誕生会以降は色んな活動に参加することとなった。勇者部の活動は多岐に渡る。
まず、校庭の草むしりのような校内活動。それから市のマラソン大会の手伝い、保育園での人形劇披露、等の郊外活動に加えて子猫の里親探しといったことまで行う。
私が行った今日の部活動は派遣依頼。他の部活が「勇者部に部員を貸してくれないか」と頼み込むことが度々ある。今回は二つの運動部から依頼が来た為、友奈と私がそれぞれに向かい依頼を果たしてきたのだった。運動部の部活終了時刻は文化部(勇者部もこれに当たる)に比べて少し遅いため、派遣された日の活動報告は翌日に行うことになっている。
だから、今の私は校門前に立って友奈を待っているというわけ。
「夏凜ちゃーん!」
ボンヤリとしながら立っていると、いつもの声が聞こえてきた。走ってきた友奈は私の近くで立ち止まり、ひとまず息を整える。
「もう来てたんだ、早いなぁ」
「友奈が遅いんでしょ。誰かに捕まってたの?」
「実はそうなんだよねー。帰ろうとした時に友達から話しかけれて、ちょっと立ち話しちゃった」
二人で横並びに歩き出す。そして歩きながら、彼女が左手で私の右手を掴んで来たので、指を絡ませて手を繋ぐ。二人っきりで帰る時は毎回こうしている。最初の頃は気恥ずかしかったのだが、今ではそんなことはない。むしろ、不思議と気持ちが落ち着く位になっている。
「夏凜ちゃん、剣道部の方はどうだった?」
「んー、特に話すような出来事はないわね。友奈の方は?」
「えっとねー、私が思いっきり打ったらソフトボールがどこかに行っちゃって、そのボールを探すのが大変だったよー」
「そうなんだ」
「うん、そうだよ! って、あれ? 話が終わっちゃった」
このような感じで他愛の無い話を続けていると、彼女が急に立ち止まる。
「どうかしたの?」
「ねぇ、夏凜ちゃん」
「何よ」
「ずっと、こうして笑って過ごせたら良いよね」
「……そうね。その為にもバーテックスを全部倒さないと」
「そうだよね。でもちょっとだけ、怖いんだ」
「怖いって、戦うことが?」
「ううん、少し違うの。自分でもよく分からないけど……なんだか先の事が不安で怖い」
彼女の瞳を真っ直ぐに見つめながら、私は言う。
「なら、私が友奈を安心させてあげるわ。友奈の不安なんて全部なくしてあげるから」
「えへへ、そっかぁ。ありがとね、夏凜ちゃん」
私の言葉で笑顔になった彼女が、繋げている手をギュッと握りしめてきた。その表情と行為で、なんとも形容しがたい気持ちになる。ただ、彼女の笑顔を守りたい、と心から思ったことは間違いなかった。