HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード26

『おいおい、お前まで参加したらソーナは泣くぞ』

 

「アザゼルのおじさんがリアスたちの監督みたいなことをしていたなんて意外だ」

 

『ま、あいつらに俺の知識を叩きこんで実証していくのも楽しいからな。

それよかお前、大会に出るなら優勝しろよ。お前が当主となればあの頑固な若造と

違って楽しくなるからな』

 

「・・・・・考えておく。それよりもヴァーリはどうしているかわからない?」

 

『俺よりお前の方が知っているんじゃないか?それに―――あいつテロリストに入っても

簡単に内部情報を寄こしてくれるから扱いに悩んでいるんだよこっち側は』

 

小型の魔方陣から映し出されるアザゼルの苦い顔。ヴァーリは世界中の強者と戦う為に

テロリストの一員となった。白龍皇がテロリストになったことで冥界や天界、

他の神話体系の神々の間で震撼させたほどだ。

 

しかし、頼んでいるわけでもないのに白龍皇ヴァーリは定期的にテロリストの情報を

直接アザゼルに資料として魔方陣を介したやり方で渡してくる。まるでスパイのような

活動をしてくるため、アザゼルや五大魔王たちは

ヴァーリを本当にテロリストの扱いにしてもいいのか判断を悩んでいる。

 

「じゃあ、ジークとモルドレッドの二人のことも分かっているんだな?」

 

『ああ、そうだ。「英雄派」という派閥に所属している奴らに間違いない。

お前がエクスカリバーを持つ者として興味を抱くのも無理はないだろう』

 

「だよねー」

 

『軽く言うが、テロリストがこの町に現れた時点で大問題だからな?』

 

本当に分かっているのかと訝しい顔で言われ、どうやら内密にモルドレッドと

会っていることをバレているようで乾いた笑い声を発するしかなかった。

 

「で、俺の参加は認めてくれたの?」

 

『まだ決まってない。悪魔同士の戦いに人間、ドラゴンが参加しちゃ、

悪魔の成長や実績に影響が及ぶからよ。参加が決まったとしても、お前は倒してはならない

決まりに縛られるだろう』

 

「足止め程度ならそれでも勝機はあるね」

 

リアスの役に立てるならそれでも構わないと頭の中で思ったら、

 

『そう言えば、「幽世の聖杯(セフィロト・グラール)」の所有者、ヴァレリーはどうしている?』

 

「ん?普通に充実した生活の中で満喫しているけど」

 

『そうか、テロリストどもに勘付かれないならそれでいい』

 

懸念していたものは杞憂に終わった。そこで一誠はあることを聞いた。

 

「アザゼルのおじさんって三大勢力戦争の頃から生きているんだよね?」

 

『なんだ、俺は何歳だって聞きたいのかは止めておけよ』

 

「いや、興味ないし。そんなことよりある一族の事を知っているよね」

 

眉根を上げてある一族?とオウム返しをしたアザゼルに告げた。

 

「魔人族」

 

『っ!』

 

立体映像でもアザゼルが酷く驚いた顔が良く分かる。

当時、戦争をしていたものしか知らない事実の一つを

一誠は知っている事実に驚きの色を隠せなかった。目を細め、真剣な面持ちで口を開く。

 

『どこでその一族の名を知った?』

 

「アザゼルおじさん、怖い顔をしてるけど魔人族ってそんなに危険な種族だったの?」

 

初めて見る顔に一誠は問うた。アザゼルは重々しく頷いた。

 

『・・・・・俺たちを徹底的に追いこんだからな。悪魔より、魔王より性質が悪い。

魔力を奪い尽くす程なんだからよ。だからこそ、お前は知らないだろうが魔人族を

優先に狙って倒したほどだ』

 

シオリが語らなかったかもしれない事実にそうなんだと、相槌を打った。

 

『だからこそ、自分の種族が滅亡してしまう危機を感じたのか、

忽然と戦争からいなくなったこともあるし、度々姿を現すこともあった。

何時しか完全に戦争に顔を出さなくなったが、

そうか・・・・・まだどこかで生きているのか。敵となったら厄介だぞ』

 

「アザゼルおじさんでも敵わない相手?」

 

『いや、確かに厄介な能力を持っていたが対処はできた。物理的な攻撃で倒せたから

魔人族の数が急激に減ったんだ。で、一誠。お前はどこで魔人の情報を得たんだ』

 

再び訊ねられ、言っていいのかと悩んでしまう。が、アザゼルからの厳しい目が

何時までも一誠を捉えて言わなければ家にまで来そうな雰囲気だった。

 

「直接その魔人から聞いた」

 

『何でお前にだ?お前が有り得ないドラゴンだからだと知ってからか?』

 

「ううん、違う。これは俺の家族しか知らないことだけど、

神さまとの稽古の時に不思議な力を覚醒したんだ」

 

静かに聞く姿勢で耳を傾けるアザゼルに言い続ける。

 

「最初は分からなかったけど、魔人と出会ってようやく理解した。

この力は・・・・・魔人の力だってことを」

 

『なんだと・・・・・っ!?』

 

「アザゼルのおじさん。俺はグレートレッドの子供みたいなオーフィスの力を有する

有り得ないドラゴンで、兵藤家と式森家の血を流す元人間だった上に魔人族の血や力を

受け継いでいる子孫のようなんだよ」

 

魔人化(カオス・ブレイク)』となった一誠の姿により一層、

アザゼルは目が飛び出そうなぐらい驚いた。

 

『ちょっとそこで待っていろ!』

 

「へ?」

 

いきなり荒げた声で待機を命じられ、キョトンとしていると魔方陣が消えた。

そしてしばらく待って五分ぐらい経った頃、堕天使の魔方陣が出現してソコからアザゼルが現れた。

 

「・・・・・マジか」

 

「うん、マジだよ」

 

「・・・・・だー・・・・・お前、どれだけイレギュラーな存在となろうとしているんだよ」

 

疲れた顔で呆れ果てるアザゼル。ふと、何か思いついたのか一誠に訊ねた。

 

「ちょっと待て、お前がそうなら誠と一香の奴はどうなんだ」

 

二人の子供と言うだけであって、更に赤龍帝の存在も気になる。

魔人族の血を流しているならば他の兵藤家や式森家の者たちも必然的に

受け継いでいることになる。一誠は「うーん」と頬をポリポリと掻いた。

 

「えっと、結構曰くのある話も聞いたんだけど・・・・・聞きたい?」

 

「ああ、聞かせてもらおうじゃないか」

 

床に座り込むアザゼルに続き一誠も座り出す。そして、一誠はシオリから聞いた話を

そのままアザゼルに告げたのだった。

 

「・・・・・兵藤家と式森家が誕生した由来は魔人の奴が双子を産んだ

結果だったとはな・・・・・」

 

全ての話を聞き終えたアザゼル。手で顔を覆い、何とも言い難い気持ちで一杯になった。

目の前に座っているイレギュラーに目を向け、溜息を吐いた。

 

「お前が魔人の力を覚醒したのは二つの力を宿しているから、なんだな?」

 

「そうみたい。相反する力を身体に宿すと全身に襲う激しい苦痛、場合によっては最悪、

死ぬんだって聞いたし」

 

「それは人間の身体という器じゃ治まり切れないからだろうよ。ドラゴンの身体、

しかもグレートレッドの一部の肉体で構成された身体ならさぞかし巨大で不動な器と

なるだろうし、それに加えてオーフィスの力だ。それが蓋となって

押さえこんでいるのかもしれない」

 

「・・・・・赤龍帝はどうなの?魔人族の力得れる?」

 

声音のトーンが幾分か下がった質問をしてくる。アザゼルは自分の予測でこう答えた。

 

「微妙だな。鍛え上げられた肉体でも人間の身体に過ぎない。

魔人族の身体と一緒だと思わない方が良いだろう。

赤龍帝の血を流しているがもしも魔人族の力を覚醒したら奴の身体は持つかどうか

ハッキリと答えられん。もしも、堪えられたらお前の次に厄介な存在だ。だが、お前には勝てないよ」

 

「どうして?」

 

「お前には全ての力を無効化にする力を持っているからだ。魔人族の魔力吸収の能力も

無効化にできてダメージを与えられる。言わば最強の切り札の一つだ」

 

そう言われ、パァッと明るい笑みを浮かべた一誠をどこかおかしげに自分も釣られて笑った。

 

「(しっかし、こいつが魔人だったとは全然気付かなかった。人は見掛けによらないって

言葉はまさにこいつの為にあるようなもんだ)」

 

―――○●○―――

 

一誠たちはその日、冥界で行われる魔王主催のパーティに参加することになった。魔王

フォーベシイから必ず参加して欲しいと招待状まで用意したほどなのだから着慣れない

ドレスを身に包む女性もいれば、当たり前のように着こなす女性陣が別れた。

 

「は、恥ずかしい・・・・・」

 

「私的には動きやすいドレスが着れていいわ」

 

「ドレスなんて久し振りに着るわね」

 

「兵藤一誠、私も着ないとダメなのか?」

 

一部、不思議そうにドレスを着ている者もいるが、一誠にとっては一輪の花々が一気に

咲き誇ったような感覚で見詰める一方、

 

「お前のタキシード姿もいいじゃないか」

 

アラクネーのように逆に見詰められている。黒いタキシードに真紅の髪をポニーテールに

結い上げた出で立ちの一誠の魅力がまた一段と変わり、一誠に好意を抱く

リーラは何時までも一誠だけを見詰めていたほどに。そこへ、誰も現れない魔方陣が発現した。

事前に直接冥界まで転移する魔方陣を用意すると言われていたので、

躊躇もなく魔方陣に移動する。

 

とある場所で魔方陣の光と共に冥界へ姿を現した一行。その目の前にはドレス姿や

制服姿の少年と少女たち、十体のドラゴンたちと鉢合わせの状態で出会った。

 

「あ、タンニーン!久し振り!」

 

「おお、兵藤一誠か。久し振りだな。それにオーフィス・・・・・クロウ・クルワッハだと!?」

 

タンニーンと呼ばれたドラゴンがクロウ・クルワッハを見て愕然とし、思わず警戒の態勢になった。

クロウ・クルワッハはそんなタンニーンの様子に面白そうに笑みを浮かべ、

一誠は大丈夫だと説得に掛かった。

 

「兵藤一誠・・・・・お前と言う奴はまた他のドラゴンを傍に置いたというのか」

 

「勿論!あと、こいつもだ!」

 

巨大な魔方陣が空中に出現し、魔方陣が光を弾ければ三頭龍が哄笑を上げながら姿を現した。

 

『タンニーンか。最後に会ったのは何時振りだ?』

 

「アジ・ダハーカ・・・・・!?

まさか、お前まで兵藤一誠と一緒にいるとはな・・・・・」

 

『こいつといれば俺を楽しませてくれそうだからな。だからそう警戒してくれるなよ?

ますます攻撃をしたくなるじゃないか』

 

ギラギラと戦意を隠さない最強の邪龍の一角に十体のドラゴンたちが物凄く警戒していた。

一触即発の雰囲気が一誠たちまで伝わり、一誠は怒った顔で窘めた。

 

「ダメだぞアジ・ダハーカ。相手に喧嘩を買わせるような言動をしちゃ。戦いをしたい

ならまた今度相手になるから」

 

『そうか、お前がそう言うならこの場は大人しくしてやろう』

 

一誠たちの傍に降り立ち、一誠は魔方陣でリーラたちを乗せて三頭龍の背に乗せた。

 

「よもや、兵藤一誠は邪龍すらも魅了させるというのか・・・・・」

 

愕然とした面持ちで漏らし、タンニーンも少年と少女たち―――リアスたちを背中に乗せ、

特殊な結界を張ってパーティ会場へと向かった。

 

「兵藤一誠」

 

「ん、なんだ?」

 

「近い日、お前と少し話がしたい。いいな?」

 

「連絡してから来てくれれば・・・・・あ、そう言えばタンニーンってどうして悪魔に

なったんだ?」

 

『そうだな、俺も聞いてやらんわけではないぞ』

 

「我も聞く」

 

「私もだ」

 

「兵藤一誠はともかく、お前らは上から目線で言うか」

 

タンニーンは深い溜息を吐きつつ悪魔になった経緯を教えてくれる。砕いてだ。

 

「ドラゴンアップルという果実を知っているか?龍が食べる林檎のことだ」

 

「うぅん、初めて聞いたよ。てか、そのまんまの名前だ」

 

「とあるドラゴンの種族には、ドラゴンアップルでしか生存できないものもある。ところが、

人間界に実っていたそれらは環境の激変により絶滅してしまったのだ。もう、その果実が

実るのは冥界しかない。しかしな、ドラゴンは冥界では嫌われ者だ。悪魔にも堕天使にも

忌み嫌われている。ただで果実を与えるわけもないだろう?―――だから、俺が悪魔となって、

実のなっている地区を丸ごと領土にしたんだよ。上級悪魔以上になれば、魔王から冥界の

一部を領土として頂戴できる。俺はそこに目をつけたのだ」

 

「じゃあ、食べ物に困っていたそのドラゴンの種族はタンニーンの領土に住んでいるのか?」

 

「ああ、おかげさまでそいつらは絶滅を免れた。それと俺の領土内でそのドラゴンアップルを

人工的に実らせる研究も行っている。特別な果実だ、研究には時間がかかるだろう。

それでもその種族に未来があるのであれば、続けていったほうがいい」

 

「・・・・・」

 

一誠は同族を助けるためにそこまで龍王の肩書を捨ててまで助けたタンニーンと言う

ドラゴンに深く感動した。

 

「タンニーンは良いドラゴンだな!」

 

目を輝かせながら言った直後、タンニーンは大きく笑った。

 

「良いドラゴン?ガハハハハハハッ!そんな風に言われたのは初めてだ!

しかもグレートレッドとオーフィスの力を有するお前からの賛辞とは痛み入る!

しかしな、兵藤一誠。種族の存続をさせたいのはどの生き物と手同じこと。

人間も悪魔もドラゴンも同じなのだ。俺は同じドラゴンを救おうと思ったに過ぎない。

それが力を持つドラゴンが力のないドラゴンにできることだ」

 

「じゃあ、俺も何かできるんだよな?」

 

「ああ、お前ならできるだろう。目標があるならやり遂げてみろ」

 

そう言われ、一誠は兵藤家に見返す目標をやり遂げるという決意が固まった。

 

「なぁ、タンニーン。そのドラゴンアップルって美味しい?」

 

「勿論だ。なんだ兵藤一誠。ドラゴンとしてドラゴンアップルに興味を抱いたか?」

 

「そうだな。それにタンニーンの研究を手伝えるかもしれない」

 

肯定してタンニーンにとって信じがたい言葉を発した。

 

「どういうことだ?」

 

「ドラゴンアップルって果実は木から実るものなら、

豊穣の神さまにも協力してもらえば研究は捗るんじゃないか?」

 

「豊穣の神、だと?」

 

「うん。お父さんとお母さんが俺を色んな豊穣の神さまに会わせてくれたから。

特に豊穣の神さまでもあるフレイお兄さんとフレイヤお姉さんと仲良しだから

お願を訊いてくれるかも」

 

―――兵藤一誠、お友達は主にドラゴンと神話体系の神々です。

 

「・・・・・頼まれてくれるか?」

 

「頼まれた」

 

タンニーンに頼まれ、そんなこんなで小一時間ぐらい元龍王と一誠、最強の邪龍と時々龍神も

会話を始めていたら、建物が眼下に光明が広がっていた。

一行たちは会場となる場所へ着いたのだった。

魔王主催のパーティ会場となる超高層高級ホテルは、グレモリー領の端っこに

ある広大な面積の森の中にぽっかりと存在していた。一誠たちを乗せたドラゴンは、

スポーツ競技をする会場らしきところに降り立った。するとその競技会場の上空にいたとき、

下からライトが一斉に発光しアジ・ダハーカやタンニーンたちといったドラゴンを照らした。

 

「じゃあ、俺たちは大型の悪魔専用の待機スペースに行く」

 

『俺もそっちに行くか』

 

「お前は来るなっ!いらん誤解を招く!」

 

「なら私なら問題はないか」

 

「お前も問題外だ!」

 

「我は?」

 

「・・・・・もう言う気力がないわ」

 

タンニーンは苦労人もとい苦労龍であった。翼を羽ばたかせてどこかの敷地に向かって

飛んで行ったタンニーンたちを見送りつつ、アジ・ダハーカは一誠の中に戻った。

 

「ギャスパー男の娘」

 

「は、はいぃぃぃっ!」

 

「何故怖がる。というか、男なのにドレスなのね」

 

「だ、だってドレス着たかったもん」

 

女装癖ここに極まる、そう思った一誠はギャスパーの前にヴァレリーを連れてくれば。

 

「え」

 

「あら」

 

一誠にとって予想していたのと違った反応をした。ヴァレリーはギャスパーを

見て嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「ギャスパーじゃない。久し振り、うふふっ。女の子の服を今でも着ているなんて

変わってないのね。可愛いわw」

 

「ヴァ、ヴァレリー・・・・・!?キミがどうして・・・・・っ」

 

ここにいるはずもない人物がいて、ギャスパーは大いに驚いた。赤い目が極限まで

見張ってヴァレリーの姿から逸らさず、真っ直ぐ見詰めるほどに。

 

「私、一誠と一緒に吸血鬼の世界、ルーマニアから旅だったの」

 

微笑むヴァレリーは一誠の肩腕を引き寄せてギャスパーに言った。

 

「その時は色々と遭ったけれど、一誠と外に出れて色んな場所に行けたの。

とても楽しかったわ。今でも楽しいのよ?だって駒王学園っていう学校に通っているもの」

 

「ええええええええ!?そ、そうだったの!?兵藤先輩のことは知っていたけれども

ヴァレリーが通っていたなんて全然知らなかったよ!」

 

「そうなの?」

 

意外そうにギャスパーを見ているとリアスが口を開いた。

 

「この子、私の眷属になるまで周囲からの酷い仕打ちを受けていた上に私の管理力では

力不足だとトップ会談の時まで封印されていたのよ。ギャスパー自身も引き籠りだった

ものだから知らないのは無理もないわ」

 

「そうだったの。でも、今こうして外に出れているから大丈夫なのね?」

 

「う、うん・・・・・まだ人前に立つことが怖いけど・・・・・でも、ヴァレリーがいるなら」

 

「じゃあ、頑張って克服しないとね。そしたら皆と一緒に綺麗な場所でピクニックをしましょ?」

 

ヴァレリーとの約束にギャスパーは力強く頷く。これをみてリアスは一誠に笑いかけた。

 

「ありがとうイッセー。ギャスパーはこれで成長してくれるわ」

 

「偶然の出会いってやつが主だったがな。知り合いだとは思わなかった」

 

「私とギャスパーは親友なの一誠。あの城にいたときからね」

 

「ふーん、ギャスパーはどうやって吸血鬼の世界から飛びだしたのか後で聞くとして行かないか?中々来ないから向こうから来ちゃったみたいだし」

 

一誠の指摘にリアスはこれから行くホテルに送ってくれるであろう従業員がこっちに

近づいてくるのを視界に入れて苦笑を浮かべた。一行は遅れながらも高級な

リムジンの車に乗車し、ホテルへと向かった。

 

 

 

「いまさらだがリアス」

 

「なに?」

 

「赤い髪に相まってそのドレス姿、映えているぞ。綺麗だな」

 

「っ!あ、あなたもそのダンディな姿・・・・・素敵よイッセー・・・・・」

 

「ははは、お世辞を言っても何も出ないぞ?」

 

「なら、悪口を言えば出てくるのかしら?」

 

「ほほう・・・・仕返しか?だったら・・・・・」

 

「え?・・・・・(耳元で声を殺し囁かれ中)。・・・・・!?~~~~~っ!!!!!」

 

『(え、なに?なにを言われて赤くなっているの?)』

 

 

―――○●○―――

 

 

無事にホテルに到着した一行。未だに熱で浮かされたように赤くなっている

リアスだったが、ホテル内に入れば威風堂々と・・・・・。

 

「(^_-)-☆」

 

「∑(〃゚ o ゚〃) ハッ!!」

 

一誠と目が合うたびに赤面してしまい何時も通りの落ち着きを取り戻すのに少々時間が掛かった。

パーティ会場は最上階にある大フロア。そこまでの移動は一行が何回か別れて

最上階までエレベーターで行くことに。

 

「パーティなんて初めてだ」

 

若干緊張の面持ちの一誠にリーラはその緊張をほぐそうとして語りかけた。

 

「誠さまと一香さまは招待されていないにも拘らず、不法侵入をしてまで大いに楽しんでおりましたよ」

 

「・・・・・よく逮捕されなかったな」

 

「お二人の堂々たる姿、誠さまと一香さまの容姿と映える服装の出で立ち。

これらがお二人に疑問を抱くどころかどこかの重要な立場の者だと思って勘違いを

してしまうのです。そのおかげで、大統領の主催のパーティも忍び込んだ時、大統領を

暗殺をしに侵入した死神と称された暗殺者を未遂で捕まえて命を救って一躍有名人になった

ほどです」

 

「ごめん、流石の俺はそんなことできないや」

 

ますます緊張した面持ちとなり、逆効果だった。いや、そこまでして欲しいとはリーラも

思っていない。周囲を素早く窺い、自分たちを誰も見ていないか目を配ると一誠の肩に手を置いて、

 

チュッ

 

一誠の唇に自分の甘く柔らかい唇を押し付けた。目だけが大きく見開き驚く一誠だが、

 

「緊張はなくなりましたか?」

 

人前でキスをすることをしないリーラが頬をほんのりと羞恥で淡い朱を散らしていた。

自分の為にしてくれたことだと察知し、口の端を吊り上げて頷き、

リーラの白磁のような手を掴んだ。感謝を籠めて握り、笑みを浮かべる。

 

「ありがとう」

 

「はい」

 

エレベーターも到着し、一歩出ると会場入り口も開かれる―――。きらびやかな広間が一誠たちを

迎え入れてくれた。既にリアスたちは先にこのフロアへ向かった為、

一誠たちは最後に訪れたのだった。フロアいっぱいに大勢の悪魔と豪華な食事の数々、

天井は巨大なシャンデリアが吊るされていている。そんな中を侵入すると周囲から好意的、

好奇的、奇異的の混じった視線が一心に向けられ始める。

 

「あれは、ライザー・フェニックス殿に勝利した兵藤・・・・・」

 

「何故ここに?」

 

「しかし、彼の周囲にいる者たちも異様だが美しい者が多い」

 

『特にあの究極の胸(バスト)が存在するとはっ!(鼻血)』

 

男の悪魔がティファニアとシャジャルの胸を見て満面の笑みを浮かべながら鼻血を

噴射する様子に一誠は目を細めた。

 

「・・・・・バカばっかり」

 

「あううぅ、イッセー・・・・・」

 

「こう、あからさまに見られると委縮しますね」

 

二人も邪な視線に反応して一誠の背中に隠れた。その際、四つの果実が一誠の背中に

押し付けられ、一誠は今後、この二人の服装を心底考えた。その時、一誠の目の前に

とある女性が近づいてきた。

 

「またお会いしましたね一誠くん」

 

「リアスのお母さん。うん、お久しぶりです。このパーティにいたんだ?リアスのお父さんは?」

 

「・・・・・あの方はあの方で自由に楽しんでおりますわ」

 

はぁ、と溜息を吐くドレス姿のヴェネラナだった。理由は分からないがここには

いないことだけは分かった。そして彼女の背後にはグレイフィアもいる。

 

「リアスの様子を見に?」

 

「ええ、それもあります。けれど、あなたの様子を見に来ました。

こういった場所に入ったことがないから礼儀正しい挨拶や対応は学んでいないかと思って」

 

そう言われぐうの音も出なかった。修業に明け暮れ、勉学にも怠らなかった一誠だが、

ヴェネラナの言う通りこういった会場に必要な事を学んでいなかった。

 

「リーラさん、この子を少しだけお借りして良いかしら?」

 

「ヴェネラナさま。お言葉ですがその習い事ならば一誠さまの専属であるメイドの私が

教えます。奥方のあなたさま自身が指導をなさるのは如何でございますでしょうか」

 

「私はそれだけじゃなく娘のリアスのことについても話たいのです。どうか一時だけ」

 

深々とリーラに頭を下げた公爵家の婦人。リーラもハッキリと断る言葉が出なくなり、

グレイフィアに「あなたからも何か言ってください」と視線を飛ばすがグレイフィアは

無言で首を横に振った。

 

「リアスのお母さん、リアスの話だったらまた今度でもいいんじゃない?」

 

一誠も今はパーティを楽しみたいという気持ちで言うが、ヴェネラナの意思は固かった。

リーラは・・・・・内心渋々といった感じで了承した。

 

「わかりました。話を終えたら直ぐにお戻りになってください」

 

「感謝します。一誠くんの従者の心は寛大で痛み入りますわ」

 

ようやく頭を上げたヴェネラナは一誠を引っ張る感じでフロアからいなくなった。

 

「誠に申し訳ございません。リーラ」

 

「いえ、グレイフィア。私もまだまだ教えるべきことを教えていませんでした。

本来、このような場所とは無縁な生活をしてもらいたい思いで

いましたから・・・・・」

 

遠い目でグレイフィアと話し合う。リーラとグレイフィアとここにいないシルヴィア、

実は旧知の仲であって呼び捨てで呼ぶほど一人の女として同じメイドとして

話が通じるところがある。

 

「・・・・・彼は逞しくなりましたね。最初に出会ったのは赤子だったというのに」

 

「皮肉なことですがね。これまでの周囲の環境、生活の環境が一誠さまをそうさせたのです」

 

「リアスお嬢様もわがままなところがまだ抜けていなく、

もう少し淑女としての立ち振る舞いをしてもらいたいものです」

 

「一誠さまは尻を敷かれるような御方ではないので安心していますが、

その気でもないのに色んな女性を魅了させるので少々困っています」

 

「苦労していますね」

 

「お互いに。それはそうとグレイフィア」

 

目の前の自分と同じ銀髪のメイドにとある質問をした。

 

「気になる殿方はいませんか?」

 

「・・・・・急にどうしたのですか?」

 

「いえ、いないのであればお勧めしたい殿方がおります。

よろしければその殿方とどうかと思ったまでです」

 

「その好意を無化にできませんがどういった殿方ですか?」

 

リーラは小さく笑みを零す。

 

「優しく頼れる、温かい笑みをする赤い髪の男の子でございます」

 

一方、一誠は何故かホテルの外に連れ出され闇夜の森の中へと連れられる。

悪魔の手で手入れされているのか、

森の中だというのに歩き辛くはなかった。二人は程なくして広々とした森の空間に

立ち止まるとヴェネラナが魔方陣を展開すると魔方陣から音楽が流れ始めた。

 

「ここなら誰にも邪魔もせず、されず、迷惑も掛かりません」

 

「なるほど」

 

場所を選んだというヴェネラナに感嘆し、手を繋ぐように催促されてその通りにすれば

ヴェネラナが身体や足を動かし始めた。一誠も流れに従うように身体と足を動かす。

ダンスを指導を施すつもりだったが中々どうして・・・・・。

 

「・・・・・一誠くん、ダンスをしたことがあるのですか?」

 

ターンやステップ、ダンスに欠かせない足と体の動作を完全に慣れている

一誠に驚きを隠せなかった。

 

「世界中で修行している時に色んな女性の神さまとダンスをする機会があって、

段々としているうちに慣れちゃったんだ。だから―――」

 

片手を放した瞬間に一誠が発現したであろう魔方陣からも音楽流れだす。

今度は自分の番だと主導権を握り、目を丸くするヴェネラナをリードしだす。

 

「俺はゆったりしたダンスよりも激しく楽しいダンスが好きなんだよねリアスのお母さん」

 

「え、きゃっ」

 

年上の女性が可愛い悲鳴を上げた。一誠の片手がヴェネラナの腰に回され、

もう片方の手は逆に掴み上げられ激しく情熱的なダンスをし出す一誠に身体が引き寄せられる。

 

「ほら、リアスのお母さんも楽しもう」

 

「い、一誠くん・・・・・」

 

こんな踊りをしたことがない。だが、一誠はヴェネラナを優しくリードし、

どうすればいいのか、どうしてほしいのか一誠の口から発せられ、

ヴェネラナも公爵家夫人としてのプライドと誇りを懸けて粗相のないダンスをし、

いつしか自分の身体を一誠に身を寄せる。言っちゃあなんだが、ヴェネラナは自分の身体に

誇りを持っている。

 

だからこそ自分に向けられる視線を分別ができるのだが、目の前のまだ十数年しか

生きていない思春期真っただ中の少年の反応ぐらい手に取るように分かる。

しかし、一誠は押し付けられた熟した肉体よりも今この瞬間、

ヴェネラナとのダンスが心底楽しんでいることに、

 

ドクンッ。

 

「(え・・・・・)」

 

心臓の鼓動とは異なる心の鼓動が高鳴った。そう、遥か昔、アルマスと恋に落ちたような

感覚と似ている。楽しげに笑う一誠を見て意識をすれば、動悸が激しくなる。

 

「(嘘・・・・・まさか・・・・・)」

 

自覚するにつれ動揺の色が顔に出て隠しきれなくなる。ヴェネラナの心情を知らずとも

一誠は様子がおかしいと動きを止めて心配する言葉を掛けた。

 

「リアスのお母さんどうし―――」

 

「イッセーみっけ、ぽっこぺーん!」

 

「って、はぁあああああああああああっ!?」

 

横から中国の武将が身に包んでいた鎧を着込む少女が一誠に飛び掛かった。

気の探知をしていなかった一誠にとって不覚を取った。ゴロゴロと少女と転がり、

止まれば自分の下半身に跨って見下ろされていた。

 

「やぁやぁイッセー。こんなところで会うなんて奇遇だねぇい」

 

「び、美猴!?」

 

「オッス!オラ美猴!久し振り!」

 

ビシッと軍人のような敬礼をして楽しげに笑みを浮かべる孫悟空こと美猴。テロリストである。

驚愕の色を隠さず、目を大きく張り、空いた口が塞がらな一誠は動揺を口から漏らす。

 

「な、何でお前がここに?」

 

「やー、実はさ?冥界で待機命令が出てねぃ。オレやもう一人のお仲間といるんだけど

何もすることもないから暇で暇でしょうがなかったんだわ。でも、こんな森の中に音楽が

聞こえてきたから気になって来てみれば、イッセーがいたんで―――押し倒したくなった」

 

「するな!」

 

身体を起こすと鎧に顔を押し付けられた。硬い、冷たい・・・・・。

 

「踊るならオレっちとも踊ろうぜ?さっきも言ったように暇でしょうがないんだわ」

 

「いや、友達とは言え、敵対している関係なんですが?」

 

「んじゃ、敵と敵がやることはただ一つ、オレっちと勝負してみっか?そうすればイッセーは大義名分が得られるっしょ」

 

軽く一誠から飛び下がって長細い棍をクルリと回して戦意を窺わせる。

 

「・・・・・しゃーないな」

 

美猴の言う通り。敵と仲良くしてはいけないのは分かっているが、

敵以前に友達なのでやり辛いほどこの上にない。だが、相手の性格を熟知しているため、

一誠は戦う決意をした。分身を一人作り出してヴェネラナの護衛に回し、

エクスカリバーを手にして対峙する。

 

「いっくぜぃ!」

 

「ああ!」

 

二人は飛びだし、剣と棍が交じった―――。


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