HIGH SCHOOL D×D ―――(再)――― 作:ダーク・シリウス
『皆さま。このたびの「
校内放送、一誠たちの耳に知らない女性の声が聞こえてくる。
『さっそくですが、今回のバトルフィールドは人間界の学び舎「国立バーベナ駒王学園」のレプリカを異空間にご用意いたしました』
アナウンスを聞き一誠たちは周囲に目を配った。似て非なる世界。窓を開けると空は緑のオーラみたいなものが面々の視界に映り込んだ。
『両陣営、転移された先が「本陣」でございます。今回のゲームをすることになった兵藤一誠さまの本陣が旧校舎のオカルト研究部。ライザーさまの「本陣」は新校舎の生徒会室。「『
「私たちには関係ないけどね」
肩を竦めるナヴィ。悪魔とその眷属悪魔ではない限りプロモーションなどできない故に実力はそのままである。
一誠のチームの殆どは人間。悪魔が人間に敵うわけがないと思う観戦客もいるだろう。だがしかし、一誠が声を掛けたメンバーは観戦客の思いを覆す者たちばかりだ。
『試合開始まで残り五分でございます。それまで準備を済ませてくださいませ』
「だ、そうだが・・・・・準備は必要か?」
一誠からの問いかけにメンバーの全員は首を振ったり必要とないと無言で語った。
「じゃ、始まった瞬間に全員は屋根の上にいてくれ」
「屋根?なにをするつもりだ一誠?」
「常識はずれなことをするだけだ」
金剛に意味深な視線を送り、金剛もまたコクリと頷く。
「どちらも同じ人数だ。ただしライザー・フェニックスの眷属悪魔に金髪の少女がいる。そいつだけは手を出すなよ」
「なんでまた?」
「本人如く、観戦するだけで戦う気は無いだってさ。こっちも戦わないナヴィがいるしお相子だろう?」
絶対にそいつだけは手を出すなと釘を刺されたメンバーと共にゲーム開始まで待つこと数分。
『ゲームを始めます。試合開始です』
と開始宣言のアナウンスが放送された―――。
新校舎の生徒会室にライザー・フェニックスと
「さて、あの小僧はどれだけの人数を集めたか見物だが、俺の手でぶちのめさないと気が済まない」
一誠に対する怒りと決意がライザーのやる気を滾らせる。既に眷属悪魔たちの殆どが旧校舎や相手が攻めてくるであろう場所へ赴き出迎える為に待機している頃。ライザーはしばらくして耳に聞こえる自身の眷属悪魔の報告の声に相槌を打って優雅に待った。
「さぁ・・・・・この俺、ライザー・フェニックスと知ってどう打ってくるかな?小僧―――」
『ラ、ライザーさまッ!』
「―――なんだ」
焦りの声が聞こえてくる。まだ開始して間もないのにだ。相手に対して怯えているんじゃないだろうなとライザーは返答した。
「どうした?」
『バ、バトルフィールドが物凄い勢いで―――キャアアアアアアアアアアアッ!』
甲高い悲鳴がライザーの耳に飛び込んで、思わず顔を顰めるライザーだった。
だが、それ以降の報告は途絶えなにがどうなっているのか分からず「
確かめさせると。
「これは・・・・・」
「なにかわかったか?」
「・・・・・水によって戦場が変わってしまっています」
「戦場が変わっただと?水で?」
何かの間違いではないかとライザーは高をくくって今度は自分自身の目で確認しようと
生徒会室から出ようと扉を開け放った瞬間。大量の水がライザーたちがいる部屋まで入ってきた。
「なんだこれは・・・・・外は一体どうなっている!?」
「と、思っているだろうなー。あっはっはっはっ!」
『・・・・・』
面々は唖然として眼下を見下ろしていた。学園をベースに作られたレプリカの戦場が、
まるで津波によって建物が水に沈んだ光景に一変していたのだった。
それをしたのが兵藤一誠なのだから驚きは隠せないだろう。
「これだけの水をたったの一つの魔法でここまで換えてしまうなんて・・・・・」
「ハルケギニアの錬金って面白いよな。実際にここまでやったのは俺も初めてだが
これで金剛も戦いやすくなっただろう」
「って、私たちは戦い辛いだろが」
「ん?それも問題ないよ。今から足場を作る」
金色の杖を前方に突き付けて能力を発動する。次の瞬間、水の中から数多の石の足場が
続々と顔を出したのだった。
「これで問題は無いだろう?」
「お前・・・・・どんだけ凄いんだよ?」
「できることを俺はしているだけだ。さて?本陣も沈んだから
これで相手はプロモーションができなくなった。どう打ってくるのか見物だな」
屋根から飛び降りた一誠に続き、他の面々も石の足場に跳び移った。
敵も味方も誰一人欠けていなく目の前に現れるまで待つこと数分後。
濡れ鼠みたく、服がびしょ濡れのライザーの眷属たちが近づいてくるのを発見した。
「んじゃ、戦いの始まりだ。自己責任で行動しろ。ただしライザーは俺がやる」
一誠の指示に従い、一誠を味方とする面々は動き始めた―――。まず最初にぶつかったのは百代とチャイナドレスを着ている少女だった。
「水に滴るカワイコちゃんだな。お姉さんがたっぷりと可愛がってやる」
「そんなの、お断りよ!」
手足に炎を纏わせた状態で攻撃を仕掛けてくる。それを楽しげにかわし続ける百代は声を掛ける。
「あはっ、流石は悪魔だ。人間じゃできそうにないことをやってくれそうだな」
「そんな悪魔にただの人間が挑むなんて正気の沙汰じゃないわね!」
「そう思うか?」
炎を纏った手ごと百代が掴んで見せた。その行動に相手は目を見張った。
「そう言えば名乗ってなかったな。私は川神百代だ。お前を倒す武神と称されている美少女だ」
名乗りながら百代は相手の拳に気で変換し氷を覆わせていく。凍っていく自分の拳に信じがたいものを見る目で焦りが含んだ言葉を発する。
「なにこの力は―――!?」
「川神流・雪達磨。相手を凍らせる流派の一つだ」
ドッ!
驚いている隙に相手の腹部に拳を突き刺した。
「がはっ!」と肺からすべての酸素を吐き掴まれたまま身体を震わせて膝から崩れる
その様子に百代は首を傾げた。
「おいおい、今のは軽くだぞ?悪魔は丈夫じゃないのか?」
「こ、これで軽くだなんて・・・・・舐めないで!」
回し蹴りを放った相手の態勢より低くし、かわした刹那の間に百代は
「川神流・人間爆弾」
「っ!?」
ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!
百代を中心に大爆発が生じた。やがて黒煙が消える頃には百代が無傷で立っていて、
相手はひれ伏して光に包まれていた。
「・・・・・なんだ、もう終わりなのか?」
「こ、この・・・・・化け物・・・・・」
それだけ言い残し、相手はこの場から光となって消失した。
『ライザーさまの「
リタイア宣言がアナウンスによって告げられた。それを聞いて百代は嘆息した。
「悪魔も人間よりは強いみたいだが・・・・・私を楽しませてくれるのには
まだまだ実力は不十分だな」
一方、別の場所ではイリナが一人の剣士と戦っていた。
「久し振りだなあの時の聖剣使い!まさかまた相見えるとは思いもしなかったぞ!」
「それはこちらの台詞よ!今回は成敗できないけど倒すわよアーメン!」
「やってみろ!」
『
鋭く伸びる刀身に対応する相手はイリナと戦ったことがあるのだろう。中々決着がつかず、
袈裟、上段、下段、突き、受け流す剣術を繰り返していると、
「一つ訊いて良いか」
「なにかしら?」
ガキン!と刃を交わした後に後退した時に相手から訊ねられた。
「この場に現れたということはあの兵藤家の者に声を掛けられたのだな?」
「そーよ。彼は私の幼馴染なんだから戦う理由はあるわ」
「ならば問おう。あの者は剣術の使い手でもあるか?もしもそうならば、どれだけの強さなのか教えて欲しいのだが」
純粋な気持ちで訊ねられたイリナは自信に満ちた表情で言い切った。
「少なくとも私よりは強いわよ」
「ふっ、そうか。ならば―――!」
と、剣を上段の構えで飛び掛かってきた。
「お前を倒した後にあの男と剣を交えよう!」
「そんなこと私が許すもんですか!」
再び剣を交えた二人だった。他の場所では―――。
「ファイアボール!」
「その程度の技が効くと思っているのかしら?」
踊子のような衣装の出で立ちの少女が軽く避けて見せた。カリンは焦らず冷静に戦いを挑む。
武器らしいものは無く、相手は肉弾戦で戦うタイプのようだった。他にメイド服を着ている相手もいたが、
「はい、また会う時は強くなってくださいね」
「て、手も足も出ないなんて・・・・・!」
「バイバーイ」
「く、悔しい・・・・・っ!」
龍牙と小雪によって倒されていた。
「だったら、避けられない魔法を放つまで」
肉薄してくる相手を意識しながらレイピアを頭上に。
そして周りの水がカリンに従うようにうねり始め。
「沈め!」
膨大な量の水が渦潮の如く迫り、とてつもない攻撃の光景に足が竦み、
体が硬直して避けることすら頭から無くなってしまい、そのまま飲みこまれてしまった。
『ライザーさまの「
「よし、勝ったぞ!」
カリンが勝ち鬨をあげている時と同じくして、水上を走っている金剛が着物を着ている
相手に集中砲火を食らわせ倒していた。
『ライザーさまの「
また一人、ライザー・フェニックスの眷属が破れた。そのアナウンスが放送された直後。
「私の前に存在するものは全て氷る」
エスデスが一人の「
「悪魔でもやはり氷るか。・・・・・一誠はどうなのだろうな」
周囲に目を配るエスデス。上空から爆発の音が聞こえ、視線を上に向けると
和樹と「
「式森と戦う時が来るなんてね・・・・・」
「どなたか知りませんが、爆発が主な攻撃みたいだね。まるでクラスメートの姉みたいだ」
「あら、それはどういう意味なのかしら?」
「うーん、爆弾魔?まぁ、あなたの方が優秀だと思いますよ。
ただし、可愛さならあなたは劣りますが」
その一言に相手の口元が引くついた。
「どうやらちょっとお仕置きが必要のようね」
「ごめんなさい。僕、嘘つくのが苦手で・・・・・・化粧も濃いですよ?」
「―――――吹き飛べ!」
「それはあなたがですよ?」
「
放たれるはずだった攻撃が魔方陣の中で発動してしまい、自滅の形で食らった。
「はい、さようなら」
指をパチンと弾いた瞬間。上空に現れた巨大な魔方陣が雷を放って「
悲鳴を上げる間も無く、バトルフィールドから光となって姿を消した。
『ライザーさまの「
「まだまだ魔法と魔力がなってないね。修行して出直してきなよ」
そう漏らした和樹は上から戦況を確認する。
「こいつ、私の拳が効いていないのか・・・・・?」
「んー・・・・・ZZZ」
顔の半分が仮面で覆われているメッシュが入っている女性と立ったまま寝ている辰子に
殴る、蹴る、体勢を崩すなど、繰り返して攻撃しているが辰子にダメージらしい
ダメージは無い。一方的に無防備な相手に攻撃をするなど些か忍びないと思う女性なのだが、
いくらなんでも戦場に寝るなど信じられないのだ。
「あー、やっぱりこうなったか」
そこへ、様子を見に来たという風に現れた一誠。女性は事情を知っているだろう一誠に問い詰めた。
「お前、こいつは一体何なんだ」
「寝ることが家族の次に好きな俺の友達です」
「そんな者が戦えるわけがない。どうして戦わせる」
「こいつの姉が本気を出せば強いというから参加させたんだ。実際に俺も半信半疑だ」
そう言いつつ一誠は地面に倒れて寝ている辰子に一言。
「こう言えばいいって本当かな・・・・・辰子、俺の為に本気を出せ!」
と、叫んだ一誠に女性は伺っていた時―――。辰子の目が大きく見開き、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
今まで感じなかった巨大な闘気、獣のような咆哮を発し、起き上がった。
一誠と女性はそれには目を見張って信じられないと表情をした。
「なんだこいつ、さっきまでと雰囲気が全然・・・・・!」
「一誠くんの敵を倒す!」
動揺、驚愕する女性に肉薄する辰子。女性は気を取り直し、拳を構えて辰子に
鋭い正拳を突き出すと獣のような俊敏さでかわし、本能に従った戦いをしだす。
捕まえようと手を突き出す辰子から避け続け、隙あらば―――。
「はっ!」
足で辰子の腹部を貫く勢いで蹴りつけた。しかし、辰子はその攻撃を怯む素振りをせず
逆にその脚を片手で力強く掴み、叫びながら女性を振り上げて地面に何度も何度も叩き付けた。
「・・・・・亜巳、お前の妹はとんでもないな。俺ですら驚いたぞ」
様子を見守っていると辰子は叩きつけるのを止め、女性の身体に跨って蹂躙、暴虐、
怒涛の拳のラッシュを行ったのだった。そして他のところでは、
「ちょっ!小さな子供がチェンソーを振りまわしてくるってどういうことなのよぉっ!?」
「「バーラバラ♪バーラバラ♪」」
一子が双子の女の子と苦戦していた。連携はともかく、
持つ武器が一子の武器と相性が悪過ぎるのだ。柄で防ごうとすれば両断され、
武器としての機能が格段に陥るのだからけん制しつつ対処方法を脳裏で考える。
「川神一子。我も助太刀するぞ」
「揚羽さん!?」
今日の為に仕事を放棄し、一誠の仲間となった九鬼揚羽が威風堂々と歩み寄ってきた。
「これはチーム戦なのだろう?ならば一人で戦わず協力し合うべきだ」
「はい!」
これで2対2となり、一子も戦いやすくなった。
「素手で勝てると思ったら」
「大間違いだよ!」
双子が二人に迫る。揚羽にとって子供の攻撃は止まって見るぐらい遅く、チェンソーを
振り回される前に懐に飛び込んでは―――。
「全てが甘く温い、修行をして出直すがいい!」
爆裂的な正拳突きが双子の一人の腹部に突き刺さった。
胃液を肺の中に合った酸素諸共吐き、水中に叩きつけられた感じで殴り飛ばされた。
「メル!?」
「余所見は厳禁!川神流・風林火山!」
長刀による怒涛の攻撃をモロに食らったもう一人の双子が悲鳴を上げる最中、
光となってバトルフィールドから姿を消した。
「あ、悪魔って色んな子がいるのね・・・・・ガクトだったら絶対に攻撃できないわよ」
「我も悪魔を見るのは初めてであるが、外見は人間なのだな。まるでドラゴンの一誠のようだ」
そんなこんなで「
「一人だけ倒してはいけない子がいるし・・・・・そろそろ彼の出番かな?」
和樹の予想は当たっていた。ナヴィを辰子の傍にいさせ一人だけライザーの元へと向かっていたのだった。水に浸かる新校舎の屋根の上にライザーが一人佇んでいる。
「どうやらお前以外の眷属悪魔は殆どやられたらしいな」
「・・・・・小僧・・・・・っ」
「小僧じゃない、俺は兵藤一誠って名前があるんだ。覚えておけ」
いよいよ一誠はライザーを見上げる位置にまで近づいた。
不敵にライザーを見上げる一誠と険しい表情で一誠を見下ろすライザー。
「俺たちもやろうか。『
「どこまでも俺をコケにしてくれるっ・・・・・いいだろう、覚悟しろよ!」
背中に炎の両翼を展開して宙に浮かんだ。
「火の鳥と不死鳥フェニックスと称された我が一族の業火の炎で貴様を燃やし尽くしてくれるっ!」
有り得ないほどの質量の炎を身に纏って滑空してくるライザー。
「―――右手に魔力、左手に気」
それぞれの手の平に魔力と気を具現化し、それを合わせ始めた。
「―――感卦法―――」
二つの力が融合し、一誠の全身は光るオーラに包まれた。そして―――
「お前のチンケな炎で俺が消えるわけがないだろうっ!」
その状態で、生身の身体で、素手でライザーに殴りかかった。