HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード19

外国から戻り、兵藤家を後にした一誠たちは数日振りの川神家に戻った。

帰ってきた一誠に百代と辰子からは凄まじいホールドで出迎え、

それから時が過ぎたとある日のこと。

 

「おーい、一誠」

 

「んー?」

 

のんびりと釈迦堂やオーフィスや辰子と寝転がっていると遠くから

百代が一誠を呼びながら近づいてきた。また拳を交わし合いたいのかと思いながら

腕が枕代わりにされている状態で動けないまま一誠は百代に返事をするしかなかった。

 

「どうしたの?」

 

「ああ、依頼が入ったんだ。所謂用心棒だ」

 

「ふーん、それで?」

 

「私を用心棒に頼んできた奴が後日来るからその時はお前や竜兵も誘おうと思っているんだ。

どうだ?」

 

「んー、百代を頼んできた人って誰なの?」

 

「さぁ、初めて会った奴だけど報酬は貰った以上やらないとダメだろう?」

 

手にある野球のキラカード(ウルトラレア)を一誠に見せつける。

対して一誠は「んー」と悩んだ顔をする。

 

「なんだ、一緒に用心棒しないのか?」

 

「その用心棒って何時までするの?僕、一年しかここにいられないよ?

百代はそこのところ考えた上で知らない奴からの依頼を引き受けたんじゃないよね?」

 

「・・・・・」

 

百代は一誠の指摘に何も言えず、サッと顔を逸らした。依頼を聞いて報酬を受け取った。

更なる用心棒の詳細を聞かず安易に引き受けた百代に呆れ顔で、

 

「それ、返して来なさい」

 

まるで捨て犬を拾った子供に母親が厳しく否定した言葉に似ていた。

 

「えー!」

 

案の定、百代は不満の声を上げた。

 

「嫌ならもう一度百代に用心棒を頼んだ奴と何時まですればいいのか話し合ってから

貰いなよそれ。もしも一生死ぬまで用心棒してくれと言われたらカード一枚で引き受けるなんて

百代は安すぎるよ。百代って石ころ一つでも相手の依頼を引き受けちゃうの?

僕はそんな百代は幻滅するよ。いいね?」

 

「う・・・・・分かった」

 

一誠からくどくどしく言われ項垂れていると、寝転がっている釈迦堂が笑みを浮かべていた。

 

「はははっ、坊主に言い負かされてるんじゃねぇか百代」

 

「あ、先生起きてたの?」

 

「百代の声で起きたんだよ」

 

釈迦堂が「よっこらせ」と起き上がって一誠と百代を交互に見る。

 

「まっ、坊主の言うことも一理あるぜ百代。何か頼まれる時はしっかりと真剣に考えて

決めるか周りと相談して決めることは大事だ。簡単に相手のお願いを引き受けた

奴がとんでもない酷い目に遭っているやつは世界中にいるんだからな」

 

「師匠まで・・・・・」

 

「人生はそういう駆け引きもあるって坊主がそう言いたいんだ。駆け引きが巧い且つ

狡猾で口車に乗せる上手な奴だっているんだ。どうせ、お前に用心棒を願ってきた奴は

ガキ共なんだろうが大人だったら真剣に警戒して決めろ。じゃないとジジイにどやされるぜ」

 

「うっ、それだけは絶対に嫌だ」

 

嫌そうな顔を浮かべ、キラカードを見詰める。一誠に百代は安すぎると言われなんだかショックを受けた。ここで百代はあることを学んだ。

 

 

―――教訓・頼まれ事、駆け引きは慎重にしましょう―――

 

 

―――そしてその後日。百代と共に一誠、オーフィス、亜巳、竜兵、辰子、天使が

門前にいると数人の小学生が近寄ってきた。

 

「来たな。早速私たちを倒して欲しい奴のところに案内してもらおうか」

 

「・・・・・なんか増えてますけど?」

 

「気にするな。こいつらも連れていく。文句ないよな?」

 

「強いのですか?」

 

「うん、少なくともお前よりは強い奴らばかりだぞ。この通り武器もあるしな」

 

亜巳と天使が木の棒を見せつけた。

 

「ほら、案内しろ」

 

「・・・・・分かりました」

 

怪訝に一誠たちを見詰める小学生だが一先ず目的のために案内する事に優先した。

小学生の先導のもと、百代たち一行はついて行ったその時、

 

「あ」

 

「ん?」

 

数人の強面の男性たちに囲まれながら青い髪を背中まで伸ばす少女と一誠とバッタリ

出会った。一誠は一瞬だけキョトンとしたが相手は誰だか分かると笑みを浮かべ、

 

「エスデス!」

 

「ぐ、偶然だな兵藤っ」

 

エスデスもここで再会するとは思いもしなかったのか声が上擦った。

一誠は嬉しそうに頷いた。

 

「うん、偶然だねー。ああ、そっちに行けなくてごめんね?そっちに行っちゃダメ

だって言われちゃったからさ行けれなかったんだ」

 

「気にするな。子供一人があの場所に来ようとする方が危ないんだ」

 

「エスデスだって子供じゃんか」

 

「私はこの通り、家族と一緒に買い物をする時でも一緒に行動をするんだ」

 

「うーん、僕もそうしてもらった方がいいのかなー」

 

久方ぶりに再会した氷使いのエスデスとの会話の花を咲かせる。だが、百代に襟を掴まれ

さっさと行くぞとばかり引き摺られていく。

 

「待て」

 

「なんだ?」

 

百代の手を掴んで睨むエスデスに百代は真正面からエスデスを見据える。

 

「こいつを置いて行け。しばらく話をしたい」

 

「断わる。一誠はこれから私と用心棒をしに行くんだ」

 

「用心棒・・・・・?」

 

「うん、本当だよー。あ、暇だったらエスデスも来る?大人も一緒だったらどこでも行けれるしさ」

 

一誠は強面の大人たちに目を向ける。エスデスも男性たちに目を向ける。

 

「いいか?」

 

「少々お待ちを」

 

一人の男性が携帯でどこかへ連絡することしばらくして、

 

「夕方になったら帰るようにとボスからの伝言です」

 

「っ!」

 

エスデスは一瞬だけ嬉しそうな顔を浮かべ、百代に挑発的な笑みを浮かべる。

 

「ということだ。私も一緒に同行しよう」

 

「ついてくるな。私と一誠だけでもあっという間に終わる」

 

「ぬかせ、私の力の前では全てが凍るのだ」

 

強面の男性たちが焦りだした。

 

「だ、ダメですお嬢!人に氷の力を使ってはいけません!」

 

「ボスもそう言われておりまですでしょうに!」

 

「む・・・・・兵藤に見せたいのに。ダメか?」

 

「「ダメです!」」

 

と、口を揃えてダメだしされたエスデスだった。

 

「なんか百代がルー先生に叱られている時と一緒だね」

 

「そう言う一誠だって叱られている時があるだろう」

 

他人事のように思えない一誠と百代はどこかエスデスと通じるところがあるようだ。

エスデスも加わり、用心棒としての仕事を小学生が案内した広い原っぱに遊んでいる

身長も年齢も一誠や百代より高い小学生(15人)が標的らしく。

 

「一誠、どっちが早く先に五人ぐらい倒すか競争しようか」

 

「ん?別にいいよー」

 

「俺たち兄弟姉妹は一人一人ずつってことか?」

 

「まぁ、師匠にしごかれているから大人じゃなければ勝てない相手じゃないね。辰、本気を出しな」

 

「辰姉を本気させるって・・・・・あーあー、あいつら・・・・・死んだかもな」

 

「私も一人ぐらいは素手で倒そうか」

 

―――小さい身体だがまるで津波の如く襲いかかってきた一誠や百代たちに反撃する暇も

余裕すら与えられずに駆逐された標的たち。

 

「人質とってお前の耳に風穴を空けた奴はどいつだ?」

 

「こいつだけど」

 

「ひぃぃ」

 

頭にバンダナを巻いた少年が情けない声を出す少年に指差した。百代はその少年に近づきながら発する。

 

「こいつにはさらなる恐怖を植え付けるか」

 

「や、やめろよ俺は釜中の三宅くんを知ってるんだぞ!」

 

雀の涙、藁にも縋る思いで上ずった声で脅迫するが相手が本当に悪かった。

百代はそいつは強いのか?とワクワクと気持ちが弾みながら促した。

 

「よし。今度連れて来いそいつも壊す」

 

「やめろ、やめろよ!」

 

一歩一歩近づいてくる百代に腰が抜けた状態で後退りする少年に対して

止める気は無いと歩み寄るその足を止めず。

 

「命乞いは、媚びてするものだぞ」

 

「俺は本当の悪なんだ!子猫を平気でイジメ殺せる!お前も殺すぞこのアマ!」

 

―――地雷、いやこの少年は核弾頭ミサイルのスイッチを押してしまった。

 

「へぇ・・・・・子猫をイジメ殺せるんだ?」

 

百代と挟む形で少年の背後に何時の間にか回っていた

一誠がギラギラと怒りに満ちた目で見降ろしていた。

 

「な、なんだ!嘘じゃねぇぞ本当だぞ!」

 

「小さい動物の命をキミは平気でイジメて殺すんだ・・・・・」

 

「お前も殺してやろうかああ!?」

 

「じゃあ、殺してみてよ」

 

「は?」

 

一誠の信じられない発言に少年は愕然とした。百代たちもキョトンとしていて理解に苦しんでいた。

 

「どうしたの?子猫をイジメ殺せるなら人だってイジメ殺せるんでしょ?

ほら、早く僕を殺してみなよ」

 

本気で言っているのかと少年は疑う。気が狂っているんじゃないかってすら思ってしまう最中、一誠はニコニコと笑みを浮かべた。

 

「ああ、でも。僕は人間じゃないからなー。キミじゃ僕を殺せないかも」

 

「な、何を言っているんだよお前・・・・・」

 

「はははっ、そう思うよね?うん、じゃあ教えてあげるよ。子猫を平気でイジメ殺す

お前みたいな奴には―――」

 

光が一誠を包み始め、その光はどんどん大きくなり、人の形を崩し別の形へと変わっていく。

 

『キミに殺された子猫に変わって今度は僕がお前をイジメてやるよ徹底的にねぇっ!』

 

全身が金色で四肢の身体であるフォルムがトカゲの姿を晒す一誠が少年に向かって咆哮した。

 

 

ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

 

 

「ひっ、ひぃいいいいやあああああああああああああああああああっ!」

 

少年が叫びだすとそれに呼応して少年の仲間が蜘蛛の子が散るように我先と逃げ去っていく。

目の前の化け物に喰い殺されると精神的にもパニックを起こして逃げだそうとするが、

巨大な手が蝿を叩くように少年に振られた。

 

『どうやって子猫をイジメ殺したのか知らないけど、僕もお前をイジメて―――殺してあげようか?』

 

「いやだああああ!し、死にたくない!死にたくないぎゃっ!」

 

『あははははっ!面白いぐらい転がるねぇ?ほら、もっと転がってよ。もっと転がすからさ!』

 

笑いながら少年を何度も平手で転がす。その様子を見ていた用心棒を頼んだ少年とその

仲間たちの腰が引いていて、百代たちは唖然と何時までも一誠の姿を転がされ

続けている少年を見やると、

 

「イッセー」

 

オーフィスが一誠の頭の上に乗っかった。

 

『なーに?』

 

「イッセー、もう止める。それ以上したらリーラが怒る」

 

『・・・・・ん、分かった。でも最後に』

 

口を開け、凶悪で生え揃えた鋭利な牙を覗かせる。

 

『また生き物を殺したら―――お前を食べるから』

 

べろりと少年を舐める。それに心底恐怖を刻まれ、

泣き叫びながらこの場から逃げるように走っていく。その様子を見送ると、

 

「凄いっ!」

 

エスデスが青い目をキラキラと輝かせて一誠を見上げている。

 

「お前、そんな姿になれるのか!」

 

『うん、そーだよー。乗ってみる?空は飛べれないけど』

 

尻尾を動かしてエスデスに寄せるとその尻尾の上に乗って走り、一誠の背に辿り着くと

大はしゃぎした。ただし、エスデスだけではなかった。

 

「すっげぇー!怪獣、ドラゴンじゃないかっ!」

 

バンダナを巻いた少年も目を輝かせ「俺も俺も!」と一誠に近づいた。

 

「よし、飛べぇっ!」

 

『飛べれないって。今の僕、目立っちゃうから』

 

「えええー!いいじゃんか目立って!」

 

『じゃあ、翼だけ出すからそれで勘弁してよね』

 

背中から金色の巨大な翼が生え出した。神々しく、神秘的な光を放ち、

広い原っぱはまるで聖地のような場所に変わっていく。

 

「おおお・・・・・っ!」

 

「わぁー!きれー!」

 

翼はしな垂れ、滑り台のようになった。その翼の上にバンダナを巻いた少年が飛び付く。

 

「うっはっ!すっげぇモコモコとフワフワだ!布団よりやわらけぇー!」

 

「ア、アタシも乗ってみたい!」

 

「ウチも乗ってやるぜ!」

 

何時しか殆どの少年少女たちが一誠に群がり、翼の上に乗ってはしゃぎ始めた。だがしかし、

 

 

 

「一誠さま。外では二度とドラゴンの姿になってはいけません。いいですね?」

 

「ううう・・・・・はい、わかりました」

 

リーラにきつく叱られてしまい、二度と外では龍化をしない決まりが一誠に植え付けられた。

その様子を半分だけ戸から出して様子を見ていたオーフィスが一言。

 

「結局、イッセーはリーラに怒られた」


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