HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード11

続いては子供の部。一誠も望んでいない試合に出ないといけない。

誠から神器(セイクリッド・ギア)と魔力の使用は禁止と言われ、

体術か武器で戦うことしか許されない現状に少し溜息を吐いた。

 

「武器の扱い方・・・・・学べばよかったな」

 

「ん?見掛けない顔だなお前」

 

一誠に投げる声の主に振り返ると、一人の子供がいた。黒髪に赤い目の女の子だった。

道着を着て試合に出る気満々を醸し出している。

 

「外から参加して来た子?」

 

「あーうん。多分そんなところ」

 

「そっか。ま、私といきなりぶつかったら遠慮なく殴り倒してやる」

 

「女の子なのにそんなこと言っちゃダメだよ」

 

「試合いなんだ。相手を倒さずどうする?」

 

尤もな意見に一誠はぐうの音も出ない。すると少女は一誠の頬を添えるように摑んで

金色の目を覗きこんだ。

 

「お前、格好良い目をしているな」

 

「格好良い?そうかな?」

 

「ああ、獣みたいでギラギラしている目だ。うん、何かお前は面白そうな奴だ」

 

女の子は手を広げて差し出してきた。ん?と首を傾げていると、

 

「お前、絶対に決勝戦まで勝ち上がって来いよ。そしたらお前と私はその瞬間友達だ」

 

「今じゃダメなの?」

 

「それもいいが、どうせなら拳と拳をぶつけ合ってどっちかが負けたり勝ったりした後の方が

お互い心から分かりあえると思うんだ」

 

「へぇ・・・・・珍しい友達のなり方だね。うん、わかった。じゃあ名前の言い合いも

その後でいいよね」

 

「いや、審判が名前で呼ぶから直ぐに分かるぞ」

 

 

『次、川神百代!』

 

 

「ほら」

 

審判に呼ばれた川神百代。一誠は「それもそっか」と納得し、未だに差しだされている

手を掴んだ。

 

「兵藤一誠だよ」

 

「なんだ、向こうの家の奴か」

 

「ううん。あの家とは関係ないよ」

 

「ふーん?ま、いいや」

 

一誠から離れ、百代はリングに上がって相手と対峙する。百代の戦いを見ようと一誠は一瞬の動作も見逃さない姿勢に入る。そして、試合が始まった。

―――しかし、百代の一撃で相手はリング外まで吹っ飛びKO勝ちで終わった。

 

「・・・・・強い」

 

相手に一礼してぴょんとリングから降りた百代に労いを掛ける。

 

「お疲れ、強いんだね」

 

「何時もこんな感じだ。だけど、もっと強い奴がいるかもしれないから

ワクワクして楽しみなんだ。去年はあっさりと勝ってつまらなかったし」

 

「・・・・・そう」

 

二人が試合を見守る中、消去的に試合が進み、強い者は弱い者をリング外に落とすか、リングでひれ伏させる。弱い者は強い者に食い下がるも最後の運命は敗北。

 

 

『次、兵藤一誠』

 

 

「やっとお前の出番だな。勝って来い」

 

「・・・・・うん」

 

緊張の面持ちで一誠は望まぬ試合をする為、リングに上がる。相手は刀を持っていた。

 

「―――――っ」

 

一誠は相手を見て顔を険しくした。相手はそんな一誠を見て首を傾げると・・・・・。

 

「お前、もしかして俺たちの中で一番弱かった弱虫か?」

 

相手はダンマリする一誠はかつて苛めていた子供であると分かり口角を吊り上げた。

 

「なーんだ!弱虫が試合に出てくるなんてラッキー!この試合、僕の勝ちだね!」

 

固く唇を閉ざす一誠。開けば相手になんてことを言うのか分からないし、

自分をバカにする相手に何を言われようと決して怒らないとリーラと約束をした。

したから、一誠は悔しくても、怒りたくても我慢をし、拳を構えた。

そして、試合開始のゴングが鳴った。

 

「弱虫!アレから強くなった僕の剣術でまた練習台になれよ!」

 

駆けだす相手。一誠はただただその様子を見守るだけで微動だにしなかった。

 

「―――一誠!最初は相手の動きを見て、かわし続けてみろ!」

 

急に聞こえた誠の声。一誠は返事をせず、その通りに相手の動きを見極めることから始めた。

上段から、下段から、斜め前、突き、薙ぎ払いを繰り返す相手の動きを紙一重で避け続ける。

 

「(朱乃を狙った男の人のより・・・・・遅い)」

 

今の目の前の相手の刀の振るい方は朱乃を狙ってきた襲撃者より月とスッポン―――いや、

それ以上の違いが明白だった。

 

「このっ!このっ!何時までも避けているんじゃねぇよ!弱虫のくせに!」

 

相手は自分よりも各下であると疑わず、勝利を確信していたのに掠りもしないことで

焦心に駆られ、振り方も雑になってきた。そして刀を大きく振った直後、

 

「一誠殴れ!」

 

「っ!」

 

一誠の左拳が相手の顔面に深く突き刺さった。拳を戻して相手の様子を窺うと、

 

「―――うああああああああああああんっ!痛い、痛いよぉぉおおおおおおおっ!」

 

たったの一撃で相手は手で顔を覆い泣きわめき始めた。

審判は戦闘の続行は不可能と判断したのだろう、

 

「勝者、兵藤一誠!」

 

一誠に勝利宣告を告げたのだった。

 

「・・・・・僕、勝ったの?」

 

信じられないと唖然としていた一誠の身体がふわりと浮きあがり、

リング外よりさらに外の観客先まで浮かされた。

 

「やったじゃねぇか一誠!」

 

「偉いわよ一誠!」

 

誠と一香に抱きとめられ、嬉しそうな顔をする自分の両親を見た一誠も次第に笑みを浮かべた。

 

「よしよし、良くやったな一誠。タンニーンとの修行は無駄じゃなかっただろう?」

 

「初めての戦闘であるのに最後まで冷静に戦えた。それが勝利に繋がったんだ」

 

「頑張ったな、一誠くん」

 

アザゼル、サーゼクス、バラキエルも一誠に労をねぎらい、

下に降ろせばリアスたちも称賛の言葉を送った。その様子を見ていた百代が、

 

「・・・・・よし、万が一に思ってあいつがもしも私に勝ったら・・・・・」

 

と、意味深な言葉を発し、次々と行われる試合を眺めた。百代と一誠も試合に勝ち進み、

ついには二人があと一試合で勝てば決勝戦にまで上り詰めた。百代の相手は―――兵藤誠輝、

一誠の相手は―――兵藤照。初めは百代と誠輝の試合が行われた。

誠輝相手に百代は今まで戦ってきた相手よりも強いと思った。

試合が始まって数分ぐらい時間が経つと。

 

「秘密兵器を使ってやる!」

 

誠輝が左手を前に突き出した瞬間、光が発生して誠輝の左手に籠手が装着した。

『Boost!』と音声が流れると誠輝から感じる力が増大した。

 

「父さん、アレいいの?」

 

「この試合にアレを使ってはいけないルールはないからな」

 

「でも、僕は使ってはいけないって言ったじゃん」

 

「一誠の神器(セイクリッド・ギア)はな?他の神器(セイクリッド・ギア)よりも強力で

あっという間に相手を倒してしまうんだ。そんな強力な力だけ振るっても本当の意味で

強くならないんだ。頼っていた力が無くなると実力が一気に半減する。

だから一誠は体術だけで勝ち進まないといけないんだ」

 

それでも一誠は何か言いたげな目で誠に向ける。苦笑を浮かべ、リングの方へ誠は差した。

 

「それに一誠、アレを見ろ」

 

「ん?」

 

 

ドガッ!

 

 

「どんな強力で強大な力を持っても、使っても戦い方一つで勝敗が決するんだ」

 

百代に殴られリング外にまで吹っ飛ばされた誠輝に目を丸くした一誠。

 

「分かったな?神器(セイクリッド・ギア)は万能な力じゃないんだ。戦い方や状況次第で

負ける時もある。お父さんもお母さんもそんなことは何度も経験して、強くなったんだ」

 

「・・・・・父さんの言う通りにする」

 

「よーし、良い子だ。ほれ、次はお前の番だ」

 

背中を押されリングへ。一誠の相手は堂々とした立ち振る舞いで上がってきた。

 

「よぉ、弱虫。見ない間に随分と強くなったようだな?」

 

「・・・・・」

 

「あんまり調子に乗ると痛い目に会うぜゴラ」

 

照は一誠に挑発、威圧を掛ける。一誠は照の言動に無言で見詰めるだけで何も言い返さない。

―――ただし、獣みたいな垂直のスリット状の金色の双眸はギラギラと輝いて

獲物を捉えている鷹の目みたいになっている。

 

「生意気な目だ。それに何だ、イメチェンか?」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・ダンマリかよ弱虫がよっ!」

 

試合開始のゴングが鳴った瞬間。照が凄い勢いで一誠の懐に飛び込んだ。

下からうねりを上げる拳が一誠の顔面に迫った。

豪快に空気を切る音が紙一重でかわした一誠の耳に届く。

 

「お前の行動パターンはもう分かってるんだよ!相手の動きを読み、見慣れてから攻撃してくるんだよな!」

 

その通りだとばかり、一誠は照の繰り出される攻撃をかわし続ける。しかし、照という

相手は今までの相手とは違っていた。

 

 

ガシッ!

 

 

「捕まえたぁ・・・・・」

 

「っ!」

 

「こっからはサンドバックになる時間だ。覚悟は良いな?」

 

照は一誠の胸倉を掴んでそう言うなり一誠の顔面に拳を突き刺した。普通の人間であれば、

例えどんなに過酷な修行をして鍛えても怯みはする。激痛で隙を作る。

そうなれば攻撃はより当て易くなるものである。

 

「・・・・・あ?」

 

ただし―――!

 

「お前の攻撃なんて、ドラゴンが吐く火炎球より全然大したことがない」

 

一誠の顔面に照の拳が直撃していたらの話だ。一誠の右手が照の拳を受け止めていた。

その状態でギロリと一誠が照を零距離で睨みつけた。背筋を凍らす照。

目の前にいる弱虫は人間じゃない。あの弱かった弱虫がこんな目をしていなかった。

こんな睨みつけながら笑みを浮かべるような奴じゃなかった。

そして―――こんな力強く手を握るような奴じゃなかった。

 

「リーラさんや父さんたちには色々と言われて約束している。でもその代わりに」

 

ゴッ!

 

「僕を散々虐めてきた、バカにしてきたお前ら兵藤家の奴らに今の僕の強さを

思い知らせてやる!」

 

照の顎を下から突き上げ宙に浮かせた。その瞬間に鋭く右の正拳突きを放って吹っ飛ばした。

リングの上で滑りながら倒れる相手に一誠はゆっくりと近づく。

 

「立ってよ、強者」

 

「う・・・・・ぐ・・・・・っ」

 

「・・・・・」

 

敵意、怒りが籠った金色の双眸が照を射抜く。フラフラと立ち上がって激痛で歪む顔と

全身で息をする照。

 

「辛そうだね。大丈夫?なんて心配はしないよ。

だって、キミは僕を虐めた時は笑っていたし助けてくれなかったもんね」

 

「い、虐めたぐらいで・・・・・そんなに怒るのかよ・・・・・っ」

 

「・・・・・じゃあ、今からキミを虐めてもキミは絶対に怒らない?」

 

「なんっ・・・・・!」

 

照の顔面に拳が突き刺さった。

 

「こんな風に、キミは僕を虐めたね」

 

「がっ・・・・・!」

 

顔を両手で押さえ痛みに悶える照を見据える一誠。

その隙に照の腕を掴んでなにをするのかと観戦客は思ったところで、

 

ドンッ!ゴンッ!ガッ!

 

子供でありながら軽く照の身体を振るい上げ、何度も何度もリングに叩き付けた。

それを一誠は五回ほどそうして、

 

「よいしょっと!」

 

最後は投げ放ってリングに何度もバンドし、観客に向かって突っ込んだ照。

 

「・・・・・ちょっとスッキリしたかな。―――まだ、僕を苛めた奴らはいるしね」

 

その呟きを聞こえた兵藤家の子供たちはビクリと身体を震わせた。

今度は自分たちの番かもしれない、あいつに苛め返させられる。

そんな兵藤家の子供たちの心境を知らない一誠は審判から勝利宣言を受け、特に喜ばず

 

「弱いと言って僕を苛めた皆。驚いた?」

 

一誠は兵藤家に向かって訊ねた。

 

「僕はこの一年間、僕を苛めた兵藤家に見返そうと一生懸命頑張って強くなったよ」

 

現実的にそれを可能としてまずは一歩、その目標の足を進めた。

 

「次は何時か、大人のお前たちにも見返してやる。その時を待ってて首を洗っていてね」

 

兵藤家に宣戦布告をし、リングに上がってきた百代と対峙する。

 

「それじゃ、勝負だよ」

 

「ああ、私と同年代で強い奴がこんなにもいるなんて嬉しい。特にお前が一番強そうだ」

 

「まだまだ弱いよ。だからこのお家にお世話になってもっと強くなるんだからさ」

 

「ははっ!じゃあ、この家で暮らすんだな?嬉しいな、だったら罰ゲームを決めよう」

 

百代は笑みを浮かべながらビシッと一誠に指差す。

 

「お前が負けたら私の弟になれ。舎弟だ」

 

「僕がお兄ちゃん、じゃダメ?」

 

「それはお前が私に勝てたらいいぞ」

 

「ん、分かった。絶対そうする」

 

拳を構え、百代に戦う意思を窺わせる。百代も楽しげに拳を構えた。

そして、二人は―――どちらからでもなく蹴り出して、互いに向けて拳を突き出した。

 

 

 

 

「いやー、啖呵を切るほど成長したとは。父親としてこの上にない嬉しさだ!」

 

「立派に強くなっちゃって・・・・・」

 

「兵藤家の奴ら、悔しそうな顔をしてた奴もいたな。はっ、良い気味だぜ」

 

「あなたと一誠、兵藤家との間に深い溝ができたんじゃないの?」

 

「いいよ別に。顔を出す程度だし、慣れ合う気なんてねぇーよ」

 

「そう、あなたがそう言うなら私は何も言わないわ」

 

「ははは、この事、これから行く神ンとこで自慢してやろうっと!」

 

 

 

 

「サーゼクス、あいつはもう強くなったな」

 

「ああ、リアスが熱い視線を向けていたほどだ」

 

「眷属悪魔にしたがるのではないか?」

 

「有り得るね。だけど、あの子は悪魔なんてならないと思うよ。

というより私個人的にそれはお勧めしたくないな」

 

「ほう、その心は?」

 

「誰かと結ばれた方が後々の為にいいじゃないかとは思わないかね?」

 

「・・・・・なるほど、彼との間に強い子供が誕生すると言うことか」

 

 

 

 

 

「おい、ジジイ。あの小僧、俺に任せてくれや。百代同様、俺が鍛えてやりてぇ」

 

「釈迦堂!お前に任せたラ、あの子は乱暴な子になル!」

 

「んじゃ、俺たちも勝負すっか?俺は大歓迎だぜ」

 

「これこれ、じゃったらお主ら二人が交互に面倒見ればよかろうて。あの子はお主らの

どちらも相性が良さそうじゃからの」

 

「・・・・・ちっ、しゃーねーな」

 

「総代の提案であの子を育てよウ」

 

 

 

 

「百代、これからもよろしくねー」

 

「一誠、次は絶対に勝つからな」

 

「それは僕だってそうだよ。あんな結果で終わっちゃったし、納得していないでしょ?」

 

「うん、だけど・・・・・悪くないと思っている。引き分けだけど力を出し切った感じが清々しい」

 

「僕は本気を出しきれなかったよ。リーラさんに止められているし」

 

「なんだと?だったらもう一回勝負だ!今度は全力で!」

 

「うわっ!リーラさん、助けてっ!」

 

―――○●○―――

 

兵藤家と川神家の交流試合は終了した。一誠たちは兵藤家と隔てるように

特別な者、川神院の者しか入れない一室で身を寄せ合うように集まって昼食をしていた。

 

「どーだ一誠。お父さんは凄かっただろう」

 

「うん、凄かった!空を蹴るなんて初めて見たよ!」

 

「ははは、気合でやれば案外何でもできるんだぜ?一誠も練習しながら成長すれば絶対にできる。

頑張れよ」

 

「頑張る!」

 

「魔力無しで人間が空を移動できるたぁ、恐れ入ったぜ」

 

「人間、不可能を可能にする・・・・・か」

 

「だからこそ、英雄や勇者という者も現れる。誠もその類に零れないのだろう」

 

川神院から提供された昼食を食べつつ雑談。一誠はリアスたちから食べさせられたり、

構ってと話しかけられたりされ、忙しなく相手をしていた時に扉が開いた。

全員が誰だ?とばかり開いた扉に視線を向ければ厳つい中年男性が入ってきた。

 

「なんだ、親父か」

 

「ふん、兵藤家の中でも選り抜きされた者たちを一蹴するお前に祝いの言葉を持ってきたぞ」

 

「・・・・・あいつらが?おいおい、昔の先生たちの方が強かっただろう。あの人たちはどうしているんだ?」

 

「隠居中だ」

 

「マジで?通りで見掛けなかったわけだよ。ま、先生たちと戦っても俺が勝つだろうしな」

 

不敵に笑む誠。厳つい中年男性は戸を閉めてその場で座り込む。

 

「誠、一つ訊くぞ。世界にはどれだけ強い者たちがいる?」

 

その言葉と共に真剣な表情で問われ、鼻を鳴らして誠は答えた。

 

「兵藤家なんてちっぽけだと思うほどの数がいる。その中には勿論神話体系の神々も含めてな」

 

「・・・・・そうか」

 

「なんだ、豪胆な親父にしちゃらしくない質問をしてくるな」

 

不思議に思った誠が厳つい中年男性を見詰める。自分たちが最強とか言わないが、

誇りは人一倍、いや三倍は持っていた。そんな自分の父親を見ていると、

 

「今兵藤家は荒れていてな。追放された兵藤家の者がなぜあんなに強いのだと水面下で

混乱しているのだ」

 

「はっ、自分が最強と自惚れていないのはいいとして、そりゃ世界中の強者と戦わず、

身内しか負けたことが無いんじゃ成長しない」

 

誠の手は一誠の頭に置かれた。

 

「一誠も兵藤家で修行しても強くならなかった。親父、いや―――兵藤源氏。分かるか?

こいつは兵藤家の奴らに散々虐められ、孤立していたから強くならなかったんだ。

だけど、今の一誠には弱かった時の一誠に無かった掛け替えのないものを得ている」

 

「・・・・・それはなんだ?」

 

「―――出会い、そして友達や仲間だ」

 

ハッキリと誠は自分の父親に、兵藤源氏に言い切った時、悠璃と楼羅が一誠に抱き付きながら

異議を唱えた。

 

「私と楼羅は最初からいっくんの友達だよ」

 

「そうです」

 

「はは、そうだったな。お前らには一誠を支えてくれて感謝しているよ。

じゃなきゃ、一誠は完全に心を壊れていただろうし」

 

主張する悠璃と楼羅の少女たちに朗らかに感謝する。

 

「「だから―――」」

 

リアスたちにも目を向けた悠璃と楼羅の二人は、

 

「「絶対に負けないから」」

 

宣戦布告とも言える悠璃と楼羅の言葉にリアスたちの目に恋する乙女の炎が宿った。

 

「さて、話も聞けたからお暇させてもらおう」

 

兵藤源氏は腰を上げて、誠たちに背を向けた。

 

「問うが、もしも兵藤家に戻れるとしたらお前はどうする?」

 

「断固拒否だ。あんな堅苦しい家と一族よりも、一家族として自由に暮らし世界を

見渡せる生活が気に入っているんだ。世界は親父が思っているよりも小さくもないんだぜ?」

 

「・・・・・ふん、そうか」

 

特にそれ以上は何も言わず、兵藤源氏はいなくなった。

 

「・・・・・お父さん、兵藤家に戻らないの?」

 

「一誠は戻りたいのか?」

 

「いやだ」

 

「だろう?俺だって嫌だぜあんな家。こんな面白い世界があるなんて知ったら家に帰りたく

なくなるんだ。兵藤家に戻れば自由な生活はできない。そんな生活は嫌だろう?」

 

直ぐに一誠は頷いた。一誠にとっても、色んな人や生物と出会えることができたのは

誠と一香のおかげだ。それができなくなると思うと、帰りたくなくなるのも分からなくないのだ。

 

「しっかし、さっきから聞くけど。お前、兵藤家に追放されるほどなんかやらかしたのか?」

 

「別に?ただルールを破っただけだ」

 

「思いっきりやらかしてんじゃないか。で、何をしたんだよ?」

 

「いや、一香と結婚したぐらいだ。だから一香も式森家から追放されたわけだがな」

 

「人族の代表の両家が結ばれてはいけないとはおかしな話だね」

 

「その理由を教えられているから納得できるんだけどな。

だが、敢えて俺は他の女より、一香と結婚したんだ。自ら家を出てな」

 

「理由か・・・・・それはなんなのだ?」

 

バラキエルの訊ねに、「それは秘密だ」と誠は明かそうとしなかった。

 

「・・・・・」

 

不意に一誠が立ち上がった。しかもリーラを連れてどこかに行ってしまった。

そんな一誠の行動に誰もが疑問を浮かべた時だった。扉が再び開いたと思えば、

 

「父さんと母さん、久し振り!」

 

誠輝が部屋の中に入って来て誠と一香に抱きついたのであった。

 

 

 

 

「・・・・・一誠さま」

 

「・・・・・会っちゃうと、殴っちゃいそうだから」

 

「・・・・・偉いですよ。一誠さま・・・・・時には我慢も必要なのですから・・・・・」

 

「・・・・・うん」


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