HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード15

 

 

 

 

―――数日後―――

 

「ZZZ・・・・・」

 

「ま、またこれ・・・・・?」

 

当惑する一誠にガッチリとひっついて寝ている青髪の少女。そして、一誠を覆うように

オーフィスが寝ていて隣にはリーラが上半身を起こして小さく苦笑いを浮かべていた。

 

「リーラさん、オーフィスは分かるけどなんでこの子まで・・・・・?」

 

「私にも分かり兼ねますが・・・・・一誠さまのお傍で寝ると心地よいのではないでしょうか」

 

「僕は驚かされる方が多いよ・・・・・」

 

板垣兄弟姉妹が川神院に住みつくようになった。釈迦堂が鉄心に、

 

『あいつらを川神の養子として引き取らないか?』

 

と話を持ちかけ色々と話し合った結果。釈迦堂が成人するまで面倒を見る条件で四人を

養子として川神院に引き取ることに決まった。

その後、一誠の隣に寝ている少女、板垣辰子は

馬が合ったのか、それとも必然なのか一誠と目が合った瞬間に、

 

『この子、私の弟にするー』

 

と、抱きつきながらそう言いだしたのだ。

その後、百代が異論を言いだし、一誠は誰の弟になるか言い合いになったほどだ。

 

「オーフィスさまと彼女を起こして朝食の準備をしましょう」

 

「ん、わかった」

 

兵藤一誠、リーラ・シャルンホルストの一日は今日も変わらず始まるのだった。

 

 

 

 

「よーし、今日はここまデ!」

 

「ありがとうございました!」

 

ルーから課せられる鍛練のノルマをこなし、元気よく返事をする一誠。

道着を身に包んだままルーから離れ、

 

「一誠く~ん!」

 

「うわっ!?」

 

「うふふー」

 

流した汗を風呂でと思いながら家の中に入ろうとしたところで辰子に抱きつかれた。

 

「た、辰子?いま汗掻いているから・・・・・」

 

「だいじょうぶだよー」

 

「―――こら辰子!鍛練が終わってすぐにどこかに行ったと思えばやっぱり一誠のところか!」

 

自分は怒っているぞ!と身体全体で怒りを表現し、現れた百代は辰子に掴みかかる。

 

「一誠はこの後私と川原で気の打ち合いをするんだ!」

 

「一緒にお昼寝をするのー!」

 

負けじと辰子も百代に掴みかかり、その場で喧嘩をし始めた。そこで一誠は一言、

 

「だったら、百代とそれを終わったら辰子の言う通りのことを百代も一緒にすればいいんじゃない?」

 

「「・・・・・」」

 

ピタッと停止して二人は「それもそうか」とアッサリ喧嘩を止めた。

 

「ほら、二人とも釈迦堂先生との稽古で汗を流しているんだからお風呂に入ろうよ」

 

「そうだな」

 

「じゃあ、一誠くんもはいろー?」

 

「いや、僕は―――」

 

 

ガシッ!

 

 

「「問答無用」」

 

「リーラさん!この二人を止めてぇー!?」

 

 

―――川原―――

 

 

「そーら!一誠、やるぞ!」

 

「今度は負けないからね!」

 

川原で、両手から小さな気弾をマシンガンの如く放ち続ける一誠と百代。

一発でも当たれば勝者というゲームをやるようになってから二人は闘争心が燃えあがり、

一定の時間が経つと、

 

「「はぁっ!」」

 

片手で気のエネルギー砲を放ち始め、どちらかが追いつめられるかと言う勝負もするようになった。

二つの気が激しくぶつかり合い、押し合いが二人の気が空っぽになるまで続く。

 

「はははっ!楽しいなーこういうのっ!一誠、もっと全力で来い!」

 

「あっ、いいんだ?それじゃ、全力!」

 

膨張した一誠のレーザービーム状の砲撃。百代の気の砲撃も力が強まるが

軍配は決まったのも当然だ。

 

「くそっ、負けた!」

 

「本気だったら百代に負けていたよ」

 

「私が本気で一誠は全力・・・・・。それが今回の勝敗の決め手かぁ」

 

打ち合い後、草原で寝転がる四人。一誠を真ん中にして百代と辰子が寄り添うように

寝転がっている。オーフィスは一誠の腹の上に寝そべり辰子は一誠が寝転がった瞬間に

寝始めたが、まだ二人は高揚感が収まらないか雑談をしている。

 

「なら、今度は全力で勝負だ」

 

「明日ね?もう全然出る気がしないよ」

 

「だな、私もだ」

 

少し休憩もしくは寝ればある程度体力は回復する。寝転がった状態で時間を過ごす

二人に影が生まれた。

 

「こんにちは」

 

恭しくお辞儀をする執事服を身に包む銀髪の老人。その隣には威圧的な視線を送って

くる銀髪の老人と同じ服を着ている金髪の老人。気を使い果たし、

まだ思うように身体を動かせれない状態で

 

「誰だジジイ?」

 

「ダメだよそんな尋ね方をしたら。気持ちは分かるけど・・・・・もしかして誘拐しにきたの?」

 

警戒する。

 

「いえいえ、私たちはそのような真似はしませんよ」

 

「・・・・・そっちの金のおじさんが怖い顔をしているのに?」

 

一誠の指摘に銀髪の老人は息を一つ漏らす。

 

「ヒューム、ここは私が聞きますのであなたは帰ってくれませんかね?」

 

「・・・・・」

 

ヒュームと呼ばれた金髪の老人は鋭い眼光で物言いたげな視線を銀髪の老人に送る。

その視線の意味を読み取り、一誠たちに話しかける。

 

「先ほどの戦いを御拝見させていただきました。お二人とも、名前を教えてくれませんかね?」

 

「何で教えないといけないの?」

 

「だな。それに知らない奴についていくな、教えるなってうるさく言われているんだこっちは」

 

「うん、知らないおじさんに教えるほど僕たちは世間知らずじゃないからね」

 

ジト目で二人の老人に視線を向ける一誠と百代。そんな言動に金髪の老人は目を爛々と輝かせる。

 

「赤子が、俺たちの質問に答えろ。それとも少し大人に対する態度を教えてからにでもいいが?」

 

指の関節を片手で鳴らし威圧を掛けると、

 

「暴力反対!大人が子供を虐めるなんてどういう神経しているのさ!

そんな大人がいるから虐待なんて言葉があるんだ!」

 

「そうだそうだ!お前は私のジジイか!」

 

非難の言葉が一誠と百代の口から発せられたのだった。

 

「・・・・・クラウディオ」

 

「ヒューム、ダメですからね」

 

額に青筋を浮かべるヒュームに「連れてきたのが間違いでしたね」と小さく漏らす

クラウディオと呼ばれた銀髪の老人。

 

「申し訳ございません。私はクラウディオ・ネエロと申します。以御お見知りおきを」

 

「・・・・・」

 

「このムスッとした方はヒューム・ヘルシングですのでどうかお見知りおきを」

 

「・・・・・名前を言ったからって僕らにとっては知らない人当然だよ」

 

「はい、重々承知の上です。ですが、質問に答えて欲しいだけですのでよろしければお話だけでも」

 

クラウディオの話を聞き一誠と百代は顔を見合わせ―――辰子を背負い、

オーフィスを百代が抱えて少しばかり回復した体力で逃走をしたのだった。

 

「・・・・・警戒心が凄まじいですね」

 

「ふん、赤子の考えることは見え透いているがな。泳がせるぞ」

 

「そうですね―――っ!?」

 

刹那、空間が歪みだして鎖が飛び出す。

鎖は意志を持っているかのように動きヒュームとクラウディオを縛りあげた。

 

「これは・・・・・」

 

「小癪な真似を・・・・・」

 

―――川神院―――

 

凄い勢いで門を潜り川神院に戻った二人(四人)。

 

「つ、疲れた・・・・・」

 

「子供の身体で二人を背負って走るのはしんどいな・・・・・」

 

「で、でも・・・・・ここまでくれば。それに縛ったから僕たちを見失っているはずだよね」

 

「いえ、見失っていませんよ」

 

シュタッと軽やかに二人の背後に現れたヒュームとクラウディオ。

一誠は振り返ったその瞬間に空間を歪ませて鎖を発現し―――。

 

「同じ手は効かんことを知らない赤子だな」

 

あっという間に鎖を束ね掴み上げるヒュームに一誠をギョッと目を丸くして唖然とした。

 

「川神院・・・・・なるほど、あなたたちは川神院の関係者ですね?」

 

「だから何だって言うんだよ・・・・・」

 

「いえ、あなた方の戦闘を興味が湧きましてね。

もしよければ将来、九鬼財閥に働く気は無いかと御誘いをとございまして」

 

「くき・・・・・ざいばつ?」

 

クラウディオは「ええ」安心させる笑顔で肯定する。

 

「今は原石ですが将来性を考慮し、あなた方が成長した頃には磨き上げた原石は

宝石になると思っております。どうでしょう?あなたたちのご両親と面会させてもらいませんか?」

 

「僕、父さんと母さんはいないよ」

 

「いまはどこに?」

 

「知らない。世界中を飛び回ってるし、どんな仕事をしているのか分からないんだもん」

 

ジリジリと空間から数多の鎖を展開し逃げる素振りを窺わせながら後退する。

どこまでも警戒する一誠に釣られ、百代も警戒する目で勧誘するクラウディオに見据える。

 

「それに、そう言って騙す人かもしれないし僕を狙う人かもしれない。だから信用できないよ」

 

「赤子にしては十年早い判断だな」

 

「それと赤子じゃないよそこの金髪のおじさん!絶対に僕たちをバカにしてるでしょう!」

 

「赤子は赤子だ。お前は俺からしてみれば赤子のような存在だ」

 

と、眼光鋭く威圧感を放ち言い放つヒュームは知らない。

一誠にとって許し難い事を言われるのは尤も嫌う事を。

 

「・・・・・じゃあ、赤子じゃないって証明するよ」

 

辰子を下ろして、金色の双眸に敵意と怒りが宿る。

 

「ほう?どうやってだ」

 

「こうだよ」

 

右手に魔力、左手に気を具現化し二つの力を合わせ融合。

一誠の全身に摩訶不思議なオーラが包まれ、ヒュームに飛び掛かる。

しかし、上半身だけ逸らして一誠の突貫からかわした際に小さな足を掴んで地面に叩き付けた。

 

「見たことが無い力に、赤子とは思えない速度だったが、まだまだお前は赤子よ」

 

「一誠!」

 

百代が駆けつけ、地面に叩きつけられた一誠を起こす。

 

「大丈夫か?」

 

「ちょ、ちょっと痛かったけど・・・・・あのおじさん、強いよ」

 

「そうなのか・・・・・」

 

敵意が籠った目で百代はヒュームを睨む。

 

「・・・・・あんなことされたというのにダメージが無いとは。

あのオーラによってダメージが軽減された、

もしくは物理防御が飛躍的に高める結果があるのでしょうかね」

 

「どちらにしろ俺の敵ではない。さて、どうする続けるか?」

 

冷静に分析するクラウディオに長髪的な態度をするヒューム。

 

「・・・・・イッセーを苛める者、我は許さない」

 

目が覚めたオーフィスの手に淡い光が帯び始める。場は緊張に包まれた時―――。

 

「お主ら、何を騒いでおるのじゃ」

 

この場に鉄心が現れた。隣にリーラが付き沿っている。

 

「じじい!」

 

「リーラさん・・・・・」

 

「じじい?なるほど・・・・・この赤子は貴様の孫だったとは。久しいな鉄心」

 

「お主もなヒューム。じゃが、川神院が預かっている子供を容赦なく地面に叩きつける

お主は相も変わらず容赦がないと言うか鬼畜と言うか困った奴じゃ」

 

呆れる鉄心に「預かっている子供?」と反応するヒュームとクラウディオ。

 

「鉄心さま、それは文字通りのことですか?」

 

「そうじゃよ。ワシの隣におるメイドと一緒にな」

 

「ふん、そこの従者が赤子の世話役と言うならば躾になっていないな。

失格と烙印を押しても良い。赤子を赤子と呼んで当然なことを

怒りに身を任せて攻撃してきたのだからな」

 

「お主、バカにされた者が怒らないわけがなかろうて―――」

 

刹那―――。

 

 

ブゥゥゥウウウウウウウウンッ!

 

 

と鳴るオーラが放出され、空気を貫くような鋭い音があたり一面に響き渡った。

それはヒュームの頬を掠め伸びてだ。

 

「失礼、手が滑ってしまいました」

 

涼しげな顔でレプリカ・グンニグルを片手に突き出した状態で言うリーラ。

 

「初対面の子供に罵倒を放つ執事も失格と烙印を押してもよろしいかとございます。

そして一誠さまに対する愚行を、このリーラ・シャルンホルストが許しません」

 

一誠を守る様に前へ立ち、絶対零度の目をヒュームに向ける。

 

「貴様・・・・・・九鬼財閥に敵を回す気か?」

 

「九鬼財閥・・・・・なるほど、その財閥の従者でしたか。ですがそれがなにか?」

 

「なに・・・・・?」

 

「もう一度改めて自己紹介をさせていただきます」

 

スカートの端を摘まんでお辞儀をしだすリーラの口から発せられた。

 

「兵藤家元当主である兵藤誠さまと式森家元当主である式森一香さまのご子息である

兵藤一誠さまの専属メイドであるリーラ・シャルンホルストでございます。

以御、お見知りおきを。一財閥の従者さま」

 

「「―――――っ!?」」

 

「元とは言え、兵藤家の一族の者に手を上げた者とその関係者を兵藤家は黙っておられません。

兵藤家と式森家のこと―――ご説明せずともお分かりであることを願っております」

 

ヒュームとクラウディオが目を丸くした。それが事実であれば自分たちは

崖っぷちに立たされた状態でいることが直ぐに思い知らされた。

 

「―――この事実を兵藤家に現在の当主に直接お伝えさせてもらいます。

現当主は元当主である兵藤誠さまの実の父親であり、

一誠さまは現当主にとってお孫さまなのですから話は通じます」

 

携帯を取り出してどこかに連絡しようと素振りをするリーラにクラウディオが待ったを掛けた。

 

「なにか」

 

「・・・・・彼の兵藤家現当主のお孫さまであることを知らずに

ご無礼な言動をしてしまい誠に申し訳ございません。

何卒、今回の件に関してましては兵藤家にご報告をお伝えしないで欲しいと申し上げる所存です」

 

深く頭を下げ腰を折るクラウディオに冷たい視線を浴びせるリーラはヒュームを

一瞥してクラウディに問うた。

 

「そちらの者が兵藤家に罵倒した件はどうなさりますか?

名誉棄損罪、侮辱罪を起訴しても法律にも通じます」

 

「・・・・・私どもがそれ相応の罰と謝罪として数々の品を送らせてもらいます」

 

「私たちは川神院にお世話になっている身です。

数々の品を送られても川神院にいます皆さんのご迷惑になるだけですのでいりません。それに―――」

 

ヒュームを見据えるリーラ。

 

「あなたの相方は頭を下げるようなことをしておりません。

よほどプライドのお高いお方なのでしょう。反省の色も全く見えませんのであなたが

謝罪を述べても一誠さまの心が晴れません」

 

「・・・・・ヒューム」

 

「・・・・・」

 

窘めるクラウディオ。ヒュームは険しい表情を浮かべ、

頭を下げる気配を感じたところで一誠が声を掛けた。

 

「リーラさん、いいよ」

 

「一誠さま?」

 

「嫌々で謝れても僕は納得できないし僕も悪いところがあるんだ。

バカにされて怒っちゃってリーラさんとの約束を破った感じなんだ。だからお相子」

 

「・・・・・」

 

「あっ、でも僕が成長しても九鬼財閥って所に働く気は無いからねこれは絶対」

 

と、勧誘をこの場で断った一誠にヒュームとクラウディオに向けてリーラの目が据わった。

 

「・・・・・なんのことでしょうか?あなた方が働いている財閥に働くと言う話は」

 

「い、いえその・・・・・子供であるのに凄まじい戦闘をしていたので将来有望と思いまして・・・・・」

 

「兵藤家である一誠さまが一財閥に働くと言う事実を世間に知らして知名度を高める予定ですか?」

 

「滅相もございません。それ以前に私たちは一誠さまを兵藤家の者であることすら

知りませんでしたので・・・・・」

 

「気安く一誠さまの名を口にしないでください」

 

「申し訳ございません」

 

身の蓋もない会話のキャッチボール。有無も言わせないほどでリーラから発する冷気と威圧に

クラウディオは心の中で汗を流す。

 

「・・・・・やはり制裁が必要のようですね」

 

眩く輝く槍を構えるリーラ。

 

「九鬼財閥のトップをお連れして謝罪をしに来てください。

さもなくば兵藤家で九鬼財閥を吸収、もしくは潰させてもらいます。いいですね」

 

答えは聞かない。二人は一瞬で光の奔流と化となったオーラに呑みこまれ川神院から

吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

「のう」

 

「なに?」

 

「お主の従者、怖いのぅ」

 

「そう?まだ優しい方だと思うけど」

 

「・・・・・どんだけ怖いんじゃ。お主の従者は」

 

「うーん、始めて怒ったところを見たから分かんないや」


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