HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード4

一誠たちの自己紹介を終えて授業は始まった。最初は各神話体系について教師が

教科書を見ながら読みあげると、

 

「へー、海の神さまの勢力は浮気が流行だったんだ・・・・・」

 

と、一誠が度肝を抜かす発言をした。

 

次の授業は調理実習、

 

「ちょっ、兵藤くんキミ!」

 

「ん?」

 

「どうして、簡単なデザート作りなのにマカロンを作っちゃうんだー!?

食材はどうした食材は!」

 

「え、自由に作っていいんじゃ・・・・・?」

 

「そんな、純粋な目で首をかしげない!(パクッ)しかも美味しいし!」

 

そのまた次の授業は錬金術の授業。大きな錬金釜が置かれて教師が試しに

何でもいいから錬金をと催促し鎌の前に立つ材料を持った一誠だったが、

 

「・・・・・兵藤くん」

 

「はい?」

 

「その手にあるものはなに?」

 

「えっと、オリハルコン、脱草、スライム、水銀や王冠―――」

 

「・・・・・キミは何を錬金しようとしている?」

 

「メタルキング―――」

 

「ネタバレ禁止!」

 

そして次は、数学。

 

「・・・・・キミは欠点という概念がないみたいだね」

 

「え?」

 

「そこまで複雑に答えなくていいんだよ」

 

『・・・・・』

 

一誠はリーラという完璧超人、スーパーメイドに育てられた故の結果であった。そして昼休み、

 

「ね・・・・・」

 

「何?」

 

「その大きな箱はまさかとは思うけど弁当箱なの?」

 

「そうどけど。でもこれ、俺だけが食べる訳じゃないし」

 

二つの豪勢な箱を鞄から取り出した一誠に見かねて訪ねた女子。

 

「な、広い場所ってどこにあるか教えてくれないか?食べるに最適な場所」

 

「・・・・・屋上かな」

 

「屋上か。ありがとな」

 

軽く感謝されて弁当箱を持ち一誠とオーフィス、咲夜、ヴァレリーが教室から去った。

 

―――屋上―――

 

「おー、聞いた通り広いな」

 

「ここなら大勢いても食べれるわ」」

 

「そうですね・・・・・オーフィスさま、どうかしましたか」

 

「クロウ・クルワッハたち、くる」

 

オーフィスが言った直後にクロウ・クルワッハたちや教師のリーラたちが現れた。

 

「もう、先にどこかへ行かないでよ」

 

現れるや否や、愚痴を漏らすルクシャナ。一誠は悪いと謝り、

弁当箱を置く前にどこからともなく取り出したブルーシートを敷いて改めて弁当を置いて広げた。

各々箸を持って料理を摘まんで口に運びながら今日のことを話し合った。

 

「クロウ・クルワッハたちのクラスはどうだ?」

 

「男が一人もいなかったな」

 

「訊いたら兵藤家の男たちが女子に酷いことをしているようね。

皆、兵藤家の男子に良い感情を持っていなかったわよ」

 

その時のことを思い浮かんだようでアルトルージュは溜息を吐いた。

 

「それと、いきなり雷が降って来たんだけどあれって誰が?」

 

「ああ、俺だわ。件の兵藤家の連中が入って来て、咲夜を寄こせって言うからな」

 

人の家族に手を出す輩は許さないと口にした一誠にリーラがやんわりと窘める。

事を大きくさせて学校生活ができなくなる考慮をした上での注意だ。

 

「一誠さま、あまり兵藤家に刺激を与えないほうがよろしいかと・・・・・」

 

「分かってるよ。こっちから手を出す気はさらさらない。

ただし、あっちから手を出してきた場合は容赦はしない。

それはそうと、リーラたちはどうなんだ?リィゾとフィナ、二人は?」

 

「私はアルトルージュさまたちのクラスの副担任として配属されました。

リィゾさまとフィナさまは何故か警備員に」

 

「なんで警備員?いや、教師よりも大分楽でいいかもしれないけど」

 

「吸血鬼の能力で学校全体の警備をして欲しいそうだ」

 

「人気のない場所が多々あるからね。私たちが蝙蝠と化と成って学校全体をくまなく調べて

問題を起こしている生徒がいれば私とリィゾ、プライミッツ・マーダーが対処する手筈だ」

 

吸血鬼の能力だからこそできる芸道なのだろう。

すると、一匹の蝙蝠が屋上に現れてリィゾの顔に近づいた。

 

「・・・・・仕事だフィナ」

 

「早速ですか。やれやれ、初日で仕事が発生するなんて。ああ、美少年の血を飲みたい!」

 

陰に隠れて何か悪意的なことを仕出かしている生徒を見つけたのだろう。

二人は身体を数多の蝙蝠と化してどこかへ飛んで行った。

 

「二人の働きで少しは学校の治安が良くなるといいんだがな」

 

「兵藤家の者たちが改心しない限りはどうにもならないかと」

 

「・・・・・やっぱ、そうなるよな」

 

あいつらは改心するのかと嘆息し、希望のないことに気に掛けることなどしない。

 

「ルクシャナ、人間の学校じゃないがどうだ?学者として心躍っているか?」

 

「ええ、楽しませてもらっているわ。私、この国に来て良かったと思っている。

一誠、ありがとうね」

 

「あの時強引についてきた結果がこれか」

 

ポツリとクロウ・クルワッハが漏らしたことで周囲から苦笑いや乾いた声が漏れた。

 

「クロウ・クルワッハ、アルトルージュ。そっちにいる皆を守ってくれ」

 

「できる範囲でなら何とか守ってあげる」

 

「相手が強ければ私は嬉しいがな」

 

純血の吸血鬼と最強の邪龍のコンビ、この二人の手に掛かれば

よほどの相手ではない限り安全と言えよう。

 

「ところで、理事長って誰なんだ?」

 

唐突にそんな話をし出した一誠の疑問を誰もが答えられないでいると、リーラが口にした。

 

「この町、この国は事実上、天皇である兵藤家が支配しているのですが、

現兵藤家当主である兵藤源氏さまは多忙の身でありますので、この学校と関わりを持っていません」

 

「じゃあ、誰が理事長を?」

 

「理事長は三人おります。冥界、人間界、天界から一人だけ理事長を選抜して共に

この学校を機能させております。・・・・・直ぐにお会いになられるかと思いますので」

 

最後に発したリーラの顔は珍しく疲れている表情だった。

 

―――○●○―――

 

時刻は午後となり、午後の授業が始まる。

 

「えー、次は体育の授業だが今日編入してきた兵藤くんたちに説明をしないとな」

 

「「「よろしくお願いします」」」

 

「よろしく」

 

「・・・・・普通に礼儀正しいな。さて、説明する。

この学校の体育は特殊で他の学年とクラスの対抗実戦が行われる。

主に戦闘経験、もしくは武術を嗜んでいる者であれば誰でも参加していい。

実際、このクラスには神器(セイクリッド・ギア)の所有者や戦闘経験のあるクラスメートがいる」

 

「へー」と興味深そうに漏らす一誠は誰だろうと周囲に目を配ったところでこっちを

見るなとばかり睨まれてしまい、教師に目を向けざるを得なかった。

 

「(頑張れ兵藤くん)何か質問はあるかな?」

 

「んじゃ、何人まで参加して良いんですか?」

 

「冥界で行われているレーティングゲームを知っているかな?あのゲームと同じ参加人数は16人までだ。ただし上級悪魔に眷属悪魔がいるならその眷属悪魔と

一緒に戦わないといけないわけだが、まぁ関係ないだろう。他はあるか?」

 

「仮に勝ったとして勝ったクラスは何か恩恵はあるんですか?」

 

「そうだな。勝ち続ければ悪魔、天使、堕天使に自分の種族にならないかと勧誘されることもある。

後、体育の評価は今後のステータスにもなる。神器(セイクリッド・ギア)の所有者なら

他国に勧誘され、その国の兵力として迎えられる。特に神滅具(ロンギヌス)の上位種は

軍隊や近代の兵器以上の能力を有しているからどこの国も血眼に草の根を分けて

探し出す勢いで捜索中だしな」

 

教師は教室の時計を見て話を打ち切った。

 

「そろそろ体育の授業が始まる。参加したい奴は立ち上がれ。それ以外の生徒は自習だ」

 

その言葉を待っていたとばかり一誠は立ち上がった。オーフィスも立ち上がったが、

一誠は制した。

 

「オーフィスは咲夜たちの傍にいてくれ。また兵藤のバカが来る可能性があるからな」

 

「ん、わかった」

 

「・・・・・一人だけか?流石に一人だけ行かせるわけには

いかないんだが・・・・・」

 

一誠以外誰も立ち上がろうとはしなかった。立ち上がった男は兵藤家の人間だから一人

でも大丈夫だろうという雰囲気が漂い始める。

 

「いや、無理強いさせたくないんで。俺一人でも―――」

 

「HEY!なら、この金剛が参加しますネー!」

 

と、元気溌剌な茶髪で花を象った結び方をした金と黒のヘアバンドを頭に身に付けた

少女が名乗り上げた。

 

「金剛か・・・・・いいのか?」

 

「YES!この子は他の兵藤と違うことは分かっているから問題ないデース!」

 

「・・・・・(ジーン)」

 

彼女の言葉を聞いた途端、静かに感動する一誠。

 

「―――それに兵藤家にはちょっとした恨みもあるので、

もしもぶつかったら全身全霊を以って潰したいですからネー」

 

金剛の顔に影が宿り、陽気な雰囲気が一変して冷たくなるまでは。

一誠は金剛の言動に罪悪感が一杯だった。

彼女もまた大切な何かを傷付けられた一人なのだと知って。

 

「・・・・・他にいないな?いないならこの二人だけにするぞ。できれば二人だけでも

行かせたくは無いんだがな」

 

そうは言うものの、二人以外参加を望む女子はしばらく待っても名乗り上げず、

結果・・・・・一誠と金剛の二人で体育の授業をすることとなった。二人は教師に

引き連れられてとある空き教室に案内される。そこには光り輝く魔方陣が浮かんでいて

教師は魔方陣の中に入れと催促した。

 

「体育の授業の制限時間は三十分。それまで相手を全員倒しきれば勝利となる。

かなりきつい戦いになるだろうが気をつけろよ」

 

「がんばりマース!」

 

「相手がどこのクラスだか分からないんですか?」

 

「それはこれから送られる体育の授業の為に作られた異空間に行けば分かるさ」

 

教師の言葉はそれで最後だった。一誠と金剛が光に包まれてどこかへと転移したのだった。

 

―――○●○―――

 

「・・・・・ここってどこだ?学校・・・・・にいるようだが」

 

「体育の授業で使われる異空間デス」

 

「というと、もう移動したのか?」

 

「YES!その通りダヨ!」

 

「―――空き教室にいたはずなのにどうしてトイレの中だ?

しかも女子トイレみたいなんだが・・・・・」

 

雰囲気を感じ取って今いる場所を把握する。臭いなど感じさせず、壁を確かめれば

本物みたいな冷たく硬い感触。すると、どこからかアナウンスが流れた。

 

『それでは、体育の授業を始めます。2-F VS 3-C 制限時間は三十分。

勝利条件は相手のクラスを全滅、もしくは制限時間まで相手より人数が

残っていること―――試合開始です』

 

心の準備をする暇もなく授業は始まった模様。金剛と一緒にトイレから出て、

 

「よし、探険だ」

 

「WHY?どうしてなのですカ?早く敵を倒さないと負けちゃうネ」

 

「この学校に始めて来た俺が学校の構図を知っているはずがないだろう?」

 

「あ、それもそうですネ。では、この金剛が案内しマース!」

 

「敵を見つけたら速攻で倒すか」

 

「YES!」

 

と、授業を半分そっちのけで移動を開始した。体育の授業は冥界で行われている

レーティングゲームと同じ異空間、次元の狭間で構築したバトルフィールドで行われる。

審判や教師たちに見守られる中、クラス対抗戦が行われる。金剛に案内されること数分。

 

「うお、こんなものまで再現されているのか!すげーな!」

 

「HAHAHA!良い反応をするネー!」

 

教師陣は思った。この二人、何をしているんだろうと。

だが、程なくして校舎の中を歩き回っていた二人の前に、一誠にとって初めて出会った相手と対面した。

 

「・・・・・お前、なに付けてんの?」

 

「ん?どこかの民族の仮面」

 

美術室から掻っ払ってきた仮面を被っていた。

 

「・・・・・先輩、相手はたった二人のようです」

 

「二人か。よし、俺たちだけでも倒せそうだな花戒」

 

相手は一誠と金剛以上の人数がいる模様。相手が身構えをした時、

 

「聞くけど、お前ら人間か?」

 

「は?いや、悪魔だけど」

 

「そうか・・・・・なら、お前らはこの場で倒れるな」

 

相手の素性を知り、一誠は右拳に淡い光が帯びた。右拳を一度引いて―――。

 

「はぁッ!」

 

気合一閃と共に右の正拳が撃ち出された。相手二人は離れた場所で拳を突き出すなんて―――と

表情に出ていたが、ドンッ!と拳圧の衝撃によって吹っ飛ばされ、一瞬で苦痛の色に塗り替えられた。

 

 

「んー、壊しちゃいけないから力をセーブしたからか、一撃で倒すことができなかったか」

 

「OH・・・・・」

 

ただの衝撃波だけではないようで吹っ飛ばされた相手二人はその場で苦しんでいた。

そんな様子を一瞥して金剛に問うた。

 

「な、ここって壊しても問題ないのか?」

 

「Of course! ジャンジャン壊してもいいのネー!」

 

「ん、なら遠慮なく」

 

―――一拍して、学校の一角が激しく轟音と共に崩壊し、

相手二人のリタイア宣告がアナウンスによって流れた。

 

「よし、次行こう」

 

「GOGO!」

 

 

 

校舎の中を歩き回って十五分経過し、相手が見つからないので外に赴いた。

 

「金剛って神器(セイクリッド・ギア)を持っているのか?」

 

「そうデスヨー。ですが、私の力は役に立ちませんネー」

 

「ん?コントロールができないのか?」

 

「や、そういうわけじゃないんですがネ。見てもらえば分かるかモ」

 

金剛の身体が光に包まれ、様子を見守る一誠の目に想像を絶する飛び込んできた。

―――「戦艦を身に纏っている」―――と一言に尽きる。四つの主砲を備えていて

服装は軽装の巫女服みたいなものと変わっていた。

 

「・・・・・」

 

無言で姿が変わった金剛を見やる一誠に少しドギマギする金剛。何かおかしいのかと思った時、

 

「格好良い・・・・・」

 

「へ?」

 

「いいなぁー。格好良いなぁー」

 

目を爛々と輝かせ、子供のように羨望の眼差しを金剛に向ける一誠。

 

「金剛!それ、なんて名前なんだ?凄いな、戦艦を身に纏うなんて初めて見たよ!」

 

「そ、そうですカー?」

 

「ああ、何だか強そうだ。それ主砲で相手に攻撃するんだよな?」

 

あれこれと金剛に問い、好奇心で身に纏う戦艦を触れる。

 

「(なんだか、この兵藤くんは子供みたいですネー・・・・・)」

 

ここまで自分の神器(セイクリッド・ギア)に興味を持つ人はいなかった。

外見だけならば誰もが感嘆を漏らすものの、実際に使えば手の平を返すような反応を示すことが多い。

きっとこの一誠もそうだろうと思いあることを伝える。

 

「兵藤くん」

 

「ん?あ、ごめんな。それで役に立たないとは?」

 

「こういうことデース」

 

片足を上げて前に動かした。

 

ズシンッ・・・・・。

 

もう片方の足も上げて前に。

 

ズシンッ・・・・・。

 

「・・・・・」

 

必死そうに歩く金剛。歩くだけで顔に汗が浮かび地面が軽く凹んでいる様を見て一誠は理解した。

 

「移動が遅いのか。その戦艦を背負っているから」

 

「YES、その通りなのデース。だから私は敵の攻撃の的になってしまって

私自身の攻撃すら当たりませン」

 

肩を深く落とし、頭も垂れる金剛。確かにこれでは役に立たない。移動おろか回避もできず、

砲台みたいな存在と成り下がる。移動しながら攻撃するこそ戦艦なのだ。一誠を腕を組んで首を捻る。

 

「んー、戦艦の重みで移動速度が遅いんなら・・・・・水の上だったらどうなんだ?

戦艦って海という戦場で真価が発揮するもんだろう?」

 

「あ、それは考えてませんでしたネ」

 

「なら、試すか」

 

金色の杖を具現化した一誠は杖を地面に突き刺した。

 

「―――錬金」

 

と、漏らした一誠に呼応して地面に波紋が生じ・・・・・あっという間に地面が水へと成り変わった。

そしてもう一つ。

 

「oh!私、浮かんでマース!」

 

金剛の足から水が音を立てて噴き上がって、水の上にも関わらず金剛が浮いていたのだった。

動けば蝶の如く動き回り、あの戦艦の重みで鈍かった動きと打って変わって

水の上では軽々と動き回っている。

 

「兵藤、兵藤!見ていますカー!?私、こんなに早く動き回れますヨー!」

 

「氷の上を滑っているようだな」

 

「トウッ!」

 

一誠に向かってダイビングした金剛。この場合、一誠は脳裏でどう対処するか悩んだ。

戦艦の重みで潰されるか、敢えて避けるべきか―――その二つの選択肢を選んでいると

水が獣の形と成って襲いかかってきたので、第三の選択肢である金剛に抱き付いて

水獣の攻撃から避けることに実行した。

 

「ひょ、兵藤・・・・・?」

 

「悪い、どうやら敵がきたようだから」

 

視線を上に向ければ数人の女子が一誠と金剛を見下ろしていた。

 

「あなたたち・・・・・授業を真面目に受けるつもりは無いんですか?」

 

言葉を冷たい視線と共に送る眼鏡を掛けたショートカットの女性。

 

「いや、今日この学校に入ってきたばかりで今回この体育の授業も初めての体験だから、

思いっきり楽しませてもらっているんだ」

 

「・・・・・なるほど、ですがその割には私の眷族を倒しましたね?」

 

「戦いに関しては慣れているからな」

 

一誠の周囲に氷の槍が具現化して相手に放った。

空気を裂きながら飛来する槍は、魔方陣や長刀で防がれた。

 

「魔法使いですか・・・・・。まさか、式森―――」

 

「違う。俺は兵藤だ」

 

言った瞬間、相手から感じるプレッシャーが膨れ上がった。

一誠を見る眼つきも厳しく、細くなった目を一誠に見下ろしながら漏らした。

 

「・・・・・兵藤、そうですか」

 

「あれ・・・・・?」

 

「・・・・・覚悟してください」

 

周囲の水が意思を持っているかのように揺らめき、弾丸のように一誠と金剛に襲い掛かった。

 

「なんかお怒りになられている!?」

 

「兵藤家にいい感情を持っている人のほうがおかしいデス!」

 

「・・・・・三年のところまでもそうなのかよ」

 

全ての水を凍らせた後に元の地面に戻し、大地を操り槍のように上空にいる

女子たちへ突き上げた。一誠の仕業であることを理解し、

土の槍を回避した女子たちの顔に驚愕の色が浮かんでいる。

 

「兵藤家が魔法を扱えるなど聞いたことが・・・・・ッ!」

 

「俺はそんじょそこらの兵藤のやつらとは違う」

 

「どうでしょうか、あなたも兵藤の名を持つ者なら傍若無人な振る舞いをし、

兵藤家の威光を嵩に懸ける―――」

 

眼鏡の女性が最後まで言えなかった。見下ろして視界に入れていた一誠の姿が虚空に消え、

瞬きをした瞬間に一誠は目の前にいて思考が働く前に首を掴まれた。

 

「もう一度言う。俺は他の兵藤の奴らとは違う」

 

「・・・・・っ!?」

 

首を掴まれているにも拘らず、大した握力で掴まれていなかった。

だが、一誠から発する形容しがたい何かで身体が動けない。

他の仲間も目を丸くして次の行動ができないでいる。

 

「俺と他の兵藤と一緒にしないでもらおうか。それだけは耐え難い屈辱何でな」

 

「・・・・・どうして、そこまで拘るのですか。同じ兵藤の名前を持つ者が」

 

「兵藤家は外見も中身も一致していると思うか?」

 

「・・・・・なんですって?」

 

「外見はさぞかし立派なイメージなんだろうが、蓋を開ければお前の言う通りの奴らが

当たり前のようにいる。自分たちは偉いんだから当然だ。強いから相手からなにを

奪おうと正当化される。そんな奴らがな」

 

女性は一誠から発せられる言葉にどこか疑問を浮かんだ。同じ兵藤家の人間が兵藤家を

否定するかのような言い方なのだ。摑まれていた首が解放され、目の前に佇む一誠が口を開く。

 

「俺は極一部を除いて兵藤家と兵藤の人間が大嫌いだ。それだけは覚えてくれ」

 

「・・・・・」

 

「さて、戦いを開始しようか」

 

空間を歪ませ穴を広げたら手を突っ込ませて装飾と意匠が凝った鞘に収まっている

剣を取り出した。

 

―――っ。

 

その剣を見た瞬間に女性たちは顔を強張らせた。

あの剣は―――自分たちを屠る為に作られた武器であることを認知したのだ。

 

「金剛、俺が撹乱しつつ隙を突くから頼んだぞ」

 

「OKー!」

 

地上から主砲を構える金剛と目の前に剣を構える。

人数はこっちが有利だが―――どうやら覆させられるかもしれない。そう女性は思った。


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