HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード5

「アザゼル」

 

「珍しいな、お前から俺に話しかけてくるなんてよ。んで、なんだ?」

 

「あの人間のガキの成長はどうだ?」

 

神器(セイクリッド・ギア)の方は俺から教えてやってるぜ。

ドラゴンとしての戦い方はタンニーンに任せている」

 

「ほう、あの元龍王か。それなら期待できるが強くなっているのか?」

 

「まだまだ成長は止まらないって言わせてもらう」

 

 

―――○●○―――

 

 

「当たれっ!」

 

真紅の光が一筋に空に浮いているタンニーンに向かう。

 

「いい塩梅だ!だが、それだけでは相手に当たらんぞ!」

 

軽く避けて口から連続で火炎球を地上にいる一誠に向けて放つタンニーン。

まだ空を飛べない一誠は地上で這いずり回る様に動いて避けたりドラゴンの力で防いだりして

まるで龍虎の戦いを思わせる戦闘をしている。―――しばらくして、

 

「空飛ぶなんてズルイ!」

 

休憩中、一誠がタンニーンに向かって文句を言うのだった。朱乃やオーフィスもいる。

 

「何を言うか、お前とて空を飛べるのだぞ」

 

「翼、出ないもん」

 

頬を膨らませて抗議する。ドラゴンとして復活したから一度も翼が生えたことはない。

どうやって出すのか信頼している大人に訊いてもその人物ではない為に

結局ちんぷんかんぷんで空を飛べないでいた。

 

「何度も空に落としてもらっても出せないし・・・・・」

 

「今時の子供が自分から地上から千メートルの高さから落として欲しいと願う奴も

珍しいと思うがな」

 

「だって、落ちるまで空にいるしその間翼を生やすことができるんじゃん」

 

「理解はできるがこれはお前自身の問題だ。お前にはまだ時間はたっぷりあるのだから

焦らずにできるようになればいい」

 

「はーい」

 

つまらなさそうに返事をする。その光景は父と子に見えなくはない。

ただし、ドラゴンと人間の子供でなければみえていたはずだろう。

 

「ねぇねぇ、タンニーン。ドラゴンって他にいるの?」

 

「ああ、俺の領土に行けば色んなドラゴンがいるぞ」

 

「そうなんだ。僕、色んなドラゴンに会いたい!」

 

「お前もドラゴンだがな」

 

「まーね。でも、人間じゃない色んな種族と友達になるのって楽しいな」

 

「ほう、どんな種族と出会っているのだ?」

 

好奇心から来た質問をするタンニーンに「うーんとね」と一誠は答えた。

 

「エルフとかドワーフとか、妖精とか。あと、海の神さまのお城にいる人魚とか色々!」

 

「・・・・・人間だった頃のお前はどうやったらそれだけの種族と出会えるのだ」

 

絶句したタンニーンであった時に地面に光が走り、やがて陣が描かれ赤く光り出した。

 

「あの魔方陣の紋様は・・・・・」

 

魔方陣の光が弾けた。光が止むと魔方陣が出現した場所に

赤い髪の青年が佇んでいたのを一誠の視界が捉える。

 

「やぁ、久し振りだね」

 

「やはりサーゼクス、お前だったか」

 

タンニーンが現れた青年に話しかける。そして一誠にもサーゼクスは声を掛けた。

 

「一誠くん、久し振り元気にしているかな?」

 

「サーゼクスお兄ちゃん!」

 

一誠が元気よくそう呼んだ次の瞬間。

 

「・・・・・ふふっ、やはり兄と呼んでもらうこの喜びは堪らないな」

 

サーゼクスの顔がだらしないほど緩くなった。

 

「お前は何て顔をしているのだ。それで、様子を見に来ただけではないのだろう?」

 

呆れ顔で盛大に溜息を吐いたタンニーンの言葉にキリッと顔を整えだし頷く。

 

「そうだね、ルシファーさまから様子を見て報告書を提出してくるように

言われているが実はね?」

 

もう一つ赤い魔方陣が現れ、赤い髪の少女が出現した。

 

「彼にリアスを会わせたくて」

 

「既成事実など企むなよ」

 

「なんのことだろうか?」

 

タンニーンとサーゼクスが話している間にリアスという少女は一誠の顔を覗きこんでいた。

 

「私の髪と同じ色なのね。目はなんだか獣みたい」

 

「えっと・・・・・」

 

「ね、名前なんて言うの?私はリアス・グレモリー」

 

「兵藤一誠だよ」

 

「じゃあ、イッセーで決定!」

 

いきなりそう言われ、そんなリアスに戸惑う一誠。

 

「ねぇ、私と遊ばない?」

 

「え、ダメだよ。僕、強くなるために修行しているんだ。今は休憩中だけど」

 

「じゃあいいいじゃない。ね、遊びましょ?」

 

困ったように一誠はタンニーンに助けを請う。

 

「タンニーン、どうしよう」

 

「遊んでやるがいい。この山はグレモリー、つまりサーゼクスの家の物なんだ。

山を貸してくれるグレモリーの者に感謝の意味を籠めて言うことを聞くことも大事だぞ」

 

「・・・・・分かった」

 

「やった!お兄さま、お家に連れてって!」

 

「ああ、いいよ。だけど、この子たちも入れてあげなさい」

 

朱乃とオーフィスに視線を向けるサーゼクス。リアスは二人を見て直ぐに頷いた。

 

「それじゃタンニーン、しばらく彼はグレモリー家に預からせてもらうよ」

 

「一時間後、この山に連れてきてくればアザゼルが迎えに来てくれる」

 

「分かった」

 

一誠、オーフィス、朱乃はサーゼクスとリアスの家に行く事と成った。

サーゼクスが発動する魔方陣の光に包まれ視界は真っ白に染まり何も見えなくなるが、

あっという間に巨大な洋風の城の門前が見えた。

 

「え、何時の間に?」

 

「ふふっ、もう少し大人になったら分かるよ」

 

「もしかして、サーゼクスお兄ちゃんが?」

 

「そうだよ?」

 

一誠の瞳にキラキラと光が宿り、まるでサーゼクスがヒーローのように見えてきたらしいのか、

 

「サーゼクスお兄ちゃん、凄い!格好良い!」

 

「ふふふっ!そうかい?いやー、照れるなぁー!」

 

「私のお兄さまは凄いから当然よ!」

 

「モテモテだな私は!よーし、お兄ちゃんが良いものを見せてやろう!リアスと一緒に

待ってていなさい!」

 

ふはははっ!とサーゼクスは高笑いをしながらどこかへと行ってしまった。

一誠たちはリアスの先導の下で城の中に入るのだった。

 

「大きいお家だねリアス」

 

「そう?これが普通じゃないの?」

 

「僕が前に住んでいた家と違い過ぎるよ」

 

「朱乃の家と全然違う」

 

「広い」

 

と、そう話しながら歩いているとリアスの家に仕えるメイドと出会った。

 

「お嬢さま、サーゼクスさまはどちらに?」

 

「グレイフィア。お兄さまは笑いながらどこかに行ってしまったわ」

 

「姉から伝言を承っていたのですがそうですか・・・・・。ところで、その方々は?」

 

一誠たちに目を向ける。心なしか、警戒心を目に宿している。

そんなこと露知らない一誠はペコリと頭を下げた。

 

「こんにちは、僕兵藤一誠です。こっちはオーフィス、こっちは姫島朱乃」

 

「兵藤一誠・・・・・オーフィス・・・・・っ!」

 

グレイフィアは目を丸くするも冷静になり自己紹介した。

 

「私はグレモリー家にお仕えするメイドのグレイフィアと申します。お聞きしますが、

兵藤一誠さまは兵藤誠さま、兵藤一香さまの子供でしょうか?」

 

「あれ、父さんと母さんのこと知っているの?」

 

「はい、この城に何度も来訪しにきますので」

 

「そうなんだー」

 

「リアスさま、お帰りになられたのであれば旦那さまにお伝えしないといけませんよ」

 

「うん、分かってるわ。一誠、いいかしら?」

 

リアスからの訊ねに問題ないと頷いて、グレイフィアも同行する事になり幾つものの

扉を素通りして目的の扉には開け放った。

 

「お父さま。お母さま。ただ今戻りました」

 

入るなり挨拶をするリアス。白いシーツが敷かれた大きな横長のテーブルに天井は

豪華絢爛なシャンデリアが吊るしていて、赤い髪の中年男性と亜麻色の髪を伸ばす

若い女性が椅子に座っていた。

 

「あら、リアス。早いお帰りね」

 

「おや、お友達かな?」

 

「うん、兵藤一誠とオーフィス、姫島朱乃って言うの」

 

「「なっ!?」」

 

リアスの両親が同時に立ち上がった。

その驚きように何かいけないことをしたのかとリアスの表情に焦りと不安の色が浮かぶ。

だが、それは杞憂に終わった。リアスの両親は一誠に近づき、

 

「一誠くんか!髪と目が変わっているが顔つきは変わっていないな!」

 

「あの可愛い子がこんなに育ってビックリしたわ!」

 

えーと・・・・・?一誠は困惑していた。見ず知らずの大人たちに、

まるで誠と一香のように接してくる。

今回が初めて会うリアスの両親から自分の子供のように可愛がられる中、

 

「ああ、ごめんなさいね?覚えていないでしょうけど一誠くんがまだ赤ちゃんだった頃、

貴方の両親に抱かせてもらったことがあるの」

 

リアスの母親からそう教えられ、納得した一誠。

 

「その時はリアスも一緒だったんだ」

 

「え、そうなの?」

 

父親の一言に気になって問うとリアスの母親が肯定した。

 

「そうよ?だけど、一誠くんの髪、リアスと同じ鮮やかな赤い髪ね」

 

「サーゼクスから話は聞いていたが、なるほど・・・・・ドラゴンの力を感じるな。

これは将来が楽しみではないか」

 

「あなた、それじゃ―――」

 

「ああ、そろそろ―――」

 

急に声を殺して何か会話をする二人に幼少組+ドラゴンは首を傾げたその時、

外から何やら音が聞こえた。全員が城から出て庭に足を運ぶと、

 

バッ!

 

「デビルレッド!」

 

「デビルブルー!」

 

「デビルグリーンだよ~」

 

「デビルピンク♡」

 

「デ、デビルイエロー・・・・・」

 

 

「五人揃って!」

 

 

「「「「「デビル戦隊デビレンジャー!」」」」」

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

 

五色のスーツと覆面を全身に見に包む五人の男女がそれぞれポーズをした後に、

キメ台詞と共にキメポーズをした瞬間背後に大爆発が生じた。

 

「お、お姉さま・・・・・不憫です・・・・・」

 

グレイフィアは何故か同情していたが、逆に一誠は目を爛々と輝かせ高々に声を上げた。

 

「格好良いっ!」

 

「不思議」

 

「えーと・・・・・」

 

「デビレンジャー!」

 

四人の少年少女たちの反応は様々であった。リアスの両親は溜息を吐きながらも苦笑を浮かべ、

ワラワラと現れた怪人たちと急な展開のバトルに一誠たちは最後まで応援をしている

中で興奮気味に観覧したのだった。

 

―――○●○―――

 

「それでねそれでねサーゼクスお兄ちゃん!デビルレッドが格好良く蹴りやパンチをしたの!」

 

「ふふふ、そうかそうか。私もデビルレッドと共に戦って怪人たちと戦ってみたかったものだ」

 

「お兄ちゃんはどこに行っていたの?」

 

「ゴメンね?ちょっとお仕事で行かないといけなかったんだ」

 

リアスの家に来てかれこれ三十分が経過した。興奮が収まらない一誠に何時までも

笑みを絶やさないサーゼクス、

二人は何時までも話を続けていると頬を膨らますリアスが異議を唱えた。

 

「一誠、お兄さまと話しばかりじゃなくて私と遊びましょうよ!」

 

「あっ、そういえばそうだったね。でも、何して遊ぶの?」

 

「私の部屋に来れば遊べるおもちゃはあるわ」

 

「それじゃ、リアスのお部屋に朱乃とオーフィス、行こうか」

 

四人はダイニングルームからいなくなり、残ったサーゼクスとリアスの父親と母親、

二人の銀髪のメイドだけと成った。

 

「まったくサーゼクス。貴方も良い大人なんだからあんなお茶目なこともほどほどに

しなさい?」

 

「母上、彼は喜んでくれたからいいじゃないか」

 

「始終、楽しんでいたのは間違いないな。あの子の中のお前の株がぐんと上がっただろう」

 

「アルマスさま。褒めるべきはそこでもありませんし、ここは注意すべきです」

 

「ふふふ、デビルレッド格好良い・・・・・サーゼクスお兄ちゃん・・・・・。

今日はなんていい日だろうか」

 

思い出しただけで顔が緩むサーゼクスをグレイフィアと同じ容姿を持つメイドが窘める。

 

「ニヤけ過ぎですサーゼクスさま。・・・・・しかし、驚きました。

まさかオーフィスまでも共にしていたとは」

 

「一部しか知られていない事実だが、いずれ冥界や天界、

人間界や他の神話体系の神々にまで知れ渡るだろう」

 

「あの子はグレートレッドとオーフィスの力を有しているとサーゼクス、

お前から聞いても半信半疑だったが間近で見て確かにその通りだった」

 

「まだ幼いあの子なら中級悪魔でも容易に捕まえることができるでしょう。それだけは回避しないとダメです」

 

「特に神器(セイクリッド・ギア)の保持者である異種族の者を眷属にしようとする

悪魔も少なくはない」

 

何時しか真剣な話になり、表情も真面目な顔つきになっていた。

 

「あの子は一年間冥界に過ごすのよね?」

 

「はい、その通りです。堕天使の総督アザゼルの下で」

 

「あの総督のところなら一誠くんは強くなるだろうな。だが、安心はできない」

 

「できる限り、陰で支えましょう」

 

 

『やっぱり嫌だぁーっ!』

 

 

その時、一誠の悲鳴が聞こえた。「なんだ?」とサーゼクスたちは疑問を抱いていると、

ダイニングルームの扉が勢いよく開け放たれて、

 

「サーゼクスお兄ちゃん、助けて!」

 

フリルが付いたピンクと白のドレスと頭に可愛い大きなリボンを身に付けた涙目な

一誠が飛び込んできた。

 

「か、可愛いっ!あなた、あなた写真!写真よぉっ!」

 

「既に写真を撮っているぞヴェネラナァーッ!(カシャッカシャッカシャッ!)」

 

「・・・・・っ」

 

「破壊力抜群ですね」

 

「ふむ、同じ服をリアスに来てもらいたい程だ」

 

サーゼクスはの自分に向かって避難する一誠や追ってきたリアスと朱乃、

オーフィスを目にした。

 

「こら一誠!逃げちゃダメ!」

 

「そうだよ!」

 

「僕は男だよ!?女の子の服を着たらおかしいじゃないかぁっ!」

 

「「それがいいじゃない」」

 

見事にハモったリアスと朱乃。退治する三人を見守るサーゼクスたち。

 

「ほら、私の部屋に戻りましょうよ」

 

「一誠くんを可愛くしてあげるから」

 

「いやっ!僕は格好良いのが良いの!デビルレッドみたいに!」

 

「い、一誠くん・・・・・!」

 

何故か歓喜極まるサーゼクス。リアスの父親と母親はシャッターを押し続けたり、

撮影をしていたのは放っておいて一誠たちの間に漂う雰囲気が怪しくなる。

 

「もう、私の言うことを聞きなさい!じゃないとあの山は使えなくなるわよ?」

 

「う・・・・・」

 

「タンニーンだってあの山を貸しているグレモリー家に感謝を籠めて言う事を聞くのも

大切だって言ってたでしょう。一誠、貴方は恩知らずなヒトになりたいの?」

 

「ううう・・・・・っ」

 

何も言い返せない。リアスが言うことは正しいと全てが分からずともそう感じ取れるのだ。

勝ったと余裕、優越感の笑みを浮かべるリアスは最後のトドメを言い放った。

 

「一誠、私の言う事を聞きなさい。今のあなたは私のものなんだから」

 

「・・・・・」

 

次の瞬間。場の空気が一変した。一誠の目がどこまでも冷たく、リアスを見据える。

 

「・・・・・キミまで、そんなこと言うんだね」

 

「え?」

 

「僕が弱いから、弱い人が持っている者は全部強い人のものだって言いたいんでしょ」

 

「一誠くん・・・・・?」

 

次第に一誠の全身から揺らめく紅いオーラ。まるで何かを訴えているようにも窺える。

 

「皆そうなんだ、弱い人を虐めるのが好きなんだねっ。

僕が弱いから嫌がることを平気でするんだから」

 

「違う、一誠くん。それは―――」

 

「じゃあいいよ、もうあの山はいらない!それだったらキミの言うことなんて聞かなくて

いいんだよね!?そうだよね!」

 

ゴウッ!と一誠を中心に激しい風が巻き起こり、誰にも寄せ付けないほど魔力も迸る。

 

「この魔力・・・・・上級悪魔を凌駕すると言うのか・・・・・!」

 

「一誠くん、キミと言う子は・・・・・!」

 

驚愕しているサーゼクスとリアスの父親。だが、状況は危険であることは変わりない。

 

「僕を苛める皆なんて大嫌いだ!僕の嫌がる事をする皆も!リアスも朱乃も大嫌いだぁ!」

 

この場から逃げたいと一心だったのだろう。壁に突っ込んでは壁を破壊して、

衝動的に駆られたのか中々出すことができなかったドラゴンの翼を生やし

紫色の空に向かって飛んで行ってしまった。

 

「一誠くん!?」

 

「まずい、あの子がどこかに行ってしまったか!サーゼクス、追うのだ!」

 

「分かってます!」

 

―――○●○―――

 

蝙蝠のような黒い翼を生やして冥界の空に高速で飛行する一誠に遠くから追うサーゼクス。

徐々に距離を縮める中で苦笑を浮かべ出す。

 

「速いな・・・・・このままでは魔王の領土に着くのも時間の問題か」

 

そこでサーゼクスは小型の魔方陣を顔の傍に展開した。

しばらくすると、立体映像のように一人の男性が姿を現す。

 

『やぁ、どうしたのかな?』

 

「お仕事中申し訳ございません。至急にお知らせしたいことがございまして」

 

『あの子のことかね?何か遭ったかい?』

 

まさにその通りだとサーゼクスは思い、一誠を見失わないように時折視線を前に向けた。

 

「ええ、私の妹と喧嘩をしてしまい、家から飛び出してしまいました」

 

『はははっ、子供の喧嘩で私に連絡する事でもないだろうに。

寧ろ喧嘩させた方が後に仲良くなるもんじゃないかな?』

 

「そう思ったのですが、何分あの子の速度は思った以上に早く

このままでは貴方さまの領土に着いてしまうのも時間の問題ですので」

 

『最悪、戦闘に発展してしまうとそう言いたいのね?』

 

肯定と頷き、男性に言った。

 

「あの子にこれ以上刺激を与えない為に手を出さないでください。

ここで真龍と龍神の力を発揮させられては貴方さまの領土が消滅しかねないので」

 

『ふむ、私が自ら出ればそれだけで騒ぎになる。

あの子の存在も冥界に知れ渡るのはできる限り避けたい。

分かった、キミに任せるがこちらもある助っ人を用意しようじゃないか』

 

「助っ人ですか?」

 

男性はクスリと笑みを浮かべた。

 

『私はねサーゼクスちゃん、愛娘たちと会わせたがっていたんだよ。

子供の対応は大人も必要だけど時には子供も必要になるしね』

 

 

 

 

無我夢中で飛び出してしまい、かなり遠いところまで飛行した一誠は建物が見えた。

人気のない裏路地に降り立って膝を抱えて身体を丸くし、そのままジッと座りこんだ。

 

「・・・・・僕を虐める皆なんて大嫌いだ」

 

一誠の上空にサーゼクスがいることに気付かないまま座りこんでいると腹の虫が鳴った。

 

「そう言えば、お昼食べていなかったや。

でも、お金持っていないし・・・・・そもそもここはどこ?」

 

一気に不安感が湧き起こり、リーラやオーフィスたちがいる場所まで戻る方法がない

現実を突き付けられ、

 

「お家、帰りたいな・・・・・」

 

「あら、迷子かにゃん?」

 

「え?」

 

恋しくなった一誠に声を掛ける女の声。声がした方へ振り向けば胸元を大きく

肌蹴させている黒い着物を身に包む、頭や腰に猫耳や二つの尻尾を生やす女性がいた。

その耳と尻尾を見て一誠は察した。

 

「冥界に妖怪さんがいるなんてね」

 

女性は感心したように一誠を見た。で会ってすぐに自分の素性を見破ったのだ。

同時に一誠はただの人間ではないこともまた事実女性は気付いている。

 

「へぇ、私が妖怪なんてどうして分かるの?」

 

「だって狐のお姉さんと同じ耳と九本の尻尾を生やしているもん。

お姉ちゃんは二つしかないけど」

 

「・・・・・もしかして九尾の御大将のこと?キミ、会ったことがあるの?」

 

「うん、あるよ。妖怪だけじゃなくてドワーフやエルフ、妖精さんや人魚、

それに悪魔や天使、堕天使とかアザゼルのおじさんにミカエルのお兄さん、

神王のおじさん、サーゼクスお兄ちゃん、海の神さまに空の神さま、

あとあと冥府って場所にいる骸骨のお爺ちゃんとか他に―――ってお姉さん、

どうして固まっているの?」

 

「にゃ、にゃんでもないにゃん・・・・・」

 

―――なに、この子。自分がどれだけ凄いヒトたちと会っているのか分かっていないの!?

 

「キ、キミ・・・・・名前はなんて言うの?」

 

「僕は兵藤一誠だよ」

 

「兵・・・・・藤・・・・・!?」

 

女性は今度こそ戦慄した。

あの有名な―――の出身の子がどうしてこの冥界に一人でいるのか理由は分からない。

特に一誠の護衛らしき人物はこの辺りにはいない。

 

「(・・・・・そうだ)」

 

女性はとあることを閃いた。その為にはまず実行しないと全てが始まらない。

 

「にゃー、イッセー。お腹空いていたりする?」

 

「・・・・・知らない人にはついて行かないよ」

 

「私のことよりイッセーに会わせたい子がいるの。私の妹にゃん」

 

「妹?」

 

「そ、妹は友達がいなくて、姉である私も一人ぐらいはいて欲しいと思っていたの。

ね、妹のお友達になってくれない?多分キミより年下の子だにゃん。

だからキミがお兄ちゃんで私の妹、白音が妹になるわ」

 

「・・・・・」

 

疑心の色を瞳に宿す一誠に随分と警戒心が強い子供と女性、黒歌は思った。

だが・・・・・、

 

「嘘ついたら、怒るからね」

 

「っ!だーいじょうぶ。この黒歌お姉さんは嘘は言わないにゃん。

からかうのは好きだけどねん♪」

 

妹の友になってくれることを承諾した一誠にそう言った女性の言葉に気になる単語が

一誠の口からオウム返しをした。

 

「黒歌?」

 

「そ、それが私の名前。自己紹介し遅れてごめんね?」

 

「ううん、いいよ。お姉さんの目を見ればわかるし」

 

そう言われ、「ふーん?」と気になった。

 

「何が分かるの?私の目を見てさ」

 

「嘘を言っているか言っていないかだよ。お姉さんの金色の目、綺麗だからね。

汚れていないよ。だから分かるの」

 

「・・・・・」

 

開いた口が塞がらない。黒歌は急に大人びいた一誠から目が離せないでいた。

生まれてから一度もそんなこと言われた記憶はない。まだ子供だと言うのに、

どうしてそこまで言い切れるのか不思議でしょうがない。

 

「(この子と出会って良かったかもしれない・・・・・。

悪いけど妹のことはこの子に任せよう)」

 

何かを企む黒歌が何かを察知した。こちらに凄いスピードで迫ってくる魔力を感じ、

 

「それじゃ、妹がいるところに行こうかにゃん」

 

黒歌を中心に霧が発生した。一誠の全身も呑みこみ、

上空から飛来するサーゼクスが迫るの一足遅く。

 

「やられた・・・・・っ!だが、あの黒歌という『悪魔』の居場所は把握している。

フォーベシイさまにお伝えしなければ・・・・・」

 


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