HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード22

「やっほー!遊びに来たよー!」

 

「・・・・・来たよ」

 

川神院に二人の少女が入って来て稽古中の百代と一誠の前に現れた。

 

「あ、来たね。後もうちょっとだけ待ってて。今稽古しているところだからさ」

 

「うん!」

 

「・・・・・分かった」

 

隅の方で大人しく待っている間でも二人は話し合っている。その様子を見守っていた

リーラと釈迦堂が話をし出した。

 

「どっちもイジメを受けている嬢ちゃんたち何だってな?」

 

「ええ・・・・・京さまは学校でイジメを受けているそうです。こゆきさまは異様に

痩せていて身体には多数の打撲痕がありました。きっと虐待による怪我なのでしょう」

 

「んで、あの坊主は放っておけないってあの嬢ちゃんたちと遊ぶようになったわけだ」

 

「最近のイジメは流行っているなぁ」と他人事のような物言いを発する釈迦堂。

 

「それで、学校でイジメを受けている嬢ちゃんはともかく、親から虐待を受けている

あの嬢ちゃん、どうする気だ?知ってて尚も知らない振りを貫き通すか?

今回ばかりは親に捨てられた辰子たちとはわけが違うぜ」

 

「一介のメイドである私にどうしろと申し上げるのですか?川神院が引き取ってくれると申すのですか?」

 

「そこまでうちはお人好しじゃねぇよ。ま、ただの質問だ」

 

「・・・・・」

 

リーラは無言でこゆきを見詰める。いずれ川神院から離れざるを得ない。

親から親権を剥奪してもその後、義理の親と成ってくれる者の存在を探さなければならない。

 

「なんなら、九鬼家にでも相談するかぁ?」

 

「相談・・・・・そうですね。九鬼家に貸しを返してもらいましょうか」

 

兵藤家に作った貸しはデカい。リーラは携帯を手にしてどこかへ連絡を入れた。

 

「・・・・・もしもし、リーラでございます。クラウディオさま、お時間は大丈夫ですか?」

 

―――九鬼家極東本部―――

 

「よぉ、坊主。うちの息子と娘を助けてくれて感謝するぜ」

 

「気にしないでいいよ。もう終わったことなんだしさ」

 

「そうか。それなら今後とも息子と娘とよろしく頼むぜ。あいつらも俺が帰って来た時は

必ずお前のことを話すからよ。相当気に入っている様子だしな」

 

「はーい」

 

とある日、リーラは一誠とオーフィスを連れて九鬼財閥のとある一室にいた。

そこで九鬼帝、英雄と揚羽の父親が一誠と話を終えるとリーラに尋ねた。

 

「で、九鬼家にあることをして欲しいとはなんだ?」

 

「ただの親捜しでございます。それも義理の親です」

 

「義理の親捜し?なんだそりゃ」

 

「虐待を受けている一誠さまのご友人がおります。ので、九鬼家からその親の親権を

剥奪し尚且つその子の新しい親と成ってもらえる義理の両親を探して欲しいのです」

 

帝はリーラの話を聞き、とある質問をした。

 

「その程度の事で九鬼家にやって欲しいと?」

 

「同じ親として帝さまも子を蔑ろにする親に対して良い感情を抱かないはずです」

 

「そりゃそうわな。だが、俺には関係のない赤の他人だ。坊主の友達がそんな目に遭っていようが、

それはそいつの親が悪いだけで俺たち九鬼家が他人の家の事情を横から介入する理由がない。

兵藤家のお前がしたほうがいいんじゃねーの?」

 

「私は元兵藤家当主にお仕えしている一介のメイドに過ぎません。兵藤家から追放された者は

兵藤家の威厳と権利、全ての力は振るえないのです」

 

「というと、お前はただのメイドとして俺に頼んで来ているとそういうわけだな?」

 

肯定と頷きリーラは言い続ける。

 

「断われる前提でお願いをしに参りました。

九鬼家の力でまだ未来がある若い一人の人間を助けてください」

 

「お願いします」

 

一誠がお辞儀をする。この件は一誠が連れてきた一人の少女から始まったもの。

完全に赤の他人の為に九鬼家が動くなどと帝は頭を掻きどうしたものかと悩んでいると、

 

「父上、我らからもお願い申し上げます」

 

扉が開いたと同時に揚羽と英雄が入ってきた。

 

「お前ら、聞いていたのか?」

 

「クラウディオから兵藤が来ると聞きまして、

迎えにここへきたら何やら話しこんでいる様子で聞いておりました」

 

「それから窺っておりましたので事情は把握しました。父上、兵藤は我ら姉弟の命の恩人です。

ですから我らからもその者を救ってください。我らは恩を返したいのです」

 

英雄と揚羽までもが帝に向かって深々と頭を下げた。その背後にはクラウディオと

ヒューム、着物を身に包み額に☓の傷跡がある中年の女性が現れた。

 

「帝さま。ここはひとつ、この子たちの願いを叶えてください」

 

「おいおい、お前もかよ・・・・・」

 

「この私も兵藤さまに御命を救われましたので。私からもお願いできませんでしょうかね?」

 

「って、クラウディオもかよ。で、ヒューム。お前も同じか?」

 

「私は別の考えですな帝さま。追放されたとはいえ、元当主の子供・・・・・。

兵藤家の血を流す子供が後々に九鬼家にとっても有意義な存在となるはずです」

 

「んー」と腕を組んで悩む帝。ここまで言われちゃ当主として動かざるを得ない。

恩人であることは確かに間違いない。親として、一誠に感謝の念を抱いていることも

また事実なのである。

 

「・・・・・ん、よし、分かった。家族にそこまで言われちゃ坊主の願いを

聞かないわけにはいかないな」

 

「ありがとうございます!」

 

まだ先の話ではあるが後に九鬼家がこゆきの両親、母親に対して警察を動かし、

弁護士も引き連れあっという間に虐待の罪で逮捕、親権を剥奪された。

その後のこゆきは葵紋病院に勤めている一人の女性が義理の母親となることを承諾したので、

榊原小雪と新たな人生を送ることになった。

 

 

 

「ところで坊主」

 

「ん?」

 

「お前、揚羽を見てどう思う?」

 

「どう思うってなにが?」

 

「んー、可愛いとか綺麗だとか男として揚羽を女として意識をしてどう思うってことだよ」

 

「九鬼ちゃんのこと?大人になったら綺麗になるんじゃないかって思ってるよ」

 

「そうかそうか」

 

「・・・・・帝さま、何をお考えになられているのです?」

 

「いやなに。ただの質問だけだぜ?というか九鬼ちゃんか・・・・・まだ名前で

呼び合う仲じゃないのが残念だな」

 

「まだまだ時間がたっぷり残っておりますゆえ、焦らず揚羽さまと接することが大切ですよ帝さま」

 

「そうみたいだなー。将来、もしかしたら俺の跡を継いでくれる奴が増えるかもしれないしな」

 

「まぁ、気が早いですわよ帝さま」

 

「はははっ、それもそうだな」

 

―――○●○―――

 

それから時が過ぎた。一誠は百代と共に実力を身に付け、

川神院の修行僧たちを体術だけで倒せるようになり、

 

「はぁっ!」

 

「中々やるようになってきやがったじゃねぇかおい坊主!」

 

「師匠、私も忘れちゃ困るぞ!」

 

現在の稽古は釈迦堂と模擬戦をするようになった。

釈迦堂自身もこの時を待っていたかのように楽し気に口角を始終上げていた。

 

「ちょいっとばかし本気を出させてもらうぜ。いけよリングッ!」

 

チャクラムの形状の闘気が二つ一誠と百代に放たれた。

 

「なにそれっ!?」

 

「師匠の必殺技だ!」

 

百代が叫ぶ感じで告げる。その間にも釈迦堂の必殺技が迫った。

 

「真剣白刃取りッ!」

 

リングにぶつかる寸前に両手で挟み受け止めた一誠。

 

「おっ、凄いな一誠ッ!だが、私もできるぞ!川神流・真剣白刃取りッ!」

 

一誠と同じ技で受け止めた百代。

 

「百代!」

 

「わかった!」

 

「あ?なーにしてくる―――」

 

「「せーのっ!」」

 

二人の様子を警戒しながらも窺っていると

チャクラムを挟んだまま、共に反対へ回りながら

二人はそれを遠心力で勢いよく、力強くチャクラムを釈迦堂に向けて投げ放った。

 

「マジかよ!なーんてな」

 

「「はい?」」

 

一誠と百代の考えることはお見通しとばかり自身の技を人差し指と中指で容易く挟んだ。

 

「投げ返してくるとは思いもしなかったが、まっ、俺には効かないぜ。出直してきな!」

 

チャクラムを再び投げ放った。一誠と百代がソレをかわした瞬間。釈迦堂は二人の懐に

迫って頭を掴みそのまま地面へ押し付けようとした。

 

ガッ!

 

「あ?」

 

「この時を」

 

「待っていたぞ師匠」

 

倒されそうになっても足は地面から離れていない。上半身が海老反りに成りかけている

一誠と百代は逆に釈迦堂の手首や腕を掴んだ。

 

「今日こそは」

 

「僕たちの勝ち!」

 

腕に力を込めてあり得ない体勢で釈迦堂を引っ張る形で持ち上げた。

 

「こなくそっ!」

 

バッ!と百代の顔を掴む手を強引に振り払い、一誠に体重を掛けて押し付けようと考えた。

だが、釈迦堂の思惑通りにはならなかった。

 

「んぎぎぎぎっ!」

 

「・・・・・マジかよおい」

 

大の大人の体重を一誠が一人だけ逆立ち状態の釈迦堂を持ち上げるように支えた。

 

ドッ!

 

「あ?」

 

腹部から感じた鈍痛。逆立ち状態だった体勢が傾き始めた。

そして、円に描かれた線を釈迦堂は体勢を立て直してでも越えてしまった。

 

「いたっ」

 

後に一誠も倒れた。線からはみ出たが百代と一誠は笑みを浮かべた。

 

「私たちの勝ち、だよな?」

 

「線から出たもんねー?」

 

「・・・・・」

 

二人の指摘にため息混じりに肩を竦め、

 

「わーったよ。今回はお前らの勝ちだ」

 

「「よっしゃー!」」

 

歓喜を露にして喜びを分かち合う一誠と百代。

そんな二人の様子を見ている釈迦堂に数人が近寄った。

 

「おやおや、釈迦堂が負けるとはネ」

 

「うるせー。ルー、てめぇだって俺より早く負けただろうが」

 

「負けは負けじゃよ釈迦堂。よもや、お主までが負かされるとはのぉ」

 

「今度はジジイの番だぞ。孫と坊主の可愛さに手加減すんじゃねぇぞ」

 

「ぬかせ。ワシが闘いに手を抜くとは笑止千万もいいところじゃ」

 

「へっ、どーだかな」

 

円の外、もしくは地面に倒れたら負けということを一誠と百代が考え、最初は川神院の

修行僧たちを全員。次は師範代、最後は総代と順に倒す決まりを作った。

それを何日も掛けては繰り返し、ようやく師範代の二人を、ルーと釈迦堂を倒したのだ。

残りは総代である鉄心のみである。

 

「ジジイ、勝負!」

 

「勝つよー!」

 

「ほっほっほっ。元気が有り余っておるようじゃの。よかろう、相手をしてやる」

 

「あまり、大人気ないことをしないでくださいヨ」

 

不敵に笑みを浮かべつつ、鉄心は円の中へ。そして―――。

 

ドサッ!

 

「ま、まいったのじゃ・・・・・」

 

「「おい」」

 

呆気なく鉄心が円の中で倒れた。その理由は敢えて言わないでおこう。

そして、とある日。

 

「・・・・・」

 

百代が何時になくそわそわしていた。一誠たちは「何をそんなに?」と不思議そうに

小首を傾げる。なので、鉄心やルー、釈迦堂に聞けば。

 

「ああ、お主らは知らんかったの。もうすぐ百代の誕生日なんじゃよ」

 

「にしても、確かに何時になくソワソワしていたな」

 

「何時もの百代なら。威風堂々と待っていたガ・・・・・」

 

三人とも百代がソワソワする理由は誕生日を楽しみにしているだけとは思っていなく、

やはり不思議そうに首を傾げていた。だから一誠たちは直接聞いた。愚直に素直に。

 

「百代、なんか欲しい物とかある?」

 

「な、何だ急に?」

 

「だって、お前の誕生日がもう直ぐだって師匠たちから聞いたぜ」

 

「あ、ああ・・・・・そう言うことか。別に何でもいいぞ」

 

「何でもって言われると石ころでもいいってことかよ」

 

「竜、お前は女にそんな物をプレゼントする最低で嫌な奴か」

 

「んー・・・・・ZZZ」

 

「ま、あんまり期待しないでおいでよ」

 

欲しい物の情報を得られず、一誠たちは試行錯誤の思いで百代に渡すプレゼントを探し求めた。

それぞれ五百円玉を握って集団で街に出かけた。

 

「なぁ、アイツが好きなものってなんだ?」

 

「野球のカードしか知らないよ」

 

「カードなんて大人になるにつれいらなくなるさね」

 

「食べもんだと、あっという間に食べられるからダメじゃねぇか?」

 

「ずっと残るものでいいんじゃないかなー」

 

悩む一行。

 

「亜巳と天、辰子、オーフィスだったら何が欲しいの?」

 

「は?急に言われても思い付かねーよ」

 

「天の言う通りだね」

 

「私は一誠くんが欲しいなー」

 

「我も」

 

「辰姉とオーフィス。もっとマシな答えを言えよ」

 

「「本気」」

 

一部、欲望に正直な答えを言う者の六人は街中を歩く。直ぐに無くなるものはダメ、

ずっと残るものをプレゼントにしようと決め合い、形ある物を探し求める。

様々な店を物色してプレゼントを探していると、一誠は知人と遭遇した。

 

「あ、エス―――」

 

「兵藤、兵藤じゃないか!」

 

ガバッ!と一誠と出会えたことに青い髪の少女、エスデスが嬉しいあまりに抱き付いてきた。

 

「偶然だな。また外で出会うとは嬉しいぞ。ま、まさかだと思うが・・・・・私を探しに?」

 

「ううん。もうすぐ百代の誕生日なんだ。だから皆とプレゼントを買いに来たんだよ」

 

「・・・・・あいつの誕生日?何時なんだ?」

 

「八月三十一日だってよ」

 

「なんだ、もうすぐじゃないか。それで、何か買ったのか?」

 

全員が首を横に振る。

 

「女の子にプレゼントするのって僕たち始めてだから迷ってるんだ。

あ、エスデスだったらプレゼント、何が欲しい?」

 

「お前だ、兵藤」

 

「・・・・・ここにもいたぜ、まったく」

 

「僕は物じゃないよっ」

 

呆れる竜兵に頬を膨らます一誠。ちゃんとした答えが返ってこないと女の子に対する

贈り物に頭を悩ます一誠。ふと、エスデスと一緒にいる強面の大人たちに目が入った。

 

「ねね、女の子が好きそうな送り物って何か知ってる?」

 

「俺たちに訊いているのか?」

 

「うん、知ってたら教えて?」

 

期待に満ちた一誠の瞳に向けられた大人たちは、顔を見合わせ自分の意見を述べた。

 

「女ってのは輝く物が好きなのが定番だ。宝石とかネックレス、指環とかな」

 

「枯れてしまうが花束も悪くない」

 

「宝石をプレゼントしたいなら誕生石で送ると良いぞ」

 

「誕生石?」と気になった単語をオウム返しをした一誠の言葉に大人は頷いた。

 

「色んな宝石に誕生日を象った言葉が籠った宝石がある。八月の誕生石はえーと、

確かペリドットとサードニックスっていう宝石だな。宝石を売っている店の店員から

聞けば教えてくれる」

 

「宝石・・・・指環・・・・・。うん、決めた宝石にしよっ!」

 

大人たちは本気か?と思った。まだ子供だから金銭的にもたかが知れている。

一つ数万のする宝石があればもっと何十、何百、何千倍という値段の宝石がある。

プレゼントを買いたいのに買えない現実を突き付けられ絶望してしまうだろうと思った矢先。

 

「エスデスって誕生日いつ?」

 

「十二月だ」

 

「十二月だね?分かった。誕生日になったらエスデスにも宝石を買ってあげるね

誕生日石の。じゃあね!」

 

行くぞ宝石を買いにー!とようやく決まったプレゼントを買いに一行は宝石店へと向かった。

 

「おい・・・・・どうするんだよ」

 

「可哀想なことをしたかもな」

 

「お嬢にも買ってあげるとか言ったぞ」

 

大人たちは恐る恐るとエスデスに目を向けた。

 

「・・・・・楽しみだなぁ・・・・・」

 

目を潤わせ、胸の前に手を組んだ。―――恋する乙女そのものであった。

 

「・・・・・お前ら、いくらある?」

 

「・・・・・足りないと思うぞきっと」

 

「・・・・・俺たちの命日は十二月か」

 

静かに死を悟った大人たち。その頃、宝石店に辿り着き、店員にペリドットと

サードニックスという宝石を見せてもらい、その値段に物凄く落ち込んだ。

 

「あう・・・・・高い」

 

「ウチらが合わせても買えないじゃんか」

 

「なんとなく予想していたけどね」

 

「それ以前に宝石は実際高いだろ。一誠、知らなかったのかよ?」

 

「うーん・・・・・」

 

「残念」

 

宝石店の店員でさえ可哀想にと思うほど落ち込む一誠。指環以外にもネックレスを

見ても結果は同じで、戦に敗れた兵のように店から出た。

 

―――○●○―――

 

「一誠さま、プレゼントはお決まりになさったのですか?」

 

「決まったんだけど、買えなかったよ。誕生石欲しかったんだけど」

 

「そうでしたか」

 

「だから代わりに玩具の指環とか、

皆でずっと残るものを買ったんだけど・・・・・やっぱり宝石が欲しいな。指環の」

 

パタパタと敷かれた布団に寝転がって、脚を動かし未練が残っていると意思表示をする。

 

「お気持ちは分かりますが一誠さま。そのお気持ちだけでも

きっと百代さまは喜んでくださると思いますよ?」

 

「・・・・・そうなの?」

 

「はい」

 

「じゃあさ」

 

起き上がってリーラと対面した。淡いピンクのシルクのパジャマを身に包んでいて、

束ねている銀の髪はロングストレートに伸ばしている。

 

「リーラさんはプレゼントされた時、何を貰ったら嬉しいの?」

 

「私ですか」

 

「うん」

 

ジィーとリーラを見詰める一誠。リーラ自身も何度か誕生日の時は祝福され、

一誠たちからプレゼントを受けている。誠と一香と違って、

子供らしく微笑ましいプレゼントをもらっている。

 

「私は・・・・・」

 

具体的な物は特にない。リーラは欲しい物は特にない。

リーラ・シャルンホルストという人物は欲がない。ただし、強いて言えば。

 

「・・・・・」

 

スッと両腕を伸ばし、一誠を自身の胸に抱き寄せた。

 

「リーラさん?」

 

「私は一誠さまやオーフィスさま、誠さまや一香さまと過ごす時間が幸せです」

 

「うん、僕もそうだと思うよ」

 

「ですので、私は物によるプレゼントより、一誠さまと過ごせるこの時間が大好きなのです」

 

一誠を見下ろすリーラの表情。一誠がリーラを見上げれば目を細め安心させる微笑みを浮かべていた。

 

「それが何時も私にくれる一誠さまたちからのプレゼントです。

人は形があるものやない物をプレゼントされると嬉しいのですよ?」

 

「そうなんだ」

 

「はい。だから無理に考えず一誠さまは用意できる物でプレゼントを差し上げれば十分なのです」

 

「僕が用意できること・・・・・」

 

思案顔で思考の海に潜る。そんな一誠の頭を優しく撫でていると眠気が襲って来たようで重たげに目蓋が閉じかけている。

 

「おやすみなさい我が主さま」

 

「・・・・・ん」

 

リーラと共々寝転がり、しばらくして寝息を立て始める一誠だった。

 

「(そう・・・・・私は形ある物より、あなたとこうして共に過ごす時間が何より大切なのです)」

 

「我も寝る」

 

彼女とは反対側、一誠の隣に寝転がって寝始めるオーフィス。クスリと微笑み、

明りを消して―――。

 

「おやすみなさいませ」

 

眠る一誠の頬に唇を押し付けた。


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