HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード20

『速報!2-F 兵藤一誠は数体のドラゴンを宿すイレギュラーな存在であった! 

 

                                非公式新聞部』

 

「・・・・・なんでバレて知られているんだよぉおおおおおおおおっ!」

 

 

―――2-F―――

 

「あなた、この学校では誰も知らない人がいないほど有名人になったんじゃない?」

 

「言わないで!俺は静かに暮らしたいだけなんだ!」

 

「諦めなさい。もう世間はあなたを無視できないほどの注目しているのだから」

 

「でも、これで兵藤家のバカ共が静かになってくれば御の字じゃないか?」

 

「あら、そう言う見解もできるのね。もしもそうなったら嬉しい限りだけど身の程

知らない野獣だって出てくるわよ」

 

「デスヨネー」

 

狐耳をぺたんと垂らし、肩を落とすそんな一誠を内心「可愛いわね」と思った

パチュリーでもあった。女子しかいないクラスに立った一人の男子がいる。

その者の名は兵藤一誠。

今は訳あって体を小さくし、狐の耳に九本の尾を生やしての登校をしている。

その効果も相まって女子からの敵意と睨みが減り、今現在も大人しく教室にいるのだが、

それもできなくなりそうだ。

 

「イッセーは凄いデース!ドラゴンなんて滅多に出会えませんからネ!」

 

「ドラゴンならここにもいるけど」

 

「えっへん(ドヤァ)」

 

得意顔で胸を張っているオーフィス。見た目は人間、中身はドラゴンのオーフィスを、

 

「ああ、そう言えばそうだったわね」

 

「姿がhumanですから忘れますネー」

 

パチュリーと金剛は今さら思い出したかのような反応をしたのだった。

 

「(まぁ、俺もドラゴンなんだけど別に教えることでもないか)」

 

家族しか知らないもう一つの事実。自慢して言っても更に騒がれるだけであって、一誠も

目立ちたがらない性格が故に余計な事を口にしない。―――口は災いのもと―――。

 

「にしても、空いている席が三つ増えたな。金剛、何か知ってるか?」

 

「ナ、ナンデ私に聞くのデスカー?」

 

普通に話しかけられただけであるのに金剛は動揺した。

 

「や、さっきから妙にそわそわしているから」

 

「ええ、もう何かを待っているかのような感じでね」

 

二人からの指摘に落ち着きなく金剛は「アウアウ・・・・・」と何か悩んでいる言動をする。

 

「でも、これから分かる事なら聞かなくてもいいかもしれないわよ?」

 

「そうだな」

 

パチュリーの言葉に同意し、教師が入ってきたので―――パチュリーの膝の上から降りた一誠。

 

「えー、皆に知らせがある。このクラスにいたクラスメートが今日を以って復学することが

決まった」

 

ザワッ!

 

女子たちは一気に騒ぎ始めた。周囲の様子や顔を窺うと様々な反応と顔色が。

パンパンと教師が手を叩き、自分へ意識を向けさせ静めれば口を開く。

 

「そう言うことだから皆。復学する三人に気を使ってやってくれよ。特に兵藤」

 

「へ?」

 

「お前はその姿のままでいてくれ」

 

教師に改めてそんなこと言われたのは初めてだった。その意味と意図は何なのか

分からないでいる一誠の目に三人の女子が教室に入ってきた直後。

 

「イエーイッ!比叡、霧島、榛名ァーッ!」

 

今まで抑え込んでいたものが押さえきれず爆発したかのように金剛は立ち上がって一人

大騒ぎした。

 

「誰だろうね一誠くん」

 

「金剛の知り合いだろうけど・・・・・」

 

「ワーイ!」と身体で喜びを現す金剛を見つつ、イリナと漏らす。

 

「だけど、驚いたわ」

 

「ん?」

 

「まさか赤龍帝があいつだなんてね」

 

「・・・・・ああ、そうだな」

 

イリナが言うあいつと言う人物を思い出し顔を若干険しくする。これは最悪の予想を

考えた方がいいかもしれないと思った。

 

「あ・・・・・ゴメン」

 

「イリナが謝るようなことじゃない」

 

「でも・・・・・」

 

「いいから」

 

もうこの話は終わりだとイリナから完全に視界を外し、新たに加わった女子たちを見る。

背中まで伸びている黒い髪と黒の瞳の女子、見た目を判断するとクールビューティーな

黒髪と眼鏡を掛けた女子にボーイッシュ的な印象を与えさせる女子を見た。

 

 

――2-C―――

 

「兵藤一誠が複数のドラゴンを宿すイレギュラーな存在」

 

「この新聞を見て驚いちゃった。あの兵藤くんがドラゴンを宿していたなんてね」

 

「私でも有り得ないということぐらいは分かっている。だけど、そうドラゴンと出会えるのか?」

 

「いや、ドラゴンは人間が住めない場所に生息しているか人間界に紛れているかの

どっちかなんだ。どちらにしろ、意図的に見つけ出すのは困難だよ」

 

和樹たちは一枚の新聞を見落としていた。デカデカと一面には一誠のことを関する記事が

載せられていて、その他にどうやって撮影したのか分からないドラゴンたちの姿が

映っている写真もあった。

 

「僕たちと戦った時は本気すら出していなかったようだね」

 

「手を抜いていたってことなのか!?兵藤一誠、私たちを侮辱するなんて・・・・・!」

 

「カリンさん、力を隠すことも実力の内なのですよ。彼もそう易々と全てを

打ち明けるほど愚かではないということです」

 

「それに騒がれたくないから隠していたかもしれないよ?」

 

和樹の言葉に怒りを抱くカリンだったが、龍牙と清楚に宥められる。

 

「邪龍の筆頭格の一匹、アジ・ダハーカ。千の魔法を駆使するドラゴンだから興味あったけど、

まさかこんな形で出会えるとはね」

 

楽しげに微笑む和樹に龍牙は聞いた。

 

「もしも和樹さんに宿っていたら最強の魔法使いとなっていたでしょうね」

 

「それ以前に僕の言うことを訊いてくれるかが問題だよ」

 

「邪龍って怖そうだもんね」

 

「清楚、多分そっちじゃないと思うぞ私的に」

 

どこかズレた感想を述べる微笑む清楚にツッコミを入れるカリンだった。

 

―――○●○―――

 

「イッセー、この三人は私の妹たちなのデース!」

 

「妹?姉妹だったのか」

 

「YES!私の可愛い妹たちネ!」

 

誇らしく自慢げに三人の女子たちを抱き寄せる金剛。一誠に紹介するが当の三人は一誠を

見て怪訝そうに見詰めている。

 

「お姉さま、この子は一体誰なのです?」

 

「私のハニーだヨ」

 

「ハニー!?―――っ」

 

何故かボーイッシュ的な女子に睨まれる。自分は何をしたのだろうと理不尽な睨みに―――。

 

「・・・・・グス(泣)」

 

涙目になる。

 

「比叡?」

 

「お、お姉さま?」

 

「イッセーを泣かしてはダメデス!」

 

ボーイッシュ的な女子に叱咤し、一誠を抱きかかえた。

 

「イッセーは私たちの恩人なのデス。比叡たちは今まで眠っていたので分からないでしょうケド、

三人が意識を回復したのはイッセーのおかげダヨ!」

 

「・・・・・そうなのですか?」

 

「私のこと信じられないのデスカ?姉としてそれは寂しいのデスヨー」

 

暗い顔をして落ち込む金剛。三人の妹たちは慌てて金剛を宥めるその様子は親しい柄では

なければ見れない光景だった。金剛の熱い説得の末、一誠は金剛の三人の妹たちと会話

できるぐらいの交流を得たのだった。

 

「因みにですね兵藤くん」

 

知的な印象を与える黒髪に眼鏡を掛けた女子、霧島が一言。

 

「比叡はお姉さまのことだが大好きなので度々嫉妬するかもしれません。

そのことを重々ご理解いただきたいので」

 

「それとお姉さまが世話になっていらっしゃるようですね。

榛名も辛い思いをさせてしまったお姉さまに全力で尽くしますっ」

 

「OH!姉冥利尽きるよ榛名ァっ!」

 

「ああ!榛名ズルイズルイ!」

 

背中まで伸びている黒髪の女子、榛名に抱き付く金剛。そして霧島の発言通り金剛が

好きな比叡が姉に抱きつかれる榛名に羨ましがっている。霧島はそんな比叡を

「まぁまぁ」と宥め、榛名は微笑みを浮かべ金剛四姉妹は独特な空間を作り出す。

 

「わ、なんだか賑やかになったわね」

 

「そうですね。微笑ましい限りです」

 

「見ているこっちまで微笑ましくなる」

 

「我、嫌いじゃない」

 

四者四様の感想を述べる一誠たち。しかし、金剛たちの姉妹愛に刺激されたのか

イリナが異議を唱えた。

 

「むむっ、姉妹愛が凄いことは分かったけど、一誠くんとの幼馴染の絆だって凄いんだから!」

 

「OH!イリーナとイッセーは幼馴染の絆で対抗してくるならばこっちも負けませんヨー!」

 

「望むところよ!一誠くん、頑張りましょう!」

 

「・・・・・俺もかよ」

 

今更ながら一誠たちがこんなにワイワイと騒いでも教師が注意しないのは

選択授業なのであるからだ。無論、このクラスは自習を選択し、自分の時間を過ごしているのである。

 

「んじゃ、何時も通りお菓子作りでもするかな」

 

「おや、あなたはお菓子を作れるのですか?」

 

そう問うた霧島に頷く一誠は言葉を発した。

 

「大抵この時間帯は料理実習をしているからね。金剛のお墨付きでもあるぞ?」

 

「その通りネ!イッセーのお菓子はBest in the world!」

 

「そこまで美味しくないって。あまり買被らないでくれよ」

 

「―――いえ、美味しかったです」

 

何時の間にか黒髪に黒い瞳の女子がいて一誠のお菓子作りの腕を肯定した。

気配すら感じなかった女子にイリナたちは「何時の間に?」と呆然となった。

 

「お菓子を貰いに来ました。ある?」

 

「ああ、まだ作ってないからないんだ。これから作るけど待っててくれる?」

 

「ん、待つ」

 

クロメはコクリと頷く。週に一度の選択授業で作る一誠のお菓子を気に入った様子で

『クロメのお菓子2号』と刺繍された袋を持っているほどに。

その袋を見て一誠は苦笑いを浮かべ、咲夜とヴァレリー、オーフィスと一緒に

お菓子作りを始める。一誠の手作りお菓子と言うことで金剛四姉妹も拝見しようと

キッチンへ赴くのだった。

 

「おお、手際がいい・・・・・」

 

「あっ、あの蜜から甘い匂いがしますね」

 

「早い、もう完成?」

 

「それじゃ、ティータイムの時間デース!」

 

金剛の発言で2-Fはこの時を待っていたかのように一誠たちが作った

お菓子を食べ始めるのであった。それとは別の大量のお菓子がクロメの前に置かれた。

 

「はいよ。お菓子好きのお嬢さん。今日は何個か新しいお菓子も作ったから感想を

言ってくれるとありがたい」

 

「うん、ありがとう」

 

待ちに待ったとクロメは食べながら袋に詰めていく。その食べっぷりは圧巻させる。

頬が段々と膨らんでリスやハムスターのように口の中に溜めこんでは食べる喜びや味を

噛みしめている。

 

「ところで、クロメはどこのクラスだ?」

 

「(ゴクンッ)1-Bだよ」

 

「って、後輩だったのか。そっちのクラスは授業中じゃないのか?」

 

「この甘い誘惑には逆らえない」

 

つまり抜け出したということであった。お菓子を食べる為に。何と言う行動力と

理由であろうかと一誠は内心呆れ食べるクロメの頬をツンツン突っつく。

 

「ん、なに?」

 

「んー、食べるところが可愛いなって、微笑ましく思ってな」

 

「・・・・・先輩って人の食べるところを見て笑う変態だったの?」

 

「二度とお菓子を作ってやらないぞ」

 

「ごめんなさい。私が悪かったです」

 

迫力のある笑みを浮かべる一誠の脅し、クロメにとって堪え難いことに逆らえず

誠心誠意の謝罪をした。

 

「ねぇねぇ一誠くん。次の休みはどこに行くの?」

 

シアから部活動の事を聞かれた。数日後になれば休日で冒険部は部活をする。

旅行をしに行く気分でいるシアにしてみればまだ行ったこともない場所に行くことが

楽しみなのだ。それは他の面々も同じ気持ちでもある。

 

「んー、まだ考え中。また冥界でもいいんだけど他にも行きたいところがあるしな」

 

「そっか。じゃあ、楽しみにしてるね。ね、ネリネちゃんとリコリスちゃん」

 

「うん!一誠くんとどこかに行けるなら私は無人島でもいいよ」

 

「無人島・・・・・。・・・・・っ」

 

唐突にネリネの顔が真っ赤に染まった。一体何を考えたら羞恥心にも照れるような

気分になるのか一誠は分からずにいる。

 

「師匠、帰ったら稽古をつけてくれ」

 

「ゼノヴィア、そう毎日毎日稽古をしては一誠くんの時間を削ぐことになるから遠慮と

言うものを覚えなさい」

 

意気揚々と感じに稽古を求めるゼノヴィア。しかし、ルーラーがそれを良しとせず

窘めるのだが一誠は首を横に振った。

 

「いや、ルーラー。分身体にでもしてもらうからその心配はないんだ」

 

「・・・・・分身体、それは何人までできるのですか?」

 

「何人でもできるぞ。ハルケギニアの魔法って本当に面白い。

だから今図書室にいるパチュリーには分身体で護衛をしている。

分身体だから神器(セイクリッド・ギア)は使えないけどな」

 

「あ、そうなんですか?」

 

「ああ、そうなんだ。だけどその分、俺がもう一人増えたみたいなもんだから色々と

役立つことができる」

 

口角を上げて笑みを浮かべる。実体化の分身体がいれば一人ではできないことを

できるようになり、物事を二倍にも進めることができる。それが増えれば増えるほど

効率が良くなるのだ。護衛や監視、家事といったことに関しては。

 

「一誠さま、それは式森の魔法使いも可能なのでは?」

 

「さて、それはどーだろうな。知っていれば可能だとは思うけど知らないなら無理な話だ。

だけど、ハルケギニア出身の女の子がこの学校にいるから案外習得しているんじゃないか?

もしもそうだったらかなり厄介だ」

 

「一誠がそこまで強いと思うの?」

 

「ただ単に油断はできないってことだけだ。本気、全力で戦えるとしたら人が

いない場所にしかできない上に限られる」

 

「ん、今のイッセーは強い。その気になれば町一つ消滅することもできる」

 

最強の龍神までもが肯定した。可愛く頬にクリームを付けていて、

それを指で掬って舐め取る一誠だった。

 

「俺はそこまで暴君じゃないからな?」

 

「イッセーは優しい」

 

「ふふふっ。オーフィスは可愛いな♪」

 

満面の笑みを浮かべ、一誠はオーフィスの頭を撫でた。撫でられるオーフィスは目を細め、

一誠の心地の良い手の体温を感じる。撫でられるだけでオーフィスは何時か、不思議な

気分を感じられるようになり、もっとして欲しいという欲求も覚えるようになっている。

 

「イッセー、もっと」

 

「おや、お姉ちゃんは甘えん坊だな?」

 

「我はイッセーの家族。家族は甘えるものだと誠から聞いた。だから・・・・・」

 

一誠を椅子に座らせて、その太股に飛び乗っては対面座位の形で腰を下ろし、一誠の胸に顔を

すり寄せるように押し付ける。

 

「甘える。我はイッセーに。イッセーから感じる温もりは我の居場所」

 

黒い円らな瞳は見下ろす一誠の金色の瞳を捉える。

無表情なオーフィスは上目使いで一誠にハッキリと言った。

 

「いま我がいるべき場所はイッセーやリーラたちがいる家。それは我の第二の故郷」

 

そう思うようになったのは何時だったのかオーフィス自身も分からない。

しかし、怒気哀楽という感情が乏しい、疎いオーフィスは間違いなく一誠や

他の皆と一緒に居たいという思いは当然のように思う。それはある意味無限。

もしも自分が次元の狭間の支配の権限を得て、グレートレッドを追い出していれば

こんな思いを抱かなかっただろう。結果はどうであれオーフィスは今、

この状況を維持したいと思っている。静寂を得たかったあの時の気持ちは完全になくなり、

温もりを欲する今現在小さなドラゴンが一誠の足の上に乗って存在しているのだ。

 

「・・・・・ああ」

 

自分の足の上にいる小さなドラゴンを見落としている一誠は漏らした。

 

「オーフィスの気持ちは心から分かっているよ」

 

スッと黒髪に手を置いて梳かすように撫でる一誠は今までとは違う笑みを浮かべた。

慈愛が満ちた綺麗な微笑みだった。誰かを心底想い、深い愛情から顔に出るソレだった。

 

『・・・・・っ』

 

一誠を知る咲夜たちは顔を真っ赤に染める。ゼノヴィアや信仰が深いイリナと

信仰より愛を重んじるルーラーが思わず人の目を拘わらず跪き祈りを捧げるような

姿勢になったほどだ。

 

「俺はお前に助けられた。だから深く心から感謝もしている。

オーフィスがいなければ俺は死んでいたから。でも、それだけじゃない。

俺もオーフィスと一緒に今日まで生きて楽しいと思った。

これからも俺の、俺たちの傍に居て生きてくれるか?」

 

オーフィスの答えは、一誠の頬を添えるように掴んでコツンと額と額を合わせ、

零距離で目と目を合わせてから言った。

 

「我、『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスはここに誓う。

 我、未来永劫イッセーたちを見守ると―――」


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