HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード7

「兵藤はいるかぁーっ!?」

 

「あ、カリンちゃん」

 

「あんな戦いで私に勝ったと思うな!正式に私と勝負しろ!

あと私を呼ぶ時に『ちゃん』付けするな!」

 

放課後になった瞬間にカリンが怒鳴り込んできた。そんな彼女の背後から和樹や龍牙、

清楚が顔を出す。

 

「ごめんね?止め切れなかったよ」

 

「そんな朗らかに言われてもな・・・・・もしかして泳がしたな?」

 

「意外と鋭いですね。いえ、なんでもございません」

 

「失礼します」

 

女子だけの教室に男二人が入ってきた。女子たちの反応は冷たく「入ってくんじゃねぇよ」

「帰ってよ」「男が来た」と声を殺して睨んだり完全に無視した態度でいる。

 

「・・・・・よくこの教室でいられるよ」

 

「最初なんて凄かったぞ。筆記用具や魔力弾、光の槍を投げてくるし学級が一瞬で崩壊したし」

 

「く、苦労しているんですね・・・・・」

 

「気持ちは分かるけどなー」

 

オーフィスが肩に乗ってきたことでヴァレリーと咲夜を引き連れて帰ろうとする。

 

「あれ、その子は?まだ子供みたいだけど」

 

清楚は一誠にオーフィスを見ながら訊ねた時、見下ろしながら名乗った。

 

「我、オーフィス」

 

「ああ、オーフィスって言うんだ・・・・・へ?」

 

「・・・・・(固)」

 

そして、

 

「兵藤一誠、なにをしている。帰るぞ」

 

「ああ、分かってるよクロウ・クルワッハ」

 

クロウ・クルワッハたちが迎えに来た。分かったと返事をし教室から出た一誠たちを

見送った和樹と龍牙は目を丸くする。

 

「・・・・・オーフィスって・・・・・本当?」

 

「ク、クロウ・クルワッハ・・・・・?し、信じられません・・・・・」

 

「「・・・・・?」」

 

 

 

金剛はとある場所に寄れば老若男女、子供の姿も見える。受付の係に告げ目的地に足を運ぶ。

白い廊下や壁、天井の中を歩き幾つものの扉を素通りにして行く金剛の足がようやく停まった。

 

「・・・・・」

 

取っ手を掴んで深呼吸した。

 

ガラッ!

 

「HEY!我が妹たちよ元気にしていたかナー!」

 

元気溌剌に笑みを浮かべ騒々しく入った金剛の視界に入った光景。三人の少女が

ベッドの布団の中で目を瞑って寝息を立てている。人工呼吸器を付けられていないのは

深刻な病を患っているわけではないがこの少女たちは―――心と精神が壊され植物状態に

近い病状を患ってからもうこの寝顔を見るのは一年になろうとしている。

 

「寝ながらでもいいから我が妹たち聞いて欲しいのネ。最近、私のクラスに

男の子が編入されてその子はとても強くて良い子で―――」

 

一人で三人の少女たちに言葉を投げ続ける。眠っている間は聞こえていないにも拘わらず、

金剛は楽しげに話を聞かせている。

 

コンコンッ。

 

「ハイ?」

 

「失礼するよ」

 

「OH、先生!」

 

「・・・・・今日も来たんだね」

 

中年の男性が寂しげに漏らした。金剛は当然のように明るく発した。

 

「私の大切なファミリーだからネ!何時か目を覚ますと信じていっぱい接するヨ」

 

「キミの妹さんたちは本当に不運と不幸で起きた事件に巻き込まれて不憫と同情の念を抱く。

相手が相手だから公にならず捕まらないでいる」

 

嘆かわしいとばかり息を吐いて真っ直ぐ金剛を見詰める。

金剛を見る瞳には一人の医師としての誇りと決意が強く光っている。

 

「私たち医者も手を尽くして彼女達の看病はする。最近は人間以外の種族の者たちから

様々な薬を提供してもらっているから医学界の間では大幅に進展した。

植物状態やアルツハイマー病も何時か完治する日が来ることを信じている」

 

「YES、よろしくお願いしますネ」

 

「・・・・・それと、言いづらいんだが。治療費の支払いが遅れている。

これ以上続くと病院は―――」

 

「だ、大丈夫でデス!お金のことはNo problem!問題ないネ!

必ず今まで遅れている分を支払うからSISTERたちをどうかお願いしまス!」

 

慌てて頭を何度も下げて懇願する金剛は「バイトに行ってきますネ!」と病室から去った。

 

「・・・・・この世に神がいるというのに一人の少女になんて残酷な人生を送らせるのだろうか」

 

窓の外を見ると走っていく金剛の姿。男性は三人の少女たちに話しかける。

 

「キミたちも何時までも寝ていないで早く起きて上げなさい。

お姉さんが起きて欲しがっているのだから」

 

 

 

その頃、一誠はオーフィスと一緒に外出していた。町の様子を見に行きたいと咲夜たちに

告げて国立バーベナ駒王学園の付近にある光陽町へと足を運んでいた。

人々が町に闊歩してショッピングや食事を楽しんでいたり、この町を観光しに来ている人も見掛ける。

そう言えば、恫喝されていたあの子はどうしているのだろうかと思っていると、

 

「あ、あの。困りますっ」

 

「ん?」

 

困惑の声が聞こえてきた。周囲に目を配る。丁度歩き過ぎようとしていた営業時間まで

シャッターが閉まっている店の前に金髪に緑色の少女と銀髪のツインテールに結んだ

少女が男たちに囲まれていた。

 

「いいじゃねぇか。俺たちとどこかに遊ぼうぜ」

 

「わ、私は教会に行かないといけないんです。だから・・・・・」

 

「シスターちゃん?うわっ可愛い!俺たちに慈悲をしてくれない?」

 

「主にシスターちゃんの体で俺たちの体を清めてくれれば超神さまに感謝するぜ」

 

「銀髪の女の子もしてくれると嬉しいな!」

 

・・・・・所謂ナンパか。一誠はどうしようもない男たちにたしなめようとし、

近いた時だった。一人の男が金髪の少女の手を掴んだ時。

 

「私の手に触れないでくれますか?」

 

 

『・・・・・は?』

 

 

あの純情で言動も雰囲気も困っていた気持ちを醸し出していた少女が、

似つかない言葉を発したのだ。

 

 

「ですから」

 

 

ニコリと金髪の少女は笑みを浮かべたまま言った。

その笑顔からプレッシャーを感じるのはなぜだろうか。

何も知らない、穢れすら知らないような少女が―――黒くなったような気がする。

 

「この薄汚い手を放してくださいって言いました」

 

素敵な笑顔を浮かべたままハッキリといった少女。

それからプレッシャーのある笑みを絶やさず、ナンパたちは畏怖の念を抱いたようで、

スゴスゴと去った。

 

「・・・・・」

 

心配するのは杞憂だったかと二人に向けていた足の方向を変えてどこかにいこうとした矢先。

 

「あの」

 

「?」

 

声を掛けられた。先ほどのシスターに。

 

「助けようとしてくれましたよね?」

 

伺う問い掛けに、返事を発しようとし一誠にお辞儀をしだした。

 

「ありがとうございました。あれでダメならどうしようかと思いました」

 

「そ、そっか(黒くなったことを言わない方が賢明か)」

 

「それであの、お聞きしたいことがありまして」

 

「なんだ?」

 

「この町にある教会はどこでしょうか?」

 

教会・・・・・?謎の金髪少女はシスターであることは知ったばかりだが、

シスターが教会の場所を知らないとはどういうことだろうかと不思議さを感じた。

銀髪の少女も気になるところだが、まずは訊ねられたことを解決するのが先決と―――頭を悩ませた。

 

「悪い、俺も教会の場所は知らない」

 

「あぅ・・・・・そうですか」

 

シュンと残念そうに目を瞑り、肩も落とした。金髪のアホ毛すら落ち込んだように垂れた。

だが、一誠は言い続ける。

 

「ちょっと待ってくれ。俺の家族が知っているかもしれないから」

 

小型の魔方陣を展開して直ぐに一誠の耳に女性の声が聞こえてきた。

女性と話し合っていれば真上から魔方陣が出現し、そこから紙が顔を覗かせてヒラヒラと

一誠たちの間に舞い降りた。その紙を金髪の少女が取って視線を紙に落とせば

教会までの行く道の地図が記されていた。

 

「そんじゃ行くか」

 

「え?」

 

「え?じゃないだろう。またナンパされて今度は強引に連れて行かれたりでもしたら

大変だろうが。おせっかい承知の上で一緒に目的地まで行かせてもらう」

 

話はこれで終わりと雰囲気を醸し出す一誠の金色の目は銀髪の少女に向けた。

凹凸が少ない身体にアメジストの瞳、赤い髪留めで銀髪をツインテールに結った少女。

 

「この子は?」

 

「あ、はい。一人で宛てもなく歩いていて不思議な子だったので話を掛けたら

先ほどの人たちが・・・・・」

 

つまり、ついさっき出会ったばかりでこの少女自身も詳細は不明、ナンパに声を掛けられて

ますます混乱に陥っていた。銀髪の少女と目を合わせるように腰を落とした。

 

「俺は・・・・・一誠だ。イッセーって言われたりしている」

 

「兵藤」の姓を敢えて言わない。兵藤の名を持つ者は嫌われている故、

二人の少女に名前だけ伝えたところ。

 

「イッセー・・・・・?」

 

初めて銀髪の少女がそう口にした。探るような目で一誠を見詰める少女にオーフィスが

一誠の代わりに答えた。

 

「ん、この者はイッセー」

 

「そういうことだ。えーと名前は?」

 

「・・・・・プリムラ」

 

「私はアーシア・アルジェントです。自己紹介が遅れてしまい申し訳ございませんでした」

 

「我、オーフィス」

 

と、互いが自己紹介をし終えて教会まで共に同行する一誠とオーフィスだった。

教会に着くまでの間、二人はあっという間に意気投合した理由があった。

 

「へぇ!ストラーダ猊下と会ったことがあるのか!」

 

「驚きました。イッセーさんもストラーダ猊下とお会いしていたことがあったなんて」

 

二人とも教会に所属していたことやとある人物と接した経験があり、会話の花が咲いたのだ。

 

「だけどどうしてアーシアがこの国に?」

 

「・・・・・私、教会に追放されてしまったんです」

 

悲しげに苦笑を浮かべて言った。

 

「教会の目の前に傷付いた悪魔がいて、傷を治してあげていたところを

他のシスターさんたちに見つかり避難されて、私はこの国の、この町のある教会に配属されて

しまいました。異端者として私は堕天使の教会でお世話になることになったのです」

 

「・・・・・嫌な記憶を思い出させたな」

 

「悪い」と顔を曇らせ謝罪した一誠を気にしてないと風に首を横に振ったアーシア。

光陽町から離れた場所まで歩けばひっそりと装飾や意匠が凝っていない

白い普通の教会へと辿り着いた。

 

「ここみたいだな。こんな所に教会があるなんて初めて知った」

 

「イッセーさんはこの町にきたばかりなのですか?」

 

「ああ、数日前からいる。まだまだこの町にいる日が浅い」

 

と、一誠は言った。

 

「この中に神父がいるんだよな?」

 

「ええ、そのはずですが」

 

「ちょっと俺も顔を出してみたいな。どんな人なのか気になる」

 

「そうですか。では一緒に行きましょうか」

 

四人が教会の木製の扉を開けて中に侵入した。数多の木製の横長の椅子が設けられていて、

壁際には何らかの像があるもののそれを否定するかのような顔がなく全て壊されていた。

 

「す、すいませーん!今日からこの教会に配属されることになりましたアーシア・アルジェントです!

誰かいませんかー?」

 

アーシアが教会中に轟くほど透き通った声を言い放った。

しかし、誰も彼女の呼び掛けに返事はなく静寂が支配する。

 

「この教会じゃなかったのか?他にも何箇所か教会はあるけど行ってみるか」

 

「多分そうかもしれませんね」

 

この場から離れようとした一行だったが、横長椅子の最前列のさらに前方の教卓が

重たげで勝手に横へずれ出した。それには一誠とアーシアは目を丸くして様子を見守っていると

黒い神父服を身に包んだ、胸に十字架のネックレスを垂らした中年の男性が出てきた。

 

「む、珍しいものだな。この弾かれた者しかこない教会に少年と少女がいるとは」

 

「・・・・・この教会の神父、管理人ですか?」

 

「ああ、そうだな。私はこの教会を任されている言峰綺礼だ。キミたちは誰かね」

 

「あ、はい。今日からこの教会に配属されたアーシア・アルジェントです」

 

「ほう、キミだったか。待っていた。いま歓迎の料理を地下で作っていたのでね。

先ほど我が上司とその部下に味見と評価を貰いたく料理を食べさせたところ

何故か寝込んでしまったのだ」

 

―――寝込んでしまうほどの料理とはなんだろうかと好奇心と不安が混ざった一誠。

顔に出さず、ここから一刻も早く離れた方がいいと第六感の警報が

うるさくなるほど―――神父が出てきた所からからそうな匂いがしてきたのだ。

 

「それじゃ、俺は用も済んだし帰るから」

 

「イッセーさん。ここまで一緒に来てもらってありがとうございました。

プリムラちゃんのことよろしくお願いします」

 

「おや、もう帰ってしまうのか。せっかくだから彼女の歓迎会に参加するのも一興だろうに」

 

「この子の親か知り合いを探さないといけないんで、そう長居はできませんから」

 

「ふむ、そう言う事ならば仕方ない。また来たまえ、その時は私の特製の麻婆豆腐を馳走しよう」

 

言峰綺礼の言葉に「機会があれば」と告げ、アーシアと別れて教会から出た一誠たち。

 

「さて、お前の知っていそうな人は分かるか?」

 

「・・・・・(コクリ)」

 

「そうか。だったら言っていくれるか?そのヒトのところまで送ってやるからさ」

 

「・・・・・」

 

優しく話しかけた一誠の袖をギュッと掴んだプリムラ。その意図を気付かずどうした?

と訴える一誠の顔を見上げる形で、

 

「イッセーの家に住みたい」

 

「「・・・・・」」

 

予想を遥か斜め上の返答が返ってきたのだった。

 

 

 

 

「で、結局どうしようもなく連れて来ちゃったわけね」

 

「俺と一緒にいるの一点張りで・・・・・会ったことがない娘にここまで

懐かれることを俺はしていないぞ」

 

「ん、イッセーはしていない」

 

高級高層マンションの最上階、一誠は家に戻って来てナヴィに懇願した。

 

「ナヴィも初めての人物の情報を持っているわけ無いよな」

 

「あら、あなたが認めた私にできないことがあると?」

 

「できると?」

 

「勿論よ。久々に神器(セイクリッド・ギア)の力を使うわねー」

 

プリムラをジッと見つめるナヴィ。一誠からでは分からないが

ナヴィの視界にはプリムラの情報がステータス表示として虚空に展開されている。

 

『名前 プリムラ』 『種族 人工生命体三号』 『冥界、天界、人間界が作り出した

膨大な魔力を有する存在であるものの魔力が不安定な故、隔離施設に育てられていた者』

 

―――全ての情報源は世界から得られる。ただし、未確認なものに対しては部分的や

断片的な情報しか得られないこともある。

 

「・・・・・人工生命体三号って・・・・・うわ、もしかして私絶対に知っては

いけないものを見聞したかもしれない」

 

「なんだ?どうしたんだよ?」

 

「・・・・・取り敢えず、分かったことを言うとこの子は魔王と神王だったら知っているはずだわ」

 

「そうか。だったら話が早いな。今日のところはプリムラを一泊させて明日あの二人に―――」

 

「いや、イッセーといたい。ここに住む」

 

プリムラの意思はどこまでも固く、頑になって一誠にそう告げる。

 

「なぁ、どうして俺と一緒にいたいんだ?今日初めて会ったばかりの俺を」

 

「・・・・・お姉ちゃんたちから聞いた」

 

「お姉ちゃん?」

 

「・・・・・リコリスお姉ちゃん、ネリネお姉ちゃんたちから」

 

「―――凄く知っている名前が出たなおい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「神ちゃん、アザゼルちゃん、そういうわけだから例の件は一先ず安心できたよ」

 

『まったく・・・・・まさかあの坊主ンとこにいたとはな』

 

『成長しても驚かせてくれるな』

 

「アザゼルちゃんはまだ一誠ちゃんと会っていないようだね?」

 

『どうせ直ぐにでも会えるさ。それより一誠のハイスクールライフはどうだよ?』

 

『・・・・・溜息が出るばかりだぜ』

 

「若気の至りにしては少々お遊びが過ぎているね。式森家はともかく兵藤家が傍若無人で」

 

『あの若造も苦労しているな。兵藤家も一枚岩じゃないってことか』

 

『もしかしたらあの坊主と兵藤家、全面的に衝突するんじゃねぇか?』

 

『否定はできないな。なんせ―――あんなことが遭ったんだ。

相手はともかくあのガキはまだ鮮明に覚えているだろうよ』

 

「人間の方がよっぽど業が凄く、人間の方がよっぽど悪魔らしい種族だということを

改めて思いさせられた瞬間だったね、確かにアレは」

 

『そういや、お前らんとこの娘共はどうしている。あの学校に通わせていたがってたろう』

 

「そうしたいのは山々だが兵藤家が危険極まりないからね。

私の娘に護衛でも付けさせようと思っているのだよ。今はその検討中」

 

『まー坊と同じくだ』

 

『んじゃ、いっそのことあの有り得ないドラゴンに護衛でもさせたらどうだ?

お前らにとっちゃあ色々と思惑通りになって一石二鳥どころか良いこと尽くめ―――』

 

『頭いい流石じゃねぇかアザ坊よ!そうだそうしよう!

んで、聖剣使いの嬢ちゃんたちもこの国に派遣しよう!』

 

『今若手ナンバーワンのバアルの子にもネリネちゃんやリコリスちゃんの任を与えようかな。

個人的にも彼は気に入っているしね』

 

「『それじゃ、また!』」

 

『・・・・・この親バカ共は思い立ったらすぐに行動しやがるな。

そこはある意味あの二人と似ていやがる』


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