HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード27

剣と棍が激しくぶつかり合う。横薙ぎ、突き、受け流し、上段、下段、袈裟、様々な方向から、

身体も忙しなく動かし、舞うように戦う猿の妖怪とドラゴン。

ヴェネラナは別の形のダンスを見ているように思っていた。

 

「ヤハハッ!久し振りにイッセーと戦うな、強くなったじゃねーの!」

 

「そいつは、お互い様だ!」

 

刀身に込めた魔力を飛ぶ斬撃として放つ。美猴はそれを真正面から棍で打ち砕き

霧散させながら一誠に目を向け不敵に発する。

 

「オレっちは仙術を得ているからこんなこともできるんだぜぃ?」

 

「分かってるよ。俺だってそうだってことを忘れてないよな?」

 

「勿論だってば。しっかし、その剣は危なっかしいねぃ。何時あの大技が炸裂するのかと

思うと冷や冷やしてしょうがないや」

 

カラカラと笑う美猴が警戒するのも無理はない。一誠は肩を竦めてこう言う。

 

「隙を突かれるからあの技は使わないよ」

 

「あり、そうかい?まぁ、その剣を見てうちの仲間が大層興味を抱いていたぜ?」

 

「大丈夫、既にこの剣を狙って襲ってくる輩がいるから」

 

「あれま、それは気の毒に」

 

話し合いは終わり、棍を巧みに扱って一誠に攻撃を仕掛ける。迫ってくる美猴に拳を

地面に突き出して土煙を巻き起こした。目くらましか!とそれでも果敢に飛びこんでは剣を

上段から振るっている一誠とぶつかり鍔迫り合いをしだした。

 

「オラァッ!」

 

「ふんっ!」

 

打撃と斬撃の乱舞が繰り広げられる。甲高い音だったり、鈍い音もして、二人の戦いは

最高潮に達しようとしたところで―――第三者が現れた。

 

「美猴ー。なに自分だけ盛り上がっているのにゃん」

 

その者は人間ではなかった。白銀の着物を身に包み胸元を大きく肌蹴させ豊満な胸の

谷間を晒し、意匠が凝ったかんざしを長い銀髪に差して結っている猫耳と二つの尻尾を

生やす女性だった。

 

「あ、銀華」

 

「あ、じゃないわよ。一人で勝手に行って・・・・・」

 

文句を言う銀華は美猴と相手をしている一誠に目を向けると、興味深そうに凝視した。

 

「んん?なーんか、妖怪の気配がするわねあの子。誰?」

 

「ヴァーリとオレっちが夢中なドラゴンだよ。

赤龍帝と白龍皇以外の強いドラゴンの力を宿しているんだぜぃ?」

 

「あー、噂に聞くグレートレッドとオーフィスの力を有する有り得ないドラゴン?

でも、妖怪の気配はするにゃん。微弱だけどさ」

 

銀華が疑問を抱いていると周囲に目を配り異変を感じたようで、目を細めた一誠が口を開いた。

 

「結界・・・・・か?」

 

「そ、これ以上騒ぎを起こしてここに大勢の悪魔が来られたら困るからねー」

 

「で、素直に帰ってくれるの?」

 

「どうしようかにゃー?キミのお願い次第で帰っても良いけどねー?」

 

ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべ、どうする?と挑発的な視線を送ってくる銀華に対し、

分かったと了承し、一誠が見る見るうちに小さくなり子供となった。

 

「にゃ?」

 

身体を小さくしてどうする気なのかと疑問と不思議さでトコトコと近づいてくる一誠を

様子見していれば、一度は自分の前に立ち止まって―――。

 

「銀華お姉ちゃん、お家に帰ってくれないの?」

 

ウルウルと目を潤わせ、上目遣いで銀華を見上げつつ着物をキュッと掴んで親に

欲しいものを買ってもらいたいとお強請りするような眼差しを向けて言った。

 

「・・・・・」

 

結界の中に閉じ込められた空間に静寂が支配した。時が停まったように誰もが微動だにせず、

子供になった一誠を見詰めるばかり。しかし、沈黙を破ったのは―――。

 

ガシッ!

 

「え?」

 

「お持ち帰りにゃーん!」

 

銀華だった。一誠を抱きかかえて暗闇の森の中へと姿を消した。

 

「はっ!お、おい銀華ぁっ!イッセーはオレっちが最初に目をつけていたんだぜぃっ!

横取りは卑怯だってば!」

 

焦心に駆られて慌てる美猴もこの場から姿を消した。取り残されたヴェネラナは―――。

 

「た、大変っ。直ぐに救助しないと!」

 

「あー、大丈夫だリアスのお母さん。お持ち帰りされた一誠は分身だから」

 

「え?」

 

「土煙を起こしたでしょ?あの一瞬で俺と分身体が入れ替わって戦闘を続行したんだ。

―――お、結界も解けたようだな」

 

空間の変化を感じ取り、安堵で溜息を漏らす。

 

「そんじゃ、俺たちも帰りましょうか」

 

「本当にあの子は大丈夫なんですか・・・・・?」

 

「大丈夫、心配しなくても俺はリアスのお母さんから消えませんってば」

 

朗らかに笑みを浮かべた途端、目の前の空間に避け目が生まれて避け目から姿を現す

背広を着た眼鏡の若い男性。手に極大なまでの聖なるオーラを放つ剣が握られている。

 

「おや、擦れ違いになってしまいましたか。やれやれ・・・・・」

 

「誰だ?」

 

溜息を吐く男性に問えば、恭しくお辞儀をして名乗った。

 

「初めまして、真のエクスカリバーの使い手、兵藤一誠くん。

私はアーサー・ペンドラゴンと言います」

 

「アーサー・・・・・モルドレッドの兄か」

 

全然似てないなーとか、目の前の男がそうなんだと興味深に漏らした時、

 

「どうやら愚妹と出会ったようですね」

 

どこまでも冷たい声音で発した。今現在もモルドレッドのことを毛嫌いしている

様子だったので一誠は話を変えることに決めた。

 

「ああ、このエクスカリバーを狙ってな」

 

亜空間から鞘に差したままのエクスカリバーを見せ付けた。その状態のエクスカリバーを

見て感嘆の声を漏らすアーサーだった。

 

「三大勢力戦争時に折れる前の聖剣エクスカリバーに、魔女に奪われたはずの

エクスカリバーを収めていたという魔法の鞘・・・・・。

その二つが揃ってこの目で見られるとはとても私は幸運です」

 

「そっちの二つの剣も聖剣なんだろう?」

 

手と腰にある二つの剣を一瞥して問う一誠に隠すことでもないとばかり肯定と首を

縦に振ったのだった。

 

「ええ、こちらは聖王剣コールブランド。こちらは最後のエクスカリバーにして、

七本中最強のエクスカリバー。『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』ですよ」

 

一本だけ行方不明だった最後の聖剣が目の前にあった。口角を上げ、アーサーに問うた。

 

「それ、返してくれる気はないよな?」

 

「今のところはまだ。ですが、あなたのエクスカリバーとその鞘をモルドレッドの

手に渡るぐらいなら、私の手中に収めたいところです」

 

「悪いな、こいつはいずれ強くなったお前の妹に渡そうと思っている」

 

その言葉に怪訝な顔となったアーサー。

 

「仮にもテロリストに大切な自分の剣を与えるというのですか?」

 

「あいつは俺と似ている。俺はあいつに似ているからな」

 

「・・・・・」

 

理解に苦しむとアーサーは険しい顔になる。苦笑を浮かべ

「自分の弟と妹の気持ちが分からない兄は同じ反応なんだな」と内心思ったのだった。

 

「あいつとお前の過去、教えてもらったよ。相思相愛のメイドが家から追い出されたんだって?

メイドと恋愛も分かるよ。俺もメイドと恋愛中だからな」

 

「ならば、私が許せないこともわかるでしょう?」

 

「いーや、俺はお前やあいつじゃないから絶対に分かり切れない。

が、なんとなくの程度でお前はモルドレッドのことを認めない理由が分かる気がするよ」

 

「・・・・・ほう、そうですか」

 

「―――だからこそ、俺はモルドレッドといういち剣士を応援する。兄を超えたいという思いは

俺だってあるからな」

 

ドンと強く胸に握った拳を当てて言い切った。アーサーはしばし一誠を見詰めると

空間に避け目を作った後、

 

「あなたは不思議だ。いえ、だからこそその第二のエクスカリバーがあなたを使い手として

認めたのでしょうかね」

 

それだけ言い残して避け目の中に消えた。その後、あまりにも遅いと心配した面々が来ては

事情を説明されると驚いたのは必然的で、魔王主催のパーティはテロリスト襲来により

急遽中止となったのだった。

 

―――○●○―――

 

魔王領にある会談ルームにてこれまでの経緯を説明した一誠。この場に集まっている

五大魔王と堕天使の総督のアザゼルと幹部、神ヤハウェと神王ユーストマ、セラフが

深い溜息を吐いた。

 

「最後の七本目のエクスカリバーがテロリストの手に渡っていたとは・・・・・それも

聖王剣コールブランドの使い手とは」

 

「相手はテロリストの独立特殊部隊『ヴァーリチーム』の孫悟空『美猴』と猫魈『銀華』、

さらに英雄の魂を受け継いでいる『アーサー・ペンドラゴン』。一人一人が絶大な力を

有するチームの三名も来るとは・・・・・。だいたい悪魔の管理能力は―――」

 

堕天使の副総督の立場の男性がブツブツと小言を言いだしたものの、一誠に声を掛けられた。

 

「あー、タイミングが悪かったとしか言えないよシェムハザのお兄さん。相手も相手だったし、

ね?俺とリアスのお母さんは無傷で無事だったんだしいいじゃない」

 

「お前、美猴と仲が良かったから大した被害も無かっただけだろうって」

 

「そういうアザゼルのおじさんは今までどこに行ってたの?アルマスのおじさんのところ?」

 

呆れ顔で言ったら一誠に質問されてしまい―――。笑って言い返した。「ノーコメントだ」と。

途端に訝しい顔で「・・・・・どこかで絶対に遊んでいたなアザゼルのおじさんは」

とアザゼルの性格を考慮して呟いたら副総督から、

 

「・・・・・アザゼル?」

 

据わった目で睨まれ、そこのところ話してみやがれと言わんばかりの視線を

送ってくる始末だった。だからこそ、一誠に慌てふためくのだった。

 

「ちょっ、人聞きの悪いことを言うんじゃねぇやい!」

 

「じゃ、どこにいたのか言えるよねー?」

 

「うぐっ!」

 

口が裂けても言えない。自分がハメを外してカジノに夢中だったとは絶対にと。

スマイル顔で追究する一誠や「どうなんだ?」と周囲からも意味深な視線が

向けられる。アザゼルは最後の手段を取った。

 

「・・・・・一誠」

 

「うん?」

 

「後でお前のお願いを叶えてやるからこの話は勘弁してくれ・・・・・」

 

深々と堕天使の総督が年下の子供に頭を下げることで場の雰囲気は一変した。

 

「ふふっ、あの堕天使の総督が手玉を取られるなんてね」

 

「だっはっはっ!後で副総督に怒鳴られるのが目に浮かぶがな!」

 

「まったく、アザゼルあなたという堕天使は・・・・・」

 

反応は様々だが、約一部を除いて見逃してやろうと雰囲気を醸し出す。その時―――。

部屋の扉が開かれる。そこに姿を現す人物に誰もが度肝を抜かした。

 

「ふん。若造どもは老体の出迎えもできんのか」

 

古ぼけた帽子を被った隻眼の老人。白いヒゲを生やしており、床に着きそうなぐらい長い。

服装も豪華絢爛というよりは質素なローブ。杖をしているが、真っ直ぐ背筋を伸ばして

立っているために腰を痛めているわけでもなさそうだ。

 

「―――オーディン」

 

そう、正体は北欧の神々の主神―――オーディン。傍には鎧を着た戦乙女のヴァルキリーを

二人ほど引き連れてのご来場だった。アザゼルが口を開く前に「オー爺ちゃん!」と

嬉しそうに一誠がオーディンの方へと近寄った。

するとオーディンは朗らかに笑みを浮かべ、一誠と抱擁を交わしたのだった。

 

「久しいの、我が孫よ。見ない間に随分と大きくなりおって」

 

「オー爺ちゃんは変わらないねー?若くなれないの?」

 

「ほっほっほっ。そう言う秘薬もあるがこのお世話が必要なほど弱々しい姿でいれば

可愛い孫に構ってもらえるから飲まんよ」

 

「俺はオー爺ちゃんと再会して嬉しいけど?」

 

「わしもじゃて」

 

その様子をアザゼルたちはどこか驚嘆しつつ温かい目で見守っていた。

 

「普通に北欧の主神と話すことができる今時の若い奴は一誠しかいないだろうって」

 

「それ以前に私たちができないことをやってのけているわね」

 

「ええ、だからこそ期待してしまうのです。もしかすると世界が本当の意味で

一つになるのではないかと」

 

三大勢力のトップたちが言う。一誠が二人のヴァルキリーと

頭を下げて挨拶をしている姿も見て―――。

 

「孫よ。この堅いわしのお付きのヴァルキリーと付き合ってみないかのぉ?」

 

「オ、オーディンさま!?そんな、初対面の男の子になんてことを!」

 

「まったく、お前は堅いからわしが孫に紹介しておるのではないか。

わしの気持ちを察することもできんのかの」

 

「ど、どうせ、私は彼氏いない歴=年齢の戦乙女ですよ!

私だって、か、彼氏が欲しいのにぃ!うぅぅ!」

 

「・・・・・オーディンさま、ロスヴァイセを泣かせないでください。

慰める方も苦労するのですから」

 

「お主もそうじゃぞセルベリア」

 

「私は当たり前のようにいる勇者に全てを捧げるつもりはございません」

 

「・・・・・二人揃って堅いヴァルキリーじゃて」

 

嘆息するオーディンだが、何がなんだかどうなっている?と唖然とした一誠たちもどう

応えればいいのか困っていた。

 

「さて、フォーベシイ。ゲームの観戦の招待、来てやったぞい」

 

「ええ、来ていただき誠に恐縮でございますよ。一誠ちゃんも大変喜んでくれて

招待した甲斐がありました」

 

「うむ。お主の配慮に深く感謝する。ところで此度のゲームに孫は参加できないのかのぉ?

孫がここにいるとなると、成長した姿を見てみたくなるわい」

 

「それについては既にこちらで検討をしています。グレモリー家からも

今回のテロリスト襲撃の際、グレモリー家当主のサーゼクス・グレモリーの母君であらされる

ヴェネラナ・グレモリーを守った功績を称えて特別に参加させてやれないかと。

仮に参加できたとして、ゲームはあくまで悪魔同士の戦いですので悪魔同士の成長を

阻害する行動を控えて貰う決まりになるかと思いますが」

 

「むぅ、悪魔も堅いのぉー。じゃが、孫が出れるというならばますます楽しめるの」

 

髭を擦り、取り敢えずは納得したオーディンは一誠に話しかける。

 

「孫よ。あの大会に出るんじゃろう?わしは観戦しに行くからしっかり頑張るんじゃぞ」

 

「オー爺ちゃんを守る約束があるからな。見ていてくれ、強くなったところを」

 

力強い瞳を覗かせる。オーディンは満足気に頷き笑みを浮かべる。頼もしくなったと心中呟いて。

 

「(ドラゴンに転生した孫には驚いたが、何一つ変わっておらん。

孫はどんな姿になっても孫じゃなぁー)」

 

その後、グレモリー領に戻ってはグレモリー一家に改めて感謝された。パーティも開催し、

有意義な時間を過ごす。その中で一誠に熱い視線を向けるヴェネラナを見てしまった

グレイフィアはシルヴィアとリーラに耳打ちをして、静かに三人は頷いた。それからと

言うものの今日は泊まって欲しいと懇願され一行はその言葉に甘えてその日は泊まった。

しかし、一人で寝るには大きすぎるベッドだった為。

 

「・・・・・女体盛り」

 

殆どの女性陣が一誠の部屋に来ては寝る場所を占領して、身を寄せ合って寝てしまった。

 

コンコン。

 

ドアから控えめなノックオンが聞こえ、誰だろうと思いつつそっと扉を開けると

ヴェネラナが寝間着姿で立っていた。

 

「一誠くん、まだ起きていたのですか?」

 

「起きていたというより、占領された」

 

「・・・・・?・・・・・あら、家のベッドじゃ不満だったのかしら」

 

一つのベッドに密集している一誠の家族を見て漏らしたヴェネラナだが一誠の話を聞いて納得する。

 

「や、その逆。大き過ぎてなんだか落ち着かないんだってさ」

 

「そうだったの。何時も寝ている寝具と違って落ち着かないのも無理はないわね。

これからは確認を取ってから部屋をご用意させましょう」

 

苦笑を浮かべ、これからどうするの?と聞くヴェネラナに頬をポリポリと掻いた一誠は言った。

 

「リーラの部屋にでも行こうと思っているけど」

 

「家族とはいえ女性の部屋による忍び込んではいけませんよ」

 

「じゃあ、他に空き部屋とかありますか?」

 

「そうね。あることはありますが・・・・・一誠くん、ついてきてください」

 

ヴェネラナに従ってついていく。自分の部屋からかなり遠ざかった場所でヴェネラナが

ある扉の前に立ち止まって中に入ると生活臭がある、様々な家具がある部屋に入った。

 

「ここって・・・・・」

 

「はい、私の部屋です。今回は特別に私の部屋で寝てください」

 

何故かガチャリと音が聞こえる。

 

「ですがその前に、リアスのことについて少しだけお話をしませんか」

 

「別にいいけど、リアスのお母さんは大丈夫?眠いでしょ」

 

「私は大人ですから心配ご無用です。さ、ベッドに寝転がってください」

 

二人はベッドの中に沈み、横になって互いの顔を向けあい、リアスのことを語った。

 

「リアスとはもう付き合って?」

 

「いや、好きだなんて言われたことがないから普通に友達として」

 

「あなたはリアスのことが好きなの?」

 

「友達として好きかな?あの婚約騒動の時も友達を助ける気持ちがあったから」

 

「・・・・・そう」

 

一誠に気持ちを知って溜息を吐いた。恋愛に関しては鈍くない一誠だが、告白されなければ

全く気付かない様子だった。リアスが自分の気持ちを打ち明けて告白していれば、違った

答えが出ていたはずだ。ヴェネラナは真っ直ぐ一誠を視界に入れる。

 

「一誠くん、リーラさんとはお付き合いしているのね?」

 

「うん、そうだよ」

 

「順調?女性は優しい殿方は好きなのは当然です。

ですが・・・・・それ以上に幸せを感じさせ、満足感を毎日与えていかないと女性は

いずれ心と体も愛しい男性から離れてしまいます」

 

え”、とショックを受けた一誠にどこかおかしげに心中で笑みを零す。そしてある提案を言った。

 

「彼女とはもうキスをしたのですね?」

 

「どうしてそんなことも聞くの?」

 

「とても重要だからです。女性はキスのやり方次第で幸せになるのです。ですから一誠くん。

あなたのキスはどんな風なのか私にもしてみてください」

 

「んなっ!?」

 

どうしてそうなる!?と内心動揺して覆い被さってくるヴェネラナに唇を奪われた。

リアスとサーゼクスの母親、アルマスの妻相手にこんなことしちゃ・・・・・!

という罪悪感が胸に一杯になる。しかし、相手が相手なため、華奢な身体を強引に

突き飛ばす訳にもいかず結局は・・・・・。

 

「んっ・・・・・じゅるちゅっ・・・・・・ふっ・・・・・れろっ・・・・・んんっ・・・・・んふっ」

 

「はっ・・・・・れろっ・・・・・ちゅるっ・・・・・・んんんっ・・・・・はっ・・・・・・んっ」

 

寝室で水音の演奏が聞こえだす。満足させてこの場から出ようという魂胆で熟した唇と

濃厚に舌を巧みに動かすヴェネラナに激しく情熱的に蹂躙していく。

 

「(す、凄い・・・・・っ)」

 

大人としてダンスのようにリードしようかと思っていたが予想外の食い下がりに内心

ドキドキし、アルマスの妻、公爵家の婦人、リアスとサーゼクスの母親という意識が薄れて

逆に一人の女としての意識が最高潮に昂り、目の前の少年をどうにかしたい想いが

強まる一方だった。

 

「(こんな情熱的なキスを毎日リーラさんはしていたのね・・・・・)」

 

今時の若い女性に羨ましくなり、更にこの先の行為もどんな風なのか想像した時、身体が

ボッと火が噴いたように熱くなった。それはヴェネラナの舌を引っ張るように

じゅずぞぞぞぞっ!と一誠が吸い上げていたからだった。

 

「~~~っ」

 

頭が沸騰したように熱く、意識が朦朧とし、思考も鈍くなった。

身体に回される腕はシッカリと身動きを取らせない、逃がさないとばかり身体を

痛いほど密着させる。寝間着も肌蹴、熟し切った豊満な胸は一誠の胸板に押し潰され

歪みつつもいやらしく形を崩して何とも言い難い気持ちよさを一誠に感じさせ、

ヴェネラナ自身も感じた。

すると突然一誠が起き上がった。ヴェネラナも起き上がる形となり一誠はキスを止めた。

長く感じたキスは終えてしまい、荒く熱い息を絶え絶えに吐き、紅潮した顔、

潤った目が一誠に向けられる。

 

「どうしたのです・・・・・か?」

 

「俺のキスはどんな風なのか知りたいんでしょう?」

 

背後に回った一誠に何をするのだろうと思いつつ様子を窺っていると、

後ろから自分の胸を下から寄せ上げられる形で腕が回され、顔を後ろに向けられると

直ぐに唇を重ねられた。

 

「んふっ・・・・・」

 

「あふっ・・・・・い、一誠・・・・・・んんんっ」

 

ただキスをする。それ以外は何もしてこない。リーラとは何時もこんな風なキスをして

いるんだぞとヴェネラナの口に、身体に教え込んでいく。

 

「(ダ、ダメ・・・・・これ以上こんなキスをされたら私・・・・・)」

 

ヴェネラナと一誠の口付けは止まらなかった。

―――その様子を三人のメイドがクローゼットの中から覗きこんで

一人は真っ赤になり、一人は嫉妬で不満げな顔、一人は羨望の眼差しで見ていた。

 

「ヴェネラナさま・・・・・あなたという奥方は・・・・・」

 

「す、凄い。あ、あんなキスが・・・・・っ」

 

「サーゼクスの時でもあのようなキスなんて・・・・・」

 

というか、人妻がこんなことしているのに止めなくて良いのだろうかと思うところだ

が、この三人のメイドは敢えて静観し、成り行きを見守ることに徹する―――。

 

『一誠くん・・・・・も、もういいです・・・・・・』

 

『んちゅ、そう?もっと激しくて気持ちの良いキスの仕方もあるんだけど』

 

『こ、これ以上のキスがあるのですかっ?』

 

『リーラが気絶したほどのキス、だよ』

 

―――まだ続ける、教え込むのか!?と絶句する。

ここでヴェネラナが制止すれば終わることなのだが、

如何せん、一誠のキスによって思考が鈍くなったヴェネラナの心まで蕩けていた。

 

『・・・・・わ、私にも教えてください』

 

『分かったよリアスのお母さん。何だか可愛くなっちゃったね』

 

『ヴェ、ヴェネラナって今だけは呼んで下さらない?』

 

『分かったよ。可愛いヴェネラナ』

 

『あ、ああ・・・・・一誠くん・・・・・ちゅるっ、んはっ、んふ、じゅる、はふ』

 

続行したのだった。すっかり乙女に返り咲き、一誠とのキスを何時までも

 

「・・・・・」

 

リーラはゆっくりと動き出した。その顔はグレイフィアとシルヴィアの顔を

引き攣らせるほどだった。バンッ!とクローゼットの戸を開け放って

一誠とヴェネラナに近寄った。一誠とヴェネラナもリーラの存在に気付き、

 

「リ、リーラさん!?」

 

「あれ、リーラ・・・・・?」

 

何時の間にこの部屋にいたんだと反応をし、ヴェネラナは今の自分を見られ焦る一方、

リーラは眼中になしとばかりヴェネラナではなく一誠に告げた。

 

「一誠さま・・・・・選手交代です。私とキスをしてください」

 

「「え、あなたもするのですか?」」

 

「シ、シルヴィアにグレイフィア。あ、あなたたちまでそこでなにをしていたのですかっ!」

 

クローゼットの中から現れたメイドたちに愕然とするヴェネラナの発言に

姉妹揃って首を傾げて言った。

 

「「・・・・・公爵家夫人の浮気現場の取り押さえ・・・・・?」」

 

「違います!これはその、そう、大人の口付けを教えていたのです!」

 

苦しい言い訳をしている間にリーラは一誠と深いキスをしていた。

 

「ちゅっ、それにしてはヴェネラナさま・・・・・ふっ、んんっ・・・・・すっかり

顔が蕩けているじゃないですか・・・・・あふっ・・・・・一誠さまとのキスが

気に入ったご様子で・・・・・あっ」

 

「ヴェネラナは可愛かったよ。んちゅ、身体を震わせてしがみ付いてくるん

だから・・・・・んふっ、ちゅ、れろ・・・・・それに胸も柔らかったけど舌が

一番プリプリしてて・・・・・」

 

「私が一番柔ら・・・・・んんっ・・・・・一誠さま・・・・・欲しいです、

 あなたの蜜を・・・・・」

 

「ん、分かった・・・・・・」

 

「「「っ・・・・・」」」

 

口を開け舌をだらしなく出すリーラへ自分の唾液を流し込む一誠たちの様子は淫靡な

雰囲気を醸し出す。それを美味しそうにモゴモゴと動かし、

ゴクリと喉を鳴らして飲んだことを証明する為にまた口を開けた。

 

「あ、はぁ・・・・・んんっ!」

 

背筋に電流が走ったような衝撃がリーラの身体をゾクゾク!と興奮のあまりに震わせた。

目がどこまでも潤ってまただらしないほど蕩けた顔を熱に浮かされたように

一誠を熱く見詰めるリーラ。すると、何かに弾かれたように身に纏っている

衣服を手に掛け―――脱ごうとし出す。

 

「リ、リーラ・・・・・さん?」

 

「ヴェネラナさま・・・・・申し訳ございませぬがここで情事を重ねさせてもらいます」

 

「え・・・・・はい・・・・・?」

 

「一誠さまの愛が籠った唾液は・・・・・媚薬に等しい効果がございます。一定量以上を

摂取すれば、身体が熱くなり、自分では性的な疼きを解消することができません」

 

胸元を大きく肌蹴させ、下着も脱ぎ去り準備万端とばかり一誠に密着する。

 

「少なからずあなたさまも一誠さまとの口付けで味わったはずです。

一誠さまの唾液の味を・・・・・」

 

ドクンッ。

 

リーラに言われると急に体が熱くなる。その言葉がまるで起爆スイッチのようだった。

「あっ」と落ち着いていた精神が急激に興奮して、リーラが言う一定以上の唾液を

摂取したのだろう。久し振りに女の部分が疼き始め、自分の身体を抱き絞め、

この刺激を抑え込もうとうするその仕草が何とも煽情的だった。しかし、体内に流れた

一誠の唾液は興奮剤としても効果があるのか、自分では抑えきれないほどの高ぶりが

胸の奥から湧き上がる。

 

「無謀に一誠さまとキスしたことが仇となったのです。ヴェネラナさまはどうか、

アルマスさまと情事を重ねてください・・・・・ああんっ!」

 

甲高い声を上げたリーラ。その意味は見守っていたグレイフィアとシルヴィアすら顔を

真っ赤にしている時点で分かり切っていた。しかし、お預けを食らった

ヴェネラナの頭の中では今すぐアルマスのもとへ行くよりも直ぐ目の前にいる『男』に

身体を委ねたいことしかなかった。

 

「・・・・・っ」

 

肌蹴た寝間着を一誠とリーラに近づきながら更に脱ぎだし、

自分の『女』を一誠の横で晒し出した。

 

「一誠くん・・・・・私にも・・・・・」

 

「いいの・・・・・?」

 

「ダメ、もう今はあなたのことしか頭にないの・・・・・・お願い、

私をメチャクチャにして・・・・・」

 

「わかった・・・・・たっぷりと可愛がってあげる」

 

「一誠くん・・・・・・んんんっ!」

 

取り残されたシルヴィアとグレイフィア。本来ならば止めるべきなのだが、この淫靡な雰囲気と

三人の情事に目を奪われて生娘のように固まってしまう。が、鼻に入るツンとした

香りまでもが―――。

 

「「・・・・・っ!?」」

 

二人を興奮させるのだった。穴という穴にねっとりとした香りが

否応なく入り込んでくるような生理的に嫌な感じが襲うが、次第に二人の思考を蕩けさせるように鈍らせる。そしてこの部屋に漂う淫靡な空気、目の前に繰り広げられる情事を

見て感じ欲情が湧きあがる、何時しか羨望の眼差しを向け最後ははしたないと思いつつ

自分の身体を触れて刺激を貪ってみたが足りず更なる刺激、快楽、快感を欲し―――。

 

「くっ・・・・・も、もうダメです・・・・・」

 

「はぁっ・・・・・はぁっ・・・・・わ、私も・・・・・」

 

元々性欲が強かったシルヴィアと未経験のグレイフィアは己の快楽という欲望を満たす

為にフラフラと一誠のもとへと歩み寄った。

 

―――○●○―――

 

「ごめんなさい・・・・・」

 

第一声が謝罪だった。気が付けば、四人の魅力的な女性が全裸で同じく

全裸で寝ていた自分に寄り添って寝ていて記憶もあってか物凄く罪悪感に苛まれ、

好きでもない男と致してしまったことに深く猛省する一誠。

 

「謝らないでください一誠くん。

元はと言えば私が・・・・・その・・・・・誘惑をしたのですから」

 

「最初からその気だったの!?」

 

「・・・・・コクリ(赤面)」

 

ヴェネラナの発言に大層驚く一誠の他に、溜息を吐くリーラ。

 

「ですが、もうこれでお分かりになったでしょう。一誠さまに誘惑をすればこうなることを」

 

「ええ・・・・・もう、夫以上に元気で、力強くて、

あんなに激しく乱れたのは初めて・・・・・」

 

ポッと頬に淡い朱が散らばった。シルヴィアもそうなのか乱れた自分を思い出し紅潮していた。

 

「えっと、グレイフィアさん・・・・・本当にごめんなさい」

 

「いえ・・・・・謝らないでください。あなたが一方的に悪いというわけではございません。

そ、それに」

 

「?」

 

恥ずかしげに一誠から顔を逸らした。シルヴィア同様に情事のことを思い出し、真っ赤になった。

 

「すみません、なんでもないです」

 

「ふふっ、グレイフィアも素敵な体験ができて私は嬉しいわ。

相手が一誠くんなら幸せになるでしょう。・・・・・それでその、一誠くん。

お願いがあるんだけど」

 

「リアスたちには絶対に内緒します」

 

絶対誰にも言わない秘密だとヴェネラナの気持ちを悟って言ったが、

首を横に振られて一誠は首を傾げた。

 

「あの・・・・・また私がシたくなったら相手になってくれますか?」

 

「え?」

 

「私・・・・・どうやら夫のより一誠くんとの情事に魅力を感じちゃって・・・・・」

 

一誠に媚態するヴェネラナ。熱い視線を送ってくる人妻に困惑する一誠を庇うように

リーラが眉間に皺を寄せて異議を唱えた。

 

「ヴェネラナさま。あなたさまに夫のアルマスさまがいます。

堂々と浮気をしていいはずがございません」

 

「じゃあ、レッスンということでいいでしょう?」

 

「そういうことではないのです。一誠さまは私の主なのです。

そう簡単に身体を重ねられたら一誠さまは女にだらしないと周囲に蔑まされます」

 

「でも・・・・・リーラさんだけじゃ一誠くんの性欲を受け止めきれなかったでしょう?

私たち三人でもそうだったけれど」

 

「それは・・・・・」と返す言葉が見つからないでいるリーラに立て続けに言う。

 

「ドラゴンは力も強ければ性欲も強いの」

 

一誠にしな垂れかかり、全身を擦りつけ短い嬌声を上げだす。

 

「リーラさんは知らないでしょうけど、私とシルヴィアは夫が淡泊で子供を産んだら

自分の役目は終わりだとばかり相手にしてくれなくなっちゃったの。

この身を持て余してどうしようもないわ。女の辛さはあなただって分かっているはずよ?」

 

「・・・・・」

 

「沈黙は肯定と取らせてもらうわ」と意味深に微笑んだ。先ほどから一誠に身体を擦り

つけていると、身体に走る快感にうっとりと恍惚の表情を浮かべる。

 

「シルヴィア、あなたもサーゼクスに相手をして貰えなくなってかなり日が経っていますわね」

 

「そ、それは私とサーゼクスの問題で・・・・・」

 

「知ってるわよ。あなた、毎夜毎夜自室で―――」

 

「お、奥方さま!それ以上はこの子の前で仰らないでください!」

 

羞恥で赤面するシルヴィアを鈴の音を鳴らすようにヴェネラナは艶やかに微笑む。

ヴェネラナ発言に肯定であることを暗に認めてハッ!と自分の発言に気付いた時には―――。

 

「そんなに欲求不満の状態でこの子に一気にこの世のものとは思えない

快楽を与えられちゃったらサーゼクスじゃあ物足りなくなったじゃない?さっき思いっきり

乱れに乱れ、『あの人のよりイイッ!』と自分から激しく求めちゃったあなたは」

 

「だ、だからと言って!これは道徳に反し―――あんっ」

 

いきなり自分の身体に、下半身に触れられて思わず嬌声を上げてしまった。

 

「私たち悪魔が道徳なんて言葉は似合わないわよ?悪魔は欲望を叶え欲望を満たす種族。

あなた、さっきから一誠くんをアソコをチラチラとみているし、

ココもまだまだ欲しいって強請ってるじゃない」

 

「奥方さまがいきなり触るから―――んんっ、お願いですからもう触らないでください。

また―――あっ!」

 

「うふふ、可愛いわよシルヴィア」

 

何故かまた盛り上がってしまい、置いてけぼりにされた三人。

 

「・・・・・グレイフィア」

 

「・・・・・なんでしょうか」

 

「あなたも一誠さまの伴侶となる気はないですか?」

 

「「え」」

 

唐突なリーラの言葉に一誠と揃って間抜けな返事をした。

 

「このような形であなたの純潔を穢してしまい、処女も散らせたことには

私にも責任がございます。ですからその責任を果たす為に私と一緒に

一誠さまのメイドとして生きていきませんかと申し上げているおります」

 

「リーラ、私はリアスお嬢さまの専属のメイドですが・・・・・」

 

「リアスさまはいずれ一誠さまの伴侶の一人となります。そうなれば夫となる一誠さまの

お世話もすることになります。問題はございません。それに―――」

 

グレイフィアに近づき、下半身に手をやって一誠の方にも目を向けた。

 

「これだけの量を出されても一誠さまはまだ満足してはいないのです」

 

「あぅん!リ、リーラ・・・・・・」

 

「まだ時間があります。一誠さま、また私たちを可愛がってください」

 

「いいことを言うわリーラさん。ほら、シルヴィアも出来上がったわよ」

 

ヴェネラナに快楽を与えられたシルヴィアは熱で浮かされたように上気した赤面の顔が歪んでいたが恍惚の表情もしていた。荒い息を何度も繰り返し、蕩け潤った目に情欲の色が

ハッキリと浮かびただただ強い快楽を貪りたい一匹の牝と化となっていたのも事実。

 

「一誠くん、私の身体を自由にしていいのよ?」

 

「い、一誠さま・・・・・」

 

「あ、ああ・・・・・またあの快感が・・・・・・」

 

「一誠さま、私たちの意思に構わず、己の欲望を吐きだしてください」

 

欲情している四人の性欲が終わるのはまだまだ先になりそうだった。

一誠もまた四人の気持ちを応えるために再び性欲を貪るのだった。


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