HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード2

世界と世界の狭間にある空間―――次元の狭間。古にかつてこの空間の支配権を掛けて

争った二匹の龍がいた。その争いを一匹の龍が勝利してもう一匹の龍を下界に

追いやってから光陰矢のごとしというぐらい時が過ぎて、次元の狭間を支配している

龍の眼前に久方ぶりの小さき二人の来訪者が現れた。

 

一人はグッタリしていて、見る限り命の危険性に瀕している様子。

もう一人はかつてこの空間を争い敗れた気配を感じさせる少女。

龍は泳ぐように飛行していた動きを止めて、

 

『我に何の用だオーフィス』

 

目の前の少女に問いだす赤い龍に一言。

 

「この者、助けて欲しい」

 

差しだされる子供、一誠を見て金色の双眸が細くなる。また諦めずこの空間を懸けた

勝負を吹っかけに来たかと思えば、子供を助けて欲しいと目の前の少女を

知る赤い龍にとって、どういう風の吹き回しだと思う程に珍しいものを見る目で問うた。

 

『用件はそれか?だが、その人間がどうなろうと我の知ったことではない』

 

「この者、兵藤誠と兵藤一香の子供」

 

『・・・・・』

 

「グレートレッド、会ったことがある子供。我もこの人間の家族知ってる」

 

オーフィスという少女が淡々と話す。兵藤誠、兵藤一香という言葉に一瞬だけ反応を

示した赤い龍ことグレートレッドは一誠を凝視する。

 

『・・・・・ふん、あの時の赤子か。面影は確かにある。

それで自分ができないからと我に頼んできた、そういうわけだな?』

 

「ん。我、誠と一香が悲しむのは良くないと思う。だから、協力する」

 

『助けることができたとしても、人間を辞める形になるがそれでもか?』

 

「あの二人、解ってくれる」

 

純粋に助けたい気持ちを窺わせるオーフィス。グレートレッドは過去を思い出す。

人間二人が戦いを挑んできて自分に破れた。

当然の摂理であるがあの時の人間達は何か違い、驚かされたのも事実。

それ以来向こうから現れては話しかけてくるようになったが最近は来なくなった。

 

が、代わりに現れたのはあの時の人間の子供。これは何かの運命か?それとも必然的?

親子揃って自分の前に現れるなぞ想像もしなかった。

厳密に言えば一誠が当時赤子だった頃に紹介されたことはあったがたった一度だけ。

赤の他人と過言と等しいが、

 

『・・・・・我とオーフィス、真龍と龍神、夢幻と無限の力を持つ存在・・・・・くくくっ』

 

「グレートレッド?」

 

『これは良い余興になるやもしれん。いいだろう、協力して助けようではないか。

我らの力を持つ唯一の人間、いや世界中でたった一匹のドラゴンの誕生を見えようか』

 

―――☆☆☆―――

 

「バカ野郎がっ!」

 

ドッ!

 

「ぎゃっ!?」

 

「誠輝、お前は何て事をしたんだ!どうして弟を殺そうとしたんだこのバカ息子が!」

 

蹴られ、壁に叩きつけられた誠輝。見たことのない父親の怒りの形相に顔を酷く歪め、

身体を震わす。精神的にも緊張を通り越して今度は自分までもが殺されると恐怖心で

一杯になっていた。

 

「リーラからお前と一誠のことは聞いているが、まさかここまでするとはな」

 

「と、父さん・・・・・!ち、違うんだ。全部、全部アイツが悪いんだ。

弱いアイツが、アイツが悪いんだ!」

 

「もはや自分の弟の名さえ言わなくなるほどか・・・・・」

 

目を手で覆い、天を仰ぐ誠。その傍にはリーラと母親の一香が遠巻きで様子を見ていた。

 

「俺達の教育がいかに悪かったのかお前でよーく分からされた。

これは俺達が悪いせいで一誠を追い詰めてしまったんだ。

しかも兵藤家の教えや質が悪いようだ・・・・・」

 

「あなた・・・・・」

 

「ちくしょうっ。一誠・・・・・親失格な俺達をどうか許して欲しい・・・・・。

いや、許さなくて良い。それがお前の生き甲斐とあらば受け入れる・・・・・」

 

「父さん・・・・・!父さんは悪くないよっ。

道場の師範代が弱い奴が全部悪いって言うから・・・・・!」

 

「ああ・・・・・そう言うことか。俺が教えられた指導とは全然違うじゃねぇか

クソ親父。兵藤の教えの質が奈落の底まで落ちちゃいねぇか?」

 

頭を抱えながらソファに座りこむ誠。

 

「ま・・・・・今の俺に何を言っても無意味だろうが、父親としては一言

言いたいぐらいに俺はキチまっているぜ。リーラ、報告はあるか?」

 

「いえ誠さま・・・・・。協力してくださっている者達からは何も・・・・・」

 

「・・・・・そうか。変な奴らに攫われていなきゃいいんだが・・・・・」

 

その時、この空間に幾つものの魔方陣が出現し、数人の男女が現れた。

 

「誠・・・・・」

 

「ああ、悪いな面倒を掛けさせて」

 

「気にするな。俺達は友達だろう?それよりもあの坊主のことが優先だ」

 

浴衣を身に包むの中年男性が溜息を零せば、赤い髪の青年が口を開く。

 

「それで、アレから何か手掛かりは?」

 

「こっちも色々と探したが神隠しにあったかのように・・・・・な」

 

「最近、変な連中を見掛ける。そいつらに捕まってなきゃいいんだがよ」

 

「どんな連中だ?」

 

黒と金髪の中年男性は首を横に振り「まだ分からね」と言うだけで終わった。

 

「と、父さん・・・・・その人達は誰・・・・・?」

 

「そう言えばそうだな。おい、この坊主は誰だ?」

 

誠輝と和服の中年男性の質問に誠は答えた。

 

「ユーストマの質問に応えると、こいつは一誠の兄の誠輝って言うんだ」

 

「あの子の兄だと?私は知らないぞ」

 

「当然さ。俺は敢えて一誠しかお前らと会わせていなかったんだからな。

知らないのも仕方がない。それで誠輝の質問だな。誠輝、こいつらは四大勢力のうち、

悪魔と束ねる魔王、天使を束ねる神と神をフォローする神王、堕天使を束ねる総督。

砕いて言えば兵藤家現当主である兵藤源氏みたいなお偉いさんだ。

全員、一誠と何度も出会っている」

 

誠の説明に目を大きく見開く誠輝。勢力のトップ達がこうも顔を揃えて家にいるから

驚くのも無理もない。

 

「な、何でそんなすごい人達があの弱い奴なんかと・・・・・」

 

「あー、なんだ誠・・・・・ぶっちゃけ言っていいか?」

 

「いいぞ」

 

「この坊主。根っから腐っているじゃねぇか」

 

「それを今俺達も思い知らされたんだよ・・・・・。ちゃんと育てればこんな性格に

ならなかっただろうと後の祭りに後悔している」

 

また溜息を吐く誠。何とも言えない雰囲気が漂い始め、おずおずとながら誠輝が尋ねる。

 

「父さん・・・・・なんでアイツだけこの人達と会わせていたの?

俺だって会っても・・・・・」

 

偉い人と出会えれば自慢の一つにできると一誠に嫉妬を覚える誠輝。

誠は冷めた目で誠輝に説明した。

 

「・・・・・一誠は周りから酷い仕打ちを受けている度に心が閉ざしつつ、

感情も出さなくなっていた。それを危惧した俺と一香、リーラはそれ以上悪化させない為に、

どこにでもいる子供のように明るく笑ってもらえるよう一誠には

ここにいる皆を含め他の神さま達と会わせて心のケアを施していたんだ。

だけど、今現在最悪なことになったんだ。そう、お前のおかげでな誠輝」

 

ギロリと蛇に睨まれる蛙の如く、誠輝は身体を硬直させた。

タイミングを見計らってリーラは告げる。

 

「近所の話では夜、子供の叫び声が聞こえたということです。

それは間違いなく一誠さまの声だと思います」

 

「夜までですって・・・・・?」

 

「はい、私が家にいない間です」

 

「おいおい・・・・・それじゃ、坊主がメイドの帰りを待っていたってことになるのか?」

 

「いえ、既に誠輝さまは家にいたようで・・・・・」

 

リーラの説明に誠輝以外の面々が一斉に誠輝を見やる。夜になっても家に入れず、

兄に凶器で傷を負わされた時の心と精神がどうなるか想像は難しくない。

 

「誠輝、あなたって子は何て事を・・・・・っ!」

 

「母さん・・・・・俺は、俺は何も悪くは・・・・・!」

 

「黙りなさい!どうしてあなたはお兄ちゃんとして弟の面倒を見なかったの!?」

 

「だって、だって弱い奴が悪いんだって・・・・・!

それにあいつの所為で俺はバカにされて・・・・・!」

 

母とこの会話のやり取りを見ていた面々の反応はこうだった。

 

「・・・・・訂正だ誠。この坊主、心から腐ってる。

今の兵藤家はどういうことを学ばせているんだ」

 

「悪魔よりも性質が悪いですね・・・・・」

 

「きっと、あの子は心を深い傷を追ったに違いない。

もう誰にも信用することすら・・・・・」

 

誰もが一誠の心情を察し、深く安否を心配した。

 

「・・・・・一誠」

 

―――その時。この部屋の空間に裂け目が生まれた。いきなりの現象に誰もが警戒し、

臨戦態勢になった。

 

「ふん、神と神王に魔王に悪魔に堕天使、天使がこぞって何をしていることやら」

 

裂け目から聞こえる女の声。

全員が何時でも攻防ができるように態勢と成り身構えていると謎の人物が姿を現した。

 

「こうして会うのは久しいな人間」

 

「・・・・・まさか・・・・・グレートレッドなの?」

 

赤いドレスを纏う腰まで伸びた真紅の長髪、鋭い金色の双眸に豊満な身体の女性。

一香の指摘に小さく口角を上げた女性。

 

「そう、我は『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッドだ」

 

「おいおい・・・・・あの真龍がどうしてこの家に現れるんだよ」

 

「警戒するな神王。お前らに届け物を持ってきただけだ」

 

「届け物だと?」

 

「ああ、おい」

 

グレートレッドは裂け目に呼びかけた。その声に呼応して小さな少女がひょっこりと

姿を現した。真紅の髪の子供を背負って。

 

「オ、オーフィスッ!?」

 

「んなっ!?マ、マジかよ・・・・・」

 

「真龍と龍神が揃う瞬間を見るとは驚きですね・・・・・」

 

「というか、オーフィスが背負っている子供って・・・・・」

 

皆、グレートレッドとオーフィス、オーフィスの背にいる子供に交互で見た。

信じたがい光景であると皆の気持ちが一つになった瞬間でもあった。

 

「誠、一香。久しい」

 

「ああ、オーフィス。本当に久し振りだね」

 

「でも、どうしてあなたがこの町に?」

 

「我も分からない。なんとなくここに来た。そしたら、この者がいた」

 

背負っていた子供を誠と一香に見せた。真紅の髪で誰だか分らなかったが、

二人はようやく気付いた。

 

「「一誠!?」」

 

「ん、一香と誠の子供がいた」

 

「オーフィスが助けた・・・・・?」

 

「違う、グレートレッドも一緒。我一人じゃダメだった。

だからグレートレッドにも協力してもらった」

 

「・・・・・信じがたい話しだが目の前の光景を見てしまったら時点でそうなんだろうな」

 

一誠の安否を確かめている誠と一香の様子を眺めている面々。

二人の顔に安堵で息を吐き、誠は口を開いた。

 

「問題ない。一誠は無事だ」

 

「当たり前だ。我とオーフィスが既に死んだ身体を換えたのだ。

その際、その人間の腹にこれが刺さっていたがな」

 

グレートレットが床に投げ放ったそれは鈍く光る銀の包丁。それを一目で見たリーラは呟く。

 

「私の包丁です」

 

「この者のお腹に刺さっていた」

 

「・・・・・誠輝、お前という奴は・・・・・!」

 

「ひっ!?」

 

「待て誠。ガキに構っている暇じゃないだろう」

 

金と黒の中年男性は一誠を一瞥してグレートレッドに問うた。

 

「一つ訊きたい。どうしてあのガキからお前らの力を感じる?」

 

「決まっている。その人間の身体は死んでいたのだ。

ならば我の身体の一部を与え、オーフィスの力も加われば当然のことだろう」

 

「つまりなんだ・・・・・?グレートレッドとオーフィスの力が坊主に宿っていると

いうことか?」

 

「夢幻と無限の力を持つ人間から転生したドラゴン。

つまり我の身体を持つその人間は小さい我と同じグレートレッドということだ。

無限の力を持つもう一匹のグレートレッド。

ふふふっ、中々愉快なドラゴンが生まれたであろう?」

 

底意地の悪い笑みを浮かべ、誠を見据えるグレートレッドにまた深い溜息を吐いた誠は。

 

「・・・・・余計なことを、と言いたいところだがここは感謝するところだろう」

 

深々とその場で土下座をした。

 

「ありがとうグレートレッド。息子の命を助けてくれたことに深く感謝している」

 

続いて一香も土下座し、リーラも土下座をした。

 

「私たちからも。本当にありがとう」

 

「ふん・・・・・気にするな。オーフィスに礼を言うがいい」

 

「えっへん」

 

小さな胸を張るオーフィス。その仕草は誠達を苦笑させるのに十分だった。

 

「ただし、その人間はもう人間ではないドラゴンだ。そのこと努々忘れるなよ」

 

「ああ、人間じゃなくても一誠は一誠だ。何も変わらねぇよ」

 

「ならばいい。ああ、我の子供でもあるから故、そいつを我が鍛えてやる。

未熟なドラゴンのままでは何かと不便であろう」

 

「・・・・・そのことについては俺達から話す」

 

「ふふっ。面白くなってきた。まさか我に我の分身、子供ができようとはな―――」

 

グレートレッドは裂け目の中に入り、完全に裂け目が閉じたことでいなくなった。

 

「しかし、この地球が誕生して以来の前代未聞な事が起きたな」

 

「グレートレッドとオーフィスの力を有する人間、ドラゴン・・・・・」

 

「こりゃ、監視もとい見張っていなきゃいけないんじゃね?」

 

「とんでもない存在にグレートアップして帰って来やがったな。

こいつ、この年であっさり俺達を上回ったんじゃないか?」

 

「いや、力の扱い方を知らないならそれはまだない。

だが、将来的に考えるとそうなる可能性は高いな」

 

「じゃあ、こういうのはどうかね?」

 

細身の銀髪の中年男性が笑みを浮かべながら提案した。

 

「冥界・天界に一時的にこの子を引き取って力の扱い方を教えつつ私達が面倒をみると言うのは」

 

「ほう?そいつはつまり、この場にいる俺達が坊主を引き取って鍛えるってことか?」

 

「そういうことだ。グレートレッドも鍛えたいと言うほどだからね。

いま、無限の魔力を有した彼に魔力の扱い方も教えないといけないだろう?」

 

「悪くない考えですね。ですが、それ以前にこの子がそれを望むかどうかの問題です」

 

金髪の女性が一誠を抱き抱えるリーラに近づき一誠の頬を触れる。

蒼い瞳に慈愛が満ちていて女性は口元をつい綻ばす。

 

「それについては俺と一香に任せて欲しい。一誠はもう以前のように生活はできないからな」

 

「そうね・・・・・」

 

誠と一香は若干顔を曇らせながらも瞳に強い決意が宿っている。

 

「他の神話体系のところにも預けてみるかいっそのこと」

 

「仙術を極めた闘戦勝仏にもお願いしようかしらね」

 

「帝釈天が腹を抱えて笑うイメージが浮かぶな」

 

「『何その有り得ないドラゴンはよ!』って?ふふ、そうかもしれないわね」

 

「んじゃ、仮に望んだとして引き取る期限も決めようぜ」

 

「一年ぐらいでいいじゃないですか?」

 

「妥当な期間だな」

 

「ああ、アザゼル。研究材料として解剖なんてしないでほしい。

したらどうなるか・・・・・」

 

「しねぇからな!?俺だって命は欲しい!」

 

「アザゼルはやりかねないですからね・・・・・」

 

「本当にね」

 

シリアスなムードが一変して和気藹々と笑いが生じる。

その様子を窺い、コッソリとどこかへ行こうとする誠輝の頭を強く掴む誠だった。

 

「さて・・・・・誠輝、お前にはとことん失望したぞ」

 

「と、父さん!?い、痛いよ!放して、放してよ!」

 

「お前がやったという証拠は揃った。これよりお前にお仕置きをする」

 

誠は全身から闘気、一香は魔力を迸らせる。

 

「取り敢えず、今日に関する記憶は完全に消去だな」

 

「その後この子、どうする?」

 

一香の問いは誠の口から残酷な言葉を出させた。

 

「家族を大事にしない奴はもはや俺と一香の息子じゃねぇ。誠輝、お前は新しい人生を歩め」

 

無慈悲な現実を突き付けられ、悲痛に顔を歪め涙を流しながら叫ぶ。

 

「そ、そんなぁっ!?嫌だよっ、父さん母さん!許してよ!俺、いい子になるから!

あいつと仲良くする!ねぇ、お願い!俺を捨てないで!リーラさん助けて!」

 

「・・・・・」

 

瞑目するリーラにも懇願する誠輝に一言。

 

「私は貴方のような者に仕える気など毛頭もございません」

 

「安心しろ。お前には良いお友達が兵藤家にいるじゃないか」

 

頭を掴む手に力を籠め、徐々に誠輝の意識を落とし始める。

 

「あがっ!がっ、あっ!」

 

「残念だ・・・・・最初は仲が良い子でいたお前が兵藤家に武術を学ばせるにつれ

性格がどんどん歪んだ」

 

「それは私たち親の責任でもあるわ。でもね誠輝・・・・・弟を邪魔だからと

殺す考えをさせるほど私達はそんな風に育てた覚えはないの。

だから、これが最後の親としての会話」

 

「「さようなら」」

 

誠輝の意識を完全に狩った。口から泡を噴きだし床に倒れる誠輝を無視してこの場に

集まった面々に告げた。

 

「変なところを見せたな」

 

「他人の家族の事情に口出しはしないよ」

 

「そう言ってもらえるとありがたい」

 

「でも、いいのかい?息子を絶縁なんて」

 

「一応縁は切らないでやる。ただ、俺達と離れて暮らしてもらうだけだ」

 

「万が一に賭けて誠輝が改変したら許すわ」

 

「万が一・・・・・ねぇ」

 

そんな可能性があるのか疑わしいと誠輝の言動を見ていた面々は思った。

後に魔方陣を足元に展開させた。

 

「それじゃ、俺達も帰るとしようか」

 

「安心できたことだしな」

 

「それじゃ、またお会いしましょう」

 

「ええ、また」

 

「近いうちに会いそうだがな」

 

魔方陣の光と共にいなくなり、誠と一香にリーラ、一誠と誠輝だけとなった。

 

「リーラ、今夜は一誠と寝てくれないか?」

 

「はい、喜んで」

 

「私達はこのバカ息子を兵藤家に捨てて仕事に戻らないとね」

 

「理由を説明したら『さっさと探しに行けバカヤローッ!』って言われたほどだしな」

 

一香と誠の足元にも魔方陣が出現した。誠輝を片手で掴む誠は、

 

「襲うなよ?」

 

と意味深な発言と共にいなくなったのであった。

 

「・・・・・ようやく、一誠さまと寝れる日が来ましたね」

 

愛おしいと腕の中で眠る一誠を覗きこむ。

 

「一誠さま。このリーラは一誠さまの味方でございます。誠様も一香様もそうですからね?」

 

眠る一誠を自室へ連れて行き共に夜を過ごしたのだった。

 

 

 

 

 

 

「と、そう言う事だからよろしく頼んだ親父」

 

「・・・・・追放された身内の子供が弟を殺すほどか」

 

「俺が言っちゃあ何なんだが兵藤家の奴ら、質が落ちてるぞ」

 

「・・・・・言われんでも分かっている」

 

「ま、そっち的には悪くないだろう?優秀な一族が一人増えたんだからな」

 

「・・・・・ふん、性格に難があるお前の息子が優秀かどうかなど、高が知れている」

 

「なんだよ。一誠の方がいいってのか?」

 

「昔はともかく、今は違う。鍛えようがある」

 

「残念、三大勢力と神話体系の友人に鍛えさせるつもりだから兵藤家に鍛えさせる

機会はない」

 

「・・・・・悠璃と楼羅は泣くかもしれんな」

 

「人王の姫という立場のあの子達も相当苦労を強いられるな。

だが、いつか一誠が何とかしてくれるだろうよ」

 

「ほう?面白い発言をしてくれるなバカ息子」

 

「もう前の一誠とは違うんだよバカ親父。それじゃあな」

 

 

 

「前とは違う・・・・・か」

 

「あなた・・・・・?」

 

「どうした?」

 

「話を聞かせてもらいました。

ですが、もう少し親子らしい会話はできないのですか?」

 

「なんだ、していないとでも?」

 

「はぁ・・・・・気付かないとは。それだからあの子達に敬遠されてしまうんですよ?」

 

「・・・・・善処する」


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