HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード7

それから時が過ぎ、半年と一カ月が過ぎた頃。一誠もだいぶ成長した。

 

「それじゃバラキエルのおじさん、勝負!」

 

「朱乃と朱璃の手前、負けんぞイッセーくん!」

 

家の小さな庭でネットが無いバトミントンをしていた。

羽を網に当てて一誠向けて打つバラキエルにその羽を打ち返す一誠。

どちらも激しい勝負を繰り広げたり、有り得ない動きで地面すれすれの位置から

羽を打ち返し、時折真っ直ぐな打ち返しでは、上空に向けて打ち返すとバラキエルが

黒い翼を生やして羽の真上に飛んでそこから―――。

 

「バラキエルさま、翼を出して飛ぶ行為はバトミントン公式ルールに反します。よって反則負けです」

 

「なん・・・・・だとっ・・・・・!?」

 

「―――と、本来はそう申し上げますがこれは遊びですのでセーフでございます」

 

「てりゃっ!」

 

「なぬぅうううっ!?」

 

ズビシッ!と落ちてきた羽を一誠はバラキエルの足元に叩き落とす。

後に気まずい雰囲気がバラキエルを包みリーラに言葉を投げた。

 

「リーラ殿、今の策謀はいかがかと・・・・・」

 

「策謀ではありません、注意事項でございます」

 

涼しい顔で言ってのけるリーラ。喜ぶ一誠は「ありがとう」とリーラへ感謝する。

 

「しかし、イッセーくんも成長したな。タンニーン殿との特訓がここまで強くなるのか」

 

「嬉しい半分、本当にこのような人生を歩ませてよいものか複雑ですが、

一誠さまが選んだ道であれば正しい方へ導くこそ私の役目でございます」

 

「リーラ殿は素晴らしい従者でイッセーくんも幸せだな」

 

「御褒めの言葉ありがとうございます」と軽くお辞儀をするリーラの目に、

朱乃とバトミントンをしている一誠。その顔はとても楽しげに笑みを浮かべている。

 

「残り半年で彼はいなくなるか」

 

「朱乃さまには悲しい思いをさせます」

 

「別れは自ずと来るものだ。仕方があるまい」

 

あの笑顔が悲しみに変わってしまうのは父親としてバラキエルも望んでいない。

だが、何時か『そう』なる時が来るのだ。

 

「ところでバラキエルさま」

 

「なんだろうか?」

 

「昨夜、一誠さまが見たそうなのです」

 

「・・・・・なにをだろうか」

 

思い当たる節があるのか、うっすらと額に汗が浮かぶ。

リーラは感情が浮かんでいない顔を真っ直ぐ前にに向けたまま言い放つ。

 

「大変失礼を承知して申し上げます。朱璃さまとバラキエルさまのご趣味にとやかく

申しませんが、そういう愛し合い方をしたい時はそれとなく申し上げてください。

一誠さまにはもっと純粋と純情で女性を愛して欲しいですので」

 

「・・・・・すまない」

 

―――見られていた。昨夜の朱璃との情事を。

とても子供に見せられるものではない朱璃とバラキエルの性癖と趣味を。

 

 

カランカランカラン。

 

 

甲高い音が平屋建ての小さな家の庭にまで聞こえてきた。リーラはスッと立ち上がる。

 

「リーラ殿?」

 

「どうやらお客様が来たようですので」

 

リーラが言うお客さま。バラキエルもこの家に訪れる者は滅多にいない。

二人の脳裏に浮かぶものは―――穏やかな客ではないことだ。

 

「・・・・・共にしても?」

 

「お願いします。一誠さま」

 

「なに?」

 

呼ばれ近づく一誠と視線が合うように跪き、

 

「朱乃さまと朱璃さまとお家の中にいらしてください」

 

「うん、分かった」

 

リーラの言葉に頷き、一誠は言う通りに動いた。

 

「心底信頼しているのだな」

 

「相手を疑うのは初めて会うもの限定のようです。

逆に言えば、心を許した者にはどこまでも信用や信頼をし、疑う事などしないのです」

 

「純粋な子だ」

 

庭から離れ、家の玄関に移動してしばらく佇む。

そして敵意を隠さず露わにして謎の集団が得物を持って姿を現す。

 

「堕天使、貴様を殺し巫女を洗脳から解かせてもらう」

 

「・・・・・朱璃の親類の者たちか・・・・・っ」

 

「覚悟っ!」

 

バッ!と謎の集団たちが襲いかかって来た。

光の槍と剣を魔力で具現化し臨戦態勢になるバラキエルの余所に、

 

「オーディンさま。あなたさまの仰る通りこの槍を必要とする時が来ましたね」

 

首に垂らしていた小さな槍を手にした途端に発光し、

槍はあっという間に大きくなりリーラの手に収まった。

 

「その槍は・・・・・?」

 

「以前、オーディンさまから承ったレプリカのグンニグルです」

 

「なっ!」と思いもしない武器がリーラの手にあることを驚愕し、瞬時で理解した。

 

「イッセーくんを守るためにか。あの子はどこまで人を魅了する力が凄まじいんだろうか」

 

「おかげで私は力のないメイドでは無くなったことを心から感謝しております」

 

槍の切っ先を謎の集団に突き付けた。

 

「―――グンニグル」

 

刹那―――。

 

ブゥゥゥウウウウウウウウンッ!

 

槍から極大のオーラが放出され、空気を貫くような鋭い音があたり一面に響き渡った。

 

「流石ですオーディンさま。力の調整が可能なレプリカの神具を与えてくださって」

 

「これは・・・・・」

 

謎の集団は一人も残らずいなくなっていた。戦闘の痕跡も無く、

何事もなかったように風が吹く。

 

「バラキエルさま、ここは危険かもしれません」

 

「なんだと?」

 

「あの者たちは朱璃さまの親類であるならば、また襲撃してくる可能性はあります。

先ほどの一撃は敵を倒す程の威力は放っていません。ですので、安全な場所に避難して

移住した方が賢明です」

 

「・・・・・だが、どこに移住をすれば良いのだ?人間界での俺の力は微々たるもの」

 

バラキエルの問いにリーラは、

 

「冥界しか安全な場所はないかと。あそこならバラキエルさまも安心して傍に置け、

堕天使としての仕事ができるはずです。もしくは朱乃さまのご友人と成ったリアスさま。

そのご両親に事情を説明して匿ってもらうべきかと

 

「むぅ・・・・・」

 

「バラキエルさまがいない間に襲撃されたら朱乃さまは酷く悲しまれます。

父親としてそれはいかがですか?」

 

悩むバラキエルに説得するリーラ。朱乃はただの人間ではない。人間と堕天使のハーフ。

朱乃と朱璃の幸せを願い迷惑をかけたくない思いもある。だが、冥界に暮らさせるのは

バラキエルにとって難色を示す程。

 

「私が仰っている意味は分からないようですが、

何も冥界で一生住んでもらうわけではございません。朱乃さまが成人、

それも高校生に成る歳まで冥界にお過ごしになってもらうのです。

アザゼルさまも力をお貸ししてくれるはずです」

 

「・・・・・」

 

「バラキエルさま、ご決断を」

 

 

 

 

 

「堕天使の配下と思しき者がいようとは・・・・・」

 

「あの従者、ただ者ではございませぬぞ」

 

「どうしますか」

 

「・・・・・万事屋に頼もう。あの何でも屋であれば全てが解決する」

 

―――○●○―――

 

その日の夜。バラキエルは冥界に戻った。リーラの説得を受け入れ、準備をする為に。

 

「一誠、あーん」

 

「(パクッ)・・・・・ん、美味しい」

 

「本当?やった。それ、母さまと一緒に作ったんだよ?」

 

「そうなんだ?朱乃は料理が作るの上手だね」

 

「えへへ♪」

 

朱乃は笑みを浮かべ嬉しそうに一誠を見詰める。朱璃は微笑ましいと見詰め、

リーラも小さく笑みを浮かべる。

 

「我、お代りを所望する」

 

「わかりました」

 

「オーフィス、米粒付いてるよ?」

 

「そう言う一誠もだよ?」

 

「ふふっ、朱乃もよ?」

 

「「えっ、あ、本当だ」」

 

小さな小屋で質素な生活。だが、充実な幸せを送り、楽しい生活が笑みを浮かばせている。

 

「・・・・・?」

 

不意に、オーフィスが顔を明後日の方へ向けた。リーラはオーフィスの様子に問うた。

 

「どうかしましたか?」

 

「とても強い力が複数、こっちに来る」

 

「・・・・・まさか」

 

リーラは察して真剣な表情を浮かべた。立ち上がって、一誠たちを見渡す。

 

「オーフィスさま、一緒に来てください」

 

「リーラさん?」

 

「一誠さま、朱璃さまと朱乃さまを守ってください。どうやら悪いお客さまが来たようです」

 

「・・・・・分かった」

 

オーフィスを連れ、リーラは玄関の方へ移動した。

レプリカのグンニグルを顕現し何時でも対応ができるように態勢の構えをしていたが、

玄関の扉を開ける前にノックをする音が聞こえ開けられた。

 

「お邪魔しまーすっと」

 

「・・・・・敵にしては随分と礼儀正しいですね。

ただし、私が開けた後ならばの話ですが」

 

「どうやら俺たちが来るのを分かっていたようだな。

しかも美人で良い人材そうじゃないか。できることなら―――」

 

一人の男はそう言うと背後から女性が入って来て男の頭を叩いた。

 

「大将、また女を連れ込むと奥方に今度こそ愛想を尽かれるぞ。良いのか?」

 

「おいおい、俺の性分を理解しているだろう?」

 

「はぁ・・・・・妾は知らんからの。それより仕事をするのじゃ」

 

「分かってる。仕事内容は堕天使の子供を依頼主に渡すか―――最悪、殺害だ」

 

次の瞬間、リーダらしき男はリーラとオーフィスの間をすり抜けようとした。

 

「悪いが俺は女には手を出さない主義だ。イヅナ、ここは―――」

 

「行かせない」

 

オーフィスがリーダの足のズボンを掴んで引きとめた。

 

「うごっ!?」

 

足が動かせずその急な停止に廊下に強く倒れてしまった。

 

「こ、この女の子が俺の速度に対応できるなんて・・・・・!」

 

「誰だか分かりませんが、この子を知っているのであれば早々に立ち去ってください。

―――『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスが暴れる前に」

 

リーラの紹介に敵は目を丸くした。

 

「オ、オーフィスだと!?」

 

「そ、そんなドラゴンがいると依頼内容には書いておらんかったのじゃ!」

 

敵はオーフィスの存在を知っていたらしい。無限の体現者、ドラゴンの中で最強のドラゴン。

女性は警戒の色が濃くしてリーダに問うた。

 

「大将、どうするのじゃ。流石にオーフィスまでいるとなるとこれは仕事どころでは―――!」

 

「オーフィスさま、その者を逃げないように手足を掴んでいてください。ああ、力強くです」

 

「わかった」

 

「いででででで!た、タンマタンマー!もげる、手足がもげるー!」

 

「大将ー!?」

 

リーダがあっさりと組み伏せられ、グンニグルの切っ先を女性の首元に突き付けた。

 

「動かないでください。これはレプリカとはいえオリジナルのグンニグルと

遜色のない威力がございますので」

 

「な、なんじゃと・・・・・」

 

「マジか!?それ、欲しい!(ボキッ!)あっ」

 

「いや大将。アンタはオーフィスをどうにかしてほしいのじゃが」

 

「無理言うな!?身体が小さくて軽いのに手足の関節が外されているんだぞ!」

 

何とも言えないこの状況にリーラは問うた。

 

「貴方方だけですか。この家に襲撃して来たのは」

 

「さ、さーの・・・・・妾と大将だけと思うのなら―――」

 

目を泳がせ、あからさまにはぐらかすイヅナにリーラは容赦なかった。

 

「オーフィスさま、次は首です」

 

「分かった」

 

「イヅナさぁああああああんっ!?」

 

「もう一人おる!もう一人おるから大将を殺さないで欲しいのじゃ!」

 

―――もう一人。目の前に二人がいると言うことはリーラの脳裏に嫌な感じを覚えた。

 

「・・・・・囮!」

 

 

 

 

 

「まだ幼いと言うのに、しぶとい少年だ」

 

「うぐっ・・・・・!」

 

壁は斬り刻まれ、外と部屋の中が隔てる物は一切なくなって

もう一人の襲撃者と一誠は戦っていたが

全身に切り傷を作って、今しがた強く蹴られ壁に叩きつけられていた。

 

「堕天使の子供をこちらに渡せば命までは取らない」

 

「どうして、どうして朱乃を狙うんだよっ・・・・・」

 

「そういう仕事だからだ少年。俺たちみたいな裏社会で汚れ役を請け負い、

依頼された仕事は全てこなさなければ生きていけないからな」

 

「もっと他にも、仕事があるじゃないか!何もそんな仕事をしなくてもいいじゃないか!」

 

「こういう仕事が自分にピッタリだと思う人間は数多くいる。俺もその一人だ」

 

鈍く光る銀色の刀身を朱璃に抱き締められている朱乃へ突き付ける。

 

「堕天使の子供、母親と友達を助けたいなら俺と共に来い」

 

「この子は渡しません!この子は私の大切な娘です!

そして、あの人の大切で大事な娘!絶対に!絶対に渡しません!」

 

朱乃を庇うようにして朱璃が叫ぶ。男は眉根を寄せて少し躊躇する。

 

「・・・・・困ったな。標的以外、

手を出すことは禁じられているが邪魔をする者は容赦するなともルールだ」

 

刀をゆっくりと振り上げた。男の目にもはや躊躇する意思がない。

 

「致し方ない。最悪標的の殺害も許されている。娘諸共母親もあの世に送ろう」

 

一筋の銀が朱乃と朱璃に躊躇なく振り下ろされた。

 

ザンッ!

 

「―――っ!」

 

男の目が丸くなった。斬った対象の血飛沫が宙を舞うが

その血は朱乃と朱璃のものではなかった。

割り込んできた一誠の血液だった。

 

「一誠くん!?」

 

「一誠ぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 

袈裟切り、肩から斜めに斬られた一誠。子供が身を呈してまで相手を

一時的に守り切ったことを男は一誠の評価を改め、

 

「一撃で苦しまずに葬る」

 

横から一線の斬撃を放った。これでこの少年の命は狩った。

もしもこんな出会い方をしていなく、少年の事を知っていれば大将は絶対に

この子を引き取っていただろうと男は思いながら一誠の首筋に刀を振るった。

 

「・・・・・」

 

完全に振り切った刀。目の前で一誠の死を直面し朱璃と朱乃は悲鳴を上げ、涙を流す。

 

「(・・・・・おかしい)」

 

心の中で怪訝に傾げる男。

 

「(斬った感触が感じない・・・・・)」

 

刀を見やるや、刀身の半分が何かに削り取られたような痕を残して消失していた。

 

「(なんだこれは、特別製の刀が削られた?なにに?)」

 

男の疑問が付きない。一誠を確認しようと思った直後・・・・・。

 

「・・・・・い」

 

何かを呟き始めた一誠。

 

「・・・・・負け・・・・・ない」

 

「・・・・・」

 

「負け・・・・・たく・・・・・ない」

 

勝利に対する執念であろうかと男は思った。

半分しかない刀を鞘に収め、二つの小太刀を手にする。

 

「残念だが、お前は俺には勝てないぞ少年」

 

最後の言葉と別れとばかりに小太刀を左右から振った。

 

「・・・・・勝て、ない?・・・・・僕、勝てない・・・・・?」

 

自問自答をする一誠。

 

「弱いままじゃ・・・・・勝てない・・・・・守れない・・・・・」

 

今でも流す血で瀕死の重体であるのに、

何かに支えられているのか、倒れる気配は一切感じない。

 

「もっと、もっと力が・・・・・力が欲しい・・・・・。

相手を倒す・・・・・皆を守れる力を・・・・・っ」

 

 

刹那―――。

 

 

一誠を覆う禍々しいオーラが迸り男の小太刀の刀身を完全に消失した。

 

「この力は・・・・・!?」

 

初めて動揺の色を浮かべた男。一誠を包む紫と黒のオーラに赤い光が目を開いたように煌めく。

 

『良いだろう。お前の欲する力を与え今からお前を我が主として認める。

その勝利に対する執念と、弱い自分に対する怒りと悲しみ。

そして、強者に対する敵意を思うその気持ちと感情に称賛してなぁっ!』

 

荒れ狂う魔力による暴風。全てを薙ぎ払い、壁や天井でさえ崩壊するほどの猛威を振るった。

 

禁手化(バランス・ブレイク)ッ!』「禁手化(バランス・ブレイク)ッ!」

 

オーラに包み込まれる一誠の全身は鎧と化して、更に包み込んでいた。

 

禁手(バランス・ブレイカー)・・・・・に至ったと言うのか・・・・・この局面で!」

 

暗闇の外に晒す一誠の姿。全身は黒と紫の鎧を装着し、各部分に赤い宝玉があり、

背中に大きな紫の翼や腰に尻尾も生やしていた。

 

「―――ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 

「っ!」

 

獣のような咆哮をした一誠が両手からマシンガンの如く魔力弾を放った。

一誠の攻撃が遅く見えるのか、かすりもせずに避け続けている。

 

「いくら覚醒したとしても、まだまだ戦闘経験が浅い少年だ」

 

『はたしてそうかな?』

 

赤い宝玉から不敵な声が発せられた。男は怪訝に思った直後。

背後から迫る魔力を感じ、跳躍して避けたその瞬間、目の前に魔力弾が迫っていた。

 

「―――放った魔力を自分の意思でコントロールできるのかっ!」

 

それすらも回避して着地した男の死角から魔力弾が迫る。

男は完全に朱乃のことより一誠に意識を向けざるを得なくなっていた。

魔力弾が消失しない限り一誠の思うがままに動き続け男は避け続ける。

 

「武器が無いいま、未知数な相手と戦うのは避けた方がいいか」

 

「―――――」

 

複数の魔力弾が男を取り囲んだ状態で動きが停止した瞬間に魔力弾が一気に膨張して

男を呑みこんだ。そして、魔力の塊が無くなると男の姿が見当たらなかった。

地面が激しく抉れているだけしか残っていなかった。

 

『動体視力と反射神経が逸脱している。主、敵は逃げてしまったようだ。致命傷も与えずにな』

 

「・・・・・そう、か」

 

『初めての禁手(バランス・ブレイカー)にしては上出来だ。半年の期間の修行の成果が発揮した』

 

赤い宝玉から送られる称賛に一誠は力なく地面に倒れた。

鎧も光の粒子と化となって消失し、生身の体が晒された。

 

「一誠くん!」

 

「一誠!」

 

朱璃と朱乃が一斉に駆け寄る。抱き起こせば深い傷を負った一誠を目にし、涙を流す。

 

「ごめんなさい、私たちの為に身を呈してくれて・・・・・」

 

「ありがとう・・・・・ありがとう一誠・・・・・」

 

後に、リーラとオーフィスが戻り、バラキエルも戻ってきて傷の手当てを

堕天使の領地で行われた。

 

 

 

 

「大将、なんだその姿は」

 

「予想もしなかった敵にやられたんだよ」

 

「本当、有り得ない敵がいたのじゃ。オーフィスがいたのじゃぞ。あのオーフィスが」

 

「オーフィス、あの無限の体現者と言われているドラゴン最強の?」

 

「レプリカのグンニグルを持つ従者にオーフィス・・・・・で、そっちは?」

 

「・・・・・子供だ」

 

「子供?」

 

「ああ、俺の得物を全て破壊してくれた上に禁手(バランス・ブレイカー)に至ったんだ。

瀕死の重体だと言うのにあの局面で至り、俺が仕事を放棄せざるを得ないほどの

未知数な力を有していた」

 

「うわ、烏間の武器を破壊しただけじゃなくて退けたって?とてもじゃないけど

信じられないのじゃ」

 

「・・・・・おい、その少年の名前は分からなくても顔は見ているんだよな?」

 

「大将、まさかだと思うが調べる気か?身元不明の少年だぞ」

 

「分かってる。それに今回の依頼は依頼主の誤報による失敗だ。

しかもオーフィスまでいるなら今回の依頼なんて請け負わなかったぜ。

請け負うにも依頼金の十倍は払って欲しいぐらいだ」

 

「で、どーすんの大将。仕事、続行する?いまなら行けるんじゃない?」

 

「いや、これ以上したら確実に俺たちが危なくなる。久し振りに失敗したぜ」

 

「ああ、あの時以来だな」

 

「追放されたとある一族の男と女を殺害、その亡骸を運んでくるあれ?

確かにあの二人、既に人間を止めたって思うほどの強さだったのぉ」

 

「今でも生存は確認している。そして二人の子供の存在もな」

 

「今じゃ聞かなくなってるがな。ま、この話はもう止めにして帰ろうぜ」

 

「若がビックリするな」

 

「そうじゃのー」

 

 

 

 

 

 

 

「ははっ、イッセーの奴がついに至ったか」

 

「あの子がいなければ朱璃や朱乃は殺されたいただろう。

話を聞けば三人組の手慣れによる襲撃だそうだ」

 

「お前も苦労しているなバラキエル。だが、皮肉にもそいつらのおかげで

イッセーは強くなった。『幻想喰龍(イリュージョン・イーター・ドラゴン)』ゾラードの司る力は

消滅と無効。ヤハウェさえ恐れていたあのドラゴンはイッセーに力を貸した。大したもんだよ」

 

「タンニーンも危なくなるではないか?」

 

「問題ないさ。イッセーは体力の向上を目指させているからよ」

 

「そうか・・・・・」

 

「さて、残りの半年あいつをヴァーリと共に強くしていこうかねぇ。くく、楽しくなって来たぜ」

 

「ほどほどにな」


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