100万Gの男が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執り、借金の返済をします。   作:Z/Xプレイヤー26

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番外編です。基本的に一人称で進みます。


番外編~木曾の悩み。

偶然にも、クロウ達と旅行みたいな形になった、あの旅行から一週間経ったんだが、未だに球磨姉と多摩姉がからかってくる。『初めての経験はどうだったクマ?』とか、『やっぱり赤飯は必要かにゃ?』とか、ニヤニヤしながら聞いてくる。

 

「大体、何で俺がアイツに惚れてるみたいな事を言われなくちゃならないんだ?おかしいと思うよな?提督?」

 

「何だ?またからかわれたのか?ふふ、本当にクロウ君の言う通りに貧乏クジって奴だね?」

 

提督に相談に来たのに、提督はそれとなく対応するだけだ。いや、恐らく下手な事を言って、球磨姉や多摩姉に何か言われない様にしてるだけだな。

 

「……間宮の所へ行ってくる。」

 

「ん、行ってきな。ほい、間宮券だ。好きなだけ食べて、すっきりしてきなよ。」

 

「………ありがとな」

 

俺は提督から間宮券を貰い、間宮の所へ向かった。嫌な事は甘いもんを食って忘れるのが一番だな。

 

~甘味処間宮~

 

「あら、木曾さん。いらっしゃい!!今日は何にする?」

 

「餡蜜で。」

 

俺は手短に注文し、考える。からかわれない方法を。

 

「つっても、俺の考えなんて、お見通しなんだろうな…球磨姉と多摩姉って隙だらけに見えて、全く隙が無いからな…」

 

因みに、球磨姉と多摩姉はケッコンカッコカリをしていて、最高練度に達している。正直に言って、力で勝てる相手じゃ無いんだよなぁ…。

 

「策を練ってもお見通し…力技は論外…どうすっかなぁ…はぁ…」

 

思わず溜め息が出ちまう。大井姉や北上姉も球磨姉や多摩姉には勝てない。あれ?寧ろ、この鎮守府であの二人に勝てる艦娘って居なくないか?

 

「……詰んでるじゃねーか!?」

 

「うおっ!?いきなり大声出して、どうしたんだよ?木曾」

 

「ああ、悪い。驚かせちまったな…摩耶」

 

うっかり声に出しちまったお陰で近くにいた摩耶を驚かせてしまった。

 

「さっきの溜め息といい、らしくないな?悩みがあるなら聞くぜ?」

 

「らしくない…か。聞いても笑わないか?」

 

「笑わねぇよ、大方クロウの事で弄られてるとかだろ?いつもなら否定して終わりじゃねぇか。今更だし、笑わねぇよ」

 

内容まで読まれてるなら仕方無い。大人しく話す事にした。

 

「成る程な…確かに一泡吹かせるのは難しい相手だよな、あの二人は」

 

「だろ?さっきお前が言った通り、いつもなら否定して終わりなんだが、今回は流石にしつこくてな…終わりが見えないんだよ…」

 

俺の話を聞いて、摩耶も考えてくれているが、やっぱり打開策が簡単に見付かる相手じゃないよな。

 

「もう、最終手段は提督になんとか言って貰うしか無いんじゃないか?」

 

「やっぱりそうなるか?俺もそう考えたんだが、それでも球磨姉と多摩姉が止まる確率は五分五分だろうな…餡蜜旨いな」

 

やっぱり摩耶も提督に言って貰うのが、一番だと思ってるみたいだ。他力本願だが、それでも効果があるかどうかが分からないから怖い。

 

「なんだよ?珍しいな。摩耶と木曾が一緒なんてよ」

 

「ん?ああ、天龍か」

 

「フフ怖か。ちょうど良い所に来たな、アタシと木曾は重大な会議をしてるんだ。お前も参加しろ」

 

「摩耶テメェ!!フフ怖って俺の事か!?」

 

摩耶の挑発に天龍が乗った。相変わらず、そのネタだけは譲れないらしい。あ、ネタじゃねぇか。本人は大真面目だったな。

 

「天龍、あんまり騒ぐな。間宮に迷惑だろ?摩耶も天龍をからかうのは止めろ」

 

仕方無いから二人を止めた。これ以上の面倒事は御免だ。

 

「悪かった悪かった。悪かったついでに天龍、知恵を貸せ」

 

「謝る気無いだろ!?何だよ!!悪かったついでにって!?」

 

「………まだ騒ぐなら、二人とも……分かってるよな?」

 

後ろを指差すと、間宮がにこやかに笑っている。それはもうにこやかに…無言の圧力って怖いよな。

 

「いや、悪かった、天龍…」

 

「あ、ああ…気にするな。………フフフ…怖い…」

 

「さて、二人が和解したところでだ、天龍…知恵を貸してくれるか?」

 

「そう言えば、さっきも摩耶が言ってたな。重大な会議って何だ?」

 

天龍にも説明をした。すると天龍は眼を輝かせた。…地雷踏んだな。

 

「下剋上って奴じゃねぇか!!燃えるよな、そういうの!!」

 

「まぁ、あながち間違ってはないが、相手は最強の球磨姉と多摩姉だ…摩耶とも話したが、提督に言って貰うしか方法が無いと思うんだが、お前はどう思う?」

 

「……そうだな、あの二人が相手だからなぁ…どうすっか…」

 

天龍が考え込む。そう言えば、女が三人集まれば姦しいとか良く言うが、俺達三人…特に俺、色気無いよな?因みにこの中でクロウに男と間違えられたのは俺だけだ。天龍と摩耶って何だかんだ言って、女っぽい部分はあるしな…何処がとは言わないが。

 

「何だよ?アタシと天龍の顔を見比べて…」

 

「あ、いや、何でも無い…」

 

摩耶に不思議そうな顔をされたが、気にしない。寧ろ今更女っぽい格好をした所で、また球磨姉や多摩姉にからかわれるだけだしな…

 

「そう言えば、木曾。お前って本当にクロウの事、何とも思ってないのか?」

 

「は?」

 

……天龍がいきなり訳の分からない事を言い出したぞ?

 

「ああ…天龍、お前の言わんとする事は何となく分かる」

 

摩耶は天龍の言葉に納得したようだ。俺にはさっぱりなんだが。

 

「それとこれとは、話が違くないか?俺がアイツをどう思ってるかなんて…」

 

「いや、関係あるんじゃないか?お前の姉貴達って勘が鋭いつーか、なんかスゲェじゃんか?」

 

「そう…だな?」

 

俺は天龍の言葉に肯定で返す。確かにあの二人の勘は鋭い。あの二人曰く『野性の勘』らしい。

 

「それに、色々とトラブルを起こしてるが、姉妹の仲は良いだろ?」

 

「まあな…」

 

またも俺は肯定で返した。この質問に何の意味があるんだ?

 

「仲が良いなら、妹が本気で嫌がる事をしないんじゃないか?って話だ」

 

「……俺には話が見えないんだが?」

 

さっぱり分からない。天龍は何が言いたいんだ?実際問題、球磨姉達の弄りで迷惑してるんだ。

 

「天龍、ストレートに言ってやれば?」

 

「そうだな。それが手っ取り早いみたいだな」

 

「ストレートに?分かりやすく言ってくれるなら、有りがたい。蚊帳の外は嫌だからな」

 

俺の言葉を聞いて、天龍が口を開いた。

 

「つまり、からかわれるのが満更でもないんだろ?もっと簡単に言えば、普通に好きなんだろ?クロウの事」

 

…………は?

 

「いやいやいやいやいや!?何でそうなる!?俺がアイツを好きになってる!?散々否定してるだろ!?」

 

「じゃあ、神に誓って惚れてないと言えんのか?お前の誇りに誓って『違います』って言えんのか?」

 

今度は摩耶まで言い出した。神に誓ってとか、大袈裟過ぎるだろ!?

 

「違うと言えるか?」

 

「い、言えるに決まってるだろうが!!」

 

「んじゃあ、お前の誇りに誓って言えよ」

 

摩耶も天龍もしつこい!!ああ、言ってやるよ!!

 

「俺は…誇りに誓って…クロウに……惚れて…惚れて…」

 

何故言えない!?口が動かない!!

 

「……認めようぜ…な?木曾?」

 

「そうだぜ?恥ずかしがるなよ。俺は応援するぜ!」

 

摩耶と天龍が肩に手を置いてくる。

 

「うぅ…畜生!!分かったよ!!認める!!俺はクロウの事が好きだよ!!これで満足か!?」

 

「「満足(クマ!!)(にゃ!!)」」

 

何処からか、球磨姉と多摩姉の声が聞こえる!?何処だ!?何処に居やがる!?

 

「ずっと奥の部屋に居たクマ!!」

 

「同じくにゃ!!」

 

俺が声のする方を見ると、奥の座敷部屋の方から、球磨姉と多摩姉が出てくる。

 

「いつからそこに…!?」

 

「お、俺達の話を聞いてたのか!?だ、だとしたら…」

 

摩耶と天龍が焦っている。確かに、最初から聞いていたとなると、球磨姉と多摩姉に一泡吹かせるって話も聞かれている…

 

「球磨達に一泡吹かせるなんて、百万年早いクマ!!」

 

「覚悟は出来てるかにゃ?」

 

近づいて来る球磨姉と多摩姉…天龍なんて、ビビりまくっている。

 

「フ、フフフ…フフフ…こ、怖い。怖すぎる…!!」

 

「お、落ち着け天龍!こ、怖いなら、アタシの後ろに隠れてな…!」

 

摩耶が天龍を庇おうとするが、明らかに球磨姉と多摩姉に気圧されてる。いや、俺も怖いけど、今は遥かに羞恥心が勝っている。

 

「まぁ、さっきの木曾の告白に免じて、二人は許してやるクマ」

 

「それもそうにゃ…漸く愛しい妹が、自分の気持ちを認めたんだからにゃ!」

 

……もう、死にたい。

 

「漸く本心を語ったので、木曾弄りは止めるクマ。今度はクロウの女嫌いをどうにかするクマ」

 

「そうするにゃ。相手が女嫌いなら、木曾の愛を受け止めてもらえないにゃ…それは姉として許せないにゃ…」

 

勝手に話が進んでいく…このままだと、二人がクロウに何をしだすか分からない!止めるしか無い!

 

「球磨姉!多摩姉!それは俺が何とかするから、手を出さないでくれ!……俺は、俺の力でアイツを振り向かせるから…!」

 

自分で言ってて死ぬ程恥ずかしいが、そんな事を言っている場合じゃねぇ…!どうにか思い留まってくれ!!

 

「……木曾…成長したクマね…」

 

「多摩は嬉しいにゃ…!」

 

「それじゃあ…!」

 

「好きにするが良いクマ!!手出しはしないで応援するクマ!」

 

どうやら上手くいったみたいだな。少しヒヤッとしたが、大変な事にはならなさそうだ。

 

「それじゃあ、頑張るクマよ!!」

 

「応援するにゃ!!」

 

「あ、ああ!!」

 

まあ、あっさりと引き下がり過ぎると思うのは、杞憂だよな…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、球磨達の手によって『木曾の恋を応援する会』が発足され、木曾の気苦労が増えたのは別の話である。




キャラを書き分けられているか自信の無い番外編でした。

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