HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード31

曹操―――。三国志で蜀の劉備、孫呉の孫権、魏の曹操と天下統一を目指していた有名な武将の名前。

三国志で有名なのは天下三分の計や赤壁の戦いだろう。一誠は世界で修行をしている中で曹操と出会い、一年という期間の中で共に過ごした仲でもあった。

 

「お前がテロリストのトップだったなんて・・・・・」

 

「驚いた?それともショックだった?いや、その両方だろうねキミは」

 

真っ直ぐ一誠に話しかける曹操。関係なんて関係ないように接する友人に何とも言い難い気分となる。

ヴァーリが自分はテロリストになったと告げられた時と同じ心情だった。

 

「八坂さんを攫ったのはなんでだ?」

 

「モルドレッドから聞いているのだろう?」

 

「それでも不思議でしょうがないんだよ。英雄派ってのはどんな組織なのかはアザゼルのおじさんから聞いている。俺もお前たちにとって関心する要素があるのは自覚しているが、『どうして俺なんだ』?」

 

疑問をぶつけた。ぶつけられた曹操は槍を弄びつつ一誠の疑問に答えた。

 

「一誠、今のキミはこの状況が幸せかい?」

 

「・・・・・曹操?」

 

「本来、人間しかいなかったはずのこの世界はある日を境にして人間ではない種族までもが表に出て当然のように人間と同じ道を歩むことになった。しかし人間に被害が及ぶ数が何倍にも増した」

 

「・・・・・」

 

「今の状況が幸せだと思うものもいれば不幸だと思うものもいる。天使は人間の味方であるイメージがあるから安心できるだろう。だけど、悪魔と堕天使は人間を糧とし堕落させる悪いイメージの種族だ。そんな人間に危害を加える者と傍にいると自分に何をしてくるのか怖くてしょうがないはずじゃないか?」

 

曹操の話をジッと耳を傾ける。言いたいことは何となくの程度で分かるし同意見な言葉も出てくる。

どうして自分の友人はこうも敵になっているケースがあるのか疑問を抱くものの、

人は時が経つつれに変わるものなんだなと改めて認識した。

 

「―――と。建前な話はここまでにしよう。そろそろ本題に入ろうか」

 

朗らかにそう言う曹操を臨戦態勢の構えをして一誠は言う。

 

「じゃあ、俺がここに来た理由は分かるよな?八坂さんを返してもらおうか」

 

「いいよ」

 

・・・・・え?テロリストにしてはアッサリ過ぎる応じに間抜けな顔をしてしまった。

一誠の顔を見て可笑しそうに小さく笑って曹操は言う。

 

「ふふっ。意外そうな顔をしているね。もしかして、断われると思った?」

 

「・・・・・うん」

 

「彼女はキミを誘き寄せるただの人質だ。キミが来ればもう必要はないからね。ゲオルグ」

 

制服にローブを羽織った魔法使い風の眼鏡を掛けた青年が曹操に頷き一つの魔方陣を展開した。

すると一誠が求めていた八坂と言う女性が檻と共に両手首に手錠で嵌められた姿で現れた。

 

「だが―――そう簡単に返すと思ったら大間違いだよ?」

 

「・・・・・やっぱり?」

 

「キミを呼んだ理由はとある実験をしたいという理由で私たちは九尾の御大将を攫ったんだ」

 

英雄派の背後に禍々しい黒い光が生じる。魔方陣?その光を見ていると―――。

 

ズォォォォォォォオオオオオオオオオオオオ・・・・・ッ。

 

立っている場所に激しい揺れが襲った。

あまりにもドス黒く禍々しいオーラが魔方陣から発生していく。

ゾッとするほどの寒気。魔方陣からかつてないほどのプレッシャーが放たれている。

 

「(なんだ、この心身が底冷えするような・・・・・まるで蛇に睨まれたカエルっていうか・・・・・!)」

 

顔中脂汗が止まらない。手の震えも止まりはしない。圧倒的なプレッシャーの前に一誠だけではなく。

 

『・・・・・なんなのだ・・・・・この気配は。ドラゴンにだけ向けられた

圧倒的なまでの悪意を感じるぞ』

 

『こいつは・・・・・かなりやべぇぞ・・・・・』

 

『危険だ・・・・・アレは・・・・・私でさえも危険だと感じる・・・・・っ!』

 

ゾラードたちが何かを感じたのか、声を震えていた。

―――こいつらが怯えている?最強の邪龍の一角たちでもか・・・・・?

剛毅の塊であり威風堂々としたこいつらを怯えさせるだけの存在って一体―――。

 

禍々しい魔方陣から巨大な何かが徐々に姿を現していく。

頭部、胴体・・・・・黒い羽、十字架・・・・・。

十字架に張り付けになっている何者か。身体を強烈なまでに締め上げていそうな拘束具。

 

それが体中にがんじがらめに付けられており、その拘束具にも不気味な文字が浮かんでいた。

目にも拘束具が付けられ、隙間から血涙が流れている。

 

「―――ッ!」

 

魔方陣から全身が現れた瞬間、一誠はその異様な存在に息を呑んだ。

 

下半身は・・・・・蛇だった。否、鱗がある。・・・・・東洋のドラゴンのような長細い姿、

上半身が堕天使、下半身がドラゴンであった。両手、尾、

全身のあらゆるところ―――黒い羽にも無数の極太の釘が

打ちこまれていて見ているだけで痛々しい状態だ。

 

・・・・・拘束具をつけられた磔の堕天使のドラゴンのように見える。

よほどのことをしでかした罪人のような磔の仕方。

まるで裁いた者の怨恨を体現したかのような―――。

 

『オオオオオオォォォォォォォォォォオオオオオオオオオォォォォォォォォオ・・・・・』

 

磔の罪人の口から、不気味な声が発せられてこの場一帯に響き渡る。牙むき出しの口からは

血と共に唾液が吐き出されていった。苦しみ、妬み、痛み、恨み、ありとあらゆる負の感情が

入り混じったかのような低く苦悶に満ちた声音だった。見ているだけで誰かの憎悪を存分に

ぶつけられた存在だって分かった。その堕天使ドラゴンの身体から黒い霧とオーラが

京都の町に広がっていく。

それらは一誠の肌にビリビリと突き刺さるような感覚とぬくりとしたものが

全身に広がっていく。

 

「曹操・・・・・『ソレ』は一体何だ・・・・・っ!?」

 

「流石の一誠もコレには恐怖するようだね。グレートレッドの一部の肉体とオーフィスの力で甦ったキミはドラゴンだ」

 

「だから、何だというんだ?」

 

「グレートレッドの肉体を持つキミならグレートレッドの代わりに実証してくれるだろう。コレの毒と呪いに耐えられるかどうかを」

 

―――まさか!

 

「友達だから、付き合ってくれるよね?」

 

曹操の言葉と同時に謎の堕天使のようなドラゴンのような磔されている者の口が開くと黒い何かが飛び出して一誠に伸びていく。

 

「っ」

 

防ぐ、いや、考えを切り替えてかわすと黒い物体が避ける一誠に追いかけてくる。

 

『主!ここなら俺の力が使える!』

 

―――いや、それよりもアレは一体何だ!?

 

『分からない!あのドラゴンなのか堕天使なのか分からない奴からドラゴンにだけ向ける悪意を放つ奴は初めて見る!』

 

『まるでドラゴンキラーみたいだな』

 

ドラゴンキラー。ドラゴンを殺す意味を指すそれは迫りくる謎の黒い物体とあの謎の一誠たちにとって分からない者から発するドラゴンに対する悪意を鑑みれば言い得て妙だった。もしも本当にそれだったら一誠の命は危ない。

その様子を見ていた曹操は―――。

 

「逃げてばかりでは実験にならない。ヘラクレス、レオナルド、ゲオルク。動きを封じてくれ」

 

と、仲間に告げていた。逃げ惑う一誠の心は焦心に駆られている。ここまで悪意を感じるのは生まれて初めての経験だ。ここから逃げたしたいが八坂が目の前にいると曹操のいやらしい作戦に奥歯を噛みしめる。

すると、目の前にミサイルのようなものが飛来してきた。亜空間から取り出したエクスカリバーで一閃して斬り捨てると異様と異形の飛ぶモンスターたちまでもがどこからともなく出現して一誠に迫る。

 

「しゃらくせぇっ!」

 

自身を駒のように回転して光の竜巻のようにモンスターを肉薄し切り刻んでいくと目の前に発生した霧に包まれて次に出た場所に視界を入れると

 

「しま―――っ!?」

 

謎のドラゴンの目と鼻の先に移動させられていたことに気付き、一誠は回避をしようとした。

 

ギュンッ!

 

黒い物体が目の前から飛び出してきて成す術もなく一誠はエクスカリバーを手放した瞬間に

呑みこまれた。そして―――喰らわれた。

 

―――○●○―――

 

「・・・・・ゲオルク?」

 

「待ってくれ、いま吐きださせる」

 

少し予想外なことが起きた。ドラゴンが一誠を食らってしまい腹の中に収まってしまった。

これでは実験どころではない。最悪、一誠は死んでしまっているかもしれない。

ゲオルクは少々焦りつつ魔方陣を展開して操作をする。

 

「・・・・・」

 

モルドレッドは穏やかではなかった。曹操の考えは肯定も否定もしない。ただ、これで死んでしまうようなことがあれば自分の目の前に突き刺さったエクスカリバーを奪うには

意味が無くなる。一誠との約束が果たせなくなるからだ。

 

「(できれば、死ぬんじゃないぞ・・・・・・)」

 

そう思ったその時だった―――。ゲームを応用した異空間に魔方陣が出現した。英雄派は敵であると悟ると警戒し、魔方陣から出現する者に身構える。姿を現したのは一組の男女だった。

最初は曹操たち、次は謎のドラゴン、そして周囲を見渡してから曹操に一言。

 

「俺たちの息子はどこにいる?」

 

「まさか、そのへんなドラゴンみたいなものが食べちゃったってわけじゃないわよね?」

 

ゾッッッッッ!!!!!

 

今度は英雄派たちがかつてないプレッシャーを感じて顔を強張らせ険しい表情と歪め出す。

曹操ですら緊張の面持ちで男性と女性に声を掛けた。

 

「これはお久しぶりです、兵藤誠殿と兵藤一香殿。どうやってここにきたのですか?」

 

「息子の専属メイドが一誠に内緒で発信器を付けていたんだ。だが、途中で反応が無くなってな。大方異空間にでも閉じ込められたんだろうと一香の力でこれたのさ」

 

「曹操ちゃん。久し振りの再会で嬉しいのだけれど、一誠と八坂さんを返してくれるよね?」

 

返して欲しいではなく返してくれると要求する一香。

 

「―――捕縛する。霧よッ!」

 

一香の返事はゲオルクの霧での拘束。二人を包みこもうと霧が集まるが―――。

 

「ゲオルク・ファウスト。メフィストと契約した初代ファウストの関わりある魔法使いね?

 うふふ―――甘いわよ」

 

自分たちを包みこむ霧をそっと撫でるように手を動かした途端に霧が霧散した。

 

「―――ッ!あの挙動だけで我が霧を・・・・・ッ!神滅具(ロンギヌス)の力を散らすか!」

 

「魔法使いが驚いちゃダメよ?―――相手に隙を作ったらそこで魔法使いは負けなのだから」

 

「っ!?」

 

自分の足元に魔方陣が展開されていたのをゲオルクは後に気が付き―――激しい爆発に巻き込まれた。

 

「・・・・・兵藤一香、いえ、元式森家当主だったあなたは歴代の当主の中で最高の魔法使いでしたね」

 

そう言う曹操だが顔を引き攣らせていた。威力を最小限したのだろうがゲオルクの足は治療しない限り立てれない状況に追い込まれた。

 

「まだまだ三流の魔法使いよ世界からしてみればね。一流の魔法使いはパラレルワールド、並行世界と通じることができるほどの力がないとね」

 

「なるほど、自分に手厳しいお方だ」

 

「さて?一誠はどこにいるのかな?早く吐いた方が身の為だぞー?」

 

朗らかに言うが顔が全然笑っていない。誠が近づく度に英雄派はプレッシャーに怖気づいて下がる一方だ。

しかし、果敢に誠へ突貫する巨躯の男がいた。

 

「ヘラクレス!お前では無理だ!」

 

制止する曹操だが、すでにヘラクレスは拳を誠の腹部に突き刺さる。刹那―――炸裂音と共に誠が木端微塵に爆ぜた。

 

「ハッハッハー!曹操、俺がたかが兵藤家の男にやられると思っちゃ困るぜ?見ろよ、俺の神器(セイクリッド・ギア)、『巨人の悪戯(バリアント・デトネイション)』で木端微塵にしてやったぜ?」

 

曹操に向けて不敵に発するヘラクレス。しかし、曹操の表情は深く険しくなる。

 

「相手は並の兵藤家だったらまだマシも、お前の相手をした男は―――人間の常識を遥かに超越した男なんだぞ!」

 

「あ?曹操、なにを言って―――」

 

ガシッ!

 

ヘラクレスの頭が目の前から掴まれた。

 

「攻撃と同時に相手を爆破させる能力のようだが・・・・・俺にはまだまだ不十分なほどの威力だったぞ坊主」

 

「―――っ!?」

 

木端微塵となっていたはずの誠が服がボロボロになった程度で無傷のまま立っていた。

その現実に英雄派は目を丸くする。

 

「拳の突き出し方もなっちゃいない」

 

「お、お前―――!?」

 

「パンチとはな。もっとこう、深く、抉り込むように突き出すんだ。出直してこい」

 

誠が左拳をヘラクレスの腹部に鋭く抉り込みつつ突き出した。そのたったの一撃でヘラクレスの意識は落ちて

無意識のまま味方の方まで吹っ飛び巻き込み、ようやく止まった。

 

「たったの一撃で・・・・・曹操、彼は本当に僕たちと同じ人間なのかい・・・・・?」

 

「ああ、人間だよ。私たちが目指す先に彼と彼女が立っている。ある意味、彼らが真の強さを持つ人間、英雄―――!」

 

槍を誠に向けて伸ばす曹操。だがしかし、アッサリとその鋭い槍の突きを人差し指で止めてしまう。

 

「この程度、初代孫悟空でも止められるぞ曹操ちゃん」

 

「化け物染みた強さは変わらないようですね・・・・・っ」

 

「言っておくけどな。俺と一香より強い神さまがいるんだぞ?この程度で驚かれちゃこの先生きてられないからな。俺たちは片足だけ人間を止めた領域に踏み込んだだけに過ぎないよ」

 

それでも自分たちを赤子当然のようにあしらう力があるのだから叶うわけがないと曹操は口に出すことはしなかった。

 

「さぁ、一誠を返してもらおうか?」

 

「・・・・・」

 

槍の切っ先をドラゴンに向ける。

 

「彼はあの腹の中です」

 

「そうか」

 

スタスタと磔のドラゴンのもとへと近づく。数メートルの距離で立ち止まると手を固く握り腕を深く引いて溜めるよう仕草をしてから一気に拳を前に突き放った。直接は触れていない。代わりに放たれた拳圧がドラゴンの腹部を圧迫させて深く凹ました。

 

『オオオオオオオォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ・・・・・オエッ』

 

ドラゴンの口から一誠が出てきた。―――だが、腕の中に収まった一誠に異変が起きていたる。

 

「・・・・・これは」

 

「誠、八坂さんを取り戻したわ」

 

一香の方は八坂を救出。直ぐに剣を手にして一香のもとへと寄った誠。

 

「今回はこのぐらいにしてやる。だが、次に出会った時はお前たちを殲滅するつもりだから覚悟してくれ」

 

それだけ言い残して一香の魔方陣でこの場からいなくなった。後に残された英雄派は緊張の糸が解かれたようにそんの場で腰を下ろした。

 

「生きた心地がしなかった・・・・・」

 

「私もだ。この最強の神滅具(ロンギヌス)を以ってしても勝てないだろうなあの二人には」

 

「だけど、実験は成功じゃないか?」

 

「ああ、そのようだな。コレは、『龍喰者(ドラゴンイーター)』は赤龍神帝に及ぼすだけの力がある。そして、ちゃっかりと力を奪わせてもらった」

 

「お前の古くからの友達のようだが、良かったのか?」

 

モルドレッドの問いに「ああ」と頷いた。

 

「彼が生きている限りはこの関係は永劫に続くさ」

 

制服の中から指環を通したネックレスが出てきた。曹操は昔のことを思い出し意味深に笑んだのだった。

そして味方に告げる。

 

「ついでにコレの血も大量に採取しておこう。もう二度とお目に掛かれないだろうからな」

 

―――○●○―――

 

一誠と八坂を救助したものの深刻な状況は変わりなかった。八坂は意識を取り戻し、娘の九重と再会を果たしたが・・・・・。

 

「イッセー・・・・・ドラゴンの力、全くない」

 

ポツリとオーフィスは眠っている一誠を一目で見た途端に漏らした。クロウ・クルワッハもその状態の一誠を見詰め、思考の海に潜っている。

 

「ど、どうして・・・・・?どうして一誠くんがこんな・・・・・」

 

「死んでないわよね?ねぇ、イッセー・・・・・死んでないわよね・・・・・?」

 

一誠を慕う面々は信じがたい気持と悲しみで涙目になって一誠を囲う。そこから少し離れたところでトップたちが真剣な表情で話し合っていた。

 

「英雄派がそのようなドラゴンみたいなものを?」

 

「ああ、アレは一体何なのか俺も初めて見る。だが、一誠から丸っきり覇気すら感じなくなってるから力を奪えるだけの能力があったんだろう」

 

「お前から聞いたそのドラゴンみたいな特徴は・・・・・いや、まさか」

 

アザゼルが厳しい目で口ごもる。

 

「知っているのか?」

 

「・・・・・俺もそうだがヤハウェ、アンタも知っているはずだ。一番な」

 

「・・・・・」

 

沈黙を貫く『聖書の神』ヤハウェ。アザゼルとヤハウェに向けられる追及の視線はリアスたちからも向けられていることに察し、口を開いた。

 

「そのドラゴンは冥府のコキュートスに封じられていた代物に違いないでしょう」

 

「冥府・・・・・ハーデスのところにか?」

 

「ええ、そしてなによりもそのドラゴンは私と関わりがあります。アダムとイヴに知恵の実を食べさせた者なのですからね」

 

『―――っ!?』

 

あのドラゴンがアダムとイヴに禁断の果実を食べさせることに仕向けた張本人だったとは誠と一香は目を丸くした。

 

「私は彼に悪意と呪いを掛け、エデンの園から追放、これをコキュートスに封じたのです。ハーデスに管理を任せていたのですが・・・・・どうやらハーデスはテロリストと何らかの交渉の末で一時的に召喚を許したのかもしれません」

 

「それにアレはヤハウェの悪意、毒、呪いをその身に全て受けた存在だ。極度の蛇―――ドラゴン嫌いになったヤハウェは神聖であるはずの神の悪意は本来あり得ない。ゆえにそれだけの猛毒。ドラゴン以外にも影響が出る上、

ドラゴンを絶滅しかねない理由から、あいつにかけられた神の呪いは間違いなく究極の龍殺し(ドラゴンスレイヤー)。その凶悪な龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の腹ン中にいたとなると・・・・・」

 

言い辛そうに口籠る。だが、その続きを言ってくれと言う視線を感じ取りアザゼルは重々しく言った。

 

「もう死んでいるだろう」

 

「「っ・・・・・」」

 

―――ダダダダダダッ!

 

不意に足音が聞こえてきた。真っ直ぐこちらに向かってくるそんな足音はバンッ!と扉が開け放たれたと同時に止まり、入ってくる二人の少女が。

 

「いっくん!?」

 

「一誠さま!」

 

どちらも黒い髪の少女だった。話を聞いてここまで駆けつけたのだろう。二人は一誠のところに寄って―――嗚咽を漏らした。

 

「悠璃ちゃんと楼羅ちゃん・・・・・だとすれば、ここに連れてきたのはアンタかクソ親父」

 

扉に視線を向けると兵藤家現当主の兵藤源氏と兵藤羅輝、その他にも式森家現当主の式森数馬や式森七海、和樹、八坂、九重が現れる。

 

「八坂殿から話は聞いた」

 

「・・・・・だから何だって言うんだ。今さらアンタらがどうこうできる状況じゃなくなっているんだぞ。謝りに来たって言うんならさっさと帰ってくれ。今の俺はハッキリ言って感情が抑えきれないでいるんだからな」

 

どこまでも低い声音で実の父親にそう言う。

 

「いつもアンタはそうだ。後から来てよぉ・・・・・やることも成すことも全部遅いんだ。仕方のないことだってあったが、結局はアンタは何も変わっちゃいない。俺もそんなところもそっくりだったなんてな・・・・・」

 

俺も人のことは言えないと自嘲的な笑みを浮かべる。

 

「まだ十数年しか生きていないっていうのに神の悪意と毒、呪いを一身に浴びたんだ。見ろよ今の一誠を。全然気すら感じない魔力だってない。―――死んでいるんだってよ」

 

「・・・・・」

 

「見ろよあの子たちを。全員、一誠に慕っている子たちだ。中には一誠に助けられた者もいる。これから幸せになって貰いたかったのに・・・・・あいつが、一誠があんなんじゃ・・・・・逆に悲しませるだけだろうが」

 

誠も涙を流し始める。親として助けるのに駆けつけたのは既に遅かった。親として失格だと

漏らし続け、重くなった雰囲気と哀愁、誰もが悲しみに暮れていた―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが私の中に来るなんて驚いたわ。ええ、あなたもそうでしょう。・・・・・分かってるわ。あなたの望みを叶えましょう。私たちは一心同体なのだからね・・・・・ふふっ」


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