HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード29

リアスとソーナのゲームが終え、祝杯としてパーティも行われ、その日の夜。

リーラとヴェネラナ、グレイフィア、シルヴィアが一誠と夜を過ごし、その翌朝

人間界に舞い戻ってから数日が立った時、新たな展開が始まっていた。

 

次期兵藤家当主選抜大会の詳細が発表されていたのだった。

 

参加人数は無制限(神は除く)。ルールは十二人の一チームを組んで、様々な戦いに

最後の一チームとなるまで戦う大会と報道されていた。

 

「んー、まあ前から考えていたチームで参加しようかなって思ってるけどな」

 

「どんなチームにするのですか?」

 

「うん、ちょっと集めに声を掛けてくるよ」

 

朗らかに言ってどこかに行った一誠。

 

そして―――大会当日の日が迫った頃に一つの事件が発生していたのを一部の者たちだけ

しか知らなかった。

 

大会は京都のドーム。兵藤家や式森家が次期当主を決める際に行われる聖域でもある。

世界中の国、そして神話体系に関わる伝説の存在が様々な欲望を抱き大会に参加する。

 

『―――皆さま、長らくお待たせしました。次期兵藤家当主選抜大会決定戦の開始時間と

なりました!』

 

一時間後、開始宣言ともいえる発言が発せられて一拍してドーム中から歓喜の歓声が沸いた。

悪魔、堕天使、天使、人間の他にも様々な異種族が交じって観客席に座って歓声を上げる。

 

『まず最初に、今回の次期兵藤家当主選抜大会を開催した主催者の方を発表します。

 現兵藤家当主の兵藤源氏さまです!』

 

紹介された源氏は威風堂々と立ち上がり自分の姿を披露させる。

ある程度姿を晒せば腰を下ろして座りこむ。

 

『続きましては今大会のサポートを担う五大魔王の一人、ルシファーさま、ベルゼブブさま、

レヴィアタンさま、アスモデウスさま、フォーベシイさまです』

 

呼ばれた五人の魔王が自分の名を呼ばれた時に立ち上がった。

五人のうち四人が女性なので観戦客(男性)が大歓声を上げた。

 

『続いて堕天使を束ねる堕天使のトップ。「神の子を見張る者(グリゴリ)」の堕天使の総督

アザゼルさまです』

 

紹介されたアザゼルも立ち上がる。

 

『天界に住まい、悪魔払い、シスターやエクソシスト、世界各地に存在する教会を束ねる

「聖書に記されし神」ことヤハウェさまと神の補佐、大天使長ミカエルと共に天使を束ねる王、

神王ユーストマさまです』

 

ヤハウェとユーストマも立ち上がる。観客からの歓声に恭しくお辞儀をして応えて座りだす。

 

『それでは次に移りたいと思います。次期兵藤家当主選抜大会決定戦に参加した

総勢千人以上の選手の入場です!』

 

歓喜が湧く。そんな中、中央のステージに巨大な魔方陣が出現した。

 

『悪魔、天使、堕天使、人間の他にも様々な種族の選手が参加しています。その中で異例中の

異例の参加者が最初の登場です!そのチームの名は―――ギガント・ジャイアント!』

 

カッ!と光と共に現れた参加者―――は人間の百倍の身長を誇る巨大な人間、巨人族だった。

 

「おいおい・・・・・こいつぁとんでもねぇ奴らが出てきやがったじゃないか」

 

「そうですね」

 

「どうやって参加したのか気になるところだわ」

 

『さぁ、続いて他の選手の入場です!』

 

そうアナウンスが流れれば選手入場入口から大勢の参加者が現れる最中でも説明は続く。

 

『ここで改めて今大会のルールを御復習いしましょう。今大会は予選と本選を分け、予選で

RG(レーティングゲーム)」を応用した戦いに勝ち抜いたチームは

明日、本選に出場する権利が与えられます。本選も「RG(レーティングゲーム)」を

応用して戦います。一つのチームに参加できる人数は十二人まで。

勝敗は相手の「(キング)」を倒すこと。そして本選に出場できるのはたったの四組のみです』

 

ザワッ・・・・・!

 

圧倒的な少ないチームの数に会場はざわめく。

 

『では、兵藤源氏さまから一言お願いいたします』

 

アナウンサーの言葉に兵藤源氏が立ち上がった。マイクを受け取り表情の色を変えず、

ゆっくりと口を開いて言葉を発する。

 

『まず、「RG(レーティングゲーム)」という冥界に住む悪魔たちが戦闘経験や実績、

功績を残す為に使用される異空間のバトルフィールドで試合を行う。

これは知っての通りのことだ。でなければ、この日本が壊滅的危機に陥ってしまうのでな。

安全な場所で死闘を繰り広げられる。これほど世界に優しいバトルフィールド上はないであろう』

 

うんうんと誰かが当然だとばかり頷いた。

 

『さて、予選の試合のルールを説明しよう。至極的単純だ。相手の「(キング)」を

倒し本選に出場権利を得ることができる四組になるまで戦い続ける。―――それだけだ』

 

『これからすぐに予選を始めたいと思います。皆さん、準備はよろしいですか?

―――では、始めたいと思います!』

 

短いような気がする源氏の言葉に続いてアナウンサーが事を進める。大会の出場者たちは

高らかに雄叫びを上げて賛同し、足元に展開した巨大な転移式魔方陣によって

ドームから姿を消した。参加者たちはそれぞれのチームの名を背に背負って参加している。

中でも英雄や勇者と関わりある集団やこの大会で自分の名を轟かせようとする集団、

日本を自国の領土とする集団もいるほどだ。巨人族といった異種族も参加していれば

当然その手の種族もわんさか参加している。悪魔堕天使、天使は勿論のこと、

獣人や妖怪もいる。ただの人間では太刀打ちできるものではないが、戦いとは常に何が

起きるか分からないものだ。それを懸けて挑戦者が参加をする。

 

さて、参加者たちは転移魔方陣でバトルフィールドに跳ばされた。次に参加者たちが

目にした光景は―――。青い空だった。そして遥か下には大海原と巨大な大陸が見える。

 

「は?」

 

自分たちは空にいる。その認識を受け入れるのに数十秒掛かった者もいた。

パラシュート無しで海面や地面に叩きつけられるビジョンが浮かぶのも容易かったその時。

 

『こんにちは皆さん!最初は戦うステージを落下しながら聞いてください!』

 

アナウンスの声が聞こえてくる。事実、参加者たちは叫び、悲鳴を上げながら落下していたのだ。

 

『無事にバトルフィールドである巨大な大陸に着陸した者からゲームを始めます。

ですが、無事に着地ができなかった者、あるいは着地できなさそうな

チームを発見すればこちら側の判断で強制退場させてもらいます。

そして勝利条件は皆様の眼下に見える建物のどこかに1~4の数字が書かれたボールが

設置されておりまして制限時間、三時間まで見つける短期決戦(ブリッツ)形式で

行わせてもらいます。それでは皆さま、御武運を!』

 

最後にそう言い残して聞こえなくなったアナウンス。

 

「―――だってよ、皆」

 

当然のように参加していた一誠はチームメンバーに話しかけた。

 

「ははは、面白い展開になったな。確実に人間たちはOUTだろう」

 

そう言う黒い髪に紫の光を放つ男が愉快そうに胡坐を組んだまま落下している。

さらに蒼穹のごとく蒼い髪に金の瞳の女性がとある方へ見詰めたまま無言でいるのを

クロウ・クルワッハが声を掛けた。

 

「どうしたティアマット」

 

「この場に二天龍がいると思うと私たちもただでは済まないなとな」

 

「なーに、戦いたいなら戦わせればいい。私たちは私たちで戦いを楽しめばいいだけのこと」

 

元々は黒髪だっただろう髪が赤色に浸食されたような髪の男は放っておけとばかり言い放った。

そこへ緑の髪にアロハシャツ、サングラスを額に掛けている男も口を開いた。

 

「しっかし、この面子が揃うなんて有り得ねー」

 

「ミドガルズオルムも誘ったんだけど、眠いから嫌だって断われちゃったんだよねー」

 

「いやいや、あの寝坊介が戦うわけ無いじゃん?ありゃ、終末の怪物の一匹だって」

 

「そう言うお前はよく兵藤一誠の誘いを乗ったな。玉龍(ウーロン)

 

紫の髪の偉丈夫の男の発言にハハハと笑った玉龍(ウーロン)

知り合いのようでフレンドリーに接する。

 

「あの若猿じゃねーけどよ。なんたって懐かしい面子が揃えるから参加してくれって

言われたからな。そいつらと一緒に戦って楽しむのも悪くはないだろうって思ったんよ。

てか、お前もそうだろタンニーン」

 

「ふっ、お前と同じ気持ちだと言っておく」

 

タンニーンと呼ばれた男も口元を緩ましてこの大会を楽しむ依存のようだ。

 

「主の魅力は留まる事を知らないですね」

 

「全くだ。これだけのドラゴンを鶴の一声もとい龍の一声で集めてしまうのだからな」

 

「イッセーは凄い」

 

金髪の女性と黒と紫が入り混じった男性は感嘆し、パチパチと拍手を送るオーフィス。

 

「さて、そろそろ地上だ。皆、思い思いに楽しんでくれ。ただし、殺しちゃダメだからね」

 

自由に戦わせる。それが一誠のチームの方針。異論はないとばかり

クロウ・クルワッハたちは頷いた後。―――大陸に着地したら、

殆どのメンバーは元の姿、龍となって他の参加者たちに攻撃態勢となった。

 

『もうないかもしれない龍神と龍王、邪龍の共闘戦の開始と行こうか!』

 

無事に着地した者から攻撃を始めるドラゴンチーム。

 

―――○●○―――

 

『な、なんと!参加者たちの中からドラゴンが出現したー!

これは予想外、イレギュラーな展開となりました!』

 

アナウンサーの実況にどよめきや歓声が会場中から湧き上がる。

まさかのまさか、ドラゴンまでもが参加していようとは誰が思うか?

初めて見るドラゴンに全世界は様々な反応や思いを抱く。

 

「ありゃ、優勝候補決定だな」

 

「あのドラゴンたちが共に戦う姿は生まれて初めて見ましたね」

 

「それをさせているのが坊主なんだから凄いぜ!」

 

「おや、早速巨人と戦い始めたようだよ」

 

ドラゴンと巨人の戦い。子供たちにとっては目を輝かせる光景だろう。斧や大剣、鎚、

巨大な盾を装備して巨人たちは戦いに臨む。あの巨大な武器をモロに直撃すれば

ドラゴンは一溜まりもない。ただし、相手をするドラゴンたちはただのドラゴンではない。

世界に、神話体系の神々にまで知られているドラゴンたちだらけだ。場所が場所な為―――本気で

攻撃できる。巨大な火炎球を吐き、巨人の武器を破壊し、焼き尽くし、

頑丈そうな身体まで火傷を負わせ、ダメージを与える。邪龍と龍王の強力な攻撃の前に

巨人は一人、また一人と倒れる。

 

「・・・・・やっぱ、強ぇわ」

 

「本人たちも久々の闘争に大はしゃぎしているだろうね」

 

「というか、もうあいつらの優勝でいいんじゃね?って思うほどだけどよ、

そーじゃないんだよなー」

 

アザゼルの意味深な言葉を同意とばかり異空間の中ではまたも予想外な展開を起こすのだった。

 

―――アジ・ダハーカの鎌首の一つが吹っ飛んだ。

 

「誰だ!?」

 

 

 

 

仲間の首が吹っ飛んだ光景は一誠からも見て取れた。目を丸くし、アジ・ダハーカのもとへと向かうと

一人の巨躯の身体を持つ老人と出くわし、エクスカリバーを振るって対峙した。

 

「納得できた!」

 

「ほう、戦士一誠か」

 

「久し振り、ストラーダ猊下!」

 

「ああ、久し振りだ。では、どこまで強くなったか私と剣戟をかわそうか」

 

かつて、一誠がルーラーと出会った教会にいた教会の老戦士、ヴァスコ・ストラーダ猊下。

その手にある剣を見て驚いた。

 

「デュランダル?」

 

「の、レプリカだ。オリジナルと比べると力は劣るが私が扱えばそのような

些細なことはカバーできるというものだ」

 

「・・・・・クリスタルディ猊下もいると思って・・・・・もしかしてイリナたちも?」

 

「ああ、いるとも」

 

一瞬の攻防を繰り広げ、周囲のものに余波で切り刻む。ストラーダ猊下は一誠の持つ

エクスカリバーを見て口元を緩ます。

 

「戦士イリナたちから聞いていた第二のエクスカリバーか。

レプリカとはいえこのデュランダルと刃を交えることができるとは中々だな」

 

「それは―――!」

 

口を開こうとしたところで一誠がストラーダ猊下から離れた直後、アジ・ダハーカの

魔力砲撃が過ぎた。

 

「あぶなっ!一言言ってくれ!」

 

『俺の首を斬った腹いせだ。気にするな』

 

「反省の色も無いわけね!」

 

ストラーダ猊下も回避していたようで、建物の壁と壁を蹴り上がりながら

アジ・ダハーカに向かって跳躍、デュランダルを一閃。

 

「させるか!」

 

それを防ぐエクスカリバー。空中で鍔迫り合いをしつつ、地上に落ちるまでの間激しい

斬り合いをおっぱじめる。

 

「世界中で修行してきた成果は確かに出ているな。だが、私はまだまだ本気も出していないぞ」

 

「・・・・・マジで?どれだけ強いの」

 

「では、少しギアを上げるとしようか」

 

デュランダルに聖なるオーラが滲みだす。それに対抗しようとエクスカリバーにも

聖なるオーラを纏わせ、二人は飛来する斬撃を放ち続けたところで第三者が左右から現れる。

 

「久し振りだな、オレと勝負―――!」

 

「兵藤一誠、見つけましたよ」

 

「んな、アーサーとモルドレッド!?」

 

タイミングが悪過ぎる!と愚痴を零した矢先、

 

「っ・・・・・アーサァアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

「愚妹が・・・・・また私の前に現れますか」

 

兄妹が一誠を無視して剣を交え始めた。「あ、やっぱりこの流れか」と他人事のように

察し、亜空間からもう一つの剣を取り出した。

 

「フラガラッハ!」

 

「ほう、今度はそれか。いいだろう。久々に稽古をつけてやる」

 

「そのデュランダルを斬って―――」

 

「いっやほーい!」

 

金色の雲に乗った女性が棍を一誠に突き刺してそのまま突き進む。

 

「やーやー、イッセー。また会ったぜぃ!」

 

「げほっ、美猴。お前か!」

 

「あん時の続きをしようぜ!」

 

嬉々として笑みを浮かべていた美猴。空中でストップして一誠と距離を離し、

臨戦態勢でいると一対の白い翼に金色の輪っかを頭上に浮かばせる

栗毛のツインテールの少女が斬りかかった。

 

「このお猿さん!イッセーくんに手を出すんじゃないわよ!」

 

「誰だい!」

 

「イッセーくんの幼馴染の紫藤イリナよ!」

 

あ、イリナ。今日は久し振りに会う人が多いなと思ってると、

一誠の後ろから抱き付く少女が現れる。

 

「一誠くん。お久しぶりです」

 

「ルーラー。久し振り、この大会に参加していたんだ?」

 

「はい、一誠くんが出ると思って猊下たちと一緒に。よかったです、一誠くんと再会できて」

 

「俺もだよルーラー。久し振りにルーラーの顔を見れて安心した」

 

「ああ・・・・・一誠くん」

 

目を潤わせて大会中にも拘らずラブラブオーラを展開していれば、

「おい!なにイチャついてんだ!」「ルーラーだけずるい!」と外野から聞こえてくる。

 

「む、あそこにいるのは師匠じゃないか!」

 

「あ、本当だ先輩だ!」

 

変わらぬ弟子と後輩も姿を現す。その背後にリーズとクリスタルディ猊下もやってくる。

 

「クリスタルディ猊下、お久しぶりです」

 

「ああ、久し振りだ。息災で何より、そしてそれが第二のエクスカリバーか・・・・・」

 

意味深に一誠の手にあるエクスカリバーを見詰めるクリスタルディ猊下。

 

「一誠くん、彼女のことは私たちに任せて他の場所で戦いなさい。

私たちはキミのフォローをしに来たようなものだからね」

 

「え、そうなの?」

 

「次期兵藤家の当主になろうと思って参加した訳ではない。―――本当の敵を見据えるためにも

極東の地に馳せ参じてきたのだからね」

 

笑みを浮かべ、聖なるオーラを剣に纏わせる。あ、そうだと一誠はあること告げた。

 

「知っているともうけど、最後のエクスカリバーを持っている背広を着た男がいるから。

聖王剣コールブラントの使い手だ」

 

「・・・・・なるほど、参加した甲斐ががあったというものだ。情報提供ありがとう」

 

一誠はルーラーたちと別れ、別の場所へ向かった。

 

「懐かしい者たちとよく会う」

 

「だな。もしかすると―――」

 

「一誠みーつけた」

 

「さて、一誠という狩りの始まりだ」

 

「うん、こういう奴らとも再会するんだよな」

 

川神百代とエスデス。たった二人だけで参加をしている様子だ。

 

「直江たちは?」

 

「あいつらには荷が重すぎるからな。置いてきた。代わりに―――」

 

代わりに?首を傾げていると、背後から細い腕が回され、誰かに抱き絞められた。

 

「揚羽さんを連れてきた」

 

「会いたかったぞ、一誠」

 

後ろに振り返ると自分より身長がやや高い額に☓の傷があり長い銀髪を伸ばし、

鋭い眼つきの女性がいた。

 

「揚羽―――久し振りだな。見ない間に随分と綺麗になって」

 

「そう言うお前も逞しくなったではないか。お前の活躍の話は聞いている」

 

「そっか。ああ、英雄と再会したぞ。相変わらずテンションの高い奴だったよ」

 

「その話も聞いておる。百代とエスデスを倒したそうじゃないか?お前も強くなっているのだな」

 

「そうじゃないと目標や大切な人を守れないよ」

 

大切な人と聞いて揚羽は問うた。その中に自分は入っているのかと。

一誠は当たり前のように抱き絞められながら頷いたのだった。

 

「俺のこと好きだって言ってくれたし嬉しかった。揚羽も守るよ」

 

「―――年下の男に守られるほど弱くはないが、嬉しい自分がいるのは確かだな。

一誠、この場で言わせてもらう。私はお前のことが好きである」

 

「うん、俺もだぞ揚羽」

 

「ならば、この大会を勝て。そして晴れて我と結婚しようではないか」

 

言い終えた直後に一誠の唇に自分の唇を押し付けた揚羽。触れるだけのキス。

離れるととてつもないプレッシャーが感じ始める。

 

「揚羽さん、それは聞き捨てならないなぁ?」

 

「ああ、百代と同じ気持ちだ。誰が誰と結婚するんだって?」

 

百代とエスデスが殺気立ち、揚羽を睨んでいる。

睨まれている揚羽は「ふん」と鼻で笑い飛ばしこう言う。

 

「我と一誠だが?なに、正妻の座は我だが愛人の座はお前たちにくれてやる」

 

「「・・・・・」」

 

揚羽の挑発で場の空気が一気に重くなったところで、他の参加者たちが姿を現した。

 

「百代、今は本選に出場することを専念しようか」

 

「そうだな。話は予選が終えた後じっくりとしよう」

 

「賢明な判断だな。ここでは一誠を巡った争いすらできん」

 

え、争いってなんなのさ。迫ってくる他の参加者たちに飛び掛かった三人を見送って一誠は別の場所へと赴く。

 

―――○●○―――

 

予選が始まって早一時間。参加者たちも大分数を減らす。主に巨大なドラゴンによる

蹂躙の攻撃で。しかし、それ以上に混沌と化となっていた。

 

「デビルレーッド!」

 

「デビルピンク♪」

 

「デビルグリーン!」

 

「デビルブル~」

 

「デ、デビルイエロー・・・・・」

 

 

「五人揃って!」

 

 

「「「「「デビル戦隊デビレンジャー参上!冥界からやってきた我ら

     デビル戦隊がお前たちに天誅を下す!」」」」」

 

覆面の集団が建物の屋上でポーズをして他の参加者たちに攻撃を仕掛けていれば、

 

「アザゼルの言うことを聞くのは癪だが、こんな愉快な戦いができるのであれば」

 

遥か上空に漆黒の翼を生やしている堕天使たちが地上に光の槍を放ち続け、爆発させる。

 

「楽しませてもらおうではないか!ふはははっ!」

 

見覚えのある堕天使が高らかに笑って攻撃を繰り返す。

 

「・・・・・なんか、皆楽しそうに戦っているな」

 

何チームか戦闘をして倒してきた一誠。それでもまだまだ数がいるそうだ。

気と探知すれば見知った気を持つ参加者が大勢いる。

 

ゴウッ!

 

すると、巨大な火柱が遠くで発生した。あそこまで強力な攻撃を出来る者はそういない。

気になり、火柱が発生した場所へと赴いた時、一誠は口角を上げた。気配を殺して遥か

上空から巨大な火炎球を生み出すととあるチームに向かって投げ放った。

これが直撃すれば周囲は火の海と化するだろう。そのぐらいの魔力を籠めて放った

一誠の思いを裏切るように巨大な火炎球は何か凄い力で吸い込まれ徐々に小さくなり

最後は消失した。

 

「やっぱ、倒せないか」

 

チームの前に降り立つ。一誠が現れて警戒する相手チームだが、相手が誰だか分かると

目を丸くし、そして笑みを浮かべた。

 

「よぉ!久し振りじゃねぇか!」

 

「ああ、久し振りだな」

 

桜髪の少年と一誠は笑みを浮かべ再会の言葉を放った。

 

「イッセー!」

 

「フェアリーテイルのナツ・ドラグニル!」

 

二人の拳に炎が纏い、地を蹴って殴りかかった。

互いの炎の拳がぶつかり合い、その衝撃で建物が揺れる。

 

「数年振りだな!」

 

「相変わらずの気性だ。エルザにこっぴどく叱られているだろう?」

 

「グレイが悪いんだ!」

 

「おいこら、人聞きの悪いことを言ってんじゃねぇよ」

 

黒髪に上半身が裸の少年が不愉快そうに文句を言う。

他に金髪の少女や赤い髪の姉妹、顔に傷跡がある金髪の男に黒髪のツインテールの

小柄な少女、眼つきの悪い黒髪の少年もいる。

 

「見たことがない奴もいるけど後に仲間となった奴らか」

 

「そうだ。つえーぞ!」

 

「そうか、ちなみにボールは見つけたか?」

 

「いやー、まだまだなんだ。そっちは?」

 

「こっちも同じだ」と言った一誠。目的のものは中々見つからず、

どこにあるのか分からないでいる。

 

ドオオオオオオオオンッ!

 

建物が崩壊した音が聞こえた。激しい攻撃がどこかで繰り広げられているのだろう。

一誠の肩に乗っかっているオーフィス以外のクロウ・クルワッハたちは敵だらけの

バトルフィールドで大いに楽しんでいるのだろう。

 

そんな時、一誠とナツの間に飛来してきた物体が転がり落ちてきた。

 

           

         ( ・_・)    (3番)    (・_・ )

 

 

コロコロと三番と書かれたボールが一誠たちの前にだ。それを見て―――、

 

「「見つけたぁっ!」」

 

本選出場に必要なボールを目の前に飛び出す一誠とナツ。しかし、ボールは一つだけ。

相手より早く得るには方法はただ一つ。

 

「倒す!」

 

「同意だな!」

 

案の定、二人の考えは一致して―――。

 

「なんてな」

 

「はっ?」

 

ナツは一誠の身体をすり抜けて、一誠は地面に拳を叩きつけるとボールの真下に魔方陣が

出現したと思えば魔方陣の光に包まれてボールは消えた。

 

「なっ!ボールが無くなったぞ!?」

 

「イッセー、なにをした?」

 

驚く相手に一誠はポケットの中に手を突っ込んで何かを取り出した。手の中にあるものは

消えたはずのボールだった。

 

 

ピポパポーンっ!

 

 

その時、リズムある音が聞こえる。なんだと意識を向けたらアナウンスが流れだした。

 

『はい、皆さんご報告です!たったいま、三番のボールがドラゴンチームの手に収まりました!

ですが、それで本選に出場できるほど簡単ではありません!』

 

「え?」

 

『ボールを持っているチームにはさらにボールを収める石板に収めないと本選に出場は

できません!その上、ボールは光を放ち続けますので他のチームに知らされちゃいまーす!

ですから頑張って石板を見つけて本選に出場しちゃってください!』

 

アナウンスが聞こえなくなるとボールは極光の光を放ち、天まで昇る勢いの輝きを発する。

 

「・・・・・マジで?」

 

「うわ・・・・・最後まで気が抜けれないゲームね」

 

「と、言うことはそのボールの所有権はまだお前のじゃないってことだな」

 

「ならば、私たちは二手に分かれよう。ボールを強奪する者と石板を見つける者とな」

 

ナツのチームが動き出す。唖然と光を放つボールに見続けていると

 

『いたぞぉっ!』

 

ボールを持つ一誠を探していた他のチームがやってきた。その事実に頬をポリポリと掻いて

悩みだす。

 

「・・・・・んーだったら、オーフィス」

 

魔力の塊を具現化させ、その塊を極光の光を天まで伸ばさせる光の玉と化させた。

 

「これを持って二手に分かれよう。もしも石板を見つけたら上に向かって魔力を放ってくれ」

 

「ん、分かった」

 

オーフィスは地面に降り立って一誠から光の玉を受け取った。それを見守るナツたちを余所に

一誠は亜空間から一つの杖を取り出して呪文のようなものを呟くと『分裂』した。

光ってるのは一誠は一人だけ。だが、分裂した一誠自身も光を放ってオリジナルの一誠は

誰なのか混乱させた。

 

「わ、わからねぇーっ!?」

 

「って、散らばっちゃったわ!」

 

「追うしかないだろう!どれがボールを持ったイッセーなのかわからないけどよ!」

 

蜘蛛の子のように散らばる一誠たちに追いかけるナツたち。それは他のチームも同じで

複数の一誠が見掛けると目を丸くし、驚くもののアナウンスで聞いた光るボールを持って

いるから一誠も光っているという認識で誰彼構わず例え偽物だと分かってても追いかけ、

攻撃をするしかなかった。

 

 

 

 

 

「あいつ、考えたな」

 

「光を目印とするしかないので手当たり次第見つけて倒すしかありませんね」

 

「本物はその混乱に乗じて石板を見つけて本選出場の権利を得るってことか」

 

「まず間違いなく一誠ちゃんは勝ったね。実力と作戦勝ちで」

 

現実世界から観戦しているアザゼルたちは感嘆を漏らす。ドームの中央に展開している

巨大な魔方陣から四つの立体映像の画面に映る一誠たちの行動は世界中にも知れ渡っている。

一誠の分身たちは自由気ままに動いて他チームの意識をかく乱させる。

わざと姿を現してその場で足止めたり、自分を追い掛けさせ、自分が本物であることを

思わせる攻撃をする。

 

「さーて、他の三チームは誰が出場するんだろうな?」

 

アザゼルは面白可笑しそうに笑みを浮かべ、ゲームの状況を楽しむ。


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