HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード17

「坊主!シアを選んでくれないのはどういうことだぁっ!?

いや、世の中にはハーレムと言う概念がある!

是非シアも坊主の伴侶として迎え入れてくれやっ!絶対に!」

 

「ネリネちゃんもリコリスちゃんもだからね一誠ちゃん!」

 

騒々しい朝を出迎え、椅子やキックで沈められた二人の理事長。

 

「ご、ごめんっす」

 

「「ごめんなさい」」

 

「や、気にしてないから謝らなくて良いさ。二人の気持ちも分からないわけじゃないし」

 

朗らかに苦笑を浮かべ、そう言うとシアとネリネ、リコリスの頬が朱に染まる。

 

「じゃ、じゃあ・・・・・」

 

「今はまだその気にはなれない。小さい時に会っていたとはいえお互いのことをまだ

知らないだろう?知ってからでも遅くはないと思う」

 

「や、やったねネリネ!」

 

「は、はい・・・・・っ」

 

満更でもない返答に三人の姫は喜びあった。

 

「―――じゃあ、私たちも」

 

「―――そうですね。一誠くんは心が寛大だからきっと・・・・・」

 

「―――女としての魅力を磨きつつ攻めていけばいつか堕ちるわけね」

 

そして虎視眈々と狙う女子陣もいたのだった。肩にオーフィスを乗せ、ピッタリと手を

繋がずとも肩を寄せ合い歩く速度も幅も同じくなっている一誠とリーラ。

 

「先輩、冥界で得るものを得たんだけど次の休みも珍しいものを探すんですか?」

 

「そうだな、植物はクリアしたし。おまけに特産品を手に入れて試しにデザートを

作ったら美味だった」

 

「師匠が作ったデザートは美味しかったな」

 

熱が籠った息を零すゼノヴィア。甘みが凝縮されているというのは本当だった。

何度も食べても飽きはしないし、カロリー少なめのデザートだった為に後先考えず

デザートとが好きな女子はかなり食べた。

 

「クラスメートの女子たちに味見してもらうか。反応が良かったら人間界にも販売して

もらおうあの蜜を」

 

「天界のまんじゅうも美味しいっすよ?」

 

「そうなんだ?じゃあいつか食べさせてくれ」

 

「了解っす!」

 

ビシッと軍人のような挨拶をしたシアに微笑む。

 

「んで、話を戻すけど次は物かな」

 

「どんな物?」

 

「んー、錬金術に必要な希少価値な素材が望ましいけど創造の力でオリハルコンと

レアメタルとか用意できるからなぁ」

 

「それも部室に飾ればいいんじゃないの?」

 

イリナからの指摘に肯定と頷くも一誠は納得できないでいる。

全員で冒険をし、目的の物を手に入れる喜びを分かち合い、感じたがっている。

 

「(・・・・・まだ時間はある。ゆっくり皆と集めていけばいい)」

 

そう心の中で決めていると目の前に殺気立つファンクラブと出くわした。

 

「しつこいとシアたちに嫌われるぞー?」

 

『うるせぇーっ!!!!!』

 

からかうだけからかって、転移魔方陣であっという間に学校に辿り着いたのであった。

 

「あ、先輩」

 

「どうした後輩」

 

「何時でもいいので休み時間、ボクのクラスに来てください」

 

それだけ言い残してユウキは一階にある自分のクラスへと向かった。

 

「なぜにユウキのクラスへ?」

 

「うーん、イッセーくんと話をしたいからじゃない?」

 

「それだけか?」

 

「そう言われても・・・・・」

 

困ったように言うイリナを見詰める一誠は、もう一度去って行ったユウキが通った

廊下へ見送ると二階に上がり、教師であるリーラや警備員のリィゾ、フィナ、

プライミッツ・マーダーと別れ、一誠たちも自分の教室へと向かい、

 

「グットモーニング!イッセー!」

 

これから朝の習慣となるであろう金剛の柔らかく温かく、衝撃のあるホールドを受けるのであった。

 

「ウーン、小さいイッセーを抱き締めるのはなんとも心地イイデース」

 

「抱き絞められる側としてはもう少しだけ穏やかにして欲しいんだが」

 

金剛の椅子へと連れられ抱き絞められたままの一誠。

そう言いつつも尻尾がフリフリと満更でもなさそうに振っている。

 

「金剛ってお菓子作れる?」

 

「YES、そうデスガ?」

 

「なら、一緒に作らないか?今日は選択授業があったはずだ。

料理実習で冥界で得た蜜でお菓子を作ろうよ」

 

その誘いを金剛は断るわけがなく。満面の笑みを浮かべて頷き、

HRが始まるまで抱きかかえられていた。

 

 

そして、選択授業が始まるや否や、一誠と金剛、咲夜だけじゃなくオーフィスや

ヴァレリーも参加しお菓子作りが始まった。

 

「今回の主役の蜜を使うぞー」

 

大きな瓶の中に詰められた黄金色の液体。その蓋を開けた瞬間に甘い匂いが廊下に

まで散布する。その匂いに女子たちは意識を向けずにはいられなかったほど。

 

「イッセー、かき混ぜた」

 

「その割にはクリームが減っているが?」

 

「・・・・・ごちそうさま」

 

少々、つまみ食いされたもののなんと多種多彩なお菓子を作ることができた。

台車に乗せて咲夜や金剛に運ばせてもらい女子たちに提供するのだった。

 

 

『凄く甘い・・・・・』

 

『前食べたお菓子と同じなのに甘さが全然違うわ』

 

『舌に、口の中に広がるこの凝縮された甘みが解放されたかのように私を蕩けさせるっ』

 

評価は上々で高評価。後日リアスにあの蜜の販売を人間界にもして欲しいと乞うた。

 

「良かったですね一誠さま」

 

「ん、誰かに食べさせても恥ずかしくないお菓子ができたな。

もっとこの蜜で色んなお菓子を―――」

 

そう言い掛けた一誠の視界の端に扉から顔の半分だけ顔を出してこちらを見ている

黒髪に黒目の女子がジト目で見詰めていたのを気付き口を閉じた。

 

「・・・・・(ヒョイヒョイ)」

 

気になり取り敢えず手招きして入ってくるように催促した。

黒髪の少女はそんな一誠の催促に教室の中へと入り、真っ直ぐ近寄ってきた。

 

「甘い匂いに誘われたって感じでいいか?」

 

「・・・・・(コクコク)」

 

「んじゃ、食べていいぞ。まだまだお菓子はあるし」

 

「・・・・・いいの?」

 

「一人占め、独占しなければ許す」

 

一誠の手に棒状のバームクーヘンがあり、

それを手渡された少女は黒い眼を一誠に向けつつ口を開く。

 

「・・・・・クロメ」

 

「それが名前か?」

 

「・・・・・(コクリ)」

 

初対面の一誠に緊張しているのか、それとも警戒して様子を窺っているのかわからない。

言葉数が少ないクロメを安心させる笑みで名乗った。

 

「俺は兵藤一誠だ。嫌われている兵藤家の男だが他の兵藤の奴らとは

一緒にだけはしてくれるなよ?」

 

互いの自己紹介が終え、クロメはジーと一誠を見詰めた後にバームクーヘンを食べ始めた。

 

「おかわり」

 

「はやっ!?」

 

掃除機で吸いこむような如くバームクーヘンがクロメの口の中に姿を消したのだった。

その食いっぷりをオーフィスは見ていたのか、自分もバームクーヘンを手にして

一気食いしたのだった。

 

「オーフィス、別に張り合うようなことじゃないんだけど」

 

「なんとなく」

 

そして一誠は知った。クロメは大のお菓子好きであると。一人占めしない程度のお菓子を

『クロメのおかし』という刺繍が縫った袋に詰め込んで感謝の言葉を送るといなくなった。

 

―――1-C―――

 

休憩時間となり、ユウキの元へと足を運ぶ。一階に下りて目的のクラスに辿り着き、

当然のように扉を開け放つ。

 

「失礼するぞ。ユウキ、来たんだが何か用か?」

 

ユウキに声を掛ける一誠の耳に黄色い声が。なんだ?と疑問を浮かんでいると視界に

申し訳なさそうに苦笑を浮かべ両手を合わせているユウキがいた。

 

「兵藤一誠先輩だわ!」

 

「テレビで見ているより格好良い!」

 

「赤い髪の毛が綺麗ですね・・・・・・」

 

―――どうなってるんだ?

 

一誠の心境がそれであり、ユウキがこの場に自分を呼んだ理由も未だに理解できずに

いれば数人の女子に手を掴まれたり後ろに回られて引っ張られ、

押し出され中にへと入れられた。

 

「・・・・・ユウキ、これはどういうことだ?」

 

「えっと・・・・・皆が先輩を紹介しろと言われちゃって・・・・・」

 

「ああ・・・・・そういうことね」

 

合点した。あのレーティングゲームの時、学生服で戦っている姿を全世界のお茶の間に

流されているのを思い出し、身近にいたユウキにそうお願いされるのも時間の

問題だったのだろう。

 

「あの、先輩。リアス先輩とはどういう関係なんですか?」

 

「友達だけど」

 

「嘘!ただの友達だったら婚約者から奪うようなことをしないはずですよ!」

 

「理不尽な人生を送ることを強いられて、それに嫌がる友達を助ける力を持っていた

からそうしただけだ」

 

殆どリアスに巻き込まれた形だけどよ、とは敢えて言わないでおくのはリアスの為だった。

 

「あ、あの、先輩って赤龍帝なんですか?」

 

「あー、やっぱ誤解しているか。俺は赤龍帝じゃないよ。

ただそんな風に見えるだけでしかないんだ」

 

「そ、そうなんですか」

 

「質問はまだあるか?ないなら教室に戻るが」

 

と、一誠はそう言うものの女子たちからの質面攻めは留まる事を知らず。

あれこれと質問を答える一誠だった。

 

「ところで、紺野さんとどういう関係なんですか?」

 

「ふぇっ!?」

 

「んー、強くて可愛い、自慢の後輩かな」

 

「じゃあ、紺野さんを異性としてお付き合いしたいと思っていますか?」

 

なに聞いちゃってんのキミはー!?と赤面した顔に愕然としているユウキの目に一誠が

そんな質問した女子の唇を人差し指で押すように触れてこう言っていた。

 

「それはノーコメントだ。本人の前では言えない恥ずかしいことを

教えれるわけじゃないだろう?」

 

「―――――っ!」

 

「まぁ、お互い近所に住んでいるから家も近いし、これからも付き合いもあると思うし

長いかもしれない。もしかしたらそうなるかも・・・・・な?」

 

女子に向かって意味深な発言をした。唇に触れられている女子もそれを見守っている女子たちも

一誠の言動に目を放せないでいて、されているわけでもないのに一誠の人差し指が

自分の唇を押さえつけられ微笑まれているシーンを―――。

 

『はぁ・・・・・っ』

 

熱い吐息を漏らし、女子たちの顔は真っ赤となり蕩けた瞳で一誠を見詰め出す。

まるで自分がドラマの女優で一誠は女優の恋人役・・・・・。その気分に思考が支配され

尽くしていき、一誠の何気ない仕草や動作で女子たちを魅了するのだった。

羨望と欲求が女子たちを昂らせる。

 

「・・・・・」

 

キュッと無言でユウキが一誠の制服と摘まんだ。

 

「ん?」

 

「先輩、何時までそうしているんですか?」

 

「もう少しだけ悪戯しちゃダメ?」

 

「変態になっちゃいますよ」

 

「それだけは嫌だな」

 

アッサリと女子の唇に押し付けていた指を放して、ユウキに振り返る。

 

「で、ユウキの願いは叶ったと思っていいのか?」

 

「あ、うん、そうですね。短い休憩の中わざわざ来てくれてありがとう」

 

「どういたしまして。ああ、昼。部室で食べるから部室に来てくれ」

 

「わかった」

 

ユウキにそのことを告げ、スタスタと一年生の教室から去った。残されたユウキたちは―――。

 

「こ、紺野さん・・・・・」

 

「うん?」

 

「その・・・・・」

 

恥ずかしげに顔を赤くし、潤った目をしてモジモジと

身体を揺らす(※大変よろしいプロモーションの持ち主)少女がユウキに問うた。

一誠に唇を人差し指で触れられていた女子がだ。

 

「あの先輩、付き合っている人がいる・・・・・?」

 

―――――もしかして、この子。恋しちゃってんの?

 

「う、うん・・・・・いるけど」

 

「そ、そうなんだ・・・・・」

 

案の定、肩を落とすユウキのクラスメートだった。

一瞬の初恋が一蹴され、初恋は実らなかったのであった。

 

「あ―――でも」

 

「・・・・・?」

 

「先輩、心が広いから。今は一人しかいないけどこれから先輩と恋人となる

人が増えるからキミもチャンスあるかもしれないよ?」

 

「っっっっっ!?」

 

―――○●○―――

 

「大体この部室も様になってきたな」

 

周囲を見渡すアラクネーの目に映り込む風景と設備。様々なものが設置していて

部室に小さな噴水もノリで創造してみたり、壁にはタペストリーが飾られて自分が

織った物を見て懐かしげに綻びる。アラクネーがここにいるのは休憩時間、

トイレに行くつもりで廊下に出た一誠とバッタリ会い、

どこに行くのか一誠に訊けば部室と言うことでついてきたのだ。

 

「まだまだ珍しい物は集まっていないがな。確かに部室とは思えないほどの設備だけど」

 

「しかし、よかったのか?休憩時間とはいえ部室に来て」

 

「良いんじゃないか?それに俺は悪いことをしにここへ来たわけじゃない。なんとなく

ここに来たかっただけだ」

 

「ふふっ。おかしな奴だなお前は」

 

隣に座っている一誠と雑談。二人しかいない空間にほのぼのとした雰囲気いが醸し出す。

 

「アラクネー。タペストリーはどう?」

 

「うん、次はどんなのにしようか考えていたが。お前とリーラの告白シーンを見て

あの時の光景にしようかなと思っているがどうだ?」

 

「何も知らない人にとっては微笑ましいだろうけど、当の本人である人にとっては恥ずかしぞ」

 

「はははっ。実を言うともう制作しているんだ。完成まで1年ぐらい掛かるかな」

 

朗らかに告げた事実を一誠は知らなかった。目を丸くして恥ずかしげにアラクネーに

赤くなった顔のまま「この部屋には絶対に飾らないで欲しい」と言いだしたのだった。

 

「それはどうしようかな?まぁ、期待して完成を待っていてくれ」

 

明るく笑うアラクネーに一誠は素直に頷いた。

 

「それにしても、やはり思った通りになったな」

 

「なんのことだ?」

 

「お前とリーラが付き合うことだ。何となく思っていたことだが現実になると対して

驚きもしなかった」

 

そうなんだ?と首を傾げる一誠を余所にアラクネーは何を思ったのか立ち上がった。

すると一誠の前に立っては太股の上に乗り出し、一誠と対面座位の形で腰を下ろし、

顔を向けあって自分の足を胴に回し巻きつけるアラクネー。元々蜘蛛だった下半身は

一誠の力によって人間の腰と足を与えられ完全ではないが人間らしい姿を取り戻すことができた。

深く一誠に感謝し今日まで共に過ごしてきた一人。

 

「アラクネー?」

 

「だが、寂しい気持ちも湧いた。お前はリーラだけのものとなると思えば私の中である

感情が強くなる」

 

「ある感情・・・・・?」

 

問うた一誠を不敵の笑みを浮かべ、アラクネーは一誠が今まで見たことのない表情、

目を爛々と輝かせ、獲物を捕食するかのような獰猛な笑みを浮かべ出したのだ。

 

「お前を食べたいという気持ちが抑えきれない」

 

恍惚とした表情、潤んだ瞳、何度も熱い吐息をするアラクネー。

それにはゾクッと恐怖と似た感情が一誠を襲い、

腕を伸ばされ、頭の後ろに回される。アラクネーは一誠と顔を突き合い、

 

「ははは、リーラに告白されて直ぐに私に襲われる気持ちはどうだ?」

 

「二重の意味で胸がドキドキしている」

 

「なら、もっとそのドキドキを―――私の身体で昂らせてやろう」

 

一誠は家族と思っていた女性からの唇を押し付けられた。容易くアラクネーの舌が

口内に侵入され、頬の裏の肉壁、歯茎、歯を執拗に舐めつくすと「んふっ」といった

鼻息を漏らしつつ一誠の舌を捉え蛇の交尾のように何度も絡め合い唾液を飲み、

唾液を飲ませたりとし続ければ口に溜まった唾液が二人の口の端から垂れこぼれ落ち、

制服を汚す。アラクネーは熱く濃厚なキスを一方的にしながら自分の身体を押し付け、

一誠を興奮させようと自分自身も刺激され、体中に電気が走るような甘美な刺激を

感じながらも止めようとせず行い続けるのだった。

 

「んっ、アラクネーっ」

 

「ゆっくりとお前を味わってからお前の全てをリーラが知る前に、

味わう前に私が知って味わってやる」

 

宣言したアラクネーは妖艶な笑みを浮かべ自分の制服を相手の反応を見つつ、ゆっくりと

一枚一枚脱ごうとしていくが―――。

 

「なにをなさっておられるのですか」

 

絶対零度の如く、熱が帯びたこの部室が一気に肌寒さを感じさせるほど冷たい雰囲気となった。

 

二人は声が聞こえてきた方へ振り向くと、そこには冷たく二人を見据えるリーラがいた。

 

「・・・・・アラクネーさま」

 

「なんだ?」

 

「一誠さまを襲いかかっているようにお見えになられますが、私の視力が落ちたのでしょうか?」

 

訊ねるようにアラクネーへ言葉を投げた。アラクネーは「フッ」と挑発的な笑みを浮かべ、

一誠を肌蹴た征服から覗ける黄色いブラジャーが包む豊満な胸に押し付けて見せびらかした。

 

「いや、私は蜘蛛に転生した女だからな。食べごろになった獲物を捕食したくて

どうしようもなくなったのだ。―――一人の女としても、な」

 

「・・・・・」

 

無表情のリーラの綺麗な銀の柳眉が、ピクッと動いた。アラクネーはそれを見逃さず

ますます口の端を吊り上げた。そして一誠の唇に深く押し付けた。

次の瞬間、リーラが動き始め一誠から強引に放すと上書きするように一誠の唇を奪った。

 

「・・・・・っ!?・・・・・っ!?」

 

リーラの舌が怒涛の如く一誠の舌を絡めては吸い上げ、ビクビクと震える一誠を―――気絶させた。

超絶な舌技によって気絶した一誠をアラクネーは無表情で見守るだけだった。

 

「・・・・・」

 

一誠の口からねっとりと艶めかしくまとわりつく一誠の唾液がコーティングされたリーラの舌。

それは何とも煽情的でリーラは表情を一つも変えず、それでいて自分の舌と一誠の口から

繋ぐ唾液の糸を途切れさせまいとしばらく繋げていたがプツっと切れてしまった。

 

「一誠さまを想うのことを私は同意します。ですが、独占をしようとせず共に愛し合いましょう」

 

「それが一誠さまを愛することを許す条件です」と述べたリーラだった。

 

「・・・・・やれやれ、一誠のことに関するとお前は強くなるな」

 

「私と一誠さまは一心同体。一誠さまの身のお世話は勿論、一誠さまに対する

この気持ちは十数年分です。共に生きてきたあなたたちに負ける要素は一切ございません」

 

一誠をお姫様抱っこをして部室からいなくなったリーラ。

 

「アラクネー。私はあなたに負けるつもりはないわ」

 

擦れ違いざまにリーラから掛けられた言葉。メイドとしてのリーラではなく

一人の女としてのリーラ・シャルンホルストとして。

 

 

 

そして一誠が目覚めた時は知らない天井が見えた。周囲を見ると白いカーテンが白いベッドに

眠る一誠を囲っていて表と遮っている。体調も良好で何事もなく起き上がった時、

カーテンが誰かの手によって開けられた。

 

「あら、目覚めた?」

 

赤十字が刺繍されている青い帽子を長い銀髪に被っている女性が声を掛けてくる。

服も特徴的だ。左右で色の分かれる特殊な配色の服を着ている。具体的には、

青と赤から成るツートンカラー。上の服は右が赤で左が青、スカートは上の服の左右逆の配色、

となっている。袖はフリルの付いた半袖。全体的に色合い以外はやや中華的な装いの

出で立ちで一誠を見下ろす。 また服のあちこちに星座のような描かれている

 

「ここは?」

 

「保健室よ。あなたは初めて見る患者だったけど特に問題は診られなかったから寝かしてたの」

 

女性は一誠の横に近づく。服の上からでも分かる豊満な胸と綺麗な紫の瞳。

 

「私は八意永琳。この保健室を担当している保険の先生よ」

 

「・・・・・一誠です」

 

「それは名前ね?姓は?」

 

言葉を選んで名乗ったが相手は上の名も求めた。「兵藤」はこの学校にとって禁句に

等しいようで一誠の担当教師も憂鬱そうに迎え入れたほどだ。

 

「兵藤、兵藤一誠です」

 

「兵藤・・・・・あなたも兵藤家の男の子ね?」

 

「否定したいけど、そうだよ」

 

「否定?なぜ?」

 

不思議がられて永琳はベッドの縁に腰を落とした。顔と目を真っ直ぐ一誠に向けてくるので

一誠は呟くように説明した。

 

「俺はあんな奴らとは一緒にされたくない。だけど、俺も兵藤だから一部を除いて

皆は俺も粗暴で乱暴で、理不尽なことを強いらせる男だと思っている」

 

「・・・・・何か事情があるようね。リーラ先生があなたを連れてきたから不思議だったけど」

 

「あなたも俺を他の兵藤と同じだと思っているか?」

 

その問いに永琳は顎に手をやりながら嘆息した。

 

「そうね。何度も私を『俺の女になれ』『今日からお前は俺たちの欲望処理だ』とか

私を女のとして、人間として見ないで襲われたことは何度も遭ったわ」

 

「その時はどうやって対処を?」

 

「私は神器(セイクリッド・ギア)の所有者なの」

 

「へぇ、そうだったんだ」

 

「それに最悪の場合秘密兵器もあるの」

 

あのロッカーを開けてみなさいと促されて、一誠は興味と好奇心でベッドから降り、

言われたとおりにロッカーを開け放った。

 

―――――そこには筋骨隆起、全身が肉の塊であると醸し出す体長二メートル以上はある

ピンクのビキニ一丁で、もみあげの部分に三つ編みしかないスキンヘッドの男が

目を瞑って静かにロッカーの中に収まっている。

 

「・・・・・(ドン引き)」

 

思考が完全に停止し、お化けよりも、もしかするとドラゴンより迫力があるかもしれない物が

ロッカーにいたことに一誠は目を開いたまま硬直したのだった。

 

「せ、先生・・・・・これが最終兵器?」

 

「ええ、とある物作りが好きな堕天使が事情を知ってくれて私の為に用意してくれた

『防犯システム蝶蝉ちゃん』というロボットなの」

 

「ロ、ロボット・・・・・?」

 

「効果は絶大。兵藤家の男の子たちを一蹴し、その姿は戦慄、畏怖の念を抱かせてくれる。

いまでは頼もしいロボットよ」

 

「私自身もジッと見つめれないけどね」と付け加える永琳であった。改めてロボットを

見詰めると今にでも目が開きそうな感じで確かにどこか怖ろしさを感じる。

静かにギィッと閉めて視界から外した。

 

「さて、意識が戻ったことだし自分のクラスに行きなさい」

 

一誠もそれには同意し廊下に出ようとした―――が。

 

「ん、そうしようかな・・・・・と思ったけど」

 

「どうしたの?」

 

「お客さんが来るから」

 

そう言った直後、扉が開き十人程度の男子たちが侵入してきた。保健室に来る者の大抵は

傷を大小を問わず負って治療して貰う為なのだが、入ってきた十人は傷を負っているわけ

でもなく、欲望の色が双眸から伺える。

 

「あら、大勢来てどうしたの?どこか怪我でもしたかしら?」

 

平然とした態度で接する永琳。男子たちはいやらしい笑みを浮かべてこう言う。

 

「ああ、薬を飲んだらココがはちきれんばかりに盛り上がっちゃって」

 

「どうにかして治療してくれよ」

 

「先生の手でさ」

 

とある部分を見せ付ける男子。永琳はその部分を見て深く溜息を吐いた。

 

「そこは私の専門じゃないから治療は無理よ」

 

「先生は女なんだから治療できるだろう?できないとは言わせないぜ」

 

囲むように近づく男子たち。永琳は指を当たり前のように弾いた時、ロッカーが勢いよく

開き中からハンパないプレッシャーを解き放つ防犯システムのロボットが出てきた。

 

「前にも来た子たちだったわね。怪我もないのに保健室に来られちゃ困るわ」

 

「俺たちは用があるんだ。それに何も考えてないでここに来たと思うか?」

 

一人の男子が一枚の紙を取り出してロボットに叩き付けた瞬間。ロボットが光に包まれて

姿を消した。

 

「・・・・・それは」

 

「式森家の奴から貰った簡易的な転移魔方陣。俺たちには魔力はないけどよ、

一人程度ならどこかに飛ばすことができるこの紙であの厄介なロボットには退場して

貰ったわけだ」

 

「これで気兼ねなく治療をしてもらえるぜ」と不敵に言う男子だった。

薬を飲んだというのは本当のようで、一誠に眼中がなく永琳という極上の肉体しか

目が向いていない。

 

「さーて!俺たちの保健体育の先生、ここで子作りの授業と洒落こもうじゃないか!」

 

その言葉を皮切りにしてワッ!と永琳へ飛び掛かったのだった。

しかし、永琳は無謀ではなかった。無防備でもなかった。

神器(セイクリッド・ギア)の所有者であり、ここには―――。

 

「俺のことすっかり眼中にないんだなお前ら」

 

ドラゴンが一匹、ここにいるのだから。波紋が生じる歪んだ空間から飛び出す数多の鎖が

男子たちの身体を絡みつけ強く縛りつける。―――亀甲縛りで。

 

「なっ、何だよこの鎖はぁっ!」

 

「俺の前で犯罪を犯されちゃいい迷惑だ」

 

ようやく一誠の存在が気付き、叫ぶように食って掛かった男子たちを鬱陶しいそうに

顔を険しくする。

 

「お前ら、そんな態度でいられるのはもうないかもしれないぞ。お前らの今の言動を

このカメラや録音機で証拠を収めんだからな」

 

一誠の発言に男子たちは目を張って、見せ付けられ、聞かされる録音機から聞こえる

自分たちの声と映像が残っているビデオカメラ。

 

「んなの、俺たちがしらばっくれればどうってことがない!」

 

「あっそう?じゃあこれを日本中のお茶の間に流してもいいよな?」

 

「て、てめぇっ!」

 

「おやおや、どうしてそんな反応をするんだ?兵藤家は七光りの奴らばかりで親に頼らないと、

兵藤家の威厳と威光、権力を傘にしないと強気にもなれないのか?

はっ!ちぃせぇなお前らの肝と玉はよ」

 

嘲笑する一誠。怒りで顔を歪ませる男子たちの一人が叫んだ。

 

「お前だな!俺たち兵藤家に逆らう兵藤一誠ってやつは!」

 

「おー、お前らの間まで知られているのか。別にどうでもいいがその通りだ。俺までお前らと

一緒にされちゃいい迷惑なんだ。しかも彼女を強姦しようとしたんだからな。

あー『それがなにが悪い!弱い奴は強い奴に何をされても当然なんだ!』ってみたいな

台詞は聞き飽きたから何も言わないでくれ」

 

男子たちにそう肩を竦めながら発した。永琳に振り返ってお辞儀をした。

 

「お邪魔しました。ああ、あのロボットはアザゼルのおじさんに言っておくのでご心配なく」

 

「え、ええ・・・・・わかった」

 

ズルズルと男子たちを引き摺って保健室から去った一誠を見送る。扉が閉まるとしばらく

その扉を見詰め、息を一つ。

 

「変わっている子ですね。兵藤一誠・・・・・少し興味が湧きました」

 

机に置いてあるカルテを手にして目を落とす。そこには様々なデータが記されている。

そして一誠は人間ではなく、ドラゴンだということも。

 

「寝ている間に調べさせてもらいましたが中々どうして・・・・・」

 

意味深に口元を緩ます永琳の心情を知るのは永琳自信である。

 

―――○●○―――

 

放課後、金剛は三人の妹たちと医師に頭を下げて病院を後にしていた。

ようやく意識が戻り、自我も正常になった。本人は何もしていないと言うが

アレがなかったらこの先も妹たちはあのままで自分もきっと一人で頑張っていたかもしれない。

金剛は三人の妹に笑みを浮かべながら一誠に感謝した。

残る問題は妹たちの復学。きっと同じ教室になるかもしれないがもしかすると

別々のクラスになるかもしれない。その時は会いに行ったり来たりして貰えばいいだけだ。

 

「姉さま。私たちの為にお辛いことを・・・・・」

 

「No problem!私は妹たちに、家族のために当然のことをしたまでデース!」

 

「お姉様・・・・・」

 

「サー!妹たちよ、久々に揃った四姉妹なのだからnegativeなことは考えず

positiveになろうじゃないカ!myhomeに戻ったらpartyネ!」

 

「は、はいっ。金剛お姉様・・・・・!」

 

金剛四姉妹。ここに再び集結し明るい未来へと向かうだろう。四人の足取りは

強く地面を踏みながら家に向かって歩むのである。

 

 

一方、オカルト研究部ではリアスは悪魔の家業をしていた最中に突然現れた

サーゼクス・グレモリーから発せられた授業参観という単語に頭を抱えたい気分でいた。

 

「お兄さま。私がいる教室では絶対に静かに立っていてください」

 

「おや、私が大はしゃぎをするとでも?大丈夫だリアス。

愛しい妹の姿をカメラに収めるだけだからね」

 

「それだけはやめてください!授業に集中できず逆に恥を掻いてしまうわ!」

 

「ふふふっ。恥ずかしがるリーアを見るのもまた兄としては愉快だよ」

 

親指を立てて白い歯をキラリと煌めかせ、満面の笑みを浮かべる兄バカがいた。

 

「それに父上も母上も来る。グレモリー家の名に恥じない姿でいないとダメだよリアス」

 

「・・・・・お兄さまとお父さまではなく、お母さまが・・・・・いえ、お母さまも

お母さまで何か言われそうでそれはそれで・・・・・」

 

ブツブツと呟くように発するリアスは次第に溜息を零した。

その様子を成神一成はイザイヤに訊ねていた。

 

「部長のお家族って怖いのか?」

 

「いや、そうじゃないよ。ただ部長にとってはできれば表に出て欲しくないだけかもね。

主に自分が恥ずかしい思いをしたくない程度に」

 

「そうなんだ・・・・・」

 

あんな部長を見るのは初めてだと漏らすところでサーゼクスはとあることを言った。

 

「授業参観と言えば私たちのような親類が来る。ということは一誠くんのご両親も

来るということだよ?」

 

「っ!?」

 

「もしかすると、リアスの授業の様子を見るかもしれない。もしもリアスがお淑やかに

授業を真剣に学ぶ姿ではなかったら一誠くんのご両親に笑われるではないかな?」

 

悪魔の囁きで一誠の両親と言うキーワードがリアスの考えを改めさせられる。

失敗は許されない。必ず成功しないとダメだと何かに対して燃えあがったのだった。

 


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