HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード33

衝撃的な事実が大会だった。世界中は兵藤家と式森家に奇異な視線や感情、心情に対し、

当の二つの一族は混乱と動揺をしながらも今回の件で会議を開くことになった。

 

「我らに魔人と言う種族の力が宿しているとは真実なのですか?」

 

「バカな、ではなぜ今まで誰一人として魔人の力を扱える者が現れなかったのだ」

 

「厳密に現れたでしょう、我らから離反した者たちの子が」

 

「兵藤と式森の間に子を成すことを禁忌だった。その理由は明白のはずだ」

 

「気と魔力が融合せず、逆に相反し合い身体に激痛、最悪死に至るなど言わずとも分かりますよ」

 

「だからこそ、片方の力を封印して何とか生を長らえる他なかった。

あの愚かな者共の子もその類に零れなかっただろう」

 

「けどですねぇ、その子が魔力を扱えることは学園から何度も聞いていますが?

さて、それは何ででしょうか?」

 

「・・・・・人間ではなく、ドラゴンの身体だったからだろう。

ならば、あの者は既に兵藤や式森の者でもないただの化け物」

 

一誠を危険視、好奇心の言葉が会議に飛び交う。

 

「・・・・・我らも互いの血を体内に流してみますか?」

 

「バカなことを!そのようなことは古から禁じられているのだ!それにもしも

魔人の力を解放できたとしてその瞬間、我らは魔人を認めてしまうことも道理!

我らは兵藤と式森、人間だ!魔人の力など不要!」

 

「ですが、興味がないとは嘘ですよね?人を止めて二つの血を体内に宿すことができれば

更なる強さを得ることが―――」

 

「人間を止めたくば勝手にそうすればいい。その瞬間、お前は我ら一族から永久追放だぞ」

 

「「・・・・・」」

 

この会議を静かに見守る両家の当主。会議を開いたものの、結局は何の会議なのか既に

分からなくなった。

 

「あの少女を捕まえて、他の魔人の居場所を吐きださせますか?」

 

「そんなことしてどうする。高が娘一人の為に軍隊を派遣しようなど我らの誇りが許さん」

 

「そうだ。そんなことよりも、正式に大会に勝利したとはいえ、再び兵藤家の当主として

招いて良いのか考えぬか?」

 

「それは兵藤家が御考えになること。式森の我らには関係ないことですぞ」

 

「関係なくはない。そちらの元当主が次期当主の―――」

 

「あの方は兵藤と名乗っている。出生がどうであれ、そちらの―――」

 

「静まれ」

 

シーン・・・・・。

 

源氏の鶴の一声で場が静まり返った。

 

「我らがこの場に集まったのは当主の件でも魔人の件でもない。今後の日本の在り方を

どうするべきか対話する為に集ったのだ。そのようなことは二の次、三の次だ」

 

「ですが当主。これも問題視しないわけにはっ」

 

「我らは日本を統べる兵藤と式森。日本の為に生きることが務めのはずだ。今の日本は

あの魔人の登場で騒がしくなっている。我らが魔人の一族ではないかと聞こえてくるではないか」

 

『・・・・・』

 

「今更魔人を捕えて存在を抹消しようなどそれこそ我らに後ろめたさがあるのと同じことだ。

魔人など放っておけ。我らに牙を剥くならば話は別だ」

 

「兵藤家の当主の言う通りだお前たち。問題視するなとは言わないが、俺たちが日本を

纏めず誰がするというのだ。いいか、我らなくして日本は成り立たない言うことを努々忘れるな」

 

『はっ』

 

 

 

「・・・・・しかし、やはり魔人は放っておけん」

 

「なら、どうするのだ」

 

「監視を付けるべきだ。それぐらいなら当主も許してくれよう」

 

「そうだな、我ら式森からも監視の者を派遣する」

 

 

 

 

一方、世界と世界の狭間こと次元の狭間では―――オーフィスとグレートレッドが

再び一誠の肉体を新生していた。自分の身体の一部とオーフィスの力で創り上げている

一誠の肉体を。真紅の岩肌と醸し出すグレートレッドの身体に繭のようなものが何度も光って

脈を打っているその様子を自身の魔力を繭に流し込みつつ小さな龍神はポツリと漏らした。

 

「グレートレッド、ありがとう」

 

『三度目はないからな』

 

「ん、我、イッセーを守る」

 

身体に乗っかっているオーフィスに内心溜息を吐く。自分の身体に乗っかって来たと

思えば両膝を折って、身体を丸めて頭を垂らしながら

『イッセーの身体をもう一度作って欲しい』と言ってきた。今回は何も自分の力を借りずとも

何とか一誠を復活できるだろうと思ってオーフィスの懇願を無視して自由気ままに

次元の狭間を泳いでいたのだが―――

 

一日 「・・・・・」 『・・・・・』

 

三日 「・・・・・」 『・・・・・』

 

一週間 「・・・・(ZZZ・・・・・)」 『・・・・・っ(イラァッ)』

 

ずっと土下座をしたまま身動きしないオーフィスに痺れを切らし、ついには真龍が折れた。

このまま身体の上に土下座をされては気になって仕方がない。

泳ぐどころではないと判断した結果、一誠の身体を再構築することになった。

 

『オーフィス、あの邪龍より面倒そうなドラゴンのこと知っていたか』

 

「我、見たことがない」

 

『サマエルと言ったか。我もここから覗いてあいつを見ていたが、アレはドラゴンに

とって究極の天敵に等しい。対峙したら逃げろ。お前でも勝ち目がない』

 

「わかった。そうする」

 

コクリと自分の忠告に応じる共のこの空間に生まれ落ちたドラゴンにこう言った。

 

『・・・・・出来上がったぞ。今度はそう易々と壊されるな。

我の肉体で作られたあいつの肉体を』

 

「我、絶対に守る」

 

その決意を小さな胸に秘めて一誠の身体を受け取ろうとした時だった。

次元の狭間に巨大な手が真龍と龍神を捕まえて穴の中に引きずり込まれた。

 

―――○●○―――

 

同時刻、不満げな顔で久方ぶりに壮大で巨大な木製の門を潜る一人の男が

美しい女性を引き連れた。

門番が二人を確認するや否や目を丸くした。二人が門を潜ったのは―――堅く閉じられた

その門を足で蹴り飛ばして開け放った直後だったのだから。

 

「あなた、物に八つ当たりしないの」

 

「仕方ないだろう。本人じゃなくてリーラに介して伝えん来たんだからよ」

 

「直接私たちと連絡できる手段はこの家に無いのだからしょうがないことよ」

 

「あー・・・・・・当主やめてー」

 

「一誠に当主としていい所見せたくないの?」

 

「俺は父親としていいところを見せたい!」

 

唖然と門を蹴破った誠に続く一香に見送る門番は顔を見合わせ、

 

「荒々しくなりそうだな」

 

「別の意味で賑やかになるなこりゃ」

 

「しかし・・・・・この足跡どうするよ。くっきり残ってんぞ」

 

「堅牢な門にここまで凹ませるとは・・・・・」

 

二人の話声を聞こえていない二人はどんどんと奥へ進み、

兵藤家しか入ることが許されない聖域と言っても過言ではない場所に侵入を果たす。

 

「はぁ・・・・・一誠、今頃復活しているかなぁ?」

 

「リーラから連絡が来るはずよ」

 

「その手筈だからな。早く息子の顔を見たいぜ」

 

 

 

 

「懲りないわね、あなたたち」

 

真紅の鎧を纏ったシオリが今しがた多馬川沿いで川神百代とエスデスを負かした。

シオリはここ数日、百代とエスデスから襲撃を受けていたが、

一誠の力+魔人の力で尽く撃破している。

 

「一誠のことに関してなら心配は不要よ」

 

「お前・・・・・どうして正体を隠していたんだ」

 

「教える必要性は感じないわ。あなたは私じゃないもの、実力を隠してはいけない

ルールなんてこの世界には無いわよ?」

 

「私たち二人相手に無傷で倒すなんてな・・・・・」

 

「私の力だけじゃなく一誠の力も凄いのよ。もうこれで懲りたなら二度と喧嘩を

吹っかけてこないでくれる?じゃないと今度は二人の力だけじゃなく二人の若さを

奪って年齢不相応なお婆ちゃんにしてやるわよ本気(マジ)で」

 

そんな自分を想像してゾッと顔を青ざめた二人に背を向けて鎧を解除、魔人の翼を展開して空を飛び、橋の鉄骨の上に乗りだすと腰を下ろしてここでしか見れない風景を

見渡す。風がシオリを撫でるように吹き、過ぎ去っていく感じに口の端を吊り上げて

青い空に向かって「いい風ね」と漏らす。

 

「・・・・・」

 

目を瞑ってこの瞬間を楽しむシオリ。常に一ヵ所には留まらない風が何時までもシオリを

撫でては過ぎていく時、瞑目したまま不愉快そうに口を開いた。

 

「今度はなによ」

 

「気分を害してしまわれたのであれば申し訳ございません」

 

目を開けた。目の前、空間に穴が空いていてその穴の向こうにはどこかの空間と繋がっているのか、

腰掛けたまま翡翠の髪を伸ばしている二つの角を生やした女性が真っ直ぐシオリに視線を向けていた。

 

「誰?」

 

「初めまして魔人シオリ。私は原始龍、ドラゴンの長です」

 

「ドラゴンの長・・・・・。そのヒトがどうして私に声を掛けてくるのかしら」

 

「あなたの中に宿っているドラゴンや兵藤一誠の魂を渡してもらいたくこうして現れたのです」

 

警戒レベルが上がる。まだ身体は完成していないかもしれない時に謎の人物が

ハッキリと一誠を狙っている言葉を口にした。

 

「彼の者の身体は完成しました」

 

自分の心を見透かし、読まれている気分で少し嫌悪感を覚える。

 

「そう、なら拒む理由はないわ。彼の身体の元へ行かせてもらうわよ」

 

「なら、こちらに。既にグレートレッドとオーフィスから肉体を用意してもらいましたので」

 

原始龍が一つ手招くと本人の意思とは無関係に身体が勝手に穴の中へ。

穴から潜り出た途端、円状な空間で壁一面にはキラキラと星屑が下に落ち続ける

神秘的な現象が絶え間なく起きている。

床は四匹の龍が太陽を囲むような姿勢が描かれているのに対して、

天井は満月を囲む四匹の龍の彫刻が施されている。

そして、この空間の奥に天井にまで伸びた背もたれの椅子に座る女性がいた。

翡翠の髪から突き出る翡翠の二つの角。身に包んでいる衣服は緑と青を基調とした着物だった。

シオリはそんな別世界の空間を見渡せば全長百メートルはあろう真紅のドラゴンとオーフィス、

さらに一つの人型の肉体が二人と一匹の間に置かれている。

 

「ここは・・・・・」

 

「ドラゴンの世界、そして私の城の王の間と言う場所です。本来はドラゴン以外の者を

この場に召喚するのは異例中の異例ですが、状況が状況です。こちらにきてください」

 

足を原始龍に向かって動かす。原始龍も王座から立ち上がって互いが手の届く距離で立ち止まる。

シオリの胸元に手を押し付け、離すとまるで磁石のような感じで原始龍の手に―――巨大な

魂がくっついて出てきた。

 

「大きい・・・・・」

 

「兵藤一誠の生命力を大きさに表したものです。この中に彼の者の中に宿っている

ドラゴンも含まれていますが・・・・・」

 

しかし、原始龍は眉間に皺を寄せた。

 

「どうしたの?」

 

「ドラゴン以外の魂が混ざっていますね。兵藤一誠の魂に取り憑いている・・・・・まぁ、いいです」

 

意味深なことを言いかけたが優先すべきことを成し遂げようと原始龍はその巨大な魂を床に寝転がっている人型の肉体に押し付けるように入れていく。その様子を静かに

見守っていくシオリたちの目にはようやく魂は肉体の中に収まった。

 

「起きなさい、あなたを待ち侘びている家族のために」

 

母親のように優しく言葉を投げた原始龍に、人型の肉体は―――ゆっくりとまぶたを開けた。

 

 

 

―――とある夜。花火大会が開催され、川神市のとある屋上から見ることにしていた百代たち。

夜空を彩る多種多彩な火の花を目に焼き付ける。それぞれ浴衣姿で

 

「たぁーまやぁー!」

 

「彼女募集中ぅぅぅううううううううううううううっ!特に年上の女性ぃぃぃいいいいいいっ!」

 

「おい、なんて叫びをするんだ」

 

「絶対に魂からの叫びだよね」

 

一人の友達に呆れ、苦笑いを浮かべる友人たち。それから花火を打ち終えるまで眺めていた。

その時―――夜空に咲く花火を覆い隠す謎の黒い影が通り過ぎた。

 

「・・・・・今のってなんだ?」

 

「でっかい何かが通り過ぎたよーな・・・・・」

 

「UFO?」

 

「えー、まさかー」

 

と、朗らかにそう話していた面々に金色の双眸が見詰めていた。その背後で。

 

「うん?・・・・・ぎゃー!怪物ぅー!?」

 

ポニーテールの少女が叫びだすと屋上にいる少年少女たちはバッと振り返った矢先に

一人の少女が降り立った。

 

「って・・・・・・お前は」

 

「こんばんわ。まぁ、直ぐにさようならするけどね」

 

ニコリと笑みを浮かべる少女が背後にいる巨大な赤い生物に向かって感謝の言葉を送ると、

翼を羽ばたかせてどこかへ行ってしまった。

 

「今のアレ、なんなんだ・・・・・?」

 

「見ての通りよ。それじゃ、またね」

 

紋様状の翼を展開して少女もどこかへ飛んで行った。

 

 

 

 

その影は夜空の下でどこかに真っ直ぐ向かっていた。

 

「快適」

 

黒いワンピースを身に包み四肢を覗かせる幼女がそう漏らし腰を下ろしているところは

全長百メートルはあろう真紅のドラゴンの頭部。一人と一匹はやがて異種族が共存している

現在夏祭りの状態の町の上空にまで飛行し、目的の場所を見つければ広い庭園に鈍い音を

地鳴らしつつ着地した。

 

「到着」

 

ピョンと頭部から降り立った少女―――オーフィスの前に少女や女性たちが駆けつけて

ドラゴンと交互に見た。

 

「オーフィス・・・・・あのドラゴンは・・・・・」

 

「グレートレッド、でも、グレートレッドじゃない」

 

「・・・・・では」

 

「ん、リーラ」

 

銀髪のメイドが何か察したように発し、光と化となって小さくなるドラゴンに琥珀の目の

視界に映り込み、

 

『・・・・・っ!』

 

この町でも花火大会が行われていて、その花火の一瞬の光がオーフィスの隣に立つ一人の

少年の姿を照らす。

 

「・・・・・ただいま、皆」

 

はにかみながら目の前にいる自分の家族に挨拶をした途端、銀髪のメイドを始め、少女や

女性たちが少年に向かって駆けだした。

 

『おかえりなさいっ!』


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