HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード65

『世間を騒がせたテロリストは捕縛され冥界の刑務所へ送還されてからかれこれ16日と過ぎました。しかし、政府は主犯格の人物であるテロリストのリーダーと思しき無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィス、真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)グレートレッドによって転生した兵藤一誠の身柄を冥界の政府に要求をし続けております。どうしてなのでしょうか?生物研究科のジゲールさん』

 

『そうですねぇ。最強のドラゴンと不動のドラゴンの恩恵で転生した唯一の転生ドラゴンであります。しかも彼の天皇兵藤家の親族である。もしかしたら兵藤家に取り込んでドラゴンの血や力を求めておるのかもしれませんな』

 

『求めているということは人とドラゴンのハーフを作ろうとしているのですか?しかし、兵藤家は過去から現代まで異種族の遺伝子を拒んでいましたが』

 

『いえ、兵藤家と式森家が誕生した理由は魔人という種族と人間のハーフから成り立っておりますよ。つまり元から異種族の血を流しているので、ドラゴンの力を欲しているのであれば―――』

 

そこで、テレビの画面はブラックアウトしました。私のお父様、魔王フォーベシィの手に有るリモコンで電源を切ったからです。

 

「やれやれ、イッセーちゃんのことを知らない人間は性質が悪いね」

 

「パパ、実際のところはどうなのですか?」

 

「日本の政府からイッセーちゃんの引き渡し要求は来ているよ。他の魔王とか冥界の政府にまでご丁寧に送っている」

 

魔王の妻でもあり、メイドのお母様は今日もメイド服を身に包んでお父様の身のお世話や家事など頑張ってしておられます。私も・・・・・もう少しお料理ができるようになれば・・・・・。イッセー様に食べさせることができますのに・・・・・。

 

「それで、どのように返事をしているのですか?」

 

「重要参考人として冥界で聞き取り調査を入念に行っている。引き渡しを求めるなら五代魔王と政府の了承を得手からにしてほしい、と返してるよ」

 

「そうですか。それは無理な話ですね」

 

お父様と同じ魔王様方の了承も得る必要となると、世界のトップ同士の会談をしなくてはいけないのかもしれません。イッセー様の存在が世界の問題に発展するほど凄い御方になられていようとは・・・・・。

 

「さて・・・・・今日はそのことで各国の首脳や幾人かの他の神話と会談をする日だ。行ってくるよ。良い子で待っててねネリネちゃん、リコリスちゃん」

 

お母様と一緒に魔王としての仕事をお勤めになさられるお父様を見送ることしかできないリコリスと不安と遣る瀬無いこの気持ち・・・・・何かできるはずなのに、いざって時に行動ができない自分にくやしいです。

 

 

 

 

英雄派の首領と言われている兵藤一誠のしわ寄せは兵藤家にまで届こうとしている。しかし、そんなことよりも兵藤家では重大な日と迫っている。

 

「「・・・・・嫌です」」

 

「悠璃、楼羅・・・・・」

 

「「兵藤家の男と以前に、私達はもう決めたヒトがいます。お見合いなんて断固拒否」」

 

年頃の娘、しかしお見合いなどまだ早い歳で行おうとしている兵藤家の掟を一誠に恋している少女二人が父親の顔をそっぽ向いて拒否や否定の雰囲気を醸し出している。拒否する少女達に硬い表情で俺の親父は説得を試みている。かれこれこの話は五分も続いている。

 

「しかしだな・・・・・兵藤家の元当主の娘ならば、お見合いをするのは当然のことなのだぞ」

 

「いっくんがいいです」

 

「一誠様がいいです」

 

「・・・・・あの子は世間ではテロリストの主犯の一人と認識されている。兵藤家の名誉と権力でも、お前達と結婚させることはできない。それを理解―――「「できません」」・・・・・羅輝!お前からも何とか言ってやってくれ!」

 

もう聞いてくれないこの娘達は!と・・・・・なさけないなクソ親父よ。

 

「あらあら・・・・・困ったわね」

 

「お袋。この二人のお見合いはもう決定してんのか?」

 

頬に手を添えて困ったように眉根を寄せる母親に聞けば「一応は」と答えた。そうか、決めているのか。だが、この二人を納得させるのは色々と覚悟が必要になるぞ。

 

「正式にはまだよ。でも、候補は兵藤家の中でも何人か決まってるわ。特に力のある者を優先的にね」

 

「というと・・・・・誠輝なのか?二人のお見合い相手になるのは」

 

赤龍帝を宿す男と結ばれれば強い子孫が産まれる可能性はある。ドラゴンの力の影響で宿している張本人にも恩恵が与えられているからな。

 

「だけど、俺は親父とお袋の血を受け継いで、俺は一誠と誠輝という息子が恵まれた。でも、二人の間には俺以外にこの二人を産んだ。・・・・・これって結構関係がやばいんじゃないのか?」

 

「近親婚は兵藤家も式森家でもしてるわよ。血を絶やさない為にもね」

 

あー、さいですか。んで、烈火のごとく。誠輝とのお見合いを嫌がる悠璃と楼羅・・・・・・気持ちは分からなくはないが・・・・・うん。

 

「世の中はそう簡単に事が進むわけじゃないんだよなぁー。俺的にも一誠と結婚させたいが・・・・・世界と世間が・・・・・

 

「世界の目なんて潰します」

 

「世間が邪魔なら葬るまで」

 

・・・・・親父、どう育てたらこんな物騒な事を言う娘になるんだよ。誠輝と違った意味で暴力的っぽいぞ。

 

「二人とも、私達の息子はともかく他の男の子と少しぐらい話を―――」

 

おお、そうだ。一香、良いこと言った!

 

「「下半身で物を言わせるような性欲の塊と話をしたら孕まされます」」

 

・・・・・無理だっ!この二人、説得なんて無理!おーいっ!一誠、お前がどうにかしてくれよぉーっ!?

 

「・・・・・俺と羅輝に似つかない性格に育ってしまったぞ・・・・・無念」

 

「誠の息子の影響が凄まじいのよ貴方。もう、この二人を説得するのは骨が折れるわ。断わってもいいからお見合いをしてなんて言ったところで、顔を直視しないどころか、罵倒が飛んできそうよ」

 

ああ・・・・・難しくない未来予想図が見えてしまったよ。

 

「お父様。これ以上私達にお見合いの一言でも言ったら・・・・・・」

 

「おじ・・・・・兄さんのように兵藤家から飛び出してでもいっくんと結婚するよ」

 

「んなっ・・・・・!?」

 

つまり、俺みたいなことをするってことか。おー、二代目の誕生か!というか、悠璃。俺のことおじさんと呼ぼうとしなかったか?戸惑うのは分かるが俺はまだおじさんの年齢ではないぞ(精神的な意味で)!

 

「面白いな。俺は大賛成だぞ」

 

「貴様っ!バカな事を言うな!あんな突拍子で破天荒な事はお前だけで十分なのだぞ!」

 

食って掛かるなって。というか、高が家を飛び出した程度で大騒ぎになるなよ・・・・・。

 

「親父、人はこう言うぜ。愛さえあれば何だって不可能を可能にし、何でも許されるんだってよ」

 

「どこの迷信だっ。俺は許さんぞ絶対に!」

 

何たることだっ。禁じられた愛を許してくれないとは!ほら、目に涙が浮かんで今にも泣きそうだぞ!

 

「酷いっ!俺と一香の愛を許してくれないんだねお父ちゃん!」

 

「気色悪いわぁああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

 

ドンガラガッシャーンッ!と卓袱台返しをして殴りかかって来たクソ親父と久々に身体を張った喧嘩をする!

 

「まあ、あの二人は放っておいて。二人とも。これは兵藤家の者として逆らえない行事なのですよ。お見合いが嫌でも兵藤家の未来が懸っているのです。私達の娘として恥ずべき言動は許しません」

 

「「・・・・・」」

 

「断わってもいいですから。ちゃんとしなさい。いいですね」

 

「「嫌」」

 

「・・・・・」

 

最後まで断固反対とお見合いすらしたくないと突っぱねる二人に「あの子からも言ってくれないかしら」と冥界にいる少年に溜息を吐くお袋。

 

 

全世界に侵攻した巨大魔獣、英雄派の壊滅、冥界のアグレアスの奪取。一日で起きた壮絶な事件は希望と絶望が織り交ざったものの、明日を迎えた者達。この時を以って世界は変わろうとしていた。良い意味でも悪い意味でも。

 

「リゼヴィムさま。それは?」

 

「んーふふふっ。レーティングゲームの存在意義を許し兼ねない駒さ。協力者からちょっとだけ借りてさぁ?これで冥界のお爺ちゃんたちを揺さぶって快く協力してもらいたいかなーって思っているんだよこれが」

 

「そのついでにレーティングゲームのトップランカーたちを裏から操ろうと?」

 

「―――うひゃひゃひゃっ!ユーグリットくん、面白いことを言いだすねー?いいねそれっ!採用だぁ。流石に坊ちゃんの父ちゃんと母ちゃんも全員を相手にしたらてこずるだろうねっ!」

 

「ではその際、私に赤龍帝を用意して貰えないでしょうか?」

 

「あん?あの坊ちゃんより価値のないよわっちぃ赤ちゃんを?仲間に入れるってんなら俺は反対だぜぃ?」

 

「本人はともかく、『赤龍帝』は色々と使えますよリゼヴィムさま?」

 

「・・・・・ぐふふっ。うん、そうだねー。外見はともかく中身は有能だよねー?そこまで頭が回らなかったよユーグリットくん」

 

「あなたの『悪魔』を私に魅させてくださいよリゼヴィムさま」

 

「おうっ!期待してくれていいぜユーグリットくんっ!うひゃひゃひゃっー!」

 

 

 

「お父さん、お母さん。私・・・・・二人を助けてくれた人たちとその子供と話してみたい」

 

「急に、どうした?」

 

「お父さんたちを助けた人たちの子供が悪い子とは思えなくて・・・・・」

 

「・・・・・お前が心配するほど、あの子は悪人じゃない。何度も近くで見た俺が分かっている」

 

「だけど困ったわね。会わすことは難しいわよ?」

 

「・・・・・あの方たちに頼めば会わせてくれるだろう。それでも会えない可能性はあるが、行きたいか?」

 

「行きたいわ」

 

 

「くそがッ!全然こんなんじゃ足りねぇっ!」

 

大人や同世代の子供が揃って地に平伏し、死屍累々と化していた。この凄惨の元凶、鎧を纏っている赤龍帝の誠輝は憤怒の形相で拳を握り、満足のいく達成感・・・・・100人一斉に相手をしても思った通りにはいかず、苛立ちを口にして地団駄踏む。

 

「俺のどこが駄目なんだっ!?俺は赤龍帝だぞ、兵藤家の大人や同世代の中じゃ俺が最強だぞ!なのに、なのにどうして俺は後れを取られ、負けるんだドライグ!」

 

己に秘めている力の源に訴える。誠輝の言葉に宝玉が点滅し出す。まるで答えを応じるかのように音声が発生する。

 

『だからではないのか』

 

「んだと」

 

『相棒が今まで相手にしてきた者達以外、誰と戦って勝ってきた?』

 

問うようにドライグは誠輝に語る。

 

『同じ者と戦って勝利しても相棒の成長にはならない。相棒の見る視野が狭い限り、本当の強さなど得られん』

 

「――――っ」

 

『それに比べ兵藤一誠は世界を知り、己を知っている様子。様々な出会いをし、様々な危険に遭い、様々な経験をしてきた。その結果が今の兵藤一誠という者がいるのだ』

 

違いの差を突き付けられ、どうしようのない怒りが身を焦がす。最初は弱かった者が今では最強の部類に成りそうなほど力を身に付けている。何が違う、何が正しい、何が―――足りないのか。奥歯を噛み締める誠輝はこの場にいない者に対して嫉妬と怒り、憎悪―――若干の羨望を向ける。

 

「あの化け物と俺の違いと差が・・・・・ここまで違うってのかよっ・・・・・!」

 

『環境がそうさせているのだろう。世界を渡り、神や伝説、有名な者達と触れ、師を仰いでいる。天と地の差以上の恵まれた環境と過酷な状況の中でにいたはずだ』

 

「なら、俺だって神に鍛えられりゃあっ・・・・・」

 

『相棒に知り合いの神がいたか?いや、皆無に等しいだろう』

 

皆無―――。現実を認識させられる誠輝は「うるせぇっ!」と宝玉に向かって叫んだ。

 

「そもそもドライグ。お前の力はこんなもんじゃないはずだっ。なのにどうして力を俺に寄越さない!?」

 

『俺は封印される際に本来の力も封印されている。それ以前に俺の力を完全に使いこなすには相棒次第が大きい。相棒の成長と環境に応じて新たな力が手に入る筈だ』

 

「覇龍だって、使えるようになってもかっ」

 

『龍化した兵藤一誠にあっさりやられたがな』

 

龍化、ドラゴンに成る変化。一誠自身もドラゴン故に龍化ができる。誠輝のプライドを刺激された。人間とドラゴン、どっちが強いかなど力を求める者の考えと違い次第で意見は分かれる。

 

「・・・・・俺もドラゴンになりゃ、今より強くなれんだろうな」

 

『・・・・・止めておけ。身体だけでなく心までドラゴンになってしまえば、もう元には戻れない。力の代償はあまりにも大きい。ただ強さを求め、その後に何が残るのか・・・・・俺は知っている』

 

ドライグの声音に感情が籠っていない。今の生活や環境など全て自ら壊すような考えを言う誠輝に制止の言葉を掛けた。人の身で生きていく幸せを手放すなど止せと。

 

『ドラゴンになるより、相棒が通っている学校に強者がいる。己を高めたければその者達と戦った方が―――』

 

「・・・・・くくくっ。そうだ、どうしてこんなことを今まで気付かなかったんだ」

 

しかし、誠輝の中で邪念を抱いていた。誠や一香すら気付かない誠輝の心境に。

 

「―――おいドライグ。俺の言うことを従え」

 

 

 

「おい、これで何度目だ?他の連中に八つ当たり気味で特訓と称したアレはよ」

 

「よほど自分の弱さに堪えたんじゃないか?覇龍(ジャガーノート・ドライヴ)でも倒せなかったからよ」

 

誠輝の言動を遠くから兵藤達が呆れ、嘲笑、興味なさそうに見ていた。後で後始末を押し付けられそうだなと思いつつ会話を続ける。

 

「まあ、自分の弱さに堪えたのは私たちもそうだけどね。自分の弱さを突き付けられたもの。それと気付いている?兵藤家と式森家の大人たち。国会議事堂の破壊を許しちゃってから世間を敏感に気にするようになってるわ」

 

「私たち次世代の兵藤家と式森家にもしわ寄せは確定ね」

 

「あー、嫌だ嫌だ。それは大人の責任だろう。どうして僕たちまで・・・・・」

 

嘆息し、傍迷惑な事だと落胆する。それは他の面々も同じ心情だった。

 

「俺達は他の人間とは違う、期待される側に立つ者は常に理不尽なことに巻き込まれるものさ」

 

「でもよ。それぐらいで良かったんじゃね?もしもあの兵藤一誠が兵藤家だったら確実に兵藤家はヤバかったはずだぜ」

 

「だな。いなくて良かったぜ!」

 

テロリストに成った一誠は兵藤家だけでなく、世界でも否定的になるかもしれない。

 

 

「・・・・・イッセー、お前、まだここに留まるつもりなのか?」

 

「言ったはずだ。俺は自ら英雄派になったんだ。犯した過ちを少しでも償いたいんだ」

 

「責任感を感じるのは良い。だがな、お前を待っていて心配している連中はどうする」

 

「・・・・・もう少し、もう少しだけ待っていて欲しい。それしか言えない。俺はまだ光の下にいてはならないと思う」

 

「そんなことはない。お前のおかげで救われた奴だっているんだ。そいつらのことも考えてだな・・・・・」

 

「違う、俺が表にいないことで表舞台に現れるようになるまだ見ぬ敵が現れるかもしれないんだ」

 

「・・・・・誰なんだ?」

 

「わからない。でも、俺がいなくてもクロウ・クルワッハたちが何とかしてくれる。俺より強い家族がそこにいる。それでも何かの対処をし切れないなら・・・・・俺たちを呼んでくれ」

 

「・・・・・まったく、お前は頑固だな」

 

「自覚しているよアザゼルおじさん。皆のこと見守ってくれ、俺の代わりにしばらくさ」

 

「ったく、しょうがねぇ・・・・・ああ、まったくしょうがないなお前ってやつは」

 

 

「―――で、結局説得できなかった。だから、そのレプリカのグンニグルを突き付けんのは止めろよなぁッ!?」

 

とてつもない力のオーラを今でも放たれてもおかしくない槍を絶対零度の視線を送る琥珀の双眸、結い上げた銀の長髪のメイドに焦燥で叫ぶ堕天使の総督アザゼル。

 

「アザゼルさまだけ一誠さまとお会いしていた、それが許せないだけです。説得など、期待などミジンコの大きさ以前も期待はしていませんので」

 

「お前も行けばいいだろがっ!?フォーベシイに頼めばイッセーと会えるっ!」

 

「―――来るなと、一誠さまから通信式魔方陣で言われました」

 

ああ、お前は何をやっているんだとアザゼルは項垂れる。日に日に増してリーラの欲求は高まる一方である。帰ったら一誠は冥界へ自ら向かってどうやって知ったのか曹操たち英雄派が収容されている場所へ行っていて、自分の意志で曹操たちと留まるようになった。それを知ったリーラたちは当然驚愕してフォーベシイに頼んで迎えに行こうとしたが、一度収容されたらしばらく魔王でも簡単に釈放はできないと半ば脅され気味で答えたフォーベシイ。

 

「お声だけでは、私は・・・・・私は・・・・・満足できません。あなたのお傍にいたいのですよ一誠さまっ」

 

「大丈夫だ。あいつからお前たちを見守ってくれと頼まれた―――」

 

「あなたに見守られるぐらいなら、私はアザゼルさまの顔をヒキガエルのように整形して池に沈めてさしあげます」

 

「・・・・・(ぐすんっ)」

 

ついに大の大人が部屋の隅で膝を抱えて背中を丸め、いじけ始め出した。そのやり取りを見ていたクロウ・クルワッハたちは溜息を吐く。

 

「もうっ!男ってどうして何かに拘っちゃうのよ!?」

 

「自分を許せないからだろう。少なからず私たちと敵対したからな」

 

「でも、それは・・・・・っ」

 

「本人も自分から英雄派に入ったって言っているから・・・・多分、そのことを」

 

「はぁ・・・・・恋しいわ・・・・・」

 

「それは私たちも同じですよ。ですが、このままではいけないのも事実です」

 

「わかっています。ですが、世間でも一誠さまのことは・・・・・」

 

「難しいものだな・・・・・」

 

揃いも揃って嘆息する。世間は完全に一誠を悪人扱いしている。そして、今でもこの家をお茶の間に放送されているほどに。よりにもよってあの巨大魔獣は英雄派の仕業であると言い張る物たちまで出る始末だ。

 

「・・・・・もう、この世界はイッセーくんを」

 

「それ以上言うなイリナ。・・・・・辛いだけだ」

 

暗いムードに包まれる。たった一つの言動で人の人生は変わり、歪み、狂う。もはや、一誠を味方する世界はなくなっているのだった。人は良くも悪くも様々な思いを抱いてしまう。それも善悪を判断して。

 

―――○●○―――

 

冥界の辺境にある刑務所に居座っていると色んな悪魔や堕天使達が一日に三度以上来る。大半は見知ったヒト達だが、今回もそうだった。その人物は以外にも・・・・・フェニックス家の三男坊である。悪メンのホストな風貌は相変わらず、魔力を封じる枷(俺から頼んだ)を手首に拘束している俺と対峙して椅子に座ったまま視線を向けてくる。

 

「リアスの婚約以来か・・・・・久し振りだな」

 

「・・・・・」

 

ライザー・フェニックス。ただ俺を睨むように見つめてくるだけで口を開こうとしない。面会も時間制限がある。話がないなら帰って欲しいところだ。顔を、様子を見に来ただけか・・・・・こいつのことはよう分からん。

俺から話しかけても返事をしてくれなさそうな雰囲気だし。さて・・・・・男に熱く見つめるなんて趣味じゃないし、どうしようか・・・・・。

 

「・・・・・お前」

 

「ん・・・・・?」

 

「こんなところで落ちぶれるような奴じゃないはずだ。誰がリアスを守るんだ」

 

・・・・・。・・・・・・意外だな。

 

「俺に心配してるなんてな」

 

「この俺を説教たれたことを言ってくれやがった奴が、つまらねぇことをして捕まる様を見て俺が惨めな思いをするんだよ。お前のおかげで父上と母上が気掛かりでお前のことを心配しているんだ。さっさとリアスの傍にいやがれよ」

 

「・・・・・おい、言っておくが俺はリアスのこと友達として好きだからな?」

 

「・・・・・俺をおちょくってんのか?」

 

いや、俺とライザーが決闘をすることに成ったのはリアスの出まかせの一言だ。こいつ、本気で今でも信じているのかよ・・・・・。誤解を解いても納得してくれるかどうか・・・・・。

 

「・・・・・お前、あの時言ったよな」

 

いきなり過去形の話を持ち出した。

 

「理不尽な婚約がレイヴェルにもされたら兄のお前はどうするつもりだと」

 

「・・・・・・ああ、そう言えばそんな事を言ったな」

 

で、俺に負けて以来その答えを考えていたのかライザーは自分の心情を打ち明けてくれた。

 

「俺は、レイヴェルが幸せになってくれりゃそれでいいと思っている、兄としてな」

 

・・・・・当然の答えか。でも、ちょっと新鮮さがないな・・・・・。こいつらしくない事を言ってくれるのかと思ったんだけど・・・・・高望みか。

 

「だが、お前の言う最愛の妹が理不尽な目に遭っていると知れば、救ってやるつもりだ」

 

「どうやって?」

 

「真正面から燃やしつくして灰にしてくれる」

 

・・・・・こいつ、何か変わった・・・・・・?

いや、若干シスコンっぽいが気持ちに偽りは無いみたいだ。

 

「お前、もう一度俺と勝負しろ」

 

「はっ?」

 

「ここから出たら俺ともう一度勝負しろ。絶対にな」

 

突如それだけ言い残してライザーは俺の目の前からいなくなってしまった。いきなり再戦を申し込まれた俺の意見とか答えを聞いてくれないのかよ?ライザーに対してそう思っていると、堕天使の人が淡々と言ってくれる。

 

「次はルシファーさまがお見えになられます」

 

「ええい、どうしてこうも訪問者が間もなく訪れるんだよ?」

 

俺は相談を訊く人かっ!というか、俺がここにいる限りこんな状況が続く運命なのか!?堕天使の人も苦笑いを浮かべ、「人気ですね」と言いたげな視線を送ってくる始末だしさ!

 

「お久しぶりね。イッセーくん」

 

俺の目の前に燃えるような紅髪を腰まで伸ばす魔王さまが微笑みを浮かべながら話しかけてくる言動に

呆れとどこか期待している自分が苦笑いものだ。まるで俺が小さかった時に遊びに来てくれる色んな神さまを待っていた時と同じだと・・・・・懐かしさも思い出して。

 

「どうかしたの?」

 

「いや・・・・・昔を少し、この状況でいる自分と同じだった頃を思い出して」

 

「・・・・・そう」

 

顔に曇りが掛かった魔王のルシファーお姉ちゃん。俺の昔と言えば、あのクソ兄貴に散々な目に遭ったことしか殆ど覚えがないからな。まさかだと思うがそっちのことで気を落としているのか?なら、それを気にすることでもないだろうに・・・・・。

 

「魔王の仕事はいいの?」

 

「大丈夫よ。この日の為にちょっとずつ調整をしてきたから今日はOFFなの。今日で私が最後だからあなたとたくさんお話をしたいわ」

 

ああ・・・・・今日も俺に構ってくれる人がいっぱいだよ。だからリーラ達、もう少しだけ待っててくれるか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ミカルさま。本当によろしいので?」

 

「ええ、構いませんよ。既に物語は進み、止まりません。次の物語を進めるには刺激が必要でしょう。異常者(イレギュラー)の兵藤一誠を動かす為にも」

 

「賛同しますが・・・・・大丈夫なのですか?あの者の願いを叶えてしまって」

 

「寧ろ、もしもそうなったら―――というIFを見てみたいのです。既に存在する者の者として既に己の予想を遥かに超えている状況下でどうするのか、―――実に楽しみです」

 

「・・・・・それで、あの同じ『兵藤一誠』に察知され、またここに攻められてきませんよね?」

 

「大丈夫です。この場所を易々と来られるようなところでは―――」

 

「―――ところがどっこい、易々と来ちゃいました!ミカル、久し振りだな」

 

「え―――――っ!?」

 

「なーんか、面白い話を聞いちゃったんだけど・・・・・また、何かやらかしたようだなぁ?」

 

「ミ、ミカルさまぁあああっ!?来ちゃってますけどぉおおおおおおおおおおおお!?」

 

「・・・・・もう、嫌です。なんなの、あなたたち兵藤一誠は・・・・・(泣き)」


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