100万Gの男が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執り、借金の返済をします。   作:Z/Xプレイヤー26

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100万Gの男、案内する。

クロウ達の目の前で事故った陸軍の車からは、煙は出ている物の、爆発はしていなかった。

 

「急いで助けるぞ!!ったく、いきなり貧乏クジか!?」

 

「下らない事を言ってないで早くしなさい。爆発はしてないけれど、不味いわよ…燃料が漏れてるわ。」

 

加賀の言う通り、車からはガソリンが漏れて、臭いがした。

 

「っあ~!!痛いッス…大丈夫スか、あきつ丸さん…」

 

「大丈夫であります…何故に脇見運転を…」

 

陸軍の車から、人が二人出てくる。どうやら二人とも無事の様だ。

 

「そこの二人!無事なら走れ!ガソリンが漏れてる、急げ!!」

 

クロウが二人に声をかける。その声を聞いた二人はハッとする。

 

「うげぇ!!ガソリン臭いッス!!あきつ丸さん、急ぎましょう!!サイバ○ロンの司令官みたいに爆発するッスよ!!」

 

「それは嫌であります!!」

 

脱兎の如く走る二人。そして少しして、車が爆発した。ついでに鎮守府の正門が吹き飛んだ。

 

「ホアアァァァァァ!!車がああぁぁぁ!!」

 

「ああぁぁぁ!!鎮守府の正門がああぁぁぁ!!」

 

「何で門が壊れんの!?道をはさんでるんだけど!?」

 

クロウ、借金追加である。

 

~鎮守府内の客間~

 

「「ごめんなさい」」

 

恐らく陸軍の人間であろう二人は、クロウに頭を下げていた。

 

「……いや、誰も怪我をしてないからな、良いけどよ…何で事故ったんだよ?」

 

「遥香技術特佐殿の脇見運転が原因であります!!」

 

「あきつ丸さん酷いッスよ!!……猫さんが居たんッス…」

 

「猫を避けようとしたのか?」

 

技術特佐は首を横に振る。それどころか、全身が震えている様にも見える。

 

「違うッス…あの猫は…違うッス!!恐ろしい何かッス!!」

 

「何を…言ってんだ?怯えようが尋常じゃないが…」

 

クロウが不思議に思っていると、何処からともなく妖精さんが出てくる。

 

『それは妖怪です。借金提督、今回の事は仕方無いです。妖怪の仕業は誰も責められないのがこの世界のルールです。』

 

妙に悟った口調の妖精さんに違和感を覚えながらも、『まあ良いか』と考える。

 

「そ、そんな事よりもッス!!艦娘の資料やデータを見せて欲しいッス!!本来の目的はそれッスから…」

 

(まあ、大方予想通りだな。結局は無駄な意地の張り合い…それでこんな所に視察に向かわされるなんてな。この人も貧乏クジを引かされた訳だ。だが、別の腹積もりがあるかも知れねぇ、一応聞いておくか。)

 

「随分と簡単に言ってくれるが、一応は極秘事項だ。それなりの理由と…上の許可は取ってるんだろうな?視察なんて“建前”を建てたんだ、厄介事は嫌だぜ?」

 

クロウはわざとらしい言い方をする。果たして嫌な顔をするか、はたまた笑って誤魔化そうとするか。反応を見る為だった。しかし、特佐の反応はクロウの予想外の反応だった。

 

「それは大丈夫ッス。これが許可証と…あと、理由については…愚痴みたいになるッスけど…良いッスか?」

 

急に何かを悟った様な表情になったのだ…そして、クロウはその表情を知っている。その表情は“抗えない理不尽に会った時の表情”だった。

 

「とりあえず、座って話そう。…話しにくいだろ?(この表情はマズイ!!俺が借金で取り乱した後に、必ずする表情だ!!)」

 

座る様に促された特佐は、クロウの優しさであることに気付き、一礼してから座る。

 

「事の始まりは、陸、海、空で合同のセレモニーがあった時の事ッス…合同のセレモニーと言う事もあって、陸、海、空の全てのお偉い方々も居たッス。深海棲艦の問題もあって、海軍の対応は重大な物だったッス。」

 

「まあ、そりゃそうだよな。どう言う訳か陸には上がって来ないしな。」

 

クロウの言葉に対し、特佐は頷いた。

 

「そうッス。深海棲艦は陸には来ない。だから、全て海軍に任せる…だけどそいつはおかしいッス!!“海だから陸は何もしません”なんてあり得ないッス!!人類全体の敵ッスよ!?ドイツを見てみるッス!!艦娘の数は少なくても、国が一丸となって深海棲艦に対抗しているッス。『ドイツの科学は世界一!!』とか言ってる将校が居るッスけど、国が纏まっているから言える謂わば“余裕”って奴ッス!!あ、お茶頂きます。」

 

「ああ。」

 

お茶を飲み干して、特佐が続ける。

 

「話が逸れたッスけど、セレモニーの話に戻すッス。まあ、つまり、艦娘がそのセレモニーでお披露目になったんス。で、陸のお偉いさんが艦娘を見て、言った言葉が『可愛いから我々も造ろう」ッスよ!?国を護ろうとかじゃなくて、可愛いからって…巫山戯てるんスか!?馬鹿にしてるんスか!?」

怒鳴る特佐に対して、クロウは黙って聞いていた。そして特佐の隣に居るあきつ丸も黙って頷いている。やはり思う所があるのだろう。

 

「国の内部はバラバラ…上の脳内はお花畑!!もう泣きたいッスよ!!だから、ここに来た理由は、“可愛いから艦娘造りたい変態と馬鹿の我が儘”って訳ッス。」

 

「………大変だな。」

 

「はいッス…でも、それは上の理由ッスよ。私がここに来た理由は、クロウさん…貴方に興味があるんスよ。いえ、ブラスタに。」

 

真剣な表情に変わる特佐。しかしクロウは、さも当然と言った感じで答えた。

 

「OKだ。好きなだけ調べてくれ。とりあえず、艦娘のデータはあっちのパソコンに入っているから後で渡す。ブラスタに関しては、調べてどうにかなれば御の字だけどな。」

 

「成る程…異世界の技術は調べても無駄だと?」

 

(流石に知られてる様だな。当然と言えば当然か。)

 

「調べても無駄だと言われても、調べさせて貰うッスよ。ブラスタは希望ッスから。海だけじゃなく、空や…勿論陸にも対応して、深海棲艦に対抗しうる手段スからね。それを量産出来れば…戦いは終わりに近付くッス。」

 

確かに特佐の言う通り、ブラスタが量産されれば、“深海棲艦との戦いは”終わりに近付くだろう。しかしクロウは知っている。大きすぎる力は、争いを生むと。だからこそクロウは、ブラスタが量産されるの期待する半分、不安も抱えていた。そんな何とも言えない気持ちの中、クロウ達は工廠へ向かった。


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