HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード11

「ここにきて一気に有名人になったわね?」

 

「・・・・・言うな」

 

「見て見て兵藤。兵藤の顔がこんなに大きく載っているヨ!」

 

「・・・・・見たくない」

 

頭を抱えて机に突っ伏す一誠がいた。パチュリーや金剛にからかわれ、

穴があったら入りたい気分の一誠であるが他の女子たちからも意味深な視線を

向けられているので、視線を下に落とすことで周りからの視線を逃れるようにしている。

 

「でも、ライザー・フェニックスって不死身の力が有名な元七十二柱の悪魔の一族だったわ。

勝算あるの?」

 

「不死身でも勝てないわけじゃない。勝算はある」

 

「OH!兵藤は勝つ気満々ネ!」

 

「そうだな。だから金剛。お前の力を俺に貸してくれるか?」

 

一誠からの突然の誘いに金剛は目をパチクリした。

 

「私もデスカ?」

 

「ああ、ダメか?」

 

まさか自分を誘ってくれるとは思いもせず、金剛はおずおずと訊ねた。

 

「私が出ても大丈夫なのですカー?水の上じゃないと役に立たないですヨ?」

 

「そこは俺がサポートするから問題ない。バトルフィールドを全て水に換えてでも戦いやすくする」

 

そう言われてしまったら金剛は断わることもできず、一誠と一緒に戦うことを決意した。

 

「ところで、リアス・グレモリーとどういう関係なの?」

 

「昔遊んだことがある友達だ」

 

「じゃあ、恋心を抱いているわけじゃないのね?」

 

「俺は巻き込まれた形で決闘をする羽目になったんだぞ?まぁ、本人の気持ちを無視した

結婚なんて嫌がるのも無理は無い。―――人の人生を我が物顔で決めるなんて

俺も許せないところがあるしよ」

 

目元を細め、声音を低くして漏らした一誠をパチュリーはゾクリと一瞬だけ恐怖を覚えた。

朗らかに言動する一誠が怒っているようにも見えたからだ。兵藤家を嫌う一誠も

また何か遭ったのだろうと確信した時だった。

 

「・・・・・それで、二人だけで戦うってわけじゃないでしょうね?」

 

「当然だ。俺一人で無双の如く働いたら楽しくないもん。相手が弱かろうが皆で戦って

勝つ喜びを味わってみたい」

 

「じゃあ、もう誰かを誘うのを決めているの?」

 

「もう殆ど俺の頭の中では決まっている」

 

残りの時間まではまだまだあるというのにメンバーは決まりつつある。

一誠は一体どんなメンバーを集めるのか興味が湧く。

 

「んー、今誘ってみるとするか」

 

「いま?この学校にいるの?」

 

「いや、他の学校に通っているはずだ」

 

徐に金色の杖を具現化させるとブツブツと呪文を呟くと―――一誠が分裂した。

 

「OH!?」

 

「これって・・・・・」

 

金剛とパチュリーが目を張った。まさかもう一人の一誠が現れるとは露にも思わなかったと。

 

「忍者で言うと分身の術ってやつ。魔法で分身体を作ったんだ。しかもちゃんと実体化している」

 

「そういうことだ。んで、オリジナル。俺はどうすればいい?」

 

「俺の代わりに授業を受けてくれ」

 

「了解。―――襲われるなよ」

 

「・・・・・善処する。オーフィス、放課後まで帰ってくるから待っていてくれ」

 

コクリと頷くオーフィスの頭を撫でてやると黒いローブをどこからともなく取り出しては羽織り、

全身を包んで教室から姿を消したのだった。

 

 

 

 

 

川神学園―――。その学園は実力主義、格差社会が実施されていて

数多くの生徒たちは武家、武を嗜んでいる者たちで溢れ返っている。その学園の中で

一、二位を争う少女たちが屋上にいた。

 

「HRからずっとここにいるな。なにをしている?」

 

「この青い空を眺めたくなってな」

 

「空を?そのぐらいの事なら教室の中からでも見れるだろう」

 

「こう言うのは一人だけで眺めたくなるんだよ。―――昔のことを思い出すとな」

 

遠い目で漏らす艶やかな腰まで伸びている黒い髪、血のように赤い眼の少女に強い意志が

籠っている青い双眸と同じ色の長い髪に黒髪の少女と同じ白い制服を内側から

盛り上げる豊かな胸と身長の少女は自然と胸に下げている瑠璃色のネックレスに触れた。

 

「・・・・・確かに、その気持ちは分からないわけではないな」

 

二人の少女の脳裏には一、二を争う幸せな時が浮かんでくる。

何時もこの昔と変わらない青い空の下には赤い髪の子供がいた。

 

「あいつ、学校に通っていれば私たちの後輩だよな」

 

「そうだな。『お兄ちゃんが良い!』と言っておきながら歳は私たちより下だ。

学年も下であるということは弟みたいなものじゃないか」

 

不意に笑みを零す二人だった。

 

「はははっ。あいつが兄風を吹くなんて絶対無理だろう」

 

「私たちに可愛がられる為に存在しているようなものだとは思わないか?」

 

「ああ、思うな。もしも再会したらたっぷりと可愛がってやる」

 

と、黒髪の少女が笑みを浮かべつつ言った時だった。

 

「「―――――」」

 

「―――――」

 

屋上に全身を覆う黒いローブを纏った虚空から姿を現した。

それを静かに察知し、ゆっくりと振り返る。

 

「さて、お前は誰なんだろうな?」

 

「返答次第では五体満足で見逃すが」

 

二人からの問いかけに、黒尽くめの人物は無言で佇むだけだ。

 

「だんまり・・・・・か。エスデス、この場合お前だったらどうする?」

 

「愚問な事を―――力尽くで聞きだした方が手っ取り早いものではないか」

 

青い髪の少女にエスデスと、黒い髪の少女に百代と呼び合った二人の少女は臨戦態勢の

構えを取った。

 

「ジジイには不法侵入してきた奴を捕える際に」

 

「戦闘になってしまったと」

 

「「言い訳が成立できるな」」

 

黒尽くめの人物に飛び掛かり、左右から迫ろうと二人は攻撃を仕掛けた。

どちらも実力は折り紙つきで片や氷を鋭利な刀剣に造形し、

片や軽くコンクリートの壁を壊す程の威力を持つ拳を相手に向かって突き出した。

 

「・・・・・」

 

それをいとも容易く上半身だけ逸らしてかわした黒尽くめの人物はこう指した

二人の腕を掴み、力強く青い空へ向かって放り投げた。

 

「なっ・・・・・!」

 

「私たちを同時に空へ・・・・・!?」

 

信じがたい体験に驚きを隠せないが気を取り直して体勢を立て直した矢先、

何時の間にか目の前に黒尽くめの人物が懐に飛び込んでいてそれぞれ蹴りを放ち

グラウンドへ叩き付けた。その光景に教室の中に、学校の中にいた生徒や教師が

目撃しグラウンドへ目を向け始めた。

 

「こんのぉ・・・・・いまのは効いたぞ」

 

「まったくだ・・・・・」

 

地面に背中から落ちず華麗に着地しながら漏らす。黒尽くめの人物もまた二人の前に着地した。

 

「いい度胸だ。私たちに喧嘩を売る奴は久し振りだ」

 

「身の程知らずが、倒れるがいい!」

 

エスデスが数えきれないほどの氷の槍を具現化して放った。その氷の槍から跳躍して

避けたところで百代が拳を突き出してくる。空中での格闘戦が繰り広げられ、

一瞬で肉眼では捉えないほどの手足で使う攻防戦が地面に着くまで続いた。

 

「―――面白いっ」

 

直接戦っている百代の顔に狂喜の笑みが浮かびだす。ここまで自分と肉弾戦が

できる者は片手で数えるぐらいしかいない。この小さな箱庭という学園と町しか

知らない百代にとって突然現れた強者に心底、熱く心が躍る。

 

「どけ、百代!」

 

エスデスからの催促に心の中で舌打ちをしつつ―――真上に振ってくる巨大な氷塊から離れた。

黒尽くめの人物はその氷塊を眺めた後に潰れた。

 

「「・・・・・」」

 

グラウンドに降った巨大な氷塊。あの黒尽くめの人物が避けることもなく

巨大な物質の量に圧縮され姿形も残さず潰れた。

しかし、百代とエスデスは警戒心を解くことは無かった。

 

ギェェェエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!

 

氷塊から聞こえる巨大な獣のような咆哮。その声の振動で氷塊が震え、何時しか崩壊したのだった。

崩壊した氷の向こうから姿を現す―――全身黒い鱗に覆われながらも太陽光で紫も発光させる

他に足が逆関節で、ベースは人型、三つの鎌首を持ち三つの頭部、六つの赤い目を

百代とエスデスを向ける体長二メートルを超える化け物―――ドラゴンが姿を晒す。

 

「―――さっきの、黒尽くめの奴の正体だというのか」

 

「今まで感じたことがないぐらい禍々しい力を感じさせてくれるな」

 

戦慄、畏怖の念を感じながらも百代とエスデスは―――目を爛々と一匹の化け物との戦いが

できるという事実に戦闘凶が歓喜極まった。

 

『・・・・・』

 

武術を嗜んでいる風体で、体勢を低くし拳を構え出すドラゴン。それには百代はさらに笑みを深めた。

 

「嬉しい、嬉しいぞ私は!最っ高に楽しくなりそうだぞ!」

 

「倒し甲斐が、狩り甲斐があるのはまず絶対に確実だな」

 

エスデスもまた氷の剣を作り出して構えた。

 

「言っておくが、譲る気は無い」

 

「それはこっちの台詞だ。だったら―――」

 

「「どっちが早く倒すか。それでいこうか!」」

 

百代とエスデスが肉薄する。ドラゴンはその巨体に似合わず体勢を低くした状態で

地を蹴って二人に向かって飛び出す。

 

「―――顕現の三・毘沙門天!」

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

コンマクラスの速さが空から降って来た、気で具現化した人の足によって二人と

一匹は避けることもできずに押し潰された。

 

「まったく、なにをはしゃいでおるのじゃお主らは」

 

「ジ、ジジイ・・・・・っ!」

 

起き上がり、百代が怒りで身体を震わしながらグラウンドに現れ溜息を吐く

白い袴を身に包む老人に食って掛かった。

 

「生徒と孫娘まで一緒に奥義を食らわすんじゃない!」

 

「両成敗じゃバカ者。それに手加減はしたからお主はチートな回復技、

瞬間回復をしない程度のダメージで済んだじゃろうが」

 

「エスデスは気絶してるだろう!明らかに生徒への暴力故意だろうが!」

 

「修行や鍛練が足りん。それだけのことじゃ」

 

この暴力変態ジジイ!と百代から罵倒を浴びされても老人は気にせず、

今起き上がったドラゴンに対峙した。

 

「さて、先ほどは手加減したが今度は本気でやるぞぃ。ワシが相手になる」

 

『・・・・・』

 

老人の言葉にドラゴンはしばらくその場で佇んだ。するとドラゴンは口を開いた。

 

『久し振りだな。お爺ちゃん』

 

「・・・・・なんじゃと?」

 

ドラゴンが人語を発した。それだけでも驚きなのに自分のことを親しみが含んだ

呼び方で声を掛けられた。

 

『今のは軽くと言われてもな。地味に俺も効いたぞ。どんだけ強いんだお爺ちゃんは?』

 

「・・・・・お主、誰なのじゃ?」

 

『やっぱ、この姿じゃ気付かないか』

 

頬らしき部分に鋭い爪で引っ掻くドラゴンが禍々しいオーラに包まれだした。

その中でなにが起きているのか分からなず百代と老人は見守る姿勢になる。

そして―――禍々しいオーラが人の手で薙ぎ払われ中にいたドラゴンが姿を現す。

 

「お主は・・・・・!」

 

「お前・・・・・!」

 

燃えるような真紅の長髪。獣のような垂直のスリット状の金色の瞳。

身長は百代と同じぐらいある少年が朗らかに笑みを浮かべた。

 

「久し振り、お爺ちゃんと百代」

 

「・・・・・一誠・・・・・!お前、一誠だったのか・・・・・!」

 

「おおとも、強くなったなー百代。エスデスも強くなっていたし嬉しい限りだ。

お爺ちゃんが介入してくるとは予想外だったけど」

 

「阿呆、化け物が学校に現れるなどワシが対処する他なかろうが」

 

「しょうがないじゃん。びっくりさせたかっただもん」

 

悪戯小僧のように笑みを浮かべる一誠に百代が抱き付いた。

 

「まだネックレスを付けているのか?」

 

「勿論だ。そしてお前が私の前に来ることをずっと心待ちしていたぞ」

 

「そっか、それは―――」

 

一誠は何かを言おうとしたがそれは―――エスデスの唇に塞がれ、遮られて言うことはできなかった。

百代がその光景に体を硬直させ、しばらくしたら一誠から顔を離すエスデス。

 

「一誠・・・・・ようやく私の元に来たのだな。さぁ、私と結ばれよう」

 

「へ?エスデス?いや、俺は―――」

 

「待て待てエスデス!一誠だけは譲らんぞ!と言うか私の目の前でまた抜け駆けしてくれたな!」

 

瞳を潤わせるエスデスから一誠を奪い、上書きとばかり濃厚な口づけを一誠の唇に

押し付ける百代だった。

 

「こいつは最初から私が狙っていたんだ。だからお前はダメだからな」

 

我が物顔でこいつは私の者だと強く一誠を胸に抱き寄せて示す百代に対し、

絶対零度のオーラを迸り百代を敵意と殺意が籠った目で睨むエスデス。

 

「そいつは聞き捨てならないな。お前とは色々と気が合うから仲良くしていたが、

一誠のことに関してだけは許せない、認めないぞ」

 

「だったらどうする?」

 

「それこそ愚問だな。私たちの様な者がすることはハッキリしているはずだろう」

 

周囲に氷の槍を展開したエスデスに対し、百代は闘気を迸った。

 

「そうだな。だったらこの場で決着をつけるか?」

 

「異論は無いぞ?」

 

敵意を剥き出しに対峙する二人に―――。第三者の手によって未だに

一誠を胸に抱き寄せている百代から奪取された。

 

「一誠くん、一緒にお昼寝しよー」

 

「ちょっ、辰子ー!?」

 

「僕も一緒に寝るー!」

 

「一誠の隣は誰にも渡さない!」

 

とても見覚えのある少女たちが一誠をどこかへ連れて行ったのであった。

その様子を見た百代とエスデスは―――。

 

―――一誠を奪い返し、私が隣で寝る!

 

その想いが二人を突き動かして一誠たちの後を追ったのだった。

 

―――○●○―――

 

「一誠、お前はこの学校に用があったのか?」

 

あの後こっぴどく叱られた面々は屋上で再び集った。右に百代、左にエスデス背中には

白い長髪に赤い瞳の少女、両足に頭を乗せている紫の髪の少女の他にも青い髪の少女は

幸せそうな寝顔で寝息を立てていた。

 

「学校と言うより百代とエスデスに会いに来たんだ」

 

「そ、そうなのか・・・・・じゃあ、何であの恰好を?」

 

「あの恰好だと姿を消せれるから百代とエスデスを探すのに丁度良かったんだ。

でも、二人とも屋上にいたから好都合だったからいいものの。ちょっと久し振りに見た

二人を懐かしんでいたらいきなり攻撃をしかけられたし」

 

「「うっ・・・・・」」

 

「まぁ、あれから数年経っているからどれだけ強くなったのか試しに俺も攻撃をすることにした」

 

百代とエスデスの行為に避難するわけでもなく、寧ろ手間が省けたような言い方で

朗らかに笑みを浮かべた。

 

「しかも、京と小雪、辰子までも会えるとは嬉しい誤算だったな。皆、綺麗に成長したよ」

 

「一誠も格好良くなったねー♪」

 

「一誠、私と結婚して?」

 

「ZZZ・・・・・一誠くんの温もりは良いよぉ・・・・・」

 

三者三様の様々な反応をする少女たち。一誠は久しく再会した少女たちと

静かに過ごしたい気持ちもあったがそうも言ってられない。

 

「百代とエスデス。二人に頼みたいことがある」

 

「なんだ?勝負事なら喜んで引き受けるぞ」

 

「ん、まさにその通りだ。二人にとって満足のできる戦いじゃないだろうけど

今ちょっとした事情で仲間を十六人まで集めているんだ。その内の一人として

仲間になってもらいたい」

 

と、一誠の誘いに百代とエスデスは笑みを浮かべて快く引き受けた。

 

「私たちは義姉弟なんだぞ?弟の言うことを姉は聞くものだ」

 

「そうだぞー?ま、その見返りに色々とお願いするがな?」

 

不敵に述べる姉の二人を「俺は兄じゃないのか」と不貞腐れた。

そんな一誠にエスデスが指摘した。

 

「お前は前世でも来世でも弟ポジションだ」

 

「来世も!?来世ぐらいは兄の立場が良い!」

 

「いーや、私が許さないぞ。こんな強くて可愛い上に格好良い弟は滅多にいないからな」

 

早速一誠を弄り始める。何時しか、京、小雪も話に加わり和やかな雰囲気に包まれた最中、

屋上に騒々しく現れた面々が声を掛けてきた。

 

「フハハハハッ!久し振りであるな一誠よ!」

 

「よーう兵藤、久し振りじゃねぇか!」

 

「本当だね。元気にしてた?」

 

「ヤッホー兵藤、お久しぶりじゃない!」

 

「風間ファミリーがやって来たぜぇー!」

 

「よう、元気そうでなによりだな」

 

複数の男女たちだった。一人一人一誠と面識がある。

 

「お前らか。お前らも成長したな」

 

「お前には驚かされたぞ。まさか、武神と氷帝と戦ってい化け物がお前だったなんてな。

お前、人間じゃなかったんだな」

 

「そのことについてはノーコメントだ」

 

「や、あんなの見てノーコメントは意味ないでしょう」

 

「師岡はツッコミ役なんだな」

 

と、苦笑を浮かべた一誠。それから一人見知らぬ金髪に青い瞳の少女と目が合った。

 

「新しい友達か?」

 

「ああ、クリスティアーネ・フリードリヒってんだ」

 

「そうか、俺は兵藤一誠だ。よろしく」

 

軽く挨拶を済ませた一誠にポニテールの少女が問いかける。

 

「それで兵藤はどうしてこの学校に来たの?それにその格好、どこかの学校の制服でしょ?」

 

「百代とエスデスに用があってな。もう済んだところだ」

 

「用って何?」

 

「うん、悪魔と試合することだ」

 

あっけらかんに言った一誠に対し、あっけらかんと一誠を見詰める面々。

 

「あ、悪魔って・・・・・あの?」

 

「人とは違う種族。人の欲望を叶えその対価を得る悪魔―――だと言いたいんだろう?

あながち間違っていない」

 

「ちょっ!そんな危険な奴とモモ先輩が戦って大丈夫なのかよ!?」

 

鍛え上げられた肉体を持つ男子が心配するが一誠は問題ないと首を縦に振った。

 

「大丈夫だ。百代みたいな強い奴だったら戦える。その資格もある」

 

「なら私もそうなのだな?」

 

エスデスからの質問にも一誠は頷く。

 

神器(セイクリッド・ギア)を所有しているからな。問題なく戦える」

 

「ふっ、ならば全てを凍らせてくれよう」

 

と、エスデスが漏らすとポニテールの女子が手を挙げた。

 

「はい!私も戦ってみたいわ!」

 

「んじゃ、俺さまも戦ってみようかなー」

 

「俺も俺も!」

 

「どんな戦いになるか分からないけど、作戦を考えるぐらいなら俺も参加できるか」

 

「我も悪魔とやらを見てみたいな!」

 

何故か参加する気満々の男女たち。一誠は苦笑を浮かべ、

 

「相手、女しかいないんだけどそれでもか?」

 

と説明すれば案の定、目をパチクリした面々だった。

 

「・・・・・マジで女しかいないの?」

 

「一人だけ男がいるけどな」

 

「ハーレムかよ!なんだよそいつはよぉっ!」

 

「・・・・・島津は何で血の涙を流すんだよ」

 

「ガクトは女の子にモテたいんだよ」

 

そう言われて呆れ顔で溜息を吐いた。

 

「岡本―――」

 

「あ、アタシは今、川神一子よ?川神院の養子となったの」

 

「ん?そうだったのか。んじゃ、一子と呼ばせてもらうな。

―――一子以外全員仲間にする気は無いんで」

 

と、否定の言葉をハッキリ言った。それには赤いバンダナを巻いた男子が不満そうに漏らす。

 

「いいじゃん。俺たちにも参加させてくれよ」

 

「ゲーム感覚で参加する気ならこっちからお断りだ。それに相手は悪魔だ。―――力のない奴は

負ける運命から抗うことはできないんだよ。特に直江、お前は考えるだけなら

仲間に加えるつもりは無いぞ。ハッキリ言って邪魔になるだけだ」

 

「・・・・・相手の攻撃をかわすことぐらいなら」

 

それでも一誠は首を横に振った。

 

「これはただの戦いじゃないんだ。俺の友達の人生が懸っている。

最低でも一子ぐらいの実力ならギリギリ認める」

 

「ならば一誠よ。我が姉ならば参加を認めてくれるのだな?」

 

「揚羽か・・・・・今どうしている?」

 

「世界中に飛び回って仕事をしておる。姉上の実力は武神も認めるほどだぞ?」

 

額に☓印の額がある銀髪に金の衣装を身に包む男子が腕を組みながら告げた。

百代へそうなのかと視線で訴えれば百代は肯定する。

 

「そうか。試合は六日後だけど休めれるか?」

 

「姉上や父上に事情を説明すればなんとかなるかもしれん」

 

「それじゃよろしくな」

 

五人目の仲間を得た一誠の後ろから声が掛かる。

 

「ねーねー。僕も参加していい?」

 

「小雪?いや、お前は・・・・・」

 

「僕も戦えるよー?不思議な力だってあるし」

 

小雪が一誠から離れると目の前で空気中の水分を凍らせて見せた。

エスデスはそんな小雪に近寄って頭を撫でた。

 

「私と同じ力を持っているんだ。問題あるまい?」

 

「それに寝ている辰子も本気になれば結構強いぞー?」

 

「・・・・・マジでか」

 

知らない間に色々な意味で成長していた友人達。結果、七人目となった。

 

「因みによ。その試合って観戦できるわけ?」

 

「それについては俺も分からない。ま、聞いてみるよ」

 

一誠は時が来たら迎えに来ると言い残し川神学園の屋上から姿を消したのだった。


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