HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード14

川神院に住みついてから時は経ち、季節は春を迎えた。百代は小学六年生となった。

空を縁からオーフィスと眺めていると、百代が一誠に歩み寄る。

 

「おい一誠。あの尻尾触らせてくれ」

 

「いいよー(ポン)」

 

「おおー。フワフワだ、モコモコだ」

 

「好きだねー?」

 

「当然だ。触れるならライオンの毛だって触ってみたいぞ」

 

「あっ、同感だね。でも僕的には虎に乗ってみたいや」

 

「ジャングルの王者の背か。お前、ワイルドなところがあるじゃないか」

 

目を輝かせ、一誠の狐の尾を抱き枕のように抱えつつ柔らかさと温もりを堪能する百代から

ワイルドと言う単語に小首を傾げる。

 

「なにそれ?」

 

「格好良い意味だぞ」

 

「そっか」

 

特に喜ばず、百代に尻尾を触らせ続ける。それからしばらくすれば、尻尾から離れて

一誠の前に立ちはだかる百代が催促した。

 

「一誠、外に遊びに行こう」

 

「じゃあ、バトミントンでもしようよ」

 

「私としては野球をやってみたいぞ」

 

「オーフィスと百代だけじゃ人が足りないよ」

 

「なら、外にいる暇そうな奴を探して誘えば良い」

 

「うーん、それもそうだね」

 

リーラと鉄心に一言告げて三人はバットと人数分のグローブ、

ボールを袋に入れたり手で持ったりとして外へ出かけた。

 

「お、あいつら外に行くのか。俺も陰ながら見張ってやるか」

 

「―――って、釈迦堂先生が言うと思うから一緒に行こうよ」

 

「・・・・・おいおい、バレていやがったのか」

 

玄関を出たところで一誠、オーフィス、百代に待ち構えられていた釈迦堂であった。

大人も連れて行けばどんなところにでも行けると密かに百代が呟いたので一誠は

釈迦堂を連れて行こうと決めたのだった。理由は暇そうだから。一誠たちは釈迦堂を

仲間に入れて、改めて外に出た。

 

「師匠、子供だから手加減してほしい」

 

「バカ言うな。子供のくせに大人並みに強いお前らに手加減できると思うか?」

 

「じゃあ、僕らも本気を出して良いんだね?」

 

「お前らは力をセーブしろセーブ」

 

「「ケチ」」

 

「ケチもへったくりもねぇよ。んで、どこまで暇そうな奴らを探しに行くんだ?」

 

そう問われ、一誠と百代は「んー」と悩む仕草をした。

 

「百代、人が集まる場所に行けばもしかしたらいるんじゃない?」

 

「その場所と言えば市街地だな。よし、ついでに親不孝通りに行こうか。

師匠もいるから問題ないだろう」

 

「昼は梅屋で良いな?理由は俺が食いてぇ」

 

「梅干し?」

 

そんなこんなで四人の暇な子供を探す冒険が始まった。

多馬大橋を渡り、暇そうな子供を求め歩き続ける。

 

―――親不孝通り―――

 

環境・治安諸共悪く、違法な売買を日常茶飯事な場所に訪れた一行。

不良の溜まり場でもあり怪しげな見せもちらほらと見掛ける。

 

「来たは良いが、こんなところにガキがいるかぁ?」

 

「師匠、ついでだって言っただろう」

 

「それにさ釈迦堂先生。思わないところで凄いめぐり合いがあるって父さんと母さんが

言ってたよ?」

 

「ああ、それについては同感だわな。特に坊主、お前だ」

 

「坊主じゃないよ兵藤一誠だよ」

 

環境が悪い市街地を歩き続けてしばらく経った。釈迦堂がいることで百代はどんどん奥へ歩き進む。

ピクニック気分で来たことのない市街地を見渡し観た建造物を目に焼き付け、

脳裏に記憶していると、足を止めた釈迦堂から待ったの声が掛けられた。

 

「これ以上は行かないぞ」

 

「え?どうして?」

 

「ああ、坊主と嬢ちゃんは知らないだろうがな。

この奥には強くてこわーいおじさんたちがいっぱいいるんだわな。

警察でさえもこの先を武装しない限り行かないほどだ」

 

「そうなんだ、でも釈迦堂先生」

 

「なんだ」

 

「百代、先生の話を聞いて嬉しそうに凄い速さで行っちゃったけど」

 

指を差した方へ釈迦堂が目を向けたら風の如く走っている百代の後ろ姿が。

後に深い溜息を吐いて顔を手で覆った。

 

「あいつ、最初からここにくる為に俺を連れて来やがったのか・・・・・おい坊主。

ここで待つか俺と一緒に百代を連れ戻しに来るのとどっちがいい?」

 

「一緒に行く」

 

「よし、俺からしっかり離れずついてこいよ」

 

「うん」

 

一誠とオーフィスと釈迦堂は駈け出した。百代の気を探知して探す釈迦堂について行く。親不孝通りの市街地を駆けまわること数分後に―――。

 

「はははっ!」

 

「なんだこのガキは!?」

 

「すばしっこい上になんて強い!」

 

強面の大人の男性と喧嘩もとい刀剣類を振りまわす相手に戦っていた。

その光景を釈迦堂がまた深い溜息を吐いた。

 

「あとでジジイにどやされそうだぜまったく」

 

「僕からあまり怒らないでって言うよ」

 

「雀の涙ぐらいの配慮だな」

 

釈迦堂はまずしたことは―――。

 

「おらよっと、ゴメン遊ばせ」

 

 

ゲシッ!

 

 

嬉々として蹴り飛ばしたのだった。

 

「・・・・・先生、自分から攻撃してどーするのさ」

 

「何言ってんだ坊主。ああでもしないと百代を連れて来られないだろう?」

 

「百代は普通に怖いおじさんたちの攻撃を交わしたり攻撃していたんだけど?」

 

暗に釈迦堂がそんなことしなくても呼び寄せればそれでいいんじゃないの?と

一誠はそう言いたげに視線を飛ばす。釈迦堂は釈迦堂で一誠の物言いたげな視線を一蹴した。

 

「俺もストレスってもんが溜まっているんだ」

 

「あ、スポーツをして発散するアレ?」

 

「そうそうその通りだ。分かってくれたな?」

 

「うん、分かった」

 

「(・・・・・こいつ、実は騙されやすいんじゃねーのか?)」

 

そう疑惑な視線を一誠に向ける釈迦堂の視界の端にズタボロになっている

四人の少年と少女がひれ伏していた。

 

「なんだ?あいつらは随分とやられてるなぁ」

 

「ああ、私がこの場に駆けつけていたら師匠が蹴り飛ばした大人があいつらを

寄ってたかった虐めていたんだ。理由は金を奪おうとしたらからだって」

 

百代が説明した。なるほどと釈迦堂は頷き、

鉄心に対する正当な言い訳もできたと内心ガッツポーズをしたが

向こうからぞろぞろと強面の大人たちが得物を持って駆けてくる。

 

「まさかだと思うけど、全員倒さないよね?」

 

「流石にしないわな。ここは後ろに振り返って走る方が重要だ」

 

と、逃走を図ろうとしたが突如発生した氷の壁に逃げ道が塞がれた。

 

「あ?氷だと?」

 

「凄い、これ削ったらかき氷ができるね」

 

「ド阿呆、それよりもこいつを破壊しないことには―――」

 

横に身体をずらした際、一人の少女がナイフを地面に突き立てながら降ってきた。

 

「おほっ、こいつはすげぇや。人を傷つける躊躇や戸惑いなんて感じさせない一撃だったぜ」

 

「―――私の家族を傷つけたお前にそれを感じる必要があるか?」

 

「んや、ねーわな。てなわけで坊主」

 

「うん?」

 

「この嬢ちゃんの相手をしてくれねぇか?」

 

一誠を謎の少女の前に立たせ、そんな事をさせようとする釈迦堂に顔だけ動かして

指摘の言葉を発する。

 

「釈迦堂先生。ここは謝った方がいいと思うよ、ごめんなさいって」

 

「向こうの嬢ちゃんの目を見てそう言えるか?」

 

釈迦堂の指摘に少女の青い目を覗きこんだ。

ギラギラと敵意と殺意、戦意が混ざっていてとても平和的に話もできなさそうだった。

 

「・・・・・できないかも」

 

「だろ?お前が嬢ちゃんを相手にしている間に百代にあのガキ共を連れて逃げさせる。

オーフィスの嬢ちゃんもな」

 

「えー、私は戦いたいぞ」

 

「ジジイにこっぴどく死ぬほど叱られたいか?しかも坊主のメイドにまで叱られる

可能性は大きいぜ」

 

「うっ・・・・・」と呻き、渋々と頷いた百代。釈迦堂は強面の大人たちに振り返る。

 

「それじゃ、頼んだぜ」

 

「オーフィス、氷を壊すから頼んだよ」

 

「「わかった」」

 

四人は一斉に動き始めた。一誠は横殴りに氷の壁を叩いて粉砕してみせれば、

瞬時で倒れている四人の子供たちを掴んで壊れた氷の壁を通ってこの場から離れた。

釈迦堂と一誠はそれぞれ戦い始める。

 

「私の家族を傷つけたお前たちを許さない!」

 

「僕はなにもしていないけどね!?」

 

「同じだ、だから氷漬けになるか串刺しになれ!」

 

空気中の水分を一瞬で凍結させ、氷の槍を数多に具現化させた少女が一誠に向けて

手を伸ばしたのを呼応して、氷の槍は一誠に向かって飛ぶ。

 

「氷が飛んできたぁー!?」

 

目を丸くして驚愕しながらも一誠の周囲の空間が歪みだして数多の鎖が意思を持って

いるかのように飛び出しては、一誠を守ろうと数多の鎖は氷の槍に巻きつき絞めつけ砕いた。

砕け散る氷の槍を目を丸くした少女は問うた。

 

「鎖だと・・・・・?お前、その力はなんだ・・・・・」

 

「それはこっちの台詞だよ。キミ、神器(セイクリッド・ギア)の所有者だったなんてね」

 

「セイグリット・ギア・・・・・?」

 

「知らない?神さまが与えてくれる不思議な力だよ。

多分その氷の力は神器(セイクリッド・ギア)による能力だよ。

キミや僕みたいな人間は世界中にいるんだ。でも実際に神器(セイクリッド・ギア)

持っている人と戦うのはキミで二人目―――」

 

最後まで言い掛けた口が閉じなかった。氷を操る少女が涙を流しながら笑みを浮かべているからだ。

 

「そうか・・・・・私は化け物ではないのだな」

 

「・・・・・?」

 

自分を化け物と呼ぶ少女に小首を傾げる。どうしてそういうのかと疑心を抱いていると、

少女がポツポツと零す。

 

「私は物心が付いてしばらく経った時、この氷の力を操ることができた。

だが、そんな私を大人や子供が畏怖の念を抱き、恐れ戦き、中には化け物と呼ぶ人間が現れた。

それ以来、私は家族と一緒に過ごすことで言われずに済んでいる。

だから―――私を化け物と知ってて大切にしてくれる家族を傷つけたお前たちは許さないんだ」

 

「・・・・・」

 

少女の話を聞き、一誠は背中にドラゴンの翼を展開した。

 

「キミより僕の方が化け物かな?僕、ドラゴンだしさ」

 

「・・・・・ドラゴン、だと?」

 

「うん、僕は兄ちゃんに包丁で刺されて一度死んだんだ。

だけど、僕はとあるドラゴンたちに助けてもらってドラゴンになったんだ。

だから人間のキミから僕を見れば、僕は人間じゃないから化け物だよね?」

 

「・・・・・」

 

肉親に、兄弟に殺されたと聞いた少女は信じられないと最初に思った。

だが、翼を生やす目の前の一誠を見てなぜだろうか・・・・・。

 

「僕はキミと戦いたくない。

だけど、これ以上キミが戦いを望むというなら・・・・・」

 

紫と黒が入り乱れた龍を模した全身鎧を装着した一誠を見て―――。

 

「強いキミに本気を出さないといけない」

 

「・・・・・」

 

少女は一誠の変わりように口角を上げだした。

 

「気に入ったぞお前」

 

「ん?そう?」

 

「私を化け物ではないと言いながら自分を化け物と言う。

そしてその証拠たる姿を私に見せた。ならば化け物のお前に問おう。―――お前は誰だ?」

 

少女の問いかけに一誠は鎧を解除して発した。

 

「名前は兵藤一誠だよ。元人間だったドラゴンの、名前だよ」

 

「私はエスデスだ」

 

「よろしくエスデス。友達がいないなら僕が友達になるよ」

 

満面の笑みを浮かべ、手を差し伸べてくる一誠にエスデスは踵返した。

 

「・・・・・その気持ちはありがたく受け取る。また来い、そしたら今日の続きをしよう」

 

「そっちから来る気があるなら僕は川神院にいるからねー」

 

返事をせず、去っていくエスデスを見送る一誠。

釈迦堂と戦って敗れた大人たちも負傷した状態で蜘蛛の子のように散った。

 

「坊主、口説いたのか?」

 

「違うよ、友達になったの」

 

「へっ、そうかよ。んじゃ、俺たちも戻ろうぜ」

 

「はーい」

 

釈迦堂と一誠も待っているであろうオーフィスと百代のもとへ赴く。

 

 

 

 

 

 

 

「兵藤・・・・・一誠・・・・・か。・・・・・ふふ、ふふふ、ははははははっ!」

 

 

 

―――○●○―――

 

 

 

「お主の言い訳はよーく分かったぞい」

 

「おいおい、正当な理由と言えよジジイ」

 

「阿呆、いくらお主がいるとは言え預かっている者を危険な場所に連れていくとは何事じゃ。

そして百代!」

 

「ぅっ!」

 

「今回は目を瞑るが、もしも独断で行動をし理由も無く大人に攻撃をしたら今後一切

お小遣いは一切無し!外への出入りも高校生になるまで禁止にするぞい!」

 

「そ、そんな横暴なぁっ!」

 

川神院に戻った一誠たちに待ち受けていたものは四人の子供を保護した釈迦堂への追及と

百代に対する厳しい説教だった。

 

「リーラさん、大丈夫かな?」

 

「酷い暴行を加えられていますが、命に別状はございません」

 

「そっか」

 

「一誠さま。知らなかったとはいえ大人になるまではその危険な場所に行ってはなりません」

 

「友達ができたのになぁ・・・・・」

 

「友達ですか?」

 

布団の中で眠る四人の子供を見降ろす一誠がリーラのオウム返しに頷く。

 

「うん、神器(セイクリッド・ギア)を持っていた子だよ。氷を操るんだ」

 

「・・・・・」

 

「リーラさんがそう言うならしょうがないや。

ここにいるって教えたし、何時か来てくれるのを待つよ」

 

少し残念そうにはにかむ一誠。リーラは心の中で複雑に思いながらも一誠の為だと心を

鬼にしなければと気持ちを抱いていると、

 

「で、釈迦堂。あの子らを連れて来てその後はどうするんじゃ?」

 

「取り敢えず、事情を聞くしかないでしょうや。そんで親のもとに帰す」

 

「わかった。あの子らをお前に一任するがよいな」

 

「へいへい、最後まで面倒みますよっと」

 

鉄心と釈迦堂は話が付いた様子。

 

「釈迦堂先生、これからどうするの?」

 

「こいつらが起きないことには始まらない。だったらこいつらが起きるまで待つしかないだろう」

 

「いえ、その必要はございません。既に起きておりますので」

 

リーラが唐突にそう言いだすと少女と少年がバッと起き上がって掛け布団をリーラたちに投げ放つ。

視界を遮らせその隙に二人の少女を掴んで逃げようとする二人の子供に、

 

「おっと、ボコられていたくせに元気じゃねーの」

 

先回りした釈迦堂が逃げ道を防いだ。

 

「どけや!」

 

「お前らを助けた大人に対する礼儀がなっちゃいねぇな?取り敢えず、大人しくしてろ」

 

あっという間に二人の子供を抑えつけるその手際に一誠は「おおー」と感嘆の声を漏らす。

 

「ちくしょうがっ、俺たちを警察にでも突き出す気か!」

 

「なんだ?おまわりさんに世話になるようなことをしてきたような言い方をするじゃーねーの。

ここは俺の家だ。お前らに手を出すような奴はいねーよ。なんなら飯でも食うか?」

 

「アタシらがそんな手に乗ると―――(キュウウウ)」

 

「てめぇみたいな怪しい奴の世話になって―――(グゥ)」

 

盛大に腹の虫が鳴った。三大欲求の一つである食欲に素直な二人の子供たちだった。

釈迦堂は底意地の悪い笑みを浮かべ、

 

「今日はすき焼きだが・・・・・そうかそうか、いらないんだな?」

 

「「・・・・・」」

 

「釈迦堂先生、意地悪しちゃダメだよ。お腹が空いているなら食べさせなきゃ死んじゃうよ。

リーラさん、ご飯の用意をしてくれない?」

 

「わかりました」

 

軽くお辞儀をしてリーラはこの場からいなくなる。

 

「おいおい、お前は甘すぎるって」

 

「いいよ甘くて。困っている人を見かけたら助けるんだぞって父さんに言われたんだもん」

 

「偽善者って言われても文句は言えねぇぞ」

 

「ぎぜんしゃ?なにそれ?」

 

首を捻る一誠に無視して抑えつけている子供たちに視線を向ける。

全身打撲による怪我で痛々しい姿になっている。

服も一度も洗濯していないのかかなり汚れていて

清潔感が感じさせない。子供にしては粗暴で荒々しい言動をする。

 

「お前ら、親はいるか?」

 

「知るかよ!俺たちを捨てたクソなやつらなんて!」

 

「なんだなんだ。お前ら四人だけで生きていたってのか。そいつはご苦労なこって」

 

「同情するなら金を寄こせってんだ!」

 

「あー、そうかい。お前ら、四人で他人から金や物を奪って生きながらえていたんだな?

だが、今回は相手が悪くて返り討ちに遭ったと」

 

ようやく合点したと納得し、抑えつけていた手を放した。

 

「親がいねぇなら好都合だ。お前ら、今日はこの家に泊まれ」

 

「は?なにを企んでいやがる」

 

「気まぐれなおじさんの言葉に耳を傾けるもんだぜ。と言っても俺はまだまだ二十代だがな」

 

「「「えっ」」」

 

「おい待て坊主。お前までなに驚いていがる?」

 

心外とばかり一誠に振り返る釈迦堂に一誠はこう言った。

 

「髭が生えているからてっきりおじさんかと思ったんだけど」

 

「二十代の若者でも髭が生える奴はいるんだ。よーく覚えていやがれ」

 

「そっかぁ、わかった」

 

頷く一誠は二人の子供に近寄った。

 

「僕は兵藤一誠だよ。キミ達は何て名前?」

 

「・・・・・板垣亜巳、こっちは弟の板垣竜兵だよ」

 

「そっか、よろしくね。亜巳と竜兵」

 

ニコニコと笑みを浮かべるとリーラが大きな鍋を持って部屋に入ってきた。

その後ろに修行僧の男たちも続いて入り、食器やテーブルなど食事の準備をしていなくなった。

 

「お待たせしました一誠さま」

 

「うん、ありがとう」

 

リーラに笑みを浮かべ感謝の言葉を述べると、

 

「んぁ・・・・・?」

 

「いい匂いがするぅ・・・・・」

 

ムクリと眠っていた二人の子供が起き上がった。

 

「天、タツ!」

 

「アミ姉ぇ・・・・・お、美味しそうなたべもんがあるじゃねぇかっ!」

 

「わぁ・・・・・これ、どうしたの?食べていいの?」

 

「ええ、どうぞ食べてください」

 

リーラからの了承に起き上がった二人の少女がワッと食べ始めた。

 

「うめぇ!うめぇっ!」

 

「アミ姉とリュウ、これ美味しいよー?」

 

「・・・・・ちったぁ警戒しろよな」

 

「まったくだね・・・・・こっちがバカみたいじゃないか」

 

「実際お前らバカだ。おら、とっとと食わないと全部あいつらに食われちまうぞ」

 

釈迦堂の催促に亜巳と竜兵も渋々と食べ始めるが―――。

 

「あっ、テメェ天!俺の肉を取るんじゃねぇっ!」

 

「へへん!奪われる方が悪いんだよ!」

 

「じゃあ、天ちゃんのところにあるお肉貰うねー」

 

「アンタはアタシ達の中で背が低いから肉よりも野菜を食べな」

 

ワイルドな食いっぷりと共に和気藹々と賑やかな食事を展開した。

その様子を見ていた釈迦堂は顎に手をやった。

 

「・・・・・ちょいっとジジイに相談してみっか。事が進めば暇な退屈もしなくなるだろうしな」


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