HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード17

一時的に川神院から離れ兵藤家に帰郷した一誠たち一行。夜は未だ明けていなく、

生物も寝静まり返っている時間帯で兵藤家に繋がる門前に辿り着いた

そんな一行に待ち受けたものは―――。

 

「いっくん!いっくんだっ!」

 

「一誠さまぁっ!」

 

悠璃と楼羅が一誠に抱き付き、歓喜の声を上げながら連れて行かれる光景をリーラと

オーフィスはただただ見送ることしかできなかったことだった。

 

「・・・・・感謝するぞ」

 

「源氏さま」

 

後に現当主兵藤源氏と妙齢の女性が現れる。リーラは源氏に向かって一言。

 

「父親として情けないかと存じ上げます」

 

「うぐっ」

 

「誠さまにもお伝えしたら伝言を受け賜わっています。

『おい親父、誰が育て方が悪いんだっけ?人のこと言えないだろうバーカバーカ!』

・・・・・と以上でございます」

 

「ふふふっ。あなた、実の息子に言われたい放題ですね」

 

女性が扇子で口元を隠しながら笑む。源氏は源氏で誠の伝言を聞きフルフルと身体を怒りと屈辱で震わせる。

 

「羅輝さま、お久しぶりでございます」

 

「ええ、リーラお久しぶりね。元気そうで何よりです」

 

「ご苦労を成されていると側近の者からお聞きしました。五日間の間はこの家にお世話になります」

 

「あの子にとって嫌な記憶と思い出しかない場所でしょうけど、あの子たちを抑えるのにも

苦労したわ。稽古や舞いに集中してくれなくて・・・・・」

 

「ほほほ」と苦笑を浮かべる羅輝。それだけで人を魅了させる何かがあり、同性である

リーラも美しいと称賛するほどの美人である。

 

「それにしてもあなたが背負っているソレは?」

 

「この家には遊具がないのでこちらからご用意させていただきました。

部屋に籠りっぱなしでは一誠さまも退屈するはずですので」

 

「兵藤家にそのようなものは必要ない」

 

腕を組んで視線に捨てろと乗せるほど見詰める源氏に。

 

「・・・・・残念です。これは悠璃さまと楼羅さまも楽しんでもらう為に用意してきた

遊具ですが、源氏さまがそう仰られるのであれば破棄するしかないですね。

御息女である悠璃さまや楼羅さまに一誠さまと楽しむ時に笑顔を浮かべて

欲しかったのですが・・・・・仕方ありません」

 

「ぐっ・・・・・」

 

呻く源氏。兵藤家に遊具など必要ないと言った手前に今更撤回するほどプライドが

邪魔して次に発する言葉は喉につっかえた状態で出ることができないでいると。

 

「あなた、こちらからお願いしている身なのですから些細なことでも

許してあげることも親の務めではなくて?それだからあの二人に今の今まで目ですら

合わせてもらえないじゃないですか。リーラ、この人の言う事を全部無視して

良いから気にしないで過ごしてね?」

 

「お心遣い感謝します羅輝さま」

 

羅輝がやんわりとフォローした。兵藤家現当主、当主としての貫禄や父親としての

威厳はリーラから見れば微塵も感じないほど落ち込んでいた。

 

「それじゃ、私たちしか入れない一室に案内するわ。

子供の頃の誠も使っていた部屋だけどいいかしら?」

 

「構いません。寧ろ一誠さまはお喜びなるかと」

 

「ふふっ。そうね。ほら、あなた。何時までも落ち込まず今頃

笑みを浮かべているあの子たちの顔を見て来て来なさい」

 

羅輝がそう言うと何かに駆られた源氏が一瞬で走り去って行った。

 

「親バカですね源氏さま」

 

「待望の女の子が生まれたから嬉しいのよあの人は」

 

「いまさらですが誠さまの妹という関係になりますよね?」

 

「そうね。ま、誠も妹ができたと知った時は

『親父は俺よりも何倍に可愛がるだろうな』って不貞腐れていたのよ?」

 

「それは知りませんでした」

 

微笑み合う二人も巨大な門を潜り兵藤家に足を運ぶ。一方、一誠は悠璃と楼羅の部屋で

二人に抱きつかれて片時も離して貰えず、抱き枕のようにされていたのであった。

 

―――○●○―――

 

「お、おはよう・・・・・」

 

「おはようございます一誠さま。どうやら昨夜はお疲れのようですね」

 

リーラとオーフィスしかいない一室に一誠が現れた。悠璃と楼羅に抱きつかれたままの状態で。

 

「寝れたことは寝れたけど・・・・・寝た気がしない」

 

「じゃあ、もう一度寝る?」

 

「私たちも一緒に・・・・・」

 

これはもはや禁断症状どころか重病の間違いではないのか?とリーラは内心嘆息して

一誠にひっ付く悠璃と楼羅を見詰める。朝食はこの部屋でして舞の時間になると悠璃と

楼羅は羅輝が迎えに来ると駄々をこねて―――。

 

「舞を頑張ってる悠璃と楼羅を見てみたいな」

 

と一誠の一言で二人はやる気を出して、舞を教える女性や羅輝たちは今まで集中や

真面目にできなかった二人の変わりようにホッと胸を撫で下ろし安心させるほど効果的であった。

 

「あの子の言葉一つであの子たちがここまで真剣に舞を学んでくれるなんて・・・・・愛は偉大ね」

 

「気持ちは分からなくはありませんが。

まさかそこまで一誠さまのことを想っていようとは・・・・・」

 

「一誠が苛められ一人ぼっちでいるところ見て放っておけなかったようなの。最初は弟のように面倒を見ていたようだけれど、今はちょっと違うみたいね」

 

「何時の間にか恋を抱いたと、そういうことですか」

 

「そう、だからこそあの二人は最近禁手(バランス・ブレイカー)に至った」

 

苦笑を浮かべる羅輝と何とも言えない表情をするリーラ。

 

「どのような能力が?」

 

「簡単に言えば闇と影の能力だわ。まだ詳細は不明だけど戦わせるつもりは毛頭もないつもりよ。

女の子らしく立ち振る舞いをしていれば私は満足だから」

 

「婚姻の際は波乱が起きましょう」

 

「そうねー。私は数多立候補した女の中で唯一選ばれたのだけれど、

誠が兵藤家から自ら出て行って追放の形でいなくなってしまったから

夫が再び当主にならざるを得なくなった。誠は知らないでしょうけど期待していたのよ?

新たな当主として兵藤を導いてくれることを」

 

「ですが、禁忌を破ってしまったが為に・・・・・」

 

重々しく首を縦に振る羅輝。

 

「神の悪戯か偶然、または必然的な出会いなのか。式森家の当主だった一香と

恋に落ち駆け落ちをしてしまった。別に恋は禁止されていなかった。

だけど、子供を作ることだけが許されなかった」

 

「何故ですか?一誠さまと・・・・・誠輝さまはどこにでもいる子供のように生まれ

成長なされているのです。なのにどうして子を成すことが禁忌なのですか?」

 

「・・・・・ごめんなさい。それ以上のことは教えることができないの。

夫が固く禁忌のことを口にしないから」

 

目を瞑り羅輝は言う。

 

「でも、誠と一香なら知っているはずだわ。知りたかったらあの子たちから聞いてちょうだい?

今更禁忌なんて誠は気にしないで喋るでしょうし」

 

と、重大なことであるはずのことを微笑みながら述べる羅輝に対して度肝を抜かれた

感じなリーラだった。

 

「いいのですか?一介の従者である私が知っても・・・・・」

 

「兵藤家と式森家の間にかわした禁忌。だけど他の人が私たちの禁忌を知っても興味を

示すか示さないかだけで終わるんじゃないかしら?それにあなただから知って欲しい

気持ちもあるかもしれない。誠の息子を夫の孫を見守るあなたに」

 

「・・・・・」

 

無言で深くお辞儀をするリーラ。羅輝の寛大な心に感服したのかそれとも

そうするほどのことを羅輝から感じたのかリーラはただただ腰を折って頭を下げたのだった。

 

「これからもあの子の傍にいてあげてくれるかしら?」

 

「はい・・・・・私の身体と心は全て一誠さまのために尽くす所存です」

 

「うふふっ。ここにもあの子に恋する乙女がいたわね」

 

サッと顔を赤くするリーラだったが、真剣味がある表情を浮かべ問いかけた。

 

「羅輝さま、誠輝さまはどうお過ごしですか?」

 

「ああ、あの子・・・・・。私はあまり知らないけれど、

話じゃあとても優秀らしく兵藤家の若手の中で一位二位を争うほどの強い子になっているらしいわ」

 

「川神院で敗北なされましたが・・・・・川神百代さまとの実力の差が違うのですかね」

 

「あら、負けたの?まぁ、敗北はしておいて損しないわね。

一誠は、孫は負けたことがあるかしら?」

 

「一度だけ、誠さまと勝負して負けました」と説明すると扇子で口元を隠しだす羅輝。

 

「そう、父親と勝負して負けるなんていい機会じゃない。

これからもそうして成長すれば孫はあなたに相応しい男の子になるはずよ」

 

「・・・・・どう反応をしていいのか迷います。あまりからわかないでください」

 

「素直に喜びなさい?女の悦びを一度もしたことが無いなんて損な人生じゃない。

もう少し一誠が成長したら―――あなたから夜這などしてみたらどう?私も夫にしたほどだわ」

 

「なっ・・・・・羅輝さまっ」

 

「いいこと?ライバルが多いほど燃えあがるの女はね。

だからリーラ、従者である前にあなたは一人の女。たまには女として生きてみるのもいいわ。

一誠もきっとそんなあなたを見たくて接したいはずよ」

 

リーラの手を包むように両手で掴みながら羅輝はキラキラと目を輝かせる。

 

「羅輝さま・・・・・なんだかお楽しそうですね」

 

ちょっと苦笑いを浮かべそう言うと羅輝がカラカラと笑いながら言う。

 

「あら、そう?でもそうかもしれないわね。久し振りに恋バナなんてしたものですから。

立場上、私を敬遠や尊敬で兵藤の女たちと話をしても私に合わせて話をするばかりだから

ちょっと退屈で・・・・・」

 

自分で言って頬を片手で添えて恥ずかしげに笑む羅輝。

現当主の奥方と言う肩書も苦労をするのだとリーラは察する。

すると羅輝がリーラの顔を覗きこみながら尋ねた。

 

「ねぇ、あの子たちが遊んでいる間に私たちもお話しないかしら?

あの子たちの目の届く場所でなら安心していられるでしょう?」

 

「私でよければお相手をさせてもらいます」

 

リーラの同意に羅輝は嬉しそうに笑み、手を掴んで引っ張った。

 

「それじゃ、甘い物と紅茶を用意して色々とお話をしましょう!ああ、楽しくなってきたわぁ!」

 

活き活きとリーラを引き連れて一誠たちがいる部屋へと赴く。

当の一誠はリーラが持ってきてくれた遊具でオーフィスも交えて悠璃と楼羅と一緒に

遊んでいたが、後に現れた羅輝とリーラの話に

悠璃と楼羅は気になったのか大人の女性の会話に交じった。

 

「いい?二人はまだまだ子供だけど大人になれば意中の男を落とす方法は多種多彩!

その中でも効果的なのは男の胃袋を掴むこと。

男の人って料理を作る女性を当然好きだけれど気が利く料理を作ってくれる

女性にもっとも弱いの。今の二人にとってこのリーラは、

一誠の好きな料理を熟知しているからかなりの強敵。だから二人とも、頑張りなさい?」

 

羅輝の説明と応援に二人は当然と言うべきか、その日から料理を自ら手伝い、

作るようになって魅力的な女性を目指す為に花嫁修業をするようになった。

 

「「絶対にオトす!」」

 

「え、なにを?」

 

「いっくんを!」

 

「一誠さまを!」

 

「・・・・・リーラさん、二人の様子が何だか変だよ?」

 

「子供とは言え一誠さまは鈍感ですね」

 

「?????」


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