100万Gの男が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執り、借金の返済をします。   作:Z/Xプレイヤー26

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小鬼群との初めての戦闘時にあまりにも攻撃を躱されまくった時に、リアルに『当たらなければどうと言う事はない』を実感した。


100万Gの男、過去を探る。

クロウは工廠を訪れたが誰も居らず、困惑していた。

 

「誰も居ない?いつもなら明石か夕張が居るんだけどな…妖精さんすら居ねぇ」

 

クロウが工廠内を見渡すが、人影は無かった。仕方無く、クロウは夕張を探しに、彼女の部屋がある軽巡の寮へと向かった。

 

■■■■■

 

軽巡の寮へと到着したクロウは、寮の入り口に奇妙な物を見つけた。

 

「何だコレ…?」

 

軽巡寮の入り口には看板が立っており、《只今駆逐艦達とDVD観賞会中の為、駆逐艦及び軽巡以外は立入禁止とする。特に長門型戦艦一番艦の立ち入りは深く禁ずる》と書かれていた。

 

「いや、本当に何だコレ…長門が執拗に拒まれてるんだが。何やってんだ?DVD観賞会って…」

 

あからさまに不自然な看板にクロウが悩んでいると、後ろから声をかけられた。

 

「アンタ…何やってんのよ?」

 

「ん?ああ、叢雲か。いや、夕張に用があったんだが…取り込み中みたいでな」

 

クロウが看板に視線を向けると、叢雲は納得したような顔をした。

 

「成る程ね。別に良いわよ入っても。ただ単にDVDを観てるだけだから。夕張が暇潰しに駆逐艦達にアニメのDVDを見せてるのよ」

 

「良いのか?ここに駆逐艦及び軽巡以外は立入禁止って書いてあるが…」

 

叢雲が視線を寮の近くの茂みにやると、何かが動いた。

 

「別に…“あれ”を侵入させなければ」

 

「………何やってんだよ長門…」

 

茂みで動いていたのは長門だった。クロウに喧嘩腰だった長門の面影は最早微塵も無かった。

 

「仕方ないだろう!!私も寂しいんだ!!こんな看板まで立ててしまって…」

 

「アンタ全然懲りてないわね…戦闘じゃあ物凄く頼りになるのに、どうしてこうなったのかしら」

 

「俺に聞かれてもな?」

 

叢雲の問いに対して、クロウは首を傾げた。

 

「叢雲!私も駆逐艦達と戯れたいんだ!!皆から隠すようなDVDを観ながら!」

 

「言い方が気色悪過ぎるのよ!酸素魚雷喰らわせるわよ!!」

 

叢雲の威嚇に対しても長門は堂々と返した。

 

「なぁに…この長門、その程度では沈まんさ!!」

 

「クロウ!!この戦艦気持ち悪いわ!!」

 

「………俺ってこいつに喧嘩を売られたんだよな?」

 

今の長門を見て、クロウは溜め息を吐く。

 

「フッ…驚いたか?」

 

「誇らしげに言うんじゃねぇよ…駄目な方で驚いてんだよ」

 

「フフフ…クロウ、貴様もこの長門g…」

 

クロウが愚痴を吐いた…その時、『あらあら…』と声がした。そして長門を黒い影が連れ去った。

 

「うおっ!?長門が消えたぞ!?」

 

驚くクロウを尻目に、叢雲は空を見上げて呟いた。

 

「今日も大変ね、あの妹さんは。仲が良い姉妹だからこそ、尚更か。さて。障害物は消えた事だし、さっさと行きましょう」

 

「あ、ああ…」

 

クロウは長門に対する扱いの酷さに戸惑いながらも、叢雲についていった。

 

夕張の部屋に向かう道中、クロウは気になっていた事を叢雲に質問した。

 

「なぁ…叢雲はこの鎮守府では最古参なんだよな?」

 

「………ええ。大体予想はつくけど、何の質問かしら?」

 

クロウは『それなら話は早い』と、前の提督について質問した。

 

「言っておくけれど、加賀が言うほど前の提督は無能じゃ無かったわよ。資金力と上層部へのコネがある時点で、無能では無いもの」

 

「確かにな。特に資金力…俺には縁が無さすぎるぜ…」

 

クロウが遠い目をすると、叢雲は『大丈夫?』とクロウを心配した。

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

「アンタそれ駄目なヤツよ?」

 

「本当に大丈夫だ。続けてくれ」

 

「そ、そう?なら続けるわ…」

 

叢雲は咳払いをすると、話を続けた。

 

「資金力と上層部へのコネはある。それに戦力も。大和や長門…あの辺りが居る時点で他の鎮守府よりも優れているのは分かるわよね?」

 

「ああ…軍艦について調べたしな。強いのは分かる。だがよ?それなら何で加賀さんは無能なんて言うんだ?」

 

叢雲が言葉に詰まる。言うべきかどうか。

 

「………この話を聞いても…皆に今まで通りに接するって誓える?」

 

「………話の内容にもよるな」

 

「あら、正直なのね。てっきり嘘で誓って話を聞き出すと思ってたのに」

 

驚く叢雲に対して、クロウは笑って答えた。

 

「俺は不用意には保証人にはならないのさ」

 

「そう。でも、誓えないなら言わないわよ?中途半端な気持ちで聞いて良い話じゃ無いわ」

 

「了解だ。なら俺の覚悟が決まったら教えてくれよ?」

 

クロウの問いかけに叢雲は表情を変えずに答えた。

 

「ええ。それがこの鎮守府の初期艦の務めだもの…」

 

そうこう話している内に、夕張の部屋に着いたクロウと叢雲は夕張の部屋へと入って行った。




次回までは作戦前の準備の話です。

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