HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード10

新たな家になってから翌日。いつもとは違う朝を迎えた一誠たち一行は学校に向けて足を運ぶ。

朝から二人の親バカに見送られ、恥ずかしげに、苦笑いを浮かべつつ別れて市街地の中を通り、

事例のない学校へ赴く最中に、

 

『兵藤一誠ッ!』

 

屈強な男たちが敵意と殺意を醸し出して行く道を阻む。

 

「・・・・・誰でしょうか?」

 

と、不思議そうに漏らしたネリネに反応した男たちが告げた。

 

「俺たちはネリネちゃんファンクラブの者だ!」

 

「同じくシアちゃんファンクラブの者!」

 

「リコリスちゃんファンクラブの者であーる!」

 

軽く五十人はいる男たちが一誠に言い放った。

そのファンクラブの者たちが自分に何のようだと顔に出す。

男たちはビシッ!と一誠に指を突き付けた。

 

「貴様、わが校のアイドルたちを独占など言語道断!」

 

「今すぐアイドルたちから離れろ!」

 

「アイドルたちのことは我々親衛隊に任せればいい!」

 

竹刀や金属バット、ボクサーらしき者やエアガンを持った者たちが攻撃体勢になった。

 

「・・・・・ファンクラブとか言ったのに何で親衛隊と言うんだ?」

 

「イッセー、明らかに面倒そうな相手なんだけどどーすんのよ?」

 

ルクシャナから話し掛けられ、溜め息を吐く。その間、親衛隊たちは駆け出してきたのだった。

 

「全員を相手にしたら遅刻だろう」

 

「それで?」

 

「転移魔方陣でゴーだ」

 

一誠たちの足元に一つの大きな魔方陣が出現した。その魔方陣の光が一誠たちを包んだ

途端に弾け、襲い掛かってくる親衛隊の前から姿を暗ました。

 

 

 

「まいったわね・・・・・」

 

その日、パチュリーは図書室にいた。警戒しながら今日は本を読もうと思って朝早く、

図書室の鍵を借りてホームルームの時間まで読んでいた。が、没頭していたせいか

時間はあっという間に過ぎていて朝早くから一人でいたことに災いとなってしまった。

 

「どーこーにーいるのかーなー?」

 

「・・・・・ッ」

 

朝早くから図書室に来る者は、自分みたいな本の虫か人気のない場所で密会する者しか

来ないだろう。パチュリーは図書室の深奥、人気のない場所で本を読書していたため、

会いたくない者に追われる羽目となった。相手は―――兵藤である。楽しげにパチュリーを

追い詰めるその言動はまるで兎を狙う肉食獣。

 

「(扉は複数。だけど、扉に向かう前に捕まれる可能性が高い・・・・・)」

 

脳裏でこの場から脱出を計るものの、相手は身体能力が長けた男子。非力な女子、

しかも魔法使いなのに魔法を放てないほど貧弱な身体で抵抗は無意味に等しい。

 

「(アリスがいてくれればよかったのだけれど・・・・・しょうがないわね)」

 

強行突破。これしかないとパチュリーは決断をし、

ダッと駆けた矢先に目の前に男子が歪んだ笑みを浮かべて逃走経路を阻んだ。

 

「この間は逃げられたが今回は逃がさないぜ?」

 

「・・・・・この外道っ」

 

「外道?強い奴は何だって許されるんだ。それが兵藤家の教えなんだぜ?

それに犯罪を起こしても兵藤家が握り潰してくれるから俺たちはやりたい放題だ」

 

相手が一歩足を踏み出すとパチュリーも一歩後退する。そうしていく中で語る。

 

「・・・・・私が知っているあの兵藤とは大違いね」

 

「あ?誰のこと言ってんだよ」

 

「あら、知らないのかしら?最近あなたたち兵藤の者たちが

どこかの誰かさんにやられているじゃない」

 

パチュリーの発言に険しい表情となった兵藤。

心当たりがあるようで、返す言葉が見つからないのだと悟りパチュリーは心中嘲笑った。

 

「俺とやられたあいつらと一緒にするな」

 

「そう、ならどれだけ強いのかしら?」

 

「なんだ、強い男にしか靡かないってか?」

 

「私は知りたいだけよ。強い奴は何だって許されるなら―――あなたより強い人がいたら

あなたは最後までそう言い切れるのかしらね?」

 

意味深に笑みを浮かべたパチュリー。兵藤は目を細め怪訝な面持でパチュリーを睨んだ時、

 

「兵藤、申し訳ないけど倒してくれる?」

 

「っ!」

 

誰かに向かって言った言葉に兵藤が背後へ衝動的に振り返った瞬間・・・・・。

凄まじい力で顔を掴まれた。

 

「HR間近になっても教室にいないから探したぞ。気でな」

 

真紅の長髪に金色の瞳を持つ男子がそう漏らした。

 

「さっきから後ろにいたんだけどな。お前、全然気付かないし目の前の欲望に意識を

向けすぎなんじゃないか?」

 

「だ、誰だお前は・・・・・っ!」

 

「お前と同じ兵藤の名を持つ者だと言っておくよ。

お前らと一緒にされるなんて不愉快極まりないがな」

 

腕が段々と上がって兵藤の足が床から離れた。

 

「さて―――?強い奴は何だって許されるなら、俺も許されるよな?」

 

その言葉を聞いた瞬間に兵藤の目が大きく見開いた。今この状況は自分にとって不利な展開だ。

 

「ま、待てよっ!同じ兵藤が何で攻撃をするんだよ!?意味が分からねぇっ!」

 

「同じ兵藤のものだ攻撃をしてはならない決まりなんてあったっけ?俺は知らないがな」

 

後ろへ引いた拳に赤いオーラが帯び始めた。その一撃は計り知れない。兵藤が顔を青ざめる。

 

「ま、待て!お前もこいつを狙っていたなら譲るからその拳を下ろせ!」

 

「残念だが、俺はお前を狙っていた。お前ら兵藤家が散々、この学校に迷惑を掛けてきたからな。

俺までそうなのだろうと思われて嘆かわしいったらありゃしない」

 

少年の顔から表情が消え、躊躇の色さえもない。

 

「―――くたばれ」

 

赤い拳が凄まじい勢いで兵藤に突き出された。

 

「と、思ったが止めた」

 

顔に向かって放たれた拳は寸前で停め、掴んでいた手を緩めて兵藤を床に落とした。

 

「へ・・・・・?」

 

攻撃されず、解放されたことに呆ける兵藤に少年は声を掛ける。

 

「パチュリーにまだ手を出していないのに俺が手を出したら暴力事件になるだろうが。

それとも、痛い目に遭いたかったか?そういうことだったら俺は喜んでお前の腕を折ることも

躊躇しないぜ?」

 

「ひっ・・・・・!」

 

「ああ、二度とパチュリーに手を出すなよ?手を出したら・・・・・分かるな?」

 

最後にギロリと睨んでやると兵藤は情けない声を発しながら図書室からいなくなった。

それを見送ったパチュリーは少年に向かって感謝の言葉を発しようとしたが

 

「このバカが」

 

そう漏らす少年にデコピンされた。地味に痛かったようでデコピンされた箇所に

手で押さえつつ涙目で睨んだ。

 

「な、なにを・・・・・」

 

「お前自身が言ったことをどうしてしたんだよ。一人じゃ危険なら図書室になんて来るな。

俺が来なかったらお前は確実にヤられていたぞ」

 

ぐうの音も出ず、パチュリーは無言で頭を垂らす。

 

「・・・・・ここに来たかったら俺を誘え。用心棒代わりにぐらいなるだろう」

 

「・・・・・いいの?」

 

「ああ、その変わりと言っちゃあ何だが。

パチュリーはこの図書室にある本を熟知しているんだよな?」

 

それは当然とパチュリーは頷いた。司書と言う肩書は伊達ではないのだ。

 

「なら、珍しい品や植物、食べ物が記された本を教えて欲しいんだ」

 

「それって部活の為?」

 

「ああ、何事も情報が必要だからさ」

 

少年は朗らかに笑みを浮かべ、パチュリーに乞うた。

 

「そうすればパチュリーも気兼ねなく本を読めるだろう?」

 

「それはそうだけど・・・・・あなた、授業はどうするの?」

 

「問題ない。今はお前が心配で仕方がないんだよ。身体が弱いお前は狙われやすいしな」

 

そう指摘され嘆息する。それは自分の悩みでもあるからだと。

 

「・・・・・私だって、魔法を使えれば危険な目に遭わないわよ」

 

「身体の丈夫さが問題だよな。なんか、身体が強くなれる秘薬とかないのか?」

 

少年の質問に手を顎にやって思考の海に潜り込んだ。

 

「あるにはあるけれど、手に入らないかも」

 

「ん?」

 

「一番信憑性あるのはドラゴンの血なの。飲み続ければ体が丈夫になって身体能力も向上するとか。

実際に本で読んだ程度だから本当かどうか分からないわ」

 

パチュリーが例を上げた時に少年は溜息を吐いた。

 

「・・・・・また血か」

 

「え?」

 

「いや、なんでもない。でも、ドラゴンの血ならここにあるぞ」

 

と、自分に向かって差す少年。それはどういうことなのかパチュリーは理解し難い気持ちでいた。

そんな反応をする彼女に少年はスッとパチュリーの耳元で漏らした。

意味深に笑みを浮かべ、ボソリと声を殺して―――。

 

「俺は人間じゃない。ドラゴンなんだ」

 

―――○●○―――

 

それから授業を問題なく受け、あっという間に放課後となった。

何時も通り、真っ直ぐ家に帰る支度をしていた面々だが、

 

「先に帰ってくれ。俺は寄る場所があるから」

 

と、一誠は一人だけ別行動をすると述べた。咲夜たちは深く追求もせず、

言われた通り先に帰宅した。

オーフィスだけは一誠の傍から離れないと肩に乗っていて共に行動する。

 

「イッセー、どこに行く?」

 

「リアスたちがいる部室だ。生徒会の会長から教えてもらったからな」

 

「リアス・・・・・グレモリー?」

 

肯定と頷く一誠。一階の廊下を踏み続け、学校・・・・・本校舎から離れた木造建ての

旧校舎に足を運んだ。手入れは整っているようで蜘蛛の巣やホコリなど一切ない。

上階へ行ける会談を登って、魔力が集結している部屋の扉の前に立った。

扉にノックをして待っていると内側から開いた。

少しして部屋の中から銀髪のメイド服を身に包んだ女性が顔を出した―――。

 

「あれ・・・・・グレイフィアさん・・・・・だっけ?」

 

「あなたは・・・・・兵藤一誠さまでしたね。お久しぶりでございます」

 

「久し振りー。元気にしてた?ところでリアスはいる?会いに来たんだけど」

 

「・・・・・居りますが生憎、話が立て込んでおりまして・・・・・」

 

どういうこと?と思いながらも「入って良いか?」と訊ねれば、グレイフィアは一誠と

オーフィスを招き入れてくれた部屋の中に入ると―――大勢の少女や女性、一人だけ男子がいた。

 

「なに、この状況・・・・・」

 

「・・・・・イッセー?」

 

紅の髪の少女が目を張って一誠を見詰める。その少女の目と合い、嬉しそうに笑みを

浮かべ挨拶をした。

 

「久し振りだなリアス。コカビエルさんの一件以来か」

 

「ど、どうしてここに・・・・・?」

 

「リアスを会いに来たからだけど?でも、この状況は何?」

 

説明を求めた時、一誠の目にとある少女が映り込んだ。何時だったか助けた少女である。

 

「お、お前も久し振りだな」

 

「え、ええ・・・・・お久しぶりですわ」

 

「あれからまた人間界に来ているか?来たら来たでまた変な奴らに絡まれるなよ?」

 

「わ、分かってますわよ」

 

金髪のツイン縦ロールに青い瞳、お嬢様が来ていそうなドレスを身に包んでいる少女と話していれば、

 

「なんだ貴様。俺の妹とどこかで知り合ったのか」

 

「妹・・・・・?お前、この子の兄か」

 

「ふん、俺のことを知らないなんてな。この悪魔と天使堕、天使、人間が交流する

学校ができてから最近の人間の教育はどうなっていることやら」

 

ホスト風な服装でイケメンだが性格が悪そうな男性に声を掛けられた。

 

「部外者はさっさといなくなってもらうとありがたいね。こっちは大事な話をしているんだからな」

 

「というと?」

 

グレイフィアに訊ねたらこう答えてきた。

 

「リアスさまとライザーさまの婚約の話をしておられます」

 

「へぇ・・・・・婚約。その割には雰囲気が最悪っぽいんだけど?

もしかして一悶着中だったりする?」

 

「ライザーさまとの婚約をリアスお嬢様は拒んでおられている事実は誠でございます」

 

なんというタイミングで来てしまったんだろうと半ば後悔した。

両者の婚約の件の話ならば、自分が横やりを入れるものではないと悟る一誠。

 

「ライザーって悪魔?」

 

「なにを当然なことを。お前、本当に知らないんだな」

 

「まだ悪魔に関する知識はないんでね。代わりに友達はいるけど」

 

「お前に悪魔の友達ねぇー?どうせ大した奴じゃないだろう?」

 

「いや、魔王のおじさん。フォーベシイって悪魔だけど?」

 

そう言った瞬間にライザーを含む面々が驚愕の色を浮かべた。

 

「おいおい、嘘を言うのは止めておけ。恥を掻くだけだぞ」

 

「ライザーさま。彼の仰ることは本当でございます。彼は魔王フォーベシイさまだけではなく

他の五大魔王の方がたと面識があり、ご友人として交流を持っておられます」

 

グレイフィアからも助け船によりライザーは目元を引くつかせた。

 

「小僧・・・・・貴様、何者だ?」

 

「名前を聞く時はまず自分からって家族に言われなかった?」

 

「・・・・・っ」

 

見ず知らずの者に付け上げられている気分でライザーのプライドに刺激が与えられる。

 

「言いたくないなら別に言わなくても良い。リアスに訊くだけだし」

 

ライザーから視線を外しリアスに向ける。それはまるで興味も無くなったと仕草や言動で、

一誠は懐かしげにリアスと話をし始めた。

 

「リアス、黒歌はどうしている?白音はここにいるのにさ」

 

「え、ええ・・・・・一緒に人間界に住んでいるわよ。黒歌はどこか散歩に行っているわよ」

 

「おー、そうなんだ。分かっているとは思うけど俺もちょっと離れた場所に住んでいるんだ。

部活が終わったら遊びに来ない?」

 

「・・・・・そうね。久々にあなたとゆっくり話をしたい気分だわ」

 

「あらあら、一誠。勿論私もいいわよね?」

 

「私もですお兄さま」

 

「いいぞー。しっかし懐かしいな。朱乃、綺麗な黒くて長い髪で美人になったな。

白音はあの時よりだいぶ成長したな。抱きしめて良いか?つーか抱き締める!」

 

―――完全に自分から意識を逸らして楽しげに話し合っている

。何時の間にか一誠が中心として和気藹々となっていた。

 

「貴様・・・・・リアスと大事な話をしているというのに話を乱すような真似はするな」

 

「うん?また今度にしてくれない?そう急ぎのことでもないんだろう?」

 

「―――――」

 

ライザーはキレた。全身から炎を滾らせて一誠に向かって飛びだし、

業火の火炎を纏った拳を突き出した。その行動に誰もが目を張った。

 

「ライザー―――!」

 

焦心に駆られ叫ぶリアス。グレイフィアが対処しようと動く前にオーフィスが動いた。

 

「イッセーを守る」

 

一誠の肩に乗ったままのオーフィスがライザーに向かって手を開いた瞬間、魔力による波動が発生し波動を受けたライザーは部屋の壁まで吹っ飛んだ。

その光景を見て一誠はオーフィスに声を掛けた。

 

「オーフィス。ありがとうな」

 

「ん」

 

「ぐっ・・・・・!今のは一体・・・・・!」

 

「オーフィスが俺を守ろうとして攻撃をしたんだ。ただそれだけのことだ」

 

胸に抱きつつオーフィスの黒髪を撫でながら発した一誠の説明を聞き、

憤怒の形相を浮かべたライザー。

 

「そのガキにこの俺が攻撃されただと・・・・・!」

 

「言っておくけど、オーフィスは俺より強いからな。

最強のドラゴンであり『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスだ」

 

「んなっ・・・・・!?」

 

最強のドラゴンによる攻撃だと知り、ライザーは今度こそ絶句した。

 

「俺に攻撃しようとするとオーフィスは俺を守るために攻撃を仕掛ける。力を幾分かセーブしてな」

 

「くっ・・・・・だが、お前らに俺とリアスの婚約に首を突っ込むことはできないだろうが!」

 

「いや、本人同士の話なんだから俺は突っ込む気はさらさらないぞ。

というか、お前が攻撃を仕掛けてきたからこんなことになったんだけど?」

 

と、述べた一誠だったがリアスはあることを言いだした。

 

「ライザー。私は好きな人がいると前から言っているけど、

その好きな人とはこの兵藤一誠のことよ」

 

一誠に対する愛の告白だった。それには当の一誠は・・・・・、

 

「・・・・・え?」

 

目を丸くしてなにそれ?初めて聞いたぞとばかりの反応を示した。

 

「そして、私の・・・・・ファ、ファーストはイッセーに捧げたわっ!」

 

「んなっ!?」

 

「・・・・・はい?」

 

ライザーは驚くものの、一誠は身に覚えがないと首を傾げた。

というかファーストとはなんのことだ?

グレイフィアが何故か嘆息し、呆れ顔で首を横に振っていた。

 

「お気にせずにいてください」

 

声を殺して言ってくるグレイフィアだった。

と言うことはリアスが言っていることは真っ赤な嘘なのだろう。

しかし、ライザーは顔を酷く歪ませ身体が震わせている。

 

「リアスお前・・・・・純血悪魔同士の婚約はどれだけ大切なのか

わかっちゃいないようだな・・・・・。

このどこぞの馬の骨も知らない奴なんかに股を開いたってのか!」

 

「相変わらず下品な言い方ねライザー。だけど、どう捉えようとあなたの自由よ」

 

「―――――っ!?」

 

次の瞬間。灼熱の炎がライザーを中心に噴き上がった。

炎がが怒りを表現しているかのような荒々しく周囲の物を燃やさんばかりの勢いだった。

 

「おい・・・・・兵藤一誠と言ったか」

 

「え?」

 

鬼気迫る勢いでライザーに睨まれる。今なにを言っても耳を傾けないほどライザーの

腸は怒りで酷く煮え繰り返しているのだろう。

 

「貴様にリアスを懸けた決闘を申し込む!」

 

「はいっ!?」

 

リアスの婚約者に決闘を申し込まれ、愕然とした。

どうしてこんな展開になったのか理解に苦しむ。

その間にもライザーは言い続けていた。

 

「決闘は一週間後だ。その間に仲間となってくれる奴を集めて精々必死こいて修行するんだな!」

 

一方的な言い分で決められ、一誠の意思とは無関係にライザーは十数人の少女と女性たちと

展開した魔方陣から噴き上がる炎と共に姿を消したのだった。

 

「・・・・・」

 

ただただ呆然と一誠はその場で立ち竦む。リアスに会いたいと思って

この場に馳せ参じただけだったのに、なにこの急展開は。

 

「リアスお嬢様。後でお話しがございます」

 

「グ、グレイフィア・・・・・なんか、怖いわよ・・・・・・?」

 

「我が姉のシルヴィアにもきつく叱って貰いますのでどうか御覚悟を」

 

「うっ・・・・・!」

 

あっちはあっちで、再び一悶着がありそうだ。

 

「お、お兄さま・・・・・大丈夫ですか?」

 

「一誠、私もできればあなたの力になりたいのだけれど・・・・・」

 

「あ、うん。多分大丈夫だろう。ただ情報が欲しいな。

ナヴィに調べてもらうか。悪い、家に遊びに来る話はまた今度で」

 

と、言ったところでこの場に魔方陣が出現した。誰が来るのだろうと伺っていると、

炎が噴き上がり、炎と共に二人の女性と少女が現れた。

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「・・・・・突然の兄の申し出に兄の代わりに謝罪をしに来ましたわ」

 

軽く頭を下げた少女。それには一誠も驚いた。

 

「本来なら決闘、レーティングゲームはリアスさまとする予定だったはずですわ。

婚約を懸けた戦いをする為に。それを事実的無関係なあなたがお兄さまと

戦うことになるとは私も驚きましたの」

 

「ああ、俺もだけどな。というか、リアスの言っていることは嘘だからな?

あいつファーストを俺に捧げたと言って何か勘違いしているし」

 

「そ、そうでしたの・・・・・・」

 

それでは完全にライザーの勘違いであると少女は思った。

今回ばかりはこちらに非があると申し訳ない気持ちが胸で一杯で肩に下げていた

カバンから二つの瓶を取り出す。

 

「これが今私にできる精一杯の謝礼です。どうか受け取ってください」

 

「なんだこれ?」

 

半分だけ仮面を覆っている女性がここで初めて口を開いた。

 

「フェニックスの涙だ。正式のレーティングゲームにも使用されていて、

その涙を使えばどんな傷でさえ瞬く間に完治するフェニックス一族でしか作れない秘薬だ。

例え、手足が両断されても傷口とその手足をくっつけて涙を振りかければ治り、

以前と変わらず動かすことができる」

 

「へぇー、結構便利な秘薬だな。いいのか?敵に塩を送るようなことをして」

 

「こ、これは個人的な感謝と謝罪ですの。あの時助けてくれたお礼はまだでしたし、

今回はお兄さまにご迷惑をおかけしたのでこれぐらいのことをしなくては

申し訳なくてどうしようもないですから」

 

あの時と言われ苦笑を浮かべる。

 

「律儀な娘だな。まだ気にしていたのか。もう終わったことだろうに」

 

「・・・・・クレープ」

 

「うん?」

 

「私にクレープをくれました。アレのおかげで私はフェニックス家の者として

恩を返せませんでした。ですから今がその時だと思い恩を返したいと

フェニックスの涙を渡したのです」

 

照れたように顔を紅潮させ、口を尖らせる少女。その仕草はとても可愛らしく、

一誠は抱きしめたい衝動を何とか堪えた。

 

「では、次に会う時はゲームの時でしょうが予め言っておきます。私は戦いませんので

観戦の姿勢で徹します。どうかそのことを忘れずにいて下さいまし」

 

「りょーかい。お前だけは手を出さないようにするさ」

 

朗らかに笑みを浮かべ、魔方陣から噴き上がる炎に包まれながら姿を消す少女と女性を見送った。

 

「よし、さっそく部室に飾ろうっと」

 

「イ、イッセー?その秘薬を使わない気でいるの?」

 

リアスが一誠の言葉に疑問が浮かび問う。飾るとはせっかくの回復アイテムを

使わないでいるつもりなのだ。それを宝の持ち腐れにするのは考えられないのだ。

 

「一応所持するが多分使う機会は無いと思うぞ?」

 

「どうしてですの?」

 

朱乃の問いかけに一誠は不敵の笑みを浮かべた。

 

「流石にオーフィスを参加させたら相手が可哀想だ。どちらにしろ俺には心強い友達や仲間がいる。

一週間とは言わず明日にでもしてくれればよかったんだけどな」

 

そう言い切った一誠。その後、リアスたちと別れて真っ直ぐ帰宅した一誠だったのだが―――。

 

 

 

「これは面白い。同志よ、さっそく準備に取り掛かるぞ」

 

「ふふふっ、兵藤一誠くんか。あの男の子の周囲は面白い事だらけなのですよー♪」

 

 

後日。

 

『リアス・グレモリーを懸けた決闘!兵藤一誠VSライザー・フェニックスの

 レーティングゲームは一週間後と迫る!(尚、仲間を募集のこと!)』

 

と学園中にそれが新聞にデカデカと記事が載って一誠に頭を抱えさせるほどだった。


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