HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード21

「一誠さま、御身体の方は大丈夫ですか?」

 

「アザゼルおじさんがくれた薬で元気だよー」

 

「そりゃそうだわな。人間とドラゴンの身体の構築は根本から違うんだからな。

人間の薬がどこまで効果を発揮するか俺ですら分からん」

 

冥界、堕天使領にて一誠とリーラ、オーフィスたちはいて一誠の病態は回復した。

人間界の葵紋病院で入院している最中、一誠に「ドラゴンでも人間の薬は効くのか」と

問われたリーラがそのことをアザゼルに伝えると返ってきた言葉はNOであったが為に、

闇に紛れて一誠を冥界の堕天使領に連れてそこで安静していたのだった。

 

「人間界はどうだ?」

 

「うん、楽しいよ。僕と同じぐらい強い子もいるし」

 

「ああ、あの子供か。確かに子供にしちゃ強そうだったな」

 

「それでね?僕、ドラゴンになれるようになったんだよ」

 

「ほほう、ドラゴンか。・・・・・ドラゴン?」

 

アザゼルがもう一度言い直し、どういうことだと一誠に問うたところ。

 

「それについては聞くよりも実際に拝見してもらった方がお早いかと」

 

リーラが横から話しかけてきた。アザゼルもリーラの言葉に同意したようで頷き、

一誠を表に連れだした。紫の空の下、広々とした場所で四人はいた。

 

「そんじゃ、ドラゴンになってもらおうか」

 

「はーい」

 

一誠は返事をした後に金色のオーラが突如一誠を包み始める。そして、みるみる大きくなり、

 

「おおっ!」

 

アザゼルが感嘆を漏らす。目の前に視界に飛び込む一誠の姿。

神々しく光を発光する全身が金色の巨大生物。顔はトカゲのようなフォルムで

その頭上に金色の輪後光、背中に巨大な金色の翼を生やしてリーラたちを上から見下ろす。

 

「龍化か!なるほど、お前はメリアの姿になれるようになったのか!」

 

『うん、今はまだこの姿にしかなれないけどね』

 

「はははっ、お前は凄いな。その歳でドラゴンになれるとはよ」

 

『僕凄い?』

 

「ああ、凄いぞー」

 

嬉しそうにアザゼルの言葉を聞き眼を細めた。オーフィスが一誠の頭の上に乗り出した

ところで翼を力強く羽ばたかせて紫の空へ飛びだした。その間リーラはアザゼルに

ある話を告げていた。

 

「ドラゴンしかいない世界・・・・・そしてその長、龍を生み出すシステム・・・・・原始龍だと」

 

「はい、アザゼルさまはご存知でしたか?」

 

難しい顔を浮かべ、アザゼルは首を横に振った。聞いたことが無いと否定したのだ。

 

「初めて訊く。俺が天使だった頃からそんなドラゴンやその世界があるなんて聞いた

こともなければ聖書の神、ヤハウェだって知らないだろう」

 

「そうですか・・・・・」

 

「龍を生み出す原始龍・・・・・まるで純粋な天使を生むヤハウェみたいな存在だな」

 

程なくして一誠はこちらに急降下してきた。その時、後ろから誰かが来た。

 

「アザゼル、あのドラゴンはなんだ?」

 

「リーラさん、お久しぶりです」

 

「お久しぶりでございます。ヴァーリさま、朱乃さま」

 

ダークカラーが強い銀髪の子供と黒髪を一つに結い上げた子供。ヴァーリと朱乃であった。

 

「おう、ヴァーリと朱乃。丁度良い所に来たな」

 

「「?」」

 

疑問符を浮かべ小首を傾げる二人に金色のドラゴンが舞い降りた。

 

『ヴァーリと朱乃、久し振り!』

 

「え・・・・・」

 

「その声、一誠・・・・・なのか?」

 

信じられないと眼を丸くする二人。金色のドラゴンが一瞬の閃光を発して見る見るうちに小さくなり、

やがて人の形となり光りから一誠が姿を現したが

 

「うわっ!」

 

頭に乗ったオーフィスの重さに耐えきれず、地面に倒れた。

 

「イッセー、大丈夫?」

 

「ど、どいてくれると助かる・・・・・」

 

ピョンとオーフィスがどいた矢先、一誠は再び倒れ込んだ。

 

「一誠!」

 

「一誠くん!」

 

ヴァーリと朱乃によって。その光景を微笑ましくアザゼルとリーラは見守っていた。

 

「ははは、やっぱりこうなるわけだな」

 

「ええ、そうですね」

 

「しっかし、あいつは見ない間に随分と強くなったな」

 

「出会いがそうさせるのです」

 

「出会い・・・・・か」

 

何故か空に向かって遠い目で見始める。リーラはそんなアザゼルのハートをグンニグルで差した。

 

「アザゼルさまは神クラスの出会いのお持ちなので、伴侶をお求めなのであれば身を

固めるべきかと存じ上げます」

 

グサァッ!

 

「お前・・・・・、しつこく俺に対して女の話を持ち上げるな。俺はお前に対してなにかしたかよ」

 

「アザゼルさまの話を挙げるとすればアザゼルに関する神話、豊富な神器(セイクリッド・ギア)の知識、

そして数多の女性に手を掛けた堕天使の総督としか思い浮かべませんので」

 

「ぐっ・・・・・」

 

呻くアザゼル。あながち間違っていない為、否定する材料もない。

 

「他に何か武勇伝がおありでしたらお聞かせ願いますがよろしいでしょうか?」

 

「・・・・・お前なんて嫌いだっ」

 

「お言葉ですが、私はアザゼルさまに対して尊敬の念を抱いていると同時に

女に情けない堕天使に軽蔑をしておりますので」

 

「・・・・・ぐすっ(泣)」

 

アザゼルの目に光るものが。そしてリーラに対して一言。

 

「あいつは絶対にお前みたいな毒舌野郎になるな」

 

「・・・・・」

 

親の背中を見て育つ、蛙の子は蛙と言いたげなアザゼルに一瞥して。

 

「一誠さま」

 

「うん?なにリーラさん」

 

「私はしばらくアザゼルさまと鬼ごっこをしたくなりましたので、一誠さまはお二人と

しばらく遊んでいてくださいませ」

 

「なっ!?」とアザゼルが目を丸くして驚愕するが一誠はリーラの言葉の意図を気付かないまま、

頷いた。

 

「わかった。頑張ってアザゼルおじさんを捕まえてね?」

 

「はい、必ず捕まえます」

 

レプリカのグンニグルを具現化してアザゼルに振り返った。

 

「ではアザゼルさま。一介のメイドと御遊戯を付き合ってください」

 

「ちょっと待て!グンニグルを片手に鬼ごっこをする遊びなんて俺は絶対にしたくねぇっ!

お前、怒っているだろう!?」

 

「0です」

 

「いきなりってどわっ!?」

 

膨大な光から間一髪躱したアザゼルの頬を掠めた。攻撃したリーラから心なしか異様な

プレッシャーとオーラを感じるのは錯覚であることをアザゼルは願った。

 

「・・・・・ちっ」

 

「舌打ち!?」

 

「次は外しません」

 

「くそったれ!相手になれるかよ!」

 

 

ダダダダッ!

 

 

アザゼルが逃走を始め、追うリーラ。

 

「リーラさん、何だか楽しそうだね」

 

「・・・・・あれが楽しいのか?」

 

「かなり怒っているような感じするよ?」

 

「ん?そう?それよりも久し振りに僕たちも何か遊ぼうよ」

 

怒号と悲鳴が聞こえてくる中、一誠たち子供はその原因を露知らず遊ぶ。

 

―――後に堕天使領に住む堕天使たちの間で『槍を持った銀髪のバルキリーを怒らすな』

という暗黙の了承が生まれ同時に畏怖の念を抱くようになった。

堕天使の総督を追うバルキリーに幹部を含めて全員が返り討ちに遭ったからだ。

 

―――○●○―――

 

「おい兵藤。俺さまの剛球を打てなかったらアイス棒を買え!」

 

「じゃ、僕が打てたらその逆。風間に選んでもらいたいから僕たちに奢ってよね」

 

ピッチャー・ガタイの良い少年、島津岳人。バッター・兵藤一誠がそう言い合い、

ガクトの投げ放ったボールは吸い込まれるようにキャッチャー・直江大和が構えるグローブに向かう。

 

「てやっ!」

 

力強く勢いよく振られた木製のバッドにボールを狙い違わず当てて、青い空に向かって打ち上げた。

勝負も賭けにも負けたガクトは顔を引き攣らせた。

 

「うげっ、マジかよ・・・・・」

 

「男に二言は無いよね?」

 

「うぐっ・・・・・ちっ、わかってら」

 

渋々と一誠の指摘に認め、了承した。その後、一誠たちは原っぱで一頻り遊んだ。

 

「はー、楽しかったー」

 

「お前は強過ぎだ!」

 

「百代だって強いじゃないか。だから僕と百代が分かれて野球をしたんじゃん。

文句を言うなら百代に言ってよ」

 

「だ、そうだが?文句があるなら私に言え」

 

「イエ、ナンデモゴザイマセン」

 

冷や汗を掻き、ロボットのようにカタ言葉を発した逃げ腰の島津。

 

「えーと、僕と辰子、亜巳、天、竜兵、オーフィスの分を買ってね島津」

 

因みに百代、大和、一子、翔一、モロ、ガクトとチームに分けて野球をしていたのである。

 

「・・・・・な、なぁ兵藤。ものは相談だが二人で一本ってことで手を打たないか?」

 

「ダメだよ。最初にアイス棒を賭けた話を持ち出したのは島津でしょ?

男らしく潔く僕たちに六本分買ってよね」

 

「そーだぞ。素直に負けを認めろよ」

 

「くそぅ・・・・・なんで俺さまはあんなことを言ったんだよ」

 

「ふっ、子供だなガクト。ちゃんと計画的に考えないからだ」

 

「大和、テメェだって子供だろうが!」

 

と、賑やかな空間が一誠たちを包み、楽しい時間を過ごしていると一誠の金色の双眸が

遠くにいる二人の少女を見つけた。どちらも離れていて互いが気付いていないが

こちらを見詰め羨望の眼差しを見詰めていることだけが同じだった。

 

「ん、きーめた」

 

バサッと天使のような金色の翼を生やしだした一誠。外でドラゴンになるなと

リーラから告げられている。だが、もう一度あの翼を出してくれと周りからせがまれた時に

困っていると部分的にドラゴンの力を籠めれば可能だとオーフィスの助言により、

背中に金色の翼を出せるようになったのである。周りから声が掛けられるものの

無視して空を飛び、一人の少女の目の前に降りた。

 

「ね、こっちを見ていたけど遊びたいの?」

 

「・・・・・うん」

 

「じゃ、一緒に遊ぼうよ」

 

少女に手を差し伸べる一誠。少女は恐る恐ると上目遣いで一誠に問うた。

 

「いいの・・・・・?」

 

「勿論だよ」

 

優しく受け入れる一誠に少女は明るい顔を浮かべた。

 

「ありがとう!」

 

「どういたしまして。僕は兵藤一誠って言うけどキミは?」

 

名を問われた少女は口を閉ざした。一誠は首を傾げ様子を見ていると意を決した表情で、

 

「・・・・・ゆ・・・・・き」

 

少女は名を名乗った。

 

「僕の名前は、こゆき!」

 

こゆきと言う少女を得た一誠は背を向けた。

 

「僕の背中に乗って?」

 

「うん!」

 

こゆきは一誠の背中に飛び付くと、子供が子供の重さで空を飛べないはずだが、

そこは魔力の力で飛べるようにしてもう一人の少女のもとへ飛んで行く。

 

「おーい」

 

「っ!」

 

「ねね、遊びたいなら一緒に遊ぼ?」

 

もう一人の少女の目の前に降り立って誘う一誠。少女は一言で言うと暗く、

何を考えているのか分からない少女だった。

 

「・・・・・きれい」

 

「ん?これのこと?」

 

金色の翼を羽ばたかせると、少女はコクリと頷いた。

一誠は嬉しそうに「ありがとう」と言って翼を近づけた。

 

「触る?こゆきもさっきから触りまくっているから大丈夫だよ」

 

「うん、フワフワのモコモコだよー」

 

一誠とこゆきの言葉に少女はおずおずと翼を触れた。

 

「ぁ・・・・・」

 

一瞬だけ目を丸くした少女は触るにつれポンポンと翼の弾力を確かめたり肌触りも

感じる触り方になる。

 

「温かい、それと本当に柔らかい・・・・・」

 

「こういうこともできるよ?」

 

翼が消失した代わりに九本の狐の尻尾を生やしだした。頭にも狐の耳がピクピクと動かして見せる。

 

「狐だ!・・・・・キツネうどん・・・・・食べれる?」

 

「僕は食べれないからね!?」

 

ズレた考えのこゆきに身体を震わす一誠の後ろにいた少女は狐の尾を触れた。

 

「・・・・・犬の尻尾みたい」

 

「狐だよ?」

 

「わかってる・・・・・だけど、動物と同じ尻尾なんだよね?」

 

「え?うーん・・・・・たぶんそうかな?」

 

「僕も触るー!」

 

二人の少女が一誠の耳や尻尾を触っていれば、百代たちが気になって近づいてくるのは

必然的だろう。

 

「おい、一誠。そいつらは誰なんだ?」

 

「遊びたがっていたから誘ったの。仲間に入れてもいいでしょ?」

 

と、百代たちに問いかけた時だった。

 

「げっ!椎名菌じゃねぇか!」

 

ガクトが嫌そうな顔を浮かべ、一人の少女に向かってそう言った。

 

「しいなきん?それが名前なの?」

 

「違うって兵藤!お前は知らないだろうけどそいつはバイキンを持っているんだよ!」

 

「ん?だったら帰って石鹸で洗えば良いじゃん」

 

不思議そうに小首を傾げる一誠に対して少女を知ってるとばかり表情や反応を示す

大和、一子、卓也、ガクト。一誠は疑問符が尽きないでいる。

 

「いや、だからよ・・・・・」

 

「じゃあなに?」

 

「う・・・・・大和、代わりに説明してやれ」

 

「俺かよ。ま、無知な兵藤に教えてやるか」

 

大和がしょうがないと一誠に説明した。少女の名前は椎名京で学校では椎名菌と

呼ばれ苛められていることを。その理由は母親がインバイって病気だから

その子供の京も病気なんだと説明を一誠は受けた。

 

「・・・・・」

 

イジメということが分かり、一誠は怒気を孕んだ目でガクトを睨んだ。

 

「な、なんだよ・・・・・」

 

「・・・・・」

 

ナデナデ(京の頭を撫でる) ペタッ(ガクトの手を触れた音)

 

「ぎゃあっ!テメェ兵藤、俺さまに椎名菌をくっつけるんじゃねぇよ!」

 

「うるさいよ」

 

ガッ!

 

ガクトの顔に強く殴った。その行動の一誠に誰もが目を丸くした。

 

「い、いきなり何しやがる!?」

 

「ねぇ、その椎名菌ってどんな病気なのかキミは知ってるの?」

 

「し、知るかよ・・・・・っ」

 

「知らないのに、キミはイジメるんだ?男なのに女の子を守らない

どころかキミまでこの子をイジメるなんて島津は嫌な奴だね」

 

一誠は学校に通っている組、百代たちにも振り返った。

 

「キミたちもこの子をイジメているの?だったらキミたちも嫌な奴だよね」

 

「なっ、私はイジメていないぞ!?」

 

「アタシもよ!」

 

「俺だってそうだ!」

 

「俺も関わりたくないからイジメているやつらとつるんでいない」

 

と、反論した百代たち。視線をガクトに戻す。

 

「悪ふざけでもこの子をイジメているなら僕は許さないよ。

イジメなんてする奴らなんて僕は大嫌いだからね」

 

「な、なんだよ・・・・・初めて会った奴にどうしてそこまでお前は椎名に肩を貸すんだよ」

 

ガクトが一誠に質問した。学校を行っていない一誠が京を庇う理由もない。だから疑念を口にした。

 

「―――――僕もイジメられていたからだよ。多分、この子より酷かったよ」

 

オーフィスと百代以外の面々が驚いた表情を浮かべる。

 

「教えようか?僕はどうやってイジメられていたのか」

 

真剣な表情で一誠は過去に起きた自分に対するイジメを全て打ち明けた。

一子がもう聞きたくないと両手で両耳を押さえ、大和と翔一、ガクトと卓也が顔を青ざめ、

百代すら息を呑んだほどだ。

 

「だから、この子の辛さだって分かるんだ。

イジメている人は楽しいけどイジメられている子は辛いんだ。

それをキミたちは分かろうとした?してないよね?

直江がイジメに関わりたくないって言うほどだから」

 

「ひょ、兵藤・・・・・」

 

「・・・・・もう僕は帰る。遊ぶ気が無くなったよキミたちとなんか」

 

背を向け、一誠は椎名とこゆきを連れてオーフィスも続き原っぱからいなくなった。

 

「あ、あいつ・・・・・そんな壮絶で凄惨なイジメを受けていたのかよ・・・・・」

 

「彼が怒るのも無理がないよ」

 

「ううう・・・・・聞くだけでも怖かったよ・・・・・」

 

「・・・・・だけど、イジメられているほうが悪いんだ」

 

大和がポツリとそう発した。

 

「なんだと?」

 

「イジメられたくないならもっと合理的じゃないとダメなんだ。

きっと兵藤だってイジメられる原因を作ったからやられているんだ」

 

「・・・・・」

 

百代が大和の話を聞くにつれあることを思い出した。

一誠はどうしてそんなに強くなりたいのかと聞いた時があった。

 

『僕をイジメた、僕が弱いからとイジメた奴らに見返す為だからだよ。

あの時の大会がその始まりなんだ』

 

稽古をしながら聞いた一誠の答え。まさか一誠は百代自身が思っていた以上のイジメを

受けていたとは今日まで知らなかった。だから強くなろうと努力しているのだと今日、

ようやく理解した。

 

「(一誠・・・・・お前は・・・・・)」


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