HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード64

「うっ・・・・・」

 

「あ、イッセー・・・・・」

 

「ここは、どこだ・・・・・」

 

一誠が目覚めた。リース、呂綺、セカンド・オーフィスに見守られる中、まだ全身に呪いと毒の影響で激痛が走るが記憶を封印された一誠は見覚えのない空間を目の当たりにして疑念を抱いた。

 

「ここは次元の狭間って言う空間よ」

 

「次元の狭間・・・・・?どうして、俺はここに・・・・・?」

 

リースが言い辛そうに口を閉じた。信じてもらえるかどうか分からない。だがしかし、いつか言わなければならないことだ。

 

「・・・・・それは後で話しをするわ。今はあなたの身体を治すことが優先なの」

 

『―――ふん、これで三度目だがな。お前の為に願ってきた者は』

 

聞き覚えのない声が呆れを含んでいた。リースは顔を声がした方へ振り向けば、真紅の龍―――グレートレッドが鎌首を背に曲げて顔をこっちに向けていた。

 

『またサマエルの毒と呪いを受けたか。お前はよほどトラブルに巻き込まれやすい体質のようだな』

 

「・・・・・」

 

『それと下界の方では騒々しい事が起きているぞ』

 

万華鏡の中身のような空に―――それは次々と映し出されていく。人間界、冥界で量産型邪龍や巨大魔獣たちが町を人を抗戦して戦っている者たちを蹂躙している光景が次元の狭間に現れていく。

 

「これは・・・・・!?」

 

『何とも形容し難い魔獣どもだ。我は干渉するつもりないがお前たちはどうする?』

 

グレートレッドの言葉を耳に入る最中、リースは映し出される光景を見続けると人間界にいる数多の量産型邪龍を引き連れている常闇の邪龍を見つけた。それはゆっくりと日本に近づいている。そして邪龍の頭部に乗っている人物を見つけた。

 

「リゼヴィム・・・・・!」

 

「・・・・・アイツの仕業だったのか」

 

ムクリと上半身を起こし、ゆっくりと立ち上がる。

 

「―――グレートレッド、俺を人間界に連れて行ってくれ」

 

『・・・・・死ぬ気か?』

 

「復讐したい相手があそこにいる・・・・・この好機を見逃す訳にはいかないんだ」

 

フラフラと今にでも倒れそうなほど危なっかしい一誠にリースは首を横に振る。

 

「ダメ・・・ダメよ。今のあなたは毒と呪いで身体が滅びかけている状態なの。これ以上戦い続けたら―――」

 

「ああ、死ぬかもしれないな。だけど、死ぬならやり遂げてから死にたい。俺とお前の復讐を果たしてから死ぬ」

 

―――っ

 

パンッ!

 

 

「復讐よりもあなたの命の方が一番大事よ!」

 

一誠の頬を涙目になって叩いたリース。

 

「あなたは復讐なんかよりも待っている大切な人たちを大切にしなさい!あなたが死んだらあなたを慕っている人たちが悲しむでしょう!」

 

「・・・・・曹操たちのことか?」

 

―――違う!あんな使えなくなった仲間を殺そうとする仲間が一誠を大切に思っているはずがない。曹操は関与していなかったみたいだが、リースは敢えてその事を触れない。

 

「私や呂綺、セカンド・オーフィスがあなたを失ったら悲しいのよっ。それを分かってちょうだい」

 

「・・・・・お前は復讐ができないでいいのか」

 

「・・・・・あなたと復讐を天秤に掛けるまでもないわ」

 

優しく一誠の頬を添えてリースは顔を近づける。

 

「復讐は絶対にする。だけど、それ以前にあなたの事が好きなの。だから、私はあなたを死なせない」

 

「リース・・・・・」

 

「恋も、一誠の事が好き」

 

呂綺も一誠の腕に抱きついて告白する。その反対側にセカンド・オーフィスもコクリと頷く。

 

「・・・・・」

 

三人をしばらく無言で見詰めた一誠がそっと三人を纏めて抱き絞めた。

 

「ありがとう・・・・・。だけど、やっぱり俺は行きたい」

 

「一誠・・・・・」

 

「だから・・・・・俺が無茶しないようにしてくれるか?」

 

そう言われたリースはどれだけ言っても一誠は決めた事を曲げない腹らしいと悟った。

しかも、無茶しないようにしてくれというのは守ってくれと暗に言っているようなものだ。

 

「・・・・・初めてよ。あなたが頑固な人なんて知らなかったわ」

 

「一度決めたことはやり通す主義なんだ」と朗らかに言った一誠に対して呆れ顔で溜息を吐いたリースが

 

「・・・・・はぁ。分かったわ」

 

亜空間からブリューナクを手にして一誠に突き出す。

 

「この槍に懸けてあなたを守るわ」

 

―――「それ、俺の槍何だがな」。と場の空気を読む一誠は不敵に笑み首を縦に振った。

 

「恋も、恋も一誠を守る」

 

「我も」

 

二人も一誠を守ると誓った。それには一誠が嬉しそうに笑った後、

 

「―――グレートレッド。お願い」

 

『・・・・・今回だけだからな』

 

グレートレッドは一誠の気持ちを汲んで次元の狭間に穴を作った。そして―――下界に飛び出したのだった。

 

―――○●○―――

 

 

―――Hero×Hero―――

 

「三人共、私に黙って一誠を殺そうとしていたとはな・・・・・。私がそんなに不抜けた女に見えていたとは驚いたよゲオルク?これでも公私混合をきちんと分けていたんだが、それが分からなかったとはどうもお前たちは私に対する信用と信頼が無かったようだね」

 

「そ、曹操・・・・・っ」

 

「仕舞には呂綺とセカンド・オーフィスまでリースと一緒に一誠を連れ去った?リースはともかく、呂綺とセカンド・オーフィスは英雄派にとって必要不可欠な戦力だったんだが?ヘラクレス、ジーク」

 

「「うっ・・・・・」」

 

「さて、お前たちをどうしてくれようか。もはや一誠を取り戻すのは不可能だろう。記憶の封印を解除されている頃だし、オーフィスとクロウ・クルワッハに対する対抗手段であるセカンド・オーフィスと一誠は敵の手中。もはや今の私たちは対テロ組織混成チームと抗うだけの力は残されていないと等しい。上位の神滅具(ロンギヌス)があろうとも、戦いの状況によって負けるからね。ああ、一誠。こんなことになるんなら私はお前の傍で一緒に夜を過ごすべきだったよ。―――ふざけたことで暴走した仲間を気付かなかったんだからね。これはアレかなしばらく身を潜めないといけなくなったかな。一誠の死のおかげでセカンド・オーフィスという力の象徴が出来上がったというのにいなくなってしまった。これは大問題だ。ああ、大問題ね。説得しても帰ってこないだろうし。はぁぁぁぁぁ・・・・・全てが水の泡と化した」

 

こんな曹操は見たことないと三人は一時間も逆さ釣りされている状態のまま揃って思った。なんか、ヤんでいる?

ヤんでいますよね曹操さん?とばかり全身に流れ浮かぶ脂汗が止まらない。この光景を静かに見守るモルドレッドに助けを求める視線を飛ばすが俄然として無視されている。

 

「そ、曹操・・・・・」

 

「なんだい、眼鏡」

 

「メガ・・・・・!?・・・・・もう一度一誠を拉致して洗脳するというのはどうだ。ここの設備より冥界や天界の治療施設なら、あるいは助かっているかもしれない」

 

「お、おおっ。そうだな。きっとそうだぜ曹操」

 

「う、うん。僕もそう思うよ。だから、諦めないでまた兵藤一誠を仲間にしようよ」

 

ゲオルクの発言に便乗して同感だと首を盾に振るジークフリートとヘラクレス。

しかし、曹操は絶対零度の冷たい目で三人を見下ろした。

 

「リースと呂綺、セカンド・オーフィスにどんな顔で会いに行って説得するというんだい?完全にキミたちは敵として認識されているのだろう?まさか、彼女たちも洗脳しようというわけじゃないだろうねセカンド・オーフィスは眼鏡の魔法は効かないのだから」

 

「・・・・・曹操?どうして俺を名前でなく眼鏡と言うんだ?」

 

「・・・・・すまない。キミの名前が忘れたから特徴的な物で呼ぶことにしている。ああ、しらすと筋肉爆弾もな」

 

「し、しらす・・・・・?」

 

「き、筋肉爆弾・・・・・」

 

不名誉な渾名を指名され、形容し難い気分となる。そして曹操は完全にキレているのだと悟る。

 

「おい、曹操」

 

三人が吊るされている光景をものともしないで介入するモルドレッド。振り返り「なんだ」と不機嫌に答える曹操に親指で後ろを指した。

 

「外が賑やかになっているぞ。冥界、人間界の全世界に量産型邪龍と巨大魔獣が出現して大暴れしているそうだ」

 

「・・・・・」

 

「こんなことできるのはリゼヴィムしかいないしあの悪魔の仕業だ。ならば、ここにいないあいつらが動かないわけがないだろう?」

 

モルドレッドの指摘に行動が早かった曹操。ロープを斬って三人を「ぐっ!」「あだっ!」「いでっ!」と頭から床に落とした。

 

「行くぞ。一誠たちを連れ戻しにな。反論と異論は認めない。これは決定事項だ」

 

「「「りょ、了解・・・・・」」」

 

「やれやれ・・・・・公私混合じゃないか」

 

―――人間界―――

 

和樹たちは巨大魔獣と戦い、苦戦に強いられた。レオナルドの魔獣と同じで衝撃を吸収して外に逃がし、魔力を吸いこんでしまう能力が健在だった。それが二体もいるのだから厄介極まりない。

 

「け、結構シビア・・・・・ッ!」

 

「あの修行でかなり実力が向上したと自負しているつもりですけれど、まだまだこの魔獣を倒すまでには・・・・・」

 

「ルーラーが一撃で撃破したのが改めて凄いと感嘆するぞ・・・・・」

 

魔力を奪われるならそれでは無駄に魔力を減らすだけだった。その上、まだまだ小型魔獣を産み出すのだから全てを相手にするのに疲弊する。

 

「和樹さん、学園の警備として残した彼女たちも―――」

 

龍牙がそう言いかけた時、龍牙の籠手の宝玉が眩く光り出した。

 

「ファフニール・・・?」

 

刹那―――。巨大魔獣の間横から巨大な空間に穴が生じて真紅の龍が頭突きをかまし、巨大魔獣をぶっ飛ばした。

 

『えぇぇぇえええええっ!?

 

『はぁああああっ!?』

 

目の前で起きた光景を和樹たちが目を疑った。ドラゴンが頭突きをかまして魔獣を吹っ飛ばす。誰も思いもしなかった敵味方も関係なく時が停止したように覚えた矢先、もう一体の巨大魔獣が真紅のドラゴンに目掛けて火炎球を放った。それを見ず巨大な尾で明後日の方向へ弾いてしまう。

 

「な、なんでグレートレッドがここに・・・・・」

 

世界と干渉しないはずの信じ難いドラゴンに場を掻き回される?ジッと和樹はグレートレッドを見ていると頭部に誰かがいる事に気付いた。

 

「あ・・・・・」

 

その正体が分かり、和樹は最大に警戒する。

 

「どうしてグレートレッドと彼がいるんだ・・・・・」

 

「って、和樹さん。上!」

 

一匹の小型魔獣が和樹を取りこまんと大きく口を開けて迫った。龍牙の指摘に上を向いた矢先に

 

ヒュンッ!

 

と風を切る音が聞こえたと思えば小型魔獣が真っ二つに裂かれて和樹を通り越して海に落ちて行った。

 

「油断したな」

 

「っ・・・・・」

 

目の前に何時の間にか隻眼の一誠がいた。和樹は敵として魔方陣を、龍牙は大剣を構える。

 

「相手ならまた今度にしろ。―――禁手(バランス・ブレイカー)

 

禍々しい魔力に包まれ出し一誠は黒と紫が入り乱れた赤い宝玉を身体の各部分にある全身鎧を纏った。

そして指先に小さな二つの黒い球を作り出し、ピンと弾いた。ソレは巨大魔獣たちに接近して

 

「消し飛べ」

 

一気に五十メートルぐらいに膨張して二体の巨大魔獣を凄まじい引力で吸い込み、削り、消失していく。小型魔獣たちもブラックホールと彷彿させる引力に吸い込まれていき、黒い球体に呑みこまれる。

 

「す、凄い・・・・・」

 

「僕たちが苦労していた相手をたったあれだけで・・・・・」

 

愕然とする。一誠の攻撃は魔獣たちには有効であっという間に日本の海域に存在していた魔獣を屠った。

鎧を解除して一誠は和樹たちに目をくれずグレートレッドの方へ戻ろうとしたと思えば、百代が横から拳を突き出してきたことで一誠は片手で受け止めた。

 

「ここで会ったが百年目だ一誠!」

 

掴まれた手を逆に掴んで思いっきり海へと投げ込んで、気のエネルギー砲を放った。

迫る砲撃も五機の戦闘機が機銃を撃ちながら迫ってくる光景が目に飛び込んでくる。

一誠は横薙ぎに百代の一撃を殴って五機の戦闘機に向かって軌道を逸らし、撃墜させた。

 

「・・・・・あいつらか」

 

上空にいる一誠に対して弓を構えている武装した少女たちを見据える。

しかし、巨大な魔力弾が一誠の意識を分散せざるを得なかった。

闇に包まれ、紋様状の翼に入れ墨のような黒い紋様を肌に浮かばせ、黒い籠手を装着した姿の一誠が一同の前に晒し、巨大な魔力弾を吸収した。手を海に向かって開くと、絶えまなく飛来してくる砲弾が防御魔方陣に直撃する。

 

「一誠さん、覚悟!」

 

大剣を上段から振るう龍牙。魔人の弱点は物理的な武器での攻撃。今の一誠は魔人と化している。

有効的な手段と信じて止まないで一誠に攻撃した。

 

「守る」

 

「っ―――」

 

セカンド・オーフィスが龍牙の大剣を片手で受け止め、もう片方の手で膨大な魔力を放った。

 

「龍牙!?」

 

「他人を心配している暇は無いわよ。―――ブリューナク!」

 

和樹に走る稲妻。瞬時で何重ものの防御結界を張った和樹を嘲笑うようにブリューナクは速度を少しも落とさず和樹を貫いた。

 

「お前ら!」

 

焦心に駆られて海に落ちる和樹と龍牙を受け止め、そのまま船の上に置いた。

 

「・・・・・」

 

金剛たちの間に降り立った一誠。戦艦を装着した一同は砲門を一誠に向け、降伏を求めた。

しかし―――。

 

「氷れ」

 

一誠の両足から広がる氷。それは金剛たちの足まで氷らせては移動を封じたのであった。

 

「―――――」

 

『―――――っ!?』

 

一誠が威圧を放った次の瞬間。一人、また一人と少女や女性たちが意識を失って倒れた。

 

「この野郎っ!」

 

背後からの回し蹴り。その蹴りは一誠の頭部にぶつかることなくすり抜けた。

そして凍った氷から伸びる鋭い突起が百代の腹部を貫く。

 

「・・・・・っ」

 

因果応報か、一誠は口から血の塊を吐きだし氷を赤く染める。肩で息をし、険しい表情を浮かべた一誠に大量の氷の槍が迫っていてソレを魔方陣で防ぎ、雷で粉砕、無効化する。

 

「まだ、サマエルの呪いと毒を・・・・・どうしてその状態になるまでお前は・・・・・」

 

「だからこそ、彼を倒して、捕まえて治療する必要があるわ」

 

氷を砕いて百代を解放するシオリ。高級そうな瓶を腹部に振りかければ見る見るうちに傷が癒える。

 

「大丈夫?」

 

「ああ・・・・・利くな『フェニックスの涙』って」

 

一誠と一誠の傍に降り立つリース、セカンド・オーフィス、呂綺と対峙するのは百代とシオリ、エスデスの三人、

 

「一誠があらかたドラゴンや魔獣を倒してくれたおかげで目の前の事を専念できるわけだが」

 

「勝てないわね」

 

「だが、戦わなければならないだろう?」

 

そうだ、と百代は拳を構えるとシオリとエスデスも攻撃態勢になる。だが、そんな三人の目の前にいる一誠が何かに駆られて明後日の方へ視線を向けて隻眼になった目を凝視し出した。

 

「―――来る」

 

「なに?」

 

百代たちも一誠が向けている視線を辿ってみると・・・・・真っ黒な何かがこっちに近づいてくるのが分かった。

一誠はそちらの方へ身体を向けた途端

 

「ぐはっ・・・・・!」

 

血反吐を吐いた。流石にこれ以上は危険だとリースは声を掛けようとしたが、そうは問屋が卸せなかった。

 

「・・・・・ゾフィリスって言ったか」

 

後数十秒という時間でここに辿り着く邪龍軍団に一誠はポツリと漏らす。

 

「世界の負と悪を吸収して復活するわ。イッセー、勝ち目あるの・・・・・?」

 

「負と悪か・・・・・だったら聖なる力なら有効か?それよりも・・・・・リゼヴィムがいないな」

 

翼を生やして宙に浮き、ゾフィリスを見据える。次元の狭間で見た目的の人物がいない事に残念に思うがこの邪龍をどう倒すか模索する必要がある。亜空間からエクスカリバーを手にして―――奥義を発動する。

刀身に極光の光を集める。

 

ギェエエエエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

 

ゾフィリスは一誠を敵として咆哮をあげる。口を大きく開けて禍々しい魔力を集束し、他の量産型邪龍も一緒に一誠よりも早く極太の魔力の砲撃や火炎球を放った。

 

「くっ・・・・・!」

 

「我が守る」

 

セカンド・オーフィスが一誠の前に立ち魔方陣を展開。ゾフィリスの攻撃を防ぐ。

 

「私も!」

 

リースも防御魔方陣を重ねて展開し一誠を守る。その間、エクスカリバーの力を溜める。

 

「・・・・・なら」

 

真紅の髪が青白い色と変色し頭上に青白の輪っか、背中に六対十二枚の青白い翼を生やして天使の力を刀身に込めることで極光の金色の光は青白くなり、バチバチと放電を発するようになる。

 

「―――溜まった。三秒後に離れろ」

 

「「わかった」」

 

一誠の指示通りに二人は従う。―――三秒後、横にどいたリースとセカンド・オーフィスと同時に、

 

エクスカリバー(約束された勝利の剣)ァッッッ!!!!」

 

極光の青白い斬撃がゾフィリスの魔力砲撃、量産型邪龍の火炎球を一気に押し返し、直撃した。

天を穿つように伸びる青白い極光の柱。それは日本からでも見えていた。

 

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・」

 

全身で息をし極度の疲弊を窺わせる。荒い息を断続的に吐き続け、意識が朦朧とし始める。

 

ゴポ・・・・・ッ

 

口から血の塊を吐き、一誠は体勢を崩しそうになるがリースの胸の中に収まってリースに支えられながら氷の大地に降り立った。

 

「あの邪龍・・・・・いないよ。倒したのね」

 

「いや、倒した・・・・・感じはしなかった」

 

「え?」

 

「手応えが無かった・・・・・はぁ、はぁ・・・・・くそっ・・・・・やられた。あれは幻みたいなもんだったんだ」

 

本物のドラゴンではないという事をリースは驚愕した。ということは、一誠がした事は無駄で無駄な労力を使った事になる。

 

「今なら一誠を捕える」

 

疲弊しきった一誠。百代たちほどの実力者なら可能なほど弱々しくなっている。だからこそこの好機を逃す訳にはいかないのだ。三人は同時に駆けだして接近した―――と同時に霧が発生し、霧の向こうから英雄派が現れた。

 

「曹操!」

 

「一誠、リースと呂綺、セカンド・オーフィス。迎えに来たよ」

 

突然の乱入者たちに足を止める百代たちを無視して一誠たちと話を始める曹操。リースはブリューナクを曹操に構える。

 

「迎え?イッセーを殺そうとしたその三人がいる場所にはもう彼を置いておくわけにはいかない!」

 

「ああ・・・・・それについては私も凄く驚いた。だが、安心してくれ。もう二度と眼鏡としらす、筋肉爆弾がバカな考えをして暴走しないように―――後でまたキツく私の方から言っておく」

 

「「「・・・・・」」」

 

何とも形容し難い表情と何とも言えない雰囲気な当の三人。

 

「リース、キミは私の事信用していないのかな?共に愛され、愛している仲だ。私は少なくともキミを認めている方なんだけどね」

 

「・・・・・それについては否定しないわ。私もそこの三人よりは信用も信頼もできる。だけど、彼の治療がままならないまま死んでしまうのは嫌。だから私は彼を―――敵対している勢力に引き渡して治療してもらおうと思った」

 

「思った?」

 

グレートレッドに一瞥する。

 

「あのドラゴンの身体の一部でイッセーの新たな肉体を作ってもらっている最中。時間は掛かるけれど出来上がったらもう呪いと毒で苦しまずに済む」

 

「なるほど、この場にグレートレッドがいるのは次元の狭間に逃げ込んでいたからか」

 

納得したとばかり、聖槍の柄を肩にトントンと動かしながら発する。

 

「曹操、今だけは私たちの邪魔をしないで。リゼヴィムがこの海域のどこかにいるかもしれないの」

 

「・・・・・一誠は復讐を臨んでいるのか」

 

「コレでも止めた方よ。だけど、頑固な人だとは知らなかった」

 

「ふっ、私は知っていたぞ。一誠は一度決めたことを絶対にやり遂げないと気が済まないんだ」

 

ようやく曹操は百代たちに振り返り「さて、彼に近づけさせないよ」と聖槍を構え出す曹操に愚痴を漏らし百代だった。

 

「ちっ、余計な連中が出てきやがった」

 

「なんか、訳有りだったみたいだけどどうでもいいわね」

 

「当然だ。一誠を取り返す!」

 

三人は英雄派と衝突。リースたちは―――新たに現れた人物と対峙していた。

 

「一誠さま・・・・・」

 

銀髪のメイド、リーラ・シャルンホルスト。レプリカのグンニグルを手中にしてその琥珀色の瞳を真っ直ぐ一誠を見詰めていた。

 

「メイド・・・・・?あの時いたメイドね」

 

「一誠さまの専属メイドのリーラ・シャルンホルストでございます。―――主を取り戻しに来ました」

 

リーラの影からオーフィスとクロウ・クルワッハが現れる。

 

「我、守る」

 

「恋も、一誠を守る」

 

セカンド・オーフィスとグラムを持つ恋は一誠の前に立ち、オーフィスとクロウ・クルワッハに向かって飛び出す。

 

「私のお相手をして貰えるのはあなたということでしょうか」

 

「メイドが戦えるとは思えないのだけれど」

 

「問題ございません。これでも私は一誠さまのご両親と一緒に神と戦ったことが何度もありますので」

 

「―――どんなメイドよ!」

 

五つの穂の切っ先から帯状の光がリーラを襲う。

 

「同じ伝説の槍の武器。ですがこちらはレプリカですがオリジナルとの威力は劣っていません」

 

リーラが「―――グンニグル」と呟いた刹那―――。

 

ブゥゥゥウウウウウウウウンッ!

 

槍から極大のオーラが放出され、空気を貫くような鋭い音があたり一面に響き渡った。リースが放った光と直撃し、伝説の武器同士の拮抗が鍔迫り合い、空間を歪ませる。後に大爆発を起こして辺りは煙に包まれる。

 

「くっ!?」

 

肉眼では捉えなくなったリーラを探す。煙の中では同じ状況下で向こうも自分の姿を見えなくなっている。

 

ガキンッ!

 

鉄と鉄がぶつかるような音が聞こえた。それは―――。

 

「イッセーッ!?」

 

 

「主に矛を向けるような真似をお許しください一誠さま」

 

「・・・・・っ」

 

リーラがリースを無視して真っ直ぐ一誠にグンニグルを突き付けていた。エクスカリバーで防ぐ一誠は疲弊の色がハッキリと顔に浮かんでいた。

 

「俺の、邪魔をするな・・・・・」

 

「私は生きております。ですから、戻ってきてください」

 

「うるさいっ!」

 

強引に押し返してリーラから離れる。

 

「俺は・・・・・俺は、リゼヴィムに復讐するんだっ」

 

「その復讐は何の為に、誰の為にですか」

 

「・・・・・」

 

リーラの質問に口籠る。

 

「思い出してください。あなたは今までどうやって生きていたのを、どうして今の自分がいるのかを」

 

諭すように発する。それでも一誠は戦意と敵意の炎を瞳に孕ます。

 

「関係ない・・・・・ここにリゼヴィムがいるかもしれないんだ。いなければ冥界に行って探しだすまでだ。もう直消えそうになるこの命を懸けて」

 

「・・・・・一誠さま」

 

可哀想な子を見るリーラは首を横に振った。自分の中であるスイッチを押した―――。

 

「・・・・・わかりました。では、全力であなたを倒すほかございませんね」

 

―――一誠が大きく目を張るほどのリーラから感じるプレッシャーと『魔力』。

徐に束ねていた銀髪を解き、ロングストレートにした瞬間にメイド服が光り輝き、違う服と化した。

身体のボディラインを浮き彫りにする黒い戦闘服。

 

バサッ!

 

そして勢いよく生え出す黒い翼。それはまさしく・・・・・。

 

「悪魔・・・・・?」

 

 

 

「おい、誠と一香。本当にあのメイドを行かせてよかったのか」

 

『ああ、彼女は問題ないよ』

 

「レプリカのグンニグルを持っているからって一誠と太刀打ちすらできんだろう」

 

『アザゼル。違うわ』

 

「なんだと?」

 

『リーラは強いわ。ええ、とても』

 

「強い?バカ言え、あのメイドが一度も強さの片鱗すら見せていなかったんだぞ」

 

『じゃあ、見せなかったと言えばどうなる?それで納得できるか?』

 

「誠・・・・・何を言って」

 

『彼女はねアザゼル・・・・・一誠は確かに俺たちの子だ。だが、一誠はリーラの子供でもあるんだ』

 

「は・・・・・?」

 

『リーラ・シャルンホルストという人間の女性はこの世に存在しない。ただの偽りの仮面を被った人物だ』

 

『リーラという人間の仮面を被って一誠という名前の子供を見守ってきたの。太古の古からね』

 

「おいお前ら・・・・・何を言っているんだ」

 

『アザゼル。これは彼女が俺たちに信頼と信用して明かしてくれた事実だ。彼女、リーラ・シャルンホルストは人間じゃない。とある神話体系に存在していた―――悪魔なんだ』

 

『そして、その神話体系のなかでかなり有名な人物に仕えていた悪魔だった。リーラは仕えていた人物の為に何度も記憶を受け継いだ状態で輪廻転生をし続けてきたの』

 

『その度にその人物の傍にいた。その度に見守り、愛した』

 

『彼女はこれからもそうし続けるだろう。ははっ、彼女ほど一途に一人の男を想う女は、彼女ほど究極の愛を捧げる女は滅多にいない』

 

 

 

 

『バカな・・・・・』

 

アジ・ダハーカはリーラから感じる魔力に絶句する。有り得ないの一言だ。

 

『お前・・・・・なのか・・・・・?』

 

この場に聞こえるように発するアジ・ダハーカ。その声はリーラにまで届いた。

リーラは淡々と述べる。

 

「今はリーラ・シャルンホルストでございます。アジ・ダハーカ」

 

『―――なぜ、なぜお前がここにいるんだ!?いや、どうして俺は今までお前ほどの者を気付かずにいたのだ!?』

 

「疑問を抱くのは当然でございましょう。ですが、それはどうでもいいこと。私は主を取り戻すことを優先しているのですから」

 

『兵藤一誠を主、そしてお前・・・・・。―――まさか、兵藤一誠というのはっ!?』

 

今度は愕然とする。アジ・ダハーカにとっても信じ難い事だった。リーラとアジ・ダハーカの話を耳にして怪訝に戦闘を止めた英雄派と百代たち。

 

「なんだ、一誠がどうしたというんだ?」

 

「わからない。だけど、あのメイドと一誠くんは因縁めいた何かが・・・・・?」

 

「それよりもあの姿・・・・・悪魔なのか?」

 

「曹操、あのメイドが悪魔だってことは」

 

「初めて知ったよ。まさか、完全に魔力とその気配を隠していたなんてね」

 

リーラの正体に驚き、一誠とリーラの戦いを見守る姿勢となる。

 

「メリアさま」

 

レプリカのグンニグルを亜空間に仕舞うと反対の手に金色の杖が光と共に具現化した。

リーラはソレを剣に変えだし、また亜空間から一つの一振りの剣を取り出した。

 

「ユウキさま。お借りしたあなたの剣を使わせてもらいます」

 

「そうはさせない!」

 

リースがリーラに飛び掛かる。躊躇のない槍の一撃を一瞬でかわし、リースの首筋に手刀を叩きこんで意識を狩った。

 

「・・・・・」

 

一誠は静かにオーラを身体から滲ませエクスカリバーを構えた。

 

「主と戦うことになるなんて生まれて初めての経験です」

 

そう言った瞬間に一誠の間合いに飛び込んでは二つの剣を振り下ろした。「迅っ!」と驚く声が漏れる。

エクスカリバーでリーラの斬撃を受け止めた刹那、一誠は腹部を蹴られ吹っ飛んだ。

 

「一誠さま、私は常にあなたの行動を見てきました。能力、体術、剣術、ありとあらゆる戦い方を私は見てきました。とても強い力もあるかとを承知です」

 

宙返りして海に飛び込む前に魔方陣を展開してそれを足場代わりにし、そこから一気にリーラへ跳躍して跳びかかった。金色の剣を上段から振るったリーラ。

 

「っ!?」

 

何かを察知して宙を蹴って横に跳んだ一誠。次の瞬間、海が轟音と共に激しい水飛沫を生じながら一キロ先まで割れ出した。

 

「海を・・・・・斬っただと!?」

 

誰もが目を張り、リーラの剣技に驚きを隠せなかった。割れた海を見て一誠は両手で気と魔力を融合させ、飛躍的に―――。

 

「感卦法―――」

 

一誠のやっていることをリーラまでもしてみせた。

 

「―――女宝(イッティラタナ)ッ!」

 

曹操が横やりを入った。ボウリング級の大きさの球体を高速でリーラの元に飛ばした。

 

カッ!

 

が、曹操の球体が真っ二つに裂かれた。無効化された自分の能力を苦笑浮かべるしかない曹操。

 

「・・・・・侮っていたよ。まさかあなたがそこまで実力を隠していたとは」

 

「メイドという職業柄、主の身のお世話をするお仕事ですので戦闘に関しては誠さまと一香さまにお任せていました。たまに私も手伝わせることもありますが」

 

「手を出さないでください」と釘を差すことも忘れない。その後、一誠とリーラは激しい剣戟を繰り広げた。

メイドとは思えない剣さばき。時折体術も交ぜて一誠を・・・・・押していく。

 

「くっ・・・・・」

 

鍔迫り合いしている最中、呪いと毒で酷く体力を消耗していく一方、血の塊を吐いて腕に力が抜けていきそうにもなる。だが、ここで負ければ―――。

 

「負けて・・・・・たまるかっ」

 

天使化となって一誠は宙へ浮いた。

 

「この命を懸けてでも俺はリゼヴィムのところに行って復讐をするんだぁっ!」

 

エクスカリバーを高らかに掲げ、青白い極光を刀身に帯びさせ輝かせ始める。

 

「一誠さま、もう復讐などしなくてよいのです!」

 

翼を羽ばたかせ一誠より高く飛んで二つの剣を神々しく輝かせる。二つの極光がこの場を照らし、一同の目を釘づけにする。

 

「おおおおおおおおおおっ!エクスカリバー(約束された勝利の剣)ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

「帰ってきてください、一誠さまぁっ!」

 

空にいるリーラに向かって怒涛の勢いで伸びていく青白い極光の斬撃波。下にいる一誠に向かって突き進む極光の金色の斬撃波がどちらからでも無く直撃した。その余波で海を荒々しく衝撃を与える。

 

「ぐおおおおおっ!」

 

全魔力を込めて放った青白い斬撃波。一誠はこの瞬間、命を削って目の前の敵を倒そうとしている。リーラも一誠に対する想いを力にして一切一瞬の気の緩みも許されないこの状況を真摯に―――。

 

「一誠さま、この私の、私の全てを受け止めてください!」

 

更なる強大な魔力を放った結果、物凄い勢いで一誠の青白い魔力を押し弾き、呑みこみながら一誠に向かって迫った。

 

「っ!?」

 

そして、迫りくるリーラの魔力の斬撃に呑まれた一誠、その攻撃は止まることを知らずそのまま海にまで直撃したのだった。

 

「バカな・・・・・っ!」

 

「一誠っ!」

 

モルドレッドと曹操が一誠の敗北を頭の中に過ぎった。が―――一筋の光が見えだした。それはリーラに向かい、

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

エクスカリバーの鞘を前に構えて突貫する一誠の姿。一誠の行動に目を張るリーラだが、直ぐに気を引き締めて一誠と同じ行動に出た。二人が近づき、零距離にまで近づき剣を振るって―――。

 

「「はああああああああああああっ!!!!!」」

 

 

ザンッッッ!!!!!

 

 

『っ!?』

 

二人は擦れ違って途中で止まってはその瞬間を曹操たちの目の前で窺わせる。どちらが勝った?

見逃せない戦いに目を大きくして凝視する。

 

「・・・・・」

 

最初に動いたのは一誠だった一誠に振り返り、エクスカリバーに魔力を込めだした。

 

「―――がはっ!」

 

と、思いきや盛大に吐血して真っ逆さまに海へと落下。それは一誠の完全敗北と道理であった。一拍遅れてリーラが一誠を追いかけ、間一髪腕の中に抱きとめた。

 

「・・・・・なぜ、最後に剣を振るわなかったのですか」

 

誰にも聞こえないぐらいの声を発して一誠に問う。対して一誠は苦笑を浮かべる。

 

「・・・・・愛おしいメイドを傷付けることできるわけないじゃんか」

 

「―――っ!?」

 

「強かったんだな・・・・・リーラ。ずっと隠していたのか・・・・・はは、騙された気分だけど爽快だ」

 

「申し訳ございません・・・・・」

 

記憶が戻った。その喜び以上にリーラは一誠を強く抱きしめ、存在を確かめる。

 

「ジャヒー」

 

一誠の口からリーラが驚愕する言葉が出た。信じられないと一誠を見るが、気を失っている少年の顔だった。空耳だったのか分からないが―――。

 

「・・・・・それでも最高に嬉しいです。ああ、我が―――っ」

 

歓喜に極まって琥珀の瞳を潤わせ、愛おしい一誠の顔を見詰める。

 

『フフッ、フフフフフッ!クハハハハハハッ!ああ、本当に兵藤一誠はイレギュラーだな!まさか、兵藤一誠があの方の―――!』

 

そして、一誠の中で何時までも笑い上げるアジ・ダハーカにネメシスとゾラードが怪訝に見ていた。

 

「一誠がやられた・・・・・サマエルの毒と呪いを受けていなかったら一誠が勝っていただろうに」

 

「曹操、撤退するぞ」

 

霧を発生させるゲオルク。もうこの場にいてもしょうがない。そして、誰もが一誠の方へ意識を向けていた。逃走するなら今しかないと、判断した。

 

「おやおや、どこに行こうとするのかな?」

 

「っ!?」

 

ゲオルクの肩に手を置いて無言のプレッシャーを与える―――誠が何時の間にか背後に立っていた。下手に動けば、どうなるかわかっているよな?と。

 

「兵藤家の元当主か!」

 

拳を突き出すヘラクレス。攻撃と同時に爆発するその威力は一誠との特訓や鍛練によって強化された。

無防備に食らえば人間の身体は木端微塵となるだろう。その一撃を―――誠は真正面から手の平で受け止めた。

 

「なんだ、この拳は?」

 

「―――っ!?」

 

「拳ってのはな。こういう風にするんだ。前にも同じことを教えたよな」

 

ゲオルクを掴んだまま、ヘラクレスの腹部に打撃を与えた。凄まじい衝撃音と同時に相手の意識を狩った。

仲間を倒され、ジークフリートも動こうとしたが。

 

「動くなよ、ガキ共」

 

ゾッ!

 

とてつもない威圧感を感じ、曹操ですら頬に冷や汗を流す。

 

「・・・・・やれやれ、詰んだようだな」

 

「曹操・・・・・!」

 

「彼は間違いなく私たちを瞬殺できる実力を持っている・・・・・それでも異論はあるか?」

 

「・・・・・いや、もう詰んだね本当に」

 

「ああ・・・・・」

 

ジークフリートとゲオルクもお手上げと両手を上げた。こうして人間界の日本の海域にいた巨大魔獣と量産型邪龍は全滅、幹部を含めた英雄派も全員捕縛。これによってテロリストの一派、英雄派は壊滅となった。

 

―――冥界―――

 

魔王都に進撃していた巨大魔獣と小型魔獣。名高い最上級悪魔たちが懸命に戦ったことで被害は最小限に抑えた。

魔獣も駆逐され、事無き終えた―――そう思った。

 

空中都市、アグレアスが黒い靄に包まれると冥界から忽然と消失した。それは冥界に住む悪魔たちにとって魔獣襲来の次に仰天する事実。

 

『やっほー冥界にいる悪魔と堕天使の諸君。俺、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー!現魔王のルシファーの弟くんでーす。今回、俺主催のお祭りはどうだった?楽しくて堪能してくれたかなぁー?うひゃひゃひゃっ!さーてさーて、そんな楽しい思いをさせた僕ちゃんは偉いでしょ?だ・か・ら、空中都市アグレアスをもらっとくねー?あ、ねーちゃん。お仕事頑張ってねー?俺は異世界で唯一無敵の魔王をしちゃってくるからさ!』

 

リゼヴィムから冥界中に発した立体映像での発言に冥界はリゼヴィムに対する畏怖の念や戦慄を抱くようになった。そして人間界の世界中に現れた巨大魔獣たちは神話体系の神々によって倒され尽くした。その結果、世界は神々を崇めるようになり、これを機に一部の神は人間界を行き来するようになった。

 

――○●○―――

 

「うむ、潰れた目はどうしようもないがこれで身に潜んでいたおった主な呪いは仙術で取り出せたわい。これで体も楽になるだろうが、しばらくは安静するんだぜぃ」

 

「ん・・・・・ありがとうお猿のお爺ちゃん」

 

「まったく、同じ呪いを二度も食らう者は初めて聞くわぃ。それで復活したり生きているんだから坊主、お前さんはとんでもなくただのドラゴンじゃないぜぃ。イレギュラーそのものだ」

 

「よく言われる・・・・・」

 

「仏の顔は三度までと言うが坊主にとっては三度目は無いということかのぉ。まあ、坊主の元気な姿を見られてジジイも安心したわぃ」

 

幼稚園児の身長と同じしわくちゃな顔な猿の妖怪がポンポンと一誠の頭を触れる。名は闘戦勝仏、本名は初代孫悟空。

 

「坊主、あのやんちゃな嬢ちゃんたちは捕まったが、気分はどうだぃ?」

 

「何時かこうなると思っていたよ。曹操が自由の身となったらまた昔のように一緒に遊びたいかな」

 

「カッカッカッ、甘いな坊主。一度殺された相手に記憶を封印された―――と見せかけている中でもずっと利用されていたってのに嬢ちゃんと遊びたいってか」

 

「あいつはただ、俺の願いを果たそうとしているだけなんだ。やっていることは間違っているけどそれは俺の原因。俺も一時期テロリストだったし、いつか俺も罰を受けるよ曹操の為にも」

 

「・・・・・甘いどころか、どこまでもお人好しだぜぃ。だからこそ、他の神話体系の神々が坊主を気に入るのかねぇ」

 

一誠から離れ、部屋を後にしようとする。

 

「またいつか、会いにくるぜい坊主。そん時は天帝から手土産でも貰ってくるからよ」

 

「楽しみにしてるよお猿のお爺ちゃん」

 

最後の別れ話を終えると一誠は眠りにつこうと瞑目し、闘戦勝仏が扉を開け放った瞬間。

 

『うわっ!』

 

『きゃっ!』

 

ドアにへばりついていただろう一誠の家族たちが部屋に雪崩れ込んできた。

 

「何しておるんじゃお主らは。ほれ、失礼するぜぃ」

 

と、堂々と少女と女性たちの身体や頭を踏んづけながら部屋を後にする闘戦勝仏。

 

「ひ、人の顔を踏んづけるなんてっ」

 

「なんて猿の妖怪なのかしら・・・・・」

 

それよりも一誠だ。ゆっくりと立ち上がり、瞑目している一誠を囲むようにして佇みだす。

 

「ん」

 

一人、オーフィスだけは一誠の膝の位置に腰を下ろして見詰める。

 

「寝てる・・・・・?」

 

「闘戦勝仏が訪問しに来てくれるまで激痛に苦しんでいたからようやくそれがなくなったからきっと・・・・・」

 

「はぅ・・・・・よかった」

 

ようやく、ようやくこうして間近で一誠を見られ、触れることができる。一誠がいない間はとても長く感じてしょうがなかった。離れ離れになっている間、一誠は大変な目に遭っていたが。

 

「片目、無くなっちゃっているからやっぱり眼帯必要よね」

 

「義眼とかは?」

 

「いや、リースの話ではグレートレッドが身体を新調してくれているそうだ。魂を移しかえれば問題ないじゃないか?」

 

「でも、また先輩が死ぬようなことがあれば・・・・・」

 

「新調してくれる身体は念のために保管しておかない?」

 

「うーん、そう考えるとその方がいいのかな」

 

眠り付く一誠の傍であれこれと会話を飛び交う中、オーフィスは動いた。四つ這いで一誠に迫り、

 

「オーフィス?」

 

一同がオーフィスの行動を見守る。

 

「片目のないイッセー。困る。だからこうする」

 

―――自分の目をあろうことか誰も行えない事を、自分の手で眼球を取り外した。それには戦慄し、

全員は息を呑んだ。オーフィスの抜き取った自分の目を閉じられた一誠の瞼を手で押し開き、サマエルの毒で潰れた目のポッカリと空いた眼窩にオーフィスは自分の目を「ん」と押し込んだ。

 

「これでよし」

 

「オ、オーフィス・・・・・?」

 

何かやり切ったように嬉しそうな顔をするオーフィスに当惑する面々。次の瞬間。カッと一誠が目を見開いて上半身を起こした。

 

「うぐっ・・・・・なんだこれ・・・・・?」

 

「一誠!」

 

「一誠くん!」

 

「イッセー!」

 

「イッセーくん!」

 

「先輩!」

 

なにか衝動的に駆られて起き上がった一誠に驚きと歓喜の声が。しかし、当の一誠は自分の身に起きた変化に当惑していた。オーフィスが嵌め込んだ眼からオーフィスの視界で自分の姿が映り込んでいるのを驚いている。

 

「オーフィス・・・・・俺に何をした?」

 

「我の眼を与えた」

 

「視界が共有しているのは・・・・・オーフィスと同じ眼だからか」

 

「そう」

 

コクリと肯定した。自分で取り出したオーフィスの眼は何時の間にか二つに戻っていた。

無限を司るドラゴン故に身体の一部を損傷しても直ぐに戻ったのだろう。

 

「これ・・・・・日常に少し大変だな。寝ている間、いきなり頭の中に俺を見ている光景を叩きこまれたぞ」

 

「我も、いまイッセーが見ている光景を我も見えている」

 

オーフィスの視界に一誠の視界で見える自分の姿。オーフィスは気にしないだろう、しかし一誠は成れない状態で生活するのに困惑するだろう。二つ分の視界が一気に映り込むのはテレビを二台同時に見るのと同じでどちらか意識をしないといけないのだ。

 

「・・・・・致し方ない。こうするか」

 

亜空間から一つの黒い眼帯を取り出してそれをオーフィスの目の上に覆い隠す。

そうすることで一誠とオーフィスの視界は共有することができずにいられる。

元々オーフィスが自分の眼を与えないでいれば眼帯を装着することとなっていただろう。

 

「それ、どうしたの?」

 

「川神学園に一時期通っていた時に軍人からかっぱらった」

 

「軍人・・・・・ああ、あの人」

 

思い当たる人物がいた。

 

「・・・・・寝ている間に囲まれていたな」

 

「師匠のことが心配でお見舞いに来たのだ」

 

ゼノヴィアが胸を張って言う。相槌を打って一誠は咲夜に顔を向けて尋ねる。

 

「魔獣と邪龍はどうなった?」

 

「被害は深刻ですが、全て全滅。冥界も然りです」

 

「そうか」と上半身を倒してベッドに沈む。ここぞとばかりオーフィスは一緒に布団の中に入り一誠の胸の上に丸くなった。

 

「一誠さま・・・あなたは本当に自分の意志で英雄派に加わったのですか?」

 

「ああ、本当だ。英雄派の為じゃなく、リーラを殺したあの悪魔を復讐する為に」

 

「どうして、私たちと一緒じゃないとダメなの?」

 

イリナの質問に頷く。

 

「俺が英雄派のところにいた時はリーラが復活していたことなんて知らなかった。だから英雄派に入ってリゼヴィムのおじさんと接触する機会を待った。同じテロリスト同士なら会う機会も直ぐに訪れると思ってな」

 

「先輩、ボクたちのこと本当に忘れていたんですか?」

 

そうユウキは言う。国会議事堂に現れた時自分たちの事を赤の他人のように言われた。それは一誠の今までの記憶を封印されていたからだと後にメリアが語ってくれた。

 

「忘れていた、というよりも記憶を封印されていた事実は本当だ」

 

そこで一誠は深い溜息を吐いては眼帯に手を添えて口を開く。

 

「まさか、サマエルの血で作った弾丸を食らうことになるなんて予想外だった。二度も同じ呪いを受けるなんて俺自身信じられなかった。アレのおかげで俺は今に至ったんだろうな」

 

「その、やっぱり痛かった・・・・・?」

 

恐る恐るとルーラーが訊くと重々しく一誠は頷いた。

 

「死ぬほど痛かったぞ。全身に激痛が走るわ、血反吐を何度も吐いたり、意識が朦朧で何時でも死んでもおかしくなかった。もうこりごりだ、あんな痛みを感じるのは」

 

「それを二度も経験するなんて・・・・・考えただけでゾッとするわね」

 

自分を抱くようにしてナヴィは引き攣った顔で首を横に振る。

究極のドラゴンスレイヤーの呪いと毒は伊達ではなかった。

胸の上にいるオーフィスの頭を、黒髪を撫で始める一誠。久々に撫でられる感触に心地良さそうに目を細め、

手の温もりも堪能する。

 

「・・・・・ところで聞きたいんだが。なんか皆、見ない間に強くなってないか?」

 

『うっ・・・・・!』

 

「・・・・・どうした?」

 

触れられたくないとばかり呻く家族に一誠は首を捻ると咲夜が「後でご説明します」と話をはぐらかした。

 

「イッセーくん、体調はどう?まだ毒と呪いで苦しい?」

 

「お猿のお爺ちゃんが全部取り除いたおかげで苦しくないが、まだ若干の麻痺の症状が出ている。こうしてオーフィスの頭を撫でるぐらいのことならばなんとか」

 

「そ、そうなんだ・・・・・」

 

シアが安堵で胸を撫で下ろす。すると、何か閃いたように顔を明るくした。

 

「そうっす!今日は学校を休んで一誠くんのお世話―――!」

 

「それはダメですシアさま」

 

否定の言葉がシアの声を遮った。

 

「皆さま、そろそろ学園に行く時間でございます。速やかに支度を済ませてください」

 

「リ、リーラさん・・・・・」

 

「さあ、早く」

 

有無を言わせない。絶対零度の視線ととてつもないプレッシャーを放つリーラに学園に行くメンバーは渋々と一誠の部屋から出た。

 

「んじゃ、私たちも行こうかしらね」

 

「ああ、そうだな」

 

学校に行かないメンバーも部屋から退出。残ったのはオーフィスと一誠、リーラだけとなった。

 

「・・・・・リーラ」

 

「一誠さま・・・・・」

 

死別し、離れ離れでずっと会話すらできなかった二人。一誠は片腕を出してリーラに伸ばすとそれに応えるように一誠の手を掴んで握りしめ、自分の頬に添えた。

 

「生きているんだな・・・・・」

 

「はい、私はこうして生きておられます。申し訳ございません。私の失態で主であるあなたさまを・・・・・」

 

「もういい・・・・・またリーラと触れあうことができるならそれで・・・・・」

 

どちらも尻目に涙を浮かべ、一誠がリーラの後頭部に手を回して引き寄せた。リーラもそれに逆らわず、自分からでも一誠へ近づき掛け布団を捲って潜り込み、密着する。

 

「一誠さま・・・・・」

 

「リーラ・・・・・」

 

どちからでもなく口付けを交わす。そしてリーラが一誠の耳に口を寄せて声を殺して呟いた。

 

「今夜は・・・・・寝かせませんよ・・・・・」

 

惜しみながらもリーラは一誠から離れ、オーフィスを掴んで部屋を後にした。

二人を見送り、ベッドに身を沈める。だが、一誠はゆっくりと休められずにいた。

目の前に三つの魔方陣が展開して、一誠と対面する。

 

「よう、元気そうだな」

 

「久し振りだね一誠ちゃん」

 

「・・・・・」

 

フォーベシイ、ユーストマ、アザゼル。そんな三人に対して何故かハリセンを構えようとする。

 

「一誠ちゃん、どうしてそれを構えるんだい」

 

「不法侵入」

 

「細けぇことは気にすんなっ!」

 

「シアにも同じこと言える?嫌われるよ?魔王のおじさんも」

 

「「激しくごめんなさいと思う」」

 

頭を下げる勢力のトップに無視してアザゼルが口を開く。

 

「一誠、お前・・・・・」

 

「ん?」

 

「いや・・・・・なんでもない」

 

アザゼルは首を横に振って話を逸らす。一誠が誰であろうと一誠は一誠なのだ。

今更それを追求、説明したって何も変わらない。「変なアザゼルのおじさん」と思った一誠の手の甲に宝玉が浮かんだ。

 

『我が主、回復は良好そうでなによりだな』

 

「アジ・ダハーカ?というか、主って急にどうしたんだよ」

 

『呼び方など今更どうでもいいではないか。クハハハハッ!』

 

なにやらテンションが高いアジ・ダハーカ。一誠が怪訝になるのも無理は無い。

 

「なんだ、随分と邪龍に忠誠心を向けられているな」

 

「俺にも分からないんだよ。今でも戸惑っている。リーラが悪魔だって事を知ってから・・・・・」

 

「うん、それについては私も驚いたよ。まさか、彼女が悪魔とは魔王である私が気付かなかった」

 

「ただの人間にしては優秀だと思っていたが・・・・・俺ですら気付かないなんてな」

 

魔王と神王、悪魔の気配を感じるのに呼吸をするように分かる二人が気付かなかった。

リーラという女性は悪魔であることは極一部の者しか知られていない。

 

「でも、彼女が悪魔だとすると・・・・・私が把握している純血悪魔にシャルンホルストなんて悪魔はいないんだが」

 

「一般悪魔出じゃないのか?」

 

「いや・・・・・それにしては」

 

顎に手を添えて悩むフォーベシイ。そんな魔王に『ククク、悩め、悩むがいい』と嘲笑うアジ・ダハーカだった。

 

「・・・・・」

 

思いつめた表情となる一誠。三人は不思議そうに見詰めると決意が決まった表情で口を開きだした。

 

「アザゼルのおじさん、魔王のおじさん、神王のおじさん。お願いがある」

 

 

―――冥界―――

 

とある日、日本政府は英雄派の引き取りを冥界の魔王フォーベシイに求めた。だがしかし、フォーベシイは首を横に振った。

 

「彼女たちを拘束具程度で捕えることはできないよ?もしも脱走したらキミたちはどう責任を取るのかな?民間人に恐怖を抱かせる事態になれば我々は日本の警備を非難せざるを得ないよ?」

 

それでも執拗に求める日本政府に見兼ねて兵藤家が動き出す。「これ以上騒ぐな」と。

曹操たち神器(セイクリッド・ギア)の所有者からアザゼルたち神の子を見張る者(グリゴリ)の技術で規定に従い条件を満たさなければ能力を発動できなくさせられ、冥界の辺境にて厳重な警備の下で収監。

黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』は天界に没収。残りの問題はセカンド・オーフィス。

一誠とオーフィスの分身体とも言えるこのドラゴンの存在をどうするべきか悩んでいたところ、

 

「彼女、一誠に依存してるっぽいから人畜無害に等しいだろ?」

 

誠の一言でセカンド・オーフィスはオーフィスが監視することで決着ついた。

 

「残念だったな曹操」

 

「一誠がやられた原因、吸血鬼に攻め込む時点で私たちは間違いだったかもしれないな」

 

「だが、それでも楽しかったとも言える」

 

「リース、お前はリゼヴィムに復讐する目的で加わったのにとんだとばっちりを食らったな」

 

「いいの・・・・・私の代わりにきっとあの悪魔をどうにかしてくれるだろうから・・・・・」

 

「ちくしょうっ。目が覚めたと思えば何時の間にか捕まっているってなんだよこれ」

 

「・・・・・お腹空いた」

 

収監されている英雄派。特殊な魔術式で作られた冥界の辺境にある収容施設に新たな囚人が加わった。

曹操たちが目を見開いて驚くほどのものだった。

 

「お、お前!?」

 

「・・・・・久し振り」

 

「驚いたな・・・・・てっきり元の生活に戻っているのかと思ったのだけれど」

 

「俺もお前らと同じテロリストだったんだ。―――リーラたちに顔を向けることなんてできない」

 

とある人物の単語が出てきたことで曹操とゲオルクは目を丸くした。

 

「記憶が戻ったか。いや、私たちを責めないのか?」

 

「・・・・・俺が望んだ事なんだ。記憶の件についても感謝してる。だから責めも非難もしないよ」

 

記憶を封印された一誠とはどこか違い、苦笑を浮かべる。

 

「でも、キミを慕っている者たちは何も言わないのか?」

 

「いや、この事はアザゼルのおじさん、魔王のおじさん、神王のおじさんにだけ言って当然言われたさ。だけど、俺だけのうのうと償いもせずに生きていられない。洗脳されていたんだからしょうがないと言うが、俺の存在と行動は世界に知られている。十年も二十年も経っても俺たちは英雄派というテロリストがいる事を認知されるだろうし、俺は人間界で堂々と闊歩することはできない」

 

「そうだな」ゲオルクは当然とばかり発した。自分たちが犯した罪は相当重い。歳を取っても死んでも消えることは無い事実。一誠もそれを受け入れここに自ら来たのだろうと悟る。ヘラクレスは怪訝に一誠に問う。

 

「お前はそれでいいのかよ?」

 

「ああ、あいつらは待ってくれる。いや、それどころか俺はある提案をした」

 

「提案・・・・・?」

 

「俺の力が必要なら曹操たちも一緒に戦わせろってな」

 

一誠が共闘を望む。どうしてそんな事を提案に出したのか理解し難い。

 

「俺たちは負けたけどあいつらと張り合えるぐらい実力はある。リゼヴィムの異世界侵攻の野望を阻む力はどの世界も必要だ。あいつらも強いが限界もある。特にあのゾフィリスとかいう邪龍はとても厄介だ。オーフィスとクロウ・クルワッハでも倒せないんじゃヤバい。俺も俺の中にいるドラゴンたちもきっとそうだろう」

 

「少しでも対抗できる力を必要としている勢力に私たちを売ろうとするのか?」

 

「俺も含まれている。というか、アザゼルのおじさんたちは必ず俺を必要とするはずだ。テロリストだけど敵の敵は味方だとは思わないか?」

 

「ふふっ、流石だよ一誠・・・!」と曹操は笑みを浮かべ、英雄の子孫としての戦いを続け、一誠の願いを、約束を叶えられることに胸を弾ませた。

 

「そういうことだからリース。俺と前の『復讐』はまだ終わっちゃいない」

 

「―――イッセー、あなたと言う人は・・・・・」

 

感動し、リースは瞳を潤わせる。どこまでも兵藤一誠はブレない存在だと曹操たちも改めて認知した。

 

「俺はドラゴンだけど北欧の主神に認められた勇者。人間の敵、悪で魔の存在を倒すのは―――何時だって人間で勇者と英雄だ」

 

 

 

                                    fin


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