HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード9

翌日。早々に『冒険部』という部活を正式に創設を認めてもらい、

晴れて一誠を部長とする部員や部活の顧問を務めてくれるリーラと言う存在もいて無事に

『冒険部』を創設した。常に傍にいた一誠の家族だけが部活に入部するかと思いきや、

 

「兵藤、私もその部活に入部するネ!」

 

金剛までもが入部することとなった。

 

「なぜに?」

 

「珍しい薬もあるかもしれないから私もそれを見つけてみたいデース」

 

と異様に気合が入っている金剛だった。理由はともかく珍しい物を採取する

『冒険部』は薬も例外ではないので金剛を軽く向かい入れた。メンバーは顧問のリーラで

部長の一誠、副部長はクロウ・クルワッハ。マスコットはオーフィスでルクシャナ、

ティファニア、シャジャル、アラクネー、アルトルージュ、ヴァレリー、金剛の十名だ。

冒険部の部室は五階の空き教室。理事長のユーストマとフォーベシイの権力で

何時の間に知ったのか一誠たちの為に新たな部屋を作って用意させたものである。

 

「・・・・・設備が完璧すぎだろ」

 

防音や耐震を始めとする魔力と物理的な防御結界。エアコンも設けられていて、

装飾と意匠が凝った椅子やテーブルなどあり、冒険部として必要のない風呂場や

寝室などもあった。他にも様々な物もあるが―――・

 

「いくらなんでも優遇しすぎだろ」

 

「・・・・・困ったヒトたちです。この好意を無化にできませんが限度と言うものを

知らないのでしょう」

 

「いいんじゃない?物置き部屋みたいな部屋よりこんなオシャレな部屋の部室だったら私

文句ないわよ」

 

ルクシャナは気に入った様子だったが、採取した珍しいものを展示する場所を

確保しなければならなかった。

 

「壁に飾れるようにすればいいか」

 

「貴重なものはドラゴンが踏んでも壊れないガラスのケースに保管しましょう」

 

「植物は?」

 

「アザゼルのおじさんに頼んで半永久保存できる保管庫を用意してもらおうかな。

できたらの話だけど」

 

と賑やかに決めていく一誠たちだった。HRが始まるころには解散して

それぞれの教室や職員室に戻った。

 

 

そして―――。一誠たちのクラスにある報告が待ち受けていた。

 

 

「えー、このクラスに編入生が入ってくる。皆、仲良くするようにな」

 

教師から告げられた新たなクラスメートの存在。また男子?と言う声も飛び交うが

それは杞憂となった。教室に入ってきた数人の少女たち。

活発そうな小豆色の長髪の少女、青い長髪と顔が似ている二人の少女、

茶髪のツインテールの少女と緑のメッシュが入っている青髪で鋭い目つきの少女、

長い金髪を一つに結んだアメジストの瞳の少女―――。

 

「―――え?」

 

間抜けな声を漏らした一誠。入ってきた少女たちは一誠にとって無関係ではない少女たち

ばかりだったからだ。少女たちの自己紹介が始まる。

 

「リシアンサスです。名前が長いからシアって呼んでください」

 

「ネリネです。どうかよろしくお願いします」

 

「私はリコリス。ネリネのお姉ちゃんだからよろしく!」

 

「私はゼノヴィアだ」

 

「自己紹介は短いわよゼノヴィア。あっ、私は紫藤イリナ。帰国子女なのでどうかよろしくね!」

 

「私はレティシア・J・D・ルーラーです。どうぞよろしくお願いします」

 

六人の少女が自己紹介を済ませた後にそれぞれの席に座った。

 

「・・・・・」

 

一誠の隣にイリナが座りだす。それを見守っているとイリナが一誠に向かってウィンクした。

 

「久し振りね一誠くん。まさかこんな女の子しかいないクラスにいるなんて驚いちゃったわ」

 

「それはこっちの台詞だ。どうしてこのクラスに?」

 

「時間が空いた時に説明するわ。―――そのちっちゃい姿になっていることも教えてね」

 

今は語れないとイリナは漏らす。一誠もその時を待つことにし、授業を受ける姿勢に入った。

それからイリナたちの様子を見守っていると日本語はマスターしているらしいものの

授業にはついていけないようで四苦八苦の姿が度々伺う。

それは昼休みまで続き、昼休みになると―――。

 

「一誠くん久し振りっす!」

 

「私たちのこと覚えているかな?」

 

「お、お久しぶりです一誠さま」

 

シアとネリネ、リコリスが一誠の傍に来て声を掛けてきた。

 

「ああ、覚えているよ。久し振りだな。数年振りじゃないか」

 

「ハイっす!もう、一誠くんが通っている学校に行けるぞってお父さんから言われた時は

小躍りをしちゃった程でした」

 

「ネリネは嬉しさのあまりに泣きそうだったもんね♪」

 

「そ、それは言わない約束じゃないですか・・・・・!」

 

ここで一誠は仮説を想定した。

 

「冥界と天界の姫って・・・・・三人のこと?」

 

「「「はい」」」

 

揃って肯定した。そして、イリナたちにも質問した。

 

「イリナたちは?」

 

「私たちは彼女たちの護衛なのよ」

 

「他にも二人いるのですが。それぞれ歳が違うので他の学年のクラスに所属する形になってしまいました」

 

「もう直来るだろう。ところで師匠。話ができる広い場所はあるか?」

 

―――――ん?

 

「師匠って?」

 

「お前のことだ兵藤一誠」

 

「なぜに俺は師匠と呼ばれる?」

 

「お前がデュランダルを私以上に使いこなせた。それをストラーダ猊下にお伝えすると」

 

 

『そうか、あの戦士一誠はそこまで成長したか。ならば戦士ゼノヴィア。

私の代わりに戦士一誠からデュランダルの本質を学ぶと良い。

きっとデュランダルの本質を受け入れたあの者の傍にいれば貴殿も

また私に継ぐデュランダル使いと成長するはずだ』

 

 

と、ストラーダ猊下はゼノヴィアに対してそう言ったらしい。

 

「・・・・・そこまで買い被られていたのか俺は」

 

「猊下が認める者ならば私は敬意を払って師匠と呼ぶことにしたんだ」

 

「ただ俺は色んな凄腕の剣の使い手と鍛練して剣術を学んだだけに過ぎないんだけど?」

 

「その腕を見込んで言っているんだ。だから今後ともよろしく頼んだぞ師匠」

 

手を差し出されてしまい、断われる雰囲気とタイミングではないので場の空気を読んで

ゼノヴィアの手を掴んで握手を交わした。

 

「イッセー、来たわよーって・・・・・なんか蛮人の女が増えているんだけど?」

 

「む、本当だな」

 

「誰かしら?」

 

「うふふ。ライバル登場ってところかしら?」

 

―――○●○―――

 

「えっと、1-Fの紺野木綿季って言います。シアさんの護衛として先輩たちと一緒に来ました」

 

「久し振りな人と初めての人がいるね。私は3-Fのリーズヴァイフェ・ストリンドヴァリ。

ユウキとイリナたちと同じ、護衛の任を請け負ってこの学校に来た」

 

屋上にて黒い長髪の少女と短い銀髪のポニーテールの少女が自己紹介を終えた。

 

「以前、コカビエルの時に出会った面々がこうも揃ってまた会えるとはな」

 

「そうね。ルーラーも久し振りじゃない」

 

「アルトルージュさんもお元気そうでなによりです。

ヴァレリーとルクシャナ、ティファニアもシャジャルさんも」

 

吸血鬼騒動とハルケギニア時にいたルーラーも久し振りに再会したアルトルージュたちに挨拶を交わす。

 

「シアの護衛は分かったけど、ネリネたちの護衛は誰だ?

―――いや、冥界と天界の姫の護衛を任されているから俺たちも含まれているのか」

 

「そういうことかもしれないね」

 

納得したと一誠は自己完結をし、ルーラーたちの顔を見渡す。

 

「ネリネたちの家はともかく、ルーラーたちはどこの家なんだ?」

 

「私たちは護衛として三人の直ぐ近くの家に構えています。本当なら一誠くんたちも

近くの家に住んでもらいたいのですがそう世の中は思い通りになりませんね」

 

「しょうがないさ。まさか俺の知っている人がこんな形でまた再会するなんて

思いもしなかった」

 

「・・・・・一誠くんのお父さんの言う通りになりましたね(ボソッ)」

 

声を殺して漏らしたルーラーへ「何か言ったか?」と訊ねてみたものの、

慌てて何でもないと首を横に振ったルーラーに首を捻るしかなかった。

 

「と、ところで一誠くん。どうしてその、ちっちゃくなっているんですか?」

 

「そうせざるを得ないクラスだったからとしか言えない」

 

具体的なことを告げた時、

 

「ねぇねぇ一誠くん!一誠くんは今までどこで何をしていたのか教えてくれない?」

 

「はい、もしよければお聞きしたいです」

 

「私も!」

 

三人の姫が興味身心に一誠の話を聞きたがって乞うた時だった。屋上に二つの魔方陣が出現し、

 

「ようシア!学校生活初日はどうだ?」

 

「やぁネリネちゃんとリコリスちゃんもどうかな?」

 

神王ユーストマと魔王フォーベシイが登場した。

 

「し、神王さま―――!」

 

「おっと、そのままでいい。直ぐに帰るからな」

 

「様子を見に来ただけだからね。一誠ちゃんと感動の再会を邪魔はしないよ」

 

予想だにしなかったそれぞれの勢力のトップの登場に教会に属すルーラーたちは

目を丸くしたほどだった。

 

「坊主。気付いていると思うが俺たちの娘のこと守ってくれよ」

 

「私たちの娘が学校にいることで三大勢力と人間たちと交流を交わす意味も現実味を増すからね」

 

「ああ、そういう意味も含まれているんだ。というかおじさんたちの言い方だと

三大勢力はまだ和平をしていないって風に聞こえるんだけど?」

 

一誠の疑問をぶつけられたユーストマとフォーベシイが苦笑いを浮かべた。

 

「ぶっちゃけ、坊主の言う通りだ」

 

「・・・・・は?」

 

ユーストマの発言に一誠の呆けた声はこの場にいる面々の気持ちを代弁したようなものだった。

 

「私と神ちゃんは気が合っているから別段と仲が悪くないんだよ。寧ろ仲が良い方だよ?」

 

「だが、一勢力の上を立つ者としては私情を挟むことは決して許されない。

堕天使の勢力も含めて俺とまー坊は世界の覇権を巡って戦争をしていたことは知っているな?

そん時に兵藤家と式森家、人間が一勢力として戦争に乱入して来やがったんだ」

 

「『俺たちの世界の覇権を渡すものか!』。それが彼らの戦う理由だった。

アダムとイヴから誕生した人間ものたちにとって、狙われる対象として迷惑なことだったらしいね」

 

「俺たちにとっちゃあ、あの時の戦争が一番厄介だったな。人間無しでは存続できない勢力、

種族同士が人間に襲われるなんて思いもしなかったわけだしよ」

 

「相手が相手だったしね。しかもそこで二天龍も横やりを入れてくるもんだから

あれがまさに地獄絵図、阿鼻叫喚、混沌と化となっていた」

 

ウンウンと昔の戦争を生き抜いた二人がその時のことを思い出しながら頷いている。

 

「んで、戦争どころじゃなくなったから俺たちに逆切れした天龍たちを倒してその後、

一時休戦ってなわけだ」

 

「それじゃ・・・・・何時でも戦争を起きてもおかしくは無いと?」

 

恐る恐る聞いたルーラーの質問にフォーベシイは頷いた。

 

「コカビエルが聖剣を使って戦争を引き起こそうとした。もしもコカビエルの野望が

成功したら第二次三大勢力戦争が起きていたかもしれないね」

 

「本当にやってくれやがったぜあいつには。だが、坊主たちのおかげで戦争は免れた。

それでもタダじゃ済まなくなっているからトップ同士の会談をすることになったわけだが」

 

「この機に私たちは本当に和平を結ぶつもりでいる。その時、誠ちゃんと一香ちゃんも

同席してもらう予定だ。何たって唯一、神話体系の神々と交流を持っている人間たちだからね」

 

「そんで坊主。お前はその息子と言うわけだ。だから必ず出席してもらう。

傍迷惑なことだろうけどな」

 

それだけ言い残してこの場から神王と魔王は姿を消した。

 

「会談って何時始めるんだろうな?」

 

『さぁ・・・・・』

 

疑問は増える一方であった。時間になれば当然のように自分のクラスに戻った一誠たち。

なのだが、二階に降りるとざわめきが聞こえてきた。

その原因はF~Dの、女子しかいない教室に大勢の男子たちが廊下から

教室を覗きこんでいる光景が一誠たちの目に入ったのだ。

 

「なんだこれ?」

 

「誰かを探しているようにも伺えますが」

 

「誰でしょうか?」

 

とこの光景に不思議でいるわけにもいかず教室へ向かったが、

やはり一誠たちのクラスにも人だかりができていた。

 

「おい、どいてくれるか?」

 

「なに言ってんだ。冥界と天界のお姫さまを見る為に俺は―――」

 

「冥界と天界の姫さま?」

 

「なんだよ。お前はまだ知らなかったのか?非公式新聞部によれば魔王と神王の娘が

この学校に編入されたってことをさ。どんな娘か一目でも見ようと・・・・・・」

 

一人の男子が一誠に振り向かないままそう言う。そういうことだったのかと納得し、

隣のクラスにいる男子たちもシアたちの姿を一目でも見ようと女子たちのクラスに

顔を出しているのだと悟った。

 

「因みにその姫さまのクラスはどこだか分かるか?」

 

「いや、そこまでは書かれてなかったな。というかさっきから何だお前―――」

 

「なるほど、それはとんだ迷惑千万だな」

 

虚空から数多の鎖が飛び出して男子たちの身体を拘束させて天井に吊るした。

 

「な、なんだぁっ!?」

 

「さっきから邪魔なんだ。そこでしばらくいろ」

 

天井に鎖でぶら下がっている男子たちは教室に入っていく女子たちをただただ見送る。

 

「ああ、それと」

 

一誠はシア、ネリネ、リコリスたちを見せ付けた。

 

「この三人がお前らが言う姫だ。満足したならさっさと自分の教室に戻れ」

 

『ちょっ・・・・・!?』

 

鎖が勝手に動き始め、この場から離れさせられていく男子たち。

念願の姫たちを見た男子たちにとっては、

 

『ちょっと待てぇええええええええええええっ!』

 

餌をお預けされた気分だっただろう。改めて教室に入った一誠の目に飛び込んできたのは、

先ほどの男子たちが鬱陶しいようで顔を顰めていたり、愚痴を漏らしていたりしていた。

 

「アハハ・・・・・なんだかごめんね」

 

「私たちの所為でお騒がせてしまい申し訳ございません」

 

「私たち、姫としてこの学校に来たわけじゃないんだけどねー」

 

当の三人も申し訳なさそうに漏らしていた。

その発言に溜息を突いて首を横に振った一誠は言った。

 

「姫の立場以前にお前らは顔の容姿とスタイルもいいから大勢の男たちがお前らを

気にしないはずがないだろう。しょうがないことだろうが、こんなことまた続くなら

こちらも対処したほうがいいかもな」

 

顎に手をやって考える一誠。だが、シアたちの顔がほんのりと朱に染まった

そのことを一誠は気付いていなく席に座った。

 

―――○●○―――

 

案の定、再び放課後になると男子たちがやってきた。

帰宅する女子たちにとってはこれ以上のない迷惑さで眉間に皺を寄せたり顔を顰めたりとしていた。

 

「うん、思いっきり邪魔だな」

 

一誠が鎖で再び天井に男子たちを吊り下げた。

 

「今の内に帰りたい女子は帰ってくれ」

 

そう告げた一誠にそうさせてもらうと帰宅する女子たちが続々と教室からいなくなっていく。

 

「あなた、神器(セイクリッド・ギア)を所有していたのね」

 

「まーな。見ての通り、対象を拘束することが俺の神器(セイクリッド・ギア)なんだ」

 

「そうなの。それは使えそうな力ね」

 

パチュリーも一誠と別れの挨拶をして去っていく。そして擦れ違うように、

 

「兵藤―――」

 

「あ」

 

ジャラッ!

 

「僕まで縛られるの!?」

 

顔を出した和樹に思わず縛ってしまった。一誠は直ぐに和樹を解放させて何か用かと

問いだたした。

 

「ああ、うん。というか、男子たちが天井にぶら下がっている光景は

とてもシュール過ぎるでしょう」

 

「行く道を邪魔するんだ。当然の結果だ。で、なんだ?俺たちも帰るところだったんだが」

 

「うんと、もしも良かったら僕の部活に顔を出さないかなって誘いに来たんだけどどう?」

 

「あー、悪い。もう俺も部活を創設したんだ。

『冒険部』と言って世界中の珍しいものを集めることが活動理由」

 

「へぇー、それって学園側が費用を出してくれるの?」

 

その問いかけに首を横に振って「自腹だ」と告げた一誠。

 

「行ける範囲まで行くつもりだ。冥界とかそう言った違う場所にさ」

 

「冥界か。僕も言ったことがないから気になるね。空が紫だとか聞くし」

 

微笑む和樹。一誠が部活を創設したというなら誘うのは止めて部活をする為部室へと足を運んだ。

一誠たちもクロウ・クルワッハたちと合流し、帰宅する。

 

「イッセー、何時部活をするの?」

 

「放課後じゃ時間は限られるから休みの日だな」

 

「最初はどこに?」

 

「冥界かな。人間界とは違って色々と根本的に違うから」

 

一誠がそう言うとルーラーとイリナが声を掛けてきた。

 

「冥界の名物や生物、植物を見つけるにはいい機会ですね」

 

「天界も天界しかないものがきっとあるわよ?」

 

「それは楽しみだ」とイリナの話を聞いて楽しげに返した。

校舎から出て校門のところでシアたちと別れた。イリナたちはシアとネリネ、リコリスの

三人の護衛のため一緒に帰る。それを見送り一誠たちも家へと戻る。

 

「イリナたちとまた会えるなんて驚いたわー」

 

「これも一誠が引き寄せている『力』によるものだろう」

 

意味深なことをクロウ・クルワッハは言う。ドラゴンの特性でもある力を引き寄せるソレは、

一誠の意思とは無関係に無自覚で周囲から集まってきたり引き寄せる。

イリナたちもまたドラゴンの特性によるもので引き寄せられたのだろうと

クロウ・クルワッハはそう言う。

商店街の中を歩き、この町で一番大きい高層高級マンションへと赴く最中。

 

「あれ?」

 

「うん?」

 

何故か別れたはずのシアたちと再び出会った。

 

「なんだ、まだ帰っていなかったのか?」

 

「ううん。なんか急にお父さんがこっちに来るようにと言われちゃって」

 

「こっちってどっち?」

 

「あそこっす」

 

シアが指した方向に顔を向けると、一誠たちが帰る場所だった。

 

「あそこが目印と言っていたっす」

 

・・・・・クロウ・クルワッハ。お前の言った通りになるかもしれないな。

一誠はそう思わずにはいられなかった。その後、シアたちを引き連れる形で

共にマンションへ向かった。一誠たちがマンションに辿り着くと

 

「よーう、待っていたぜ!」

 

「待っていたよ皆」

 

『・・・・・』

 

朗らかに手を挙げて振っている冥界と天界のトップ。

何でこんな所にいるのか全員が疑問を抱いた。

 

「お父さん!どうしてここにいるの!」

 

「ん?だって、ここが俺たちの家がある場所なんだからな」

 

「お家がある場所って・・・・・」

 

「目の前のマンションしかないんだけど・・・・・」

 

シアと一誠は辺りを見渡して告げる。一誠たちが住んでいるマンションの

他にユーストマとフォーベシイの家らしきものは無かった。

 

「今はその準備中でね。家はまだ完成していないのだよ」

 

「そろそろそれが完了してここに転送する手筈だ」

 

「転送・・・・・?」

 

周囲には一軒家が点々とある。道路だって設けられているしどこに転送するのかと

思った矢先、一誠たちが住んでいるマンションごと眩い光が迸り始め、

視界が白く塗り替えられた―――。

 

「・・・・・んなっ」

 

光が治まった時。一誠の目にとんでもない光景が飛び込んできた。

二人の権力乱用がまさに象徴しているものだと物語っている。

洋風と和風の大きな家が左右に何時の間にか存在して、

一誠たちが住んでいたマンションは姿も形もなく、代わりに敷地が広い豪華絢爛で

大きな家が建っていたのだった。五メートルもある無駄に大きい鉄柵付きの外壁と鉄柵の扉。

扉のところに兵藤という石のプレートに刻まれている。

 

「なんじゃこりゃああああああああっ!?」

 

周囲の目を気にするほど、余裕がないほど一誠は驚きを隠せなかった。

住み慣れてきたマンションが一瞬で豪華な一軒家へと変貌したのだ。

信じられない気持ちでユーストマとフォーベシイに視線を向けると。

 

「あのマンションは元々俺とまー坊が坊主たちのために用意した仮の家だったんだぜ?」

 

「・・・・・マジで?」

 

「おや、不思議に思わなかったかい?マンションなのに

他の者たちが入居していなかったこととかさ」

 

そう言われてみれば、確かに自分たち以外のヒトは住んでいなかった。

高級マンションとは言え、絶対に住めれないほど高いわけではない。

なのに何故か自分たちしか住んでいなかった。

―――その理由はこの二人の存在があったからこそだとは一誠も気付かなかった。

 

「こんなことは前々から決めていたことなんだぜ?誠と一香も既に了承済みだ」

 

「それに一誠ちゃんは私たちの愛娘の護衛役の一人だからね。

守るべき者の傍に常にいることは当然の摂理だ」

 

ガシッ!と一誠の両肩にユーストマとフォーベシイが力強く手を置いた。

 

「「だからこのままお義父さんと呼んでも構わんのだよ!」」

 

「・・・・・はい?」

 

この二人にはついて行けないと呆然と立ち竦むだけの一誠だった。

シアとネリネ、リコリスたちに目を向ければ顔を真っ赤にしていた。

 

「この状況、どう把握すればいい?」

 

「え、えっと・・・・・」

 

クロウ・クルワッハの問いにティファニアは困惑してしまう。

その間にも一誠を引き摺って家の中に移動したユーストマとフォーベシイ。

取り残された面々もその後に続いて家の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「ほほう。これは面白い記事を書けそうだ。そう思わないか?我が同志よ」

 

「ふっふっふっ。これは本当に明日が楽しみなのですよー♪」


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