100万Gの男が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執り、借金の返済をします。 作:Z/Xプレイヤー26
クロウ達は工廠に到着し、クロウはすぐにブラスタを展開して、特佐に見せた。
「これが俺の相棒だ。好きなだけ調べてくれ。」
「ほぇ~…これがブラスタ…見れば見るほど、艦娘とは違うんスね…深海棲艦に対抗しうる手段と聞いていたので、艦娘に近い姿かと思ったんスけど。」
特佐は感嘆の声をあげる。
「ま、艦娘と一致している点で言えば、妖精さんが手を加えたって事だな。調べるべきは妖精さんかもな?」
「あはは…調べても分からないから、ブラスタに望みをかけてるんスよ。」
二人は妖精さんを見ながらもお互いに苦笑いをするだけだった。分かっているのだ、妖精さんは不用意に手を出して良い存在では無いことを。
「早速ッスけど…ブラスタを調べても良いッスか?」
「ああ、存分に調べてくれ。時間が許す限り…な。」
視察の時間は夜の20時まで。視察は建前ではあるが、書面で残っているため、時間は守らなければならなかった。
(まぁ、解析出来なかったとしても、陸の連中は何かと理由をつけて、また来るんだろうがな。)
「そう言えば、あきつ丸はどうすんだ?一応視察って扱いなら、見て回るか?一応、上の連中が納得する程度の情報書類なら、さっき渡したデータにも入ってるが、矛盾があると面倒だろ?」
「それもそうッスね。あきつ丸さん、一応見て回って貰っても良いッスか?艦娘さん達とのお喋りとかでも全然構わないッスから。」
「了解であります!!」
特佐の許可を聞き、あきつ丸は鎮守府を見て回る事にした。
「んじゃ、行こうぜ。それと特佐、内線を渡しとくから、何かあったら連絡してくれ。俺の内線の番号は330だ。」
クロウは特佐に内線を渡し、あきつ丸を連れて工廠を出た。
~鎮守の廊下~
「さてと…どこから回るか…行きたい所はあるか?」
工廠を出たクロウとあきつ丸であったが、正直言って設備が他の鎮守府とあまり変わらないので、見て回る場所など無かった。
「そうでありますな…そう言えば、艦娘寮があるとお聞きしましたが…」
「そりゃもちろんあるが、陸軍には無いのか?」
「生憎艦種が殆んど無いと言っても過言ではありませんからな…寮は無いのであります。」
あきつ丸の言葉を聞き、クロウは納得する。
「絶対数が少ないなら、作る必要も無い…か。」
「現時点では、陸の艦娘は片手で足りる数しか居ないのであります。」
(仲間が少ないのは辛いだろうな…艦種は違うが、同じ艦娘同士で話をしたいんだろう。)
「なら、早速行こうぜ。最初は駆逐艦の寮からだな。」
クロウ達は駆逐艦の寮へと向かった。
~駆逐艦の寮~
「さて、着いたぜ。駆逐艦の寮だ。……駆逐艦の寮には、戦艦の寮長が居るんだが…」
歯切れの悪いクロウの言葉に、あきつ丸が不思議そうな顔をする。
「何か不都合が?」
「いや、何て言うかな…?頼りにはなるんだが、どうも少し駆逐艦には甘い奴でな…」
クロウがあきつ丸に説明しようとしたその時、後ろから声を掛けられた。
「何だクロウ、珍しいではないか?何か用でもあるのか?暇ならまた組手でもするか?」
クロウに声を掛けたのは長門だった。
「おいおい、暇に見えるか?それに、組手はパスだ。あの一件以降は勝ててねぇしな…」
「む、そうか…ん?おお、お前が噂に聞く陸軍の艦娘か?私は長門だ。この駆逐艦寮の寮長をしている。」
あきつ丸の姿を見て、長門が自己紹介をする。それに対して、あきつ丸も自己紹介をした。
「自分はあきつ丸であります!!かの高名な長門殿にお会いできるとは…光栄であります!!」
「そ、そうか?そう言われて悪い気はしないが…」
普段は言われない様な事を言われ、長門は照れ臭そうにした。
「謙遜はしなくても良いだろ?この鎮守府の中でも、かなりの強さなんだしな。そうだな、今俺達は鎮守府内を見て回ってるんだが、駆逐艦寮の寮長として、案内してくれないか?一応、視察の一環としてな。」
「そうなのか?そう言う事ならば、この長門に任せておけ!!」
息巻く長門についていき、あきつ丸とクロウは駆逐艦寮を見て回る事になった。
「まずは第六駆逐隊の部屋だな。基本的に姉妹艦が居る艦娘は同室になっているな。まぁ、姉妹艦全員が揃う鎮守府も少ないから、他の鎮守府は基本的に三人部屋らしいぞ。」
長門の説明を受け、あきつ丸がメモを取る。
「フムフム…中は見せて貰えないのでありますか?」
「空き部屋がある筈だ、最後にそこを見て、詳しい構造等は見てくれ。流石にプライベートである部屋には入る訳にはいかんのでな…第六駆逐隊が部屋に居たら、歓迎してくれたと思うのだが、遠征に行ってしまってな。」
「タイミングが悪かったみたいだな。まぁ、確かにあいつらなら歓迎してくれただろうな。」
「そうでありますか…」
少し残念そうにするあきつ丸。
「次に行く部屋には艦娘が居る筈だ…ん?」
長門が次の部屋に案内しようとするが、何かの音を聞き、立ち止まった。
「………こっちから、提督さんの匂いがするっぽい!!今日こそ遊んで貰うっぽい!!」
「匂いって…良く分かるね?僕には分からないよ…」
「くんくん…ふふ~ん!!時雨はまだまだ未熟者っぽい!!」
「そんな熟練者にはなりたくないな…あ、本当に居た。」
音の主は夕立と時雨であった。
「………俺って、そんなに臭うか?」
自分の匂いを辿ってきた様な会話だった為、若干ショックを受けるクロウ。そんな様子を見て、時雨がフォローをする。
「大丈夫だよ、クロウは臭わないよ。夕立が特殊なだけだよ。」
「そ、そうか?なら良いんだが…俺も22歳で加齢臭は嫌だからな…」
「「「「え!?22歳!?」」」」
クロウの年齢カミングアウトにその場に居た全員が驚く。
「………そんなに驚くなよ」
「「「「22歳に見えない!!」」」」
「畜生!!いっつもこれだ!!」
「う…そんなに落ち込むな!あれだぞ?そう!お前は大人びてる!!うん!!」
(長門殿が必死であります…) (必死だね。) (必死っぽい…)
そんないじけるクロウを立ち直らせるのに、30分を要した。しかも、立ち直った理由は『アレ』である。
「しかし、私のフォローには全く反応しなかったのに、小銭が落ちる音で反応するとは…屈辱的だ!」
「どうして時雨は提督さんを立ち直らせる方法を知ってたっぽい?」
そう、時雨が小銭をわざと落とし、クロウを正気に戻したのだった。
「加賀さんから聞いたんだ。『あの莫迦を上手く操る方法よ』ってね?ほら、クロウの表情を見てごらんよ。」
そう言って、時雨は小銭を床に落とす。チャリンとその音が廊下に響いた。
「……はぁ…心が洗われる様だ…」
「凄まじく良い笑顔でありますな…」
「うむ。」
「ぽい。」
「でしょ?クロウって、時々物凄く集中して、周りが見えなくなるような事があるけど、この音はどんなに集中しても、聞き逃さないみたいだよ?」
全員がクロウの顔を見る。
「守銭奴だな。」
長門が言い放つ。
「そうでありますな。」
あきつ丸が同意する。
「借金の影響っぽい?」
「だろうね。」
夕立が疑問を口にし、時雨が即答した。
「カッコ悪いっぽい…」
夕立が残念そうな声を出すが、クロウは反論しなかった。寧ろ…
「フッ…カッコいいだけじゃ、借金は返せないのさ…覚えとけ…」
開き直った。そんなクロウに対し、全員が哀れみの眼を向けたのは言うまでも無い。
リアルにナットと小銭を落とした音を比べてみたら、サイズが近いと、本当に違いが分からなかった…クロウさんマジクロウさん。