりました。父からすれば結果オーライでしょうね」

 

「お父さんは強いからなー。お爺ちゃん的にはそれもまた良しとせざるを得なかったんじゃない?」

 

「顔を合わせる度にそっぽ向いたり、度々口喧嘩、時には身体を張ってでの喧嘩をすることもありますが・・・・・」

 

苦笑を浮かべる楼羅やその時の光景を思い出して疲れた表情をし出す悠璃。

 

「朝昼晩、あの無言の食卓は滅入るよいっくん。口喧嘩しながら食べるんだったらまだマシだけど、何も言わないで黙々と食べる食事は正直言ってウンザリ」

 

溜息を吐く悠璃を「兄弟も兄弟なら親子も親子ですね」とリーラが嘆息した。

 

「いっくんが次期当主だったら私たちは嬉しかった。でも、死んじゃってとても悲しかったよ」

 

「・・・・・ごめん」

 

「ううん、謝らなくて良いよ。生き返ってくれたから私は嬉しい」

 

「私もです一誠さま」

 

二人の幼馴染の笑みで憂い顔の一誠の心は晴れた。

 

「そうだ、いっくん。私たちも学校に行くことになったんだよ?」

 

「おっ、そうなんだ。どこの学校だ?」

 

「国立バーベナ駒王学園です。残念ですが一誠さまと同じ教室にはなれないでしょう」

 

「それはそれで残念だが、二人のことだから会いに来るんだろう?」

 

「「それはもちろん」」

 

一瞬の乱れの無い異口同音で答えた姉妹。するとティファニアが開口一番で聞いた。

 

「二人はイッセーのこと好きなの?」

 

「うん、大好き」

 

「兵藤家の男たちの中では一番と二番の次元の差が違うほどにです」

 

熱い眼差しを一誠に向ける二人の幼馴染に対して「やっぱりか」とどこか呆れ果てた一部の女性陣。

 

「いっくん、一緒にお風呂入ったり一緒に寝よ?」

 

「今日だけは私たちと一緒にいてくださいね」

 

「「絶対に」」

 

そして、一誠を思う気持ちはリーラほどであることを思い知らされた。


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