HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード13

「ルー先生。闘気の扱い方を教えてください。父さんみたいに空を移動してみたい!」

 

「あの技法はワタシでも無理だヨ。というより、闘気を扱うには過酷な特訓を―――」

 

「もしかして、闘気ってドラゴンと鬼ごっこしたらできるの?」

 

「・・・・・キミ、自分がどれだけ凄い体験をしているのか分かっているのかネ?」

 

「え?ルー先生もしたから強くなったんじゃないの?」

 

「・・・・・とにかく、もう少し時間を掛けてだネ」

 

「(あっ、話を逸らした)」

 

 

 

「釈迦堂先生、ドラゴンと追いかけっこしたことある?」

 

「お前の中の俺はどんな評価されているんだぁ?というかそんなことしたら俺が食われちまう」

 

「評価?なにそれ?というか大丈夫だよ。厳しいけど優しいドラゴンだからさ」

 

「知らねぇのかよ。ま、まだガキだからしょうがないか。

生憎、俺はドラゴンと会ったことがないぜ」

 

「ふーん、そうなんだ。ところで闘気ってどうやればできるの?」

 

「あ?ああ、何て言うかアレだ。身体に感じる力を手の平に集めればできるもんだぜ」

 

 

 

 

 

「うーん・・・・・釈迦堂先生から聞いてやっているんだけど・・・・・魔力しか出てこないやぁ」

 

手の平に浮かぶ赤い魔力球。それを恨めしいとばかり見詰め眉根を寄せる。

平日は学校に通っている百代が川神院にいない為、オーフィスと一緒に縁に座って

闘気を出そうと頑張っている。

 

「オーフィス、オーフィスは気の出し方分かる?」

 

「我、分からない」

 

「そっか。うーん・・・・・魔力だけだと空っぽになった時に大変だから闘気だけでも

戦えるようにしたいんだよなぁ」

 

「イッセーの魔力は無限、なくなることはない」

 

「どれだけ使っても?」

 

「(コクリ)そう」

 

オーフィスの肯定に一誠は感嘆して魔力球を消した。

 

「お主、そこで何をボーっとしておるのじゃ?」

 

「お爺ちゃん」

 

「子供は元気で外に遊ぶもんじゃぞい」

 

背後から鉄心が近づくが、一誠は首を横に振る。

 

「百代がいないから外で遊んでも楽しくないよ。

それに、しばらく外に出ちゃダメって言われてるから

闘気を出そうと頑張ってるんだけれど中々出てこないの」

 

「ふむ・・・・・鍛練は全部こなしたんじゃな?」

 

「その三回もやったよ」

 

「・・・・・子供の身体でそれだけやってもケロリしておるとはの」

 

体力バカかと思うほどの一誠の体力は鉄心を少なからず驚かせる。そしてつまらなさそうに

手の平に何度も赤い魔力球を出しては消して、出しては消してと

「闘気じゃない」とぼやく一誠の頭へ徐に手を置いた。

 

「それほど知りたいならこれを感じてみるがいい」

 

「へ?」

 

次の瞬間。鉄心の手から感じる一誠が感じたことが無い力が流れ込んでくるような感覚を覚えた。

 

「・・・・・これ、なに?」

 

「お主が知りたがっていた気じゃよ。人間誰しも持っておる生命エネルギーじゃ」

 

「・・・・・温かいなー。それにこの家全体に感じるものと一緒だね」

 

「ほう、この寺院を包む闘気を感じるのか。ならば話が早いの」

 

一誠の頭から手を放して髭を擦る鉄心に「なにがなの?」と小首を傾げる。

 

「気は何も出してできるものではないのじゃ。座禅をして無心になるがよい」

 

「座禅って?」

 

「こうじゃよ」

 

隣で腰を下ろし、座る鉄心の姿を見て一誠も見よう見真似をする。

 

「そして目を瞑り、頭と心を無にして集中するのじゃ。当然、寝てはダメじゃぞい。

心を穏やかにして気持ちを落ち着かせ、自然を全身で感じることが一番大事で重要なポイントじゃ」

 

「自然を感じる・・・・・川とか森とか?」

 

「そうじゃ」

 

「わかった。じゃあ、川原でそうしてるね。オーフィス行こう?」

 

縁から降りてオーフィスと共に川原へ向かった。二人を見送る鉄心は優しげな顔で

 

「ほっほっほ。頑張るんじゃぞい幼い若者よ」

 

と、応援をしたのだったのだが何か思い出したように首を捻った。

 

「む?外出禁止と言われたおったのじゃったな。これはワシから言っておかんといけないな」

 

「でしたら、俺が付き沿ってやりますぜ。ここにいても暇ですんで」

 

「釈迦堂か。わかった、気を付けるんじゃぞい」

 

「敵が来たらサクッと倒しますよ。寧ろ俺はその方がいいですわ」

 

 

―――川原―――

 

 

「「・・・・・」」

 

 

川原に辿り着くや否や、一誠は座禅を組んで無心になる。必死に無心になろうとせず、

忠実に鉄心の教え通りに心を落ち着かせ、何も考えずただただ自然を全身で感じる。

ずっと座り込み目を瞑る一誠をオーフィスはジッと見つめ、

 

「(うへぇ・・・・・本気でやっていやがるぜ。ガキなら直ぐに止めちまうもんだろうによぉ)」

 

遠くから釈迦堂がそんな二人を監視する態勢で見張っていた。特に何の変化も無いまま

時間が過ぎようとしている中で釈迦堂は原っぱに寝転がりながら様子を見る。

 

「こっちが眠たくなりそうだぜ。今更あのガキにちょっかいを出す輩なんて

いるわけがないってのによ」

 

だが、ある意味そう問屋が卸さなくなった。数人の不良らしき若者が一誠を

見て悪い笑みを浮かべ地面にある石ころで一誠に鋭く豪快に投げ放ったのだ。

しかし、一誠の傍にはオーフィスがいて、飛来する石ころを受け止めた。

 

「おいおい・・・・・あのお嬢ちゃんどんな反応速度や反射神経なんだよ」

 

不良たちは遠くからでも分かるほど目を大きく見開いて、性懲りもなく石を拾って投げつける。

その数多の石さえも容易に一誠の邪魔をさせないと手で受け止め続ける。

 

「はははっ、百代並だぜありゃ。―――おっと、俺の出番だな」

 

釈迦堂の目に映る一誠とオーフィスに近づく不良たち。

何をしようと仕出かすのか分かり切っている為、

 

「はいはーいお前ら・・・・・ちょっとばっかしの間、おじさんと向こうで話をしようぜ?」

 

有無を言わせない釈迦堂が殴り飛ばし、蹴り飛ばして遠くへ吹っ飛ばした。

その後、不良たちはボコボコにされた上に気絶をした。―――それから数時間後。

 

「・・・・・お?」

 

そう漏らす程釈迦堂が異変を察知した。まだ寒い季節であり空気も冷たい。

それなのに川神院に感じるものとは違うが温かくなったような気がした。

 

「掴めそうになっている・・・・・そんな段階ってか?・・・・・って、なんだありゃ?」

 

目の錯覚か?目に映る光景に我が目を疑う。一誠の腰辺りに何時の間にか尻尾が生えていた。

獣の、それも狐の尻尾みたいなものだった。あれはどうなってるんだと釈迦堂は気になり、

気配を殺して近づいてみた。

 

「おい嬢ちゃん」

 

「ん?」

 

「ガキに生えているソレ、本物か?」

 

オーフィスに尋ねてみれば、それを軽く触ってみたオーフィスはコクリと頷いた。

 

「本物」

 

「マジか・・・・・もしかしてガキの正体は狐だったりするか?」

 

「違う、イッセーはドラゴン」

 

「ドラゴンだと?」

 

冗談かなにか、適当に言ったのかと思うが、

オーフィスは揺れる尻尾を目で追うことで忙しいようで

釈迦堂に目もくれない。すると、一本だった尾が一本、二本、三本と増え続け

最終的に九本まで増えた。

 

「九尾の狐ってかぁ?」

 

「イッセー、不思議」

 

オーフィスと釈迦堂がそう言った時だった。一誠から感じる―――闘気が迸ったのだ。

思わず釈迦堂は狂喜の如く高らかに笑った。

 

「はははははっ!おいおいおいなんだぁ!?こいつはすげぇじゃねぇかおい!」

 

一誠を中心に気は迸り、突風も発生する。釈迦堂の顔に笑みが絶えず、嬉々として一誠を見やる。

 

「潜在能力を秘めていたガキだな。流石は兵藤家ってか!」

 

しばらくして迸る気は止み、オーフィスと釈迦堂が見守る最中で一誠が目を開けた。

 

「よう、ガキ。気分はどーだぁ?」

 

「あ、釈迦堂先生。いたんだ?」

 

今更な反応に呆れ顔で話しかける。

 

「どんだけ無心になっていたんだよ。気付いちゃいなかったのか」

 

「お爺ちゃんの言う通りにしたら狐のお姉さんがいてね?どうしたら気を扱えるのか

教えてもらっていたの。そしたら―――――」

 

一誠が言うには無心になっていたらいきなり引きずり込まれた矢先に女性がいた。

その女性はどうやら狐の妖怪で小さい頃から一誠の中にいたらしく、

自分の願いを叶えてくれれば気の扱い方を教えるとのことで一誠は狐の妖怪の願いを

叶えると約束をした結果、膨大な力で抑え込まれていた気が解放したと言う。

 

「で、その妖怪さんはお前になんてお願いをしたんだ?」

 

「うーんとね、京都に封印されたお姉さんの身体を取り戻して欲しいって。

僕がもっと成長してからでも良いらしいから」

 

 

―――○●○―――

 

 

「まさか、教えて早数時間で覚醒したとはの」

 

「総代が教えたからでしょうガ」

 

「いやいや、一生懸命な子供にちょっとしたヒントを言っただけじゃ」

 

「ジジイ、あのガキはとんでもねぇ化け物だぜ?そんで面白い奴だ」

 

「じゃろうな。ここからでも感じておった。あの者には本格的な修行を課した方が良さそうじゃの」

 

「それで、あの子は今なにをしているのでス?」

 

「大喜びで気を使って色々としているな、百代とよ」

 

目の前でしている一誠と百代。扱えるようになった気を球状にして投げ合いをしている。

百代も既に気を扱えるようになっていたのか、軽々と受け止めて一誠に投げ返している。

 

「総代、百代は気を扱えるようになっていましたっケ?」

 

「いや、ワシが知る限りでは放出することもまだできていなかったはずじゃが」

 

「だとすると、あのガキの影響でできるようになったんじゃね?」

 

「もしもそうじゃったらあの者の影響力は凄まじいの。しかし、あの二人は楽しげにやっておるわい」

 

何時しか気の塊は増えてお手玉みたいになった。

あんな風に気弾を扱う者は鉄心すら初めて見たのか感嘆した。

 

「器用じゃな」

 

「まだまだ子供であるのニ」

 

「投げ方ががむしゃらのように見えて実際は野球って感じだ」

 

―――数日後―――

 

「・・・・・ジジイ、あいつらの成長速度は異常じゃね?」

 

「・・・・・じゃな」

 

「二人が互いに高め合っているのかもしれませんネ」

 

高速で地面を蹴って反複横飛びを裸足でしている一誠と百代。そんな二人の前には誠がいた。

 

「空を移動する際、爆発的な脚力で空を蹴る必要がある。

脚を鍛えることで瞬発力も向上するんだ。極力、土煙や砂煙を出すことなく移動できれば

空を移動できる進歩に繋がる。いいな」

 

「「はいっ!」」

 

「ふふっ、微笑ましいわね」

 

誠に指導されている一誠と百代を一香は笑みを浮かべ、

オーフィスを膝の上に乗せながら見守っている。

鉄心も「そうじゃな」と頷き、一香の言葉を肯定する。

 

「よーし、今日はここまでだ」

 

「え?まだまだ大丈夫だよ」

 

「一誠の言う通りだ」

 

「一朝一夕でできるか。こう言うのは鍛練と同じで飽きるほどこなせば自然とできるんだよ。

例えば、反複横飛びを極めた俺がすると―――なんと、俺が複数に見えるのだ!」

 

「「おおっ!」」

 

シュバババッ!と誠が反複横飛びをすれば数人の誠が増えたように見えるほど

速い動きをしてくれる。

 

「忍者だ!」

 

「ははは、影分身のことか?生憎俺は忍法はできない。努力の賜による成果だ」

 

「じゃあじゃあ、気を放つことができる?ビームみたいに」

 

「できるぞ?まあ、一誠はまだまだできないだろう―――」

 

「できるよ、ほら」

 

手の平に具現化した気弾を誠に向けて投げ放った。同時に百代も便乗して気弾を放った。

それらの気弾を両手で受け止めた誠の目を丸くした。

 

「・・・・・お前、何時の間にこんなことできるようになったんだ?」

 

「えへへ、凄いでしょう?」

 

「―――凄いじゃないかっ!流石は俺の息子だい!」

 

歓喜極まり、一誠に飛び込んで抱き上げた。

 

「俺がいつか教えようとしたことをもう習得しやがって!なんだ、誰かに教えてもらったのか?」

 

「狐のお姉ちゃんが力を貸してくれたの」

 

「狐のお姉ちゃん?・・・・・九尾の御大将がここにきたってのか?」

 

あの場所から動けないはずなんだが内心思う誠に首を横に振り胸に手を触れる一誠。

 

「ううん、僕の中にいるの」

 

「・・・・・お前の中にだと?・・・・・ちょいっと一誠、ジッとしててくれ」

 

「ん?分かった」

 

徐に一誠の額へ自分の額を押し付け瞑目した。それから数十秒後、誠は一誠から離れ

納得したとばかり息を一つ零した。

 

「本当にいやがった。兵藤家の歴史にも記されていた妖怪がな。おい一誠、尻尾とか出せるか?」

 

「できるよー」

 

頭に狐の耳、ブワッと九本の狐の尾が一誠の腰から生え出した。間近で見ていた誠と百代、

遠くから見ていた一香と鉄心が目を丸くするほど驚く表情を窺わせる。

 

「一誠・・・・・お前、憑依されているのを分かっているか?」

 

「ひょうい?」

 

「おお、フワフワでモコモコだっ」

 

百代が尻尾を抱きしめて感触を堪能している間に一香と鉄心が近づいてくる。

 

「誠、これはどういうことなの?」

 

「ワシにも教えてくれんかのぉー?」

 

尋ねられた誠は頬を掻き、一誠の頭に手を置いた。

 

「まあ、あれだ。一誠は妖怪に憑かれているんだ九尾の狐に。

あの平安時代、安倍清明を産んだと謳われている妖弧にだ」

 

「・・・・・嘘でしょ」

 

「冗談じゃろう?」

 

「俺が嘘を言うわけ無いだろう。名前も聞いたんだ」

 

そう言う誠だが、一誠は何のことだろうと小首を傾げる。

百代と交じり、オーフィスもちゃっかりと尻尾を触れる。

一誠の尾を触れる二人や触れられる一誠を見詰め一香は息を吐く。

 

「・・・・・式森家の方にも兵藤家の歴史について調べたことがあるけど、

その中に記されている妖怪がこの子に・・・・・」

 

「肉体はどっか厳重に封印されているのは分かっているが、詳細は俺も分からない。

親父も分からないだろうな」

 

「あら、意外ね。そういう事は当主が知ってるものじゃないの?」

 

「逆だ。封印しているものを管理している兵藤家の一部しか知らないんだ。

代々その役割を務め当主にすら教えられない。魂と分けられた肉体は妖力諸共封印されて

いるらしいから、九尾の力を取り込めばどうなるか分かったもんじゃない。

そんなバカな輩に知らせない、奪わせない為にその墓守の番人如くの極一部の

兵藤家の奴が存在する」

 

「兵藤家も一枚岩ではなさそうじゃな」

 

ヒゲを擦りながらそんな感想を述べた鉄心に誠は「そうだな」と頷く。

 

「尻尾と耳を出せるのは取り憑かれているからだろうが、妖力は無いはずだ」

 

「気と魔力・・・・・誠、一誠は大丈夫なの・・・・・?」

 

「オーフィスの魔力だから反応しないのはもう前から分かっていることだろう?」

 

「そうだけど・・・・・」

 

意味深な会話をし、一香は不安げに一誠を見詰めると驚きの光景が。

 

「右に魔力、左に気!僕、二つの力の球が作れちゃうや!」

 

「それ、くっつけたらどうなるんだ?」

 

「分からないよ」

 

「じゃあ、試しにやって見せてくれ」

 

「分かった」

 

親の心子知らず、百代の指摘に一誠は違う力を合わせようとした瞬間。

 

「「ちょっと待てぇえええいっ!」」

 

「っ!?」

 

急に叫ぶ自分の両親に驚いて全身が跳ね上がった際に気と魔力、二つの力をくっつけてしまった。

 

 

カッッッ!

 

 

と一瞬の閃光が発して一誠を包む謎の無透明なオーラ。―――一つの偶然が奇跡を起こした。

 

「一誠・・・・・なんだ、その状態は?」

 

「魔力と気が融合した・・・・・?」

 

「不思議じゃな」

 

謎の現象に誰もが目を疑い、興味深そうに一誠を見やる。

 

「・・・・・一誠、父さんとちょいっと勝負しようか」

 

「ん?分かった」

 

いきなり勝負を申し出る誠に一誠は疑う事も無く誠と対峙して、最初に一誠が動き出した。

 

「っ!?」

 

目を大きく見開いた。誠の前に何時の間にか一誠が懐に飛び込んで来ていた。

侮っていたわけではない。気を抜いていたわけでもない。

一誠の速度、動きを見切れるぐらいなんてことなかった。だが、不思議なオーラに覆われた

状態の一誠は何倍ものの速度で、鋭く突き出された短い腕と共に拳が誠の腹部を貫いた。

 

「(迅っ!)」

 

しかし、誠がその拳を受け流して瞬時に真上から手刀を叩きこんだ。

 

「いだっ!?」

 

「はいっ?」

 

軽く瓦千枚を割ることができるほどの威力の手刀。人型ドラゴンとはいえ、子供の頭は

こんなにも硬かったっけ?と誠を疑問に首を傾げる。

 

「うー、ちょっと痛い」

 

「ちょっと?え、マジで?」

 

「うん」

 

叩きこまれた頭を手でさする一誠が頷く。そして痛みが和らぎ無くなると一誠は

攻撃再開と誠に向けて脚を振るった。当然誠は常識を覆す脚力で空を蹴り浮いた直後、

鎌風が発生して建物の一部を斬った。

 

「はいっ!?なんじゃそりゃ!」

 

「蹴りで、斬撃を放ったですって・・・・・?」

 

「どうやら、鎌風を起こしたようじゃな」

 

冷静に分析した鉄心に一香はギョッと目を丸くした。そんなことが現実的に可能をした

一誠に誠でさえ驚かす体技がまた一つ生まれたのだ。さらに、一誠は誠のところまでジャンプをした。

 

「てやっ!」

 

「あぶねっ!」

 

あの鎌風を起こして放った一誠から蹴りで空を移動し離れる。

だが、一誠がこっちに向かおうとする体勢が見て分かる。まだまだ空を蹴って移動できるほど

一誠は上達していない。故にここまでこれるほど一誠の身体能力は―――。

 

「絶対にそっちに行ってやる!」

 

一誠自身もまだまだ修行が足りないと分かってでも脚に力を籠めて空を、空気を蹴ろうと試みた。

無様な姿を見せても、失敗して地上に落ちようともその気持ちだけは揺らぐことはない。

一生懸命な自分を誰かに見て見返すという思いが一誠を―――。

 

「行くよ!」

 

空気を叩く音と共に一誠は空を再びその足で移動し、誠の腹部に頭突きを食らわせた。

 

「なん・・・・・だと・・・・・!?」

 

目を疑い、自分に初めて一撃を食らわせた一誠に絶句した。

その後、一誠が重力の力によって地上へ落ちようとする気配を察して、

誠は一誠の首に手刀を叩きこんだ。

 

「うっ!?」

 

ガクリと一誠の全身から力が抜け、不思議なオーラも消失して地上に落ちる一誠を

脇で抱え、誠が地上に降り立ったが片膝を屈する。

 

「あ、あなた!?」

 

「つぅー、何て石頭で頭突きしてくるんだこいつは。地味に効いたぞ」

 

「いま、一誠があなたと同じように空を移動したように見えたのけれど」

 

「俺から見ても間違いない。一回だけだったがこいつは空を蹴って俺のところまで来た。

それにさっきの摩訶不思議な現象の効果がなんとなく分かってきた」

 

一誠を縁にまで運んでそこへ寝転がした。

 

「身体能力の向上、いや肉体強化ってところか?それに加速と物理防御だろう」

 

「気と魔力を融合させた形で得る恩恵・・・・・」

 

「魔力も融合している時点で魔法に対する何かも備わっているはず。もしかしたら他にもな」

 

「だとすると魔力を持たない兵藤家、気を扱えない式森家が

一誠と同じことをすれば・・・・・」

 

不意に一香と誠が顔を向けあった。

 

「やってみる価値ありそうだとは思わないか?」

 

「そうね。試してみましょうか私たちも」

 

気と魔力を片手に具現化させ、躊躇も無く二人は二つの力を融合させた―――。


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