100万Gの男が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執り、借金の返済をします。   作:Z/Xプレイヤー26

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作者はデートした事がありませんが…作者に何か落ち度でも?


100万Gの男、デートする。

クロウは鎮守府の門の前で待っていた。今回のデートの相手を…但し、誰が来るのかを知らずに。

 

「菊月の奴…何が『知らずに会ったほうが面白いだろう』だ。不安しか無いぜ…」

 

言葉の通り、クロウは不安になっていた。女嫌い…つまりは、デートとは無縁の男がデートする事になり、更には貧乏クジ体質の自分がデートをして、無事でいられる筈がないと思っていた。

 

「しかし、街に出向くのは久しぶりだな。海に近い割りには、賑やかな街なんだろうが…」

 

クロウが考えていると、後ろから気配がした。

 

「さて、お相手は…扶桑か。」

 

「ご不満ですか?クロウさん?」

 

クロウが振り向くと、そこに居たのは超弩級戦艦『扶桑』の艦娘である扶桑であった。

 

「不満じゃないけどよ、山城が覗いてるのがな。」

 

「大丈夫ですよ。尾行でもしてきたら怒ると言っておきましたから…」

 

「そ、そうか…」

 

穏やかに笑う扶桑に、若干の恐怖を覚えたクロウだった。

 

「と、取り敢えず、行こうぜ…」

 

「分かりました、行きましょう。」

 

クロウと扶桑は鎮守府を出た。

 

 

 

~市街地~

 

「やっぱり結構賑わってるな…」

 

「そうですね。海辺の街としては中々だと思いますよ?横須賀や、大きな鎮守府が有る街はもっと凄いらしいですが。」

 

クロウと扶桑は談笑しながら街を歩く。

 

「に、してもだ…変な奴ら多くないか?」

 

「変?ですか?」

 

「ほら、あいつらとか…」

 

クロウが指を指した先には、何かの装置を腕に装着した人が向かい合っている。

 

「ああ、あれですか?最近流行っている遊びみたいですよ?バーチャルシステムでカードのキャラクターとかが出てきて、それで戦うんです。」

 

「バーチャル?結構ハイテクだな…」

 

クロウが見ていると、その二人の戦いに進展があったようだ。

 

「何?駆逐艦もレベルが上がれば、戦艦になれるのでは無いのか!?」

 

「いや、ならないからね?ダイレクトアタックで終了だ!!」

 

「ぐあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「なあ、扶桑?あれは大丈夫なのか?」

 

「大丈夫ですよ。大体は皆さんノリみたいですし…因みに、あの腕に着けている装置は、横須賀の鎮守府に所属している明石さんと夕張さんが作ったそうです。」

 

その話を聞いて、クロウの思考は金に走った。

 

「売り上げは…如何程ですか?可能なら、ウチの明石と夕張にも何か作らせようかと…」

 

「あの装置は…恐らく結構な売り上げでしょうけれど…そうですね…カード会社とも提携していますし…クロウさんの借金なんて一瞬で返せるくらいとしか…。あと、明石さんと夕張さんに何か作らせるなら、失敗のデメリットも考えて下さいね…。聞きましたよ?何でも、旅館の水道を改造して露天風呂の岩を壊したらしいですね?」

 

「うっ…確かにな…もっと余裕が出てきてからだな…。」

 

扶桑の忠告を聞き、考え直すクロウ。

 

「さて、今更だが悪いな…デートってか、俺のリハビリに付き合って貰ってよ…。定番だが、映画でも観ようかと思うんだが、どうだ?」

 

「構いませんよ?ただ、映画のジャンルはアニメやコメディにして下さいますか?」

 

扶桑の意外な申し出に、クロウは驚いた。

 

「意外だな?アニメとか好きなのか?」

 

「いえ…最近の映画は、その、所謂…鬱展開と言うのでしょうか?不意に暗い描写が多い気がして…尤も、最近のアニメ映画でも鬱展開はありますけど、アニメだと作り物と言うのが分かるので、まだ大丈夫なんですが。」

 

「成る程な…んじゃあ、適当に選ぶとするか…」

 

そう言って、二人は映画館へ入っていった。

 

「特撮のヒーロー物なら大丈夫か?」

 

「そうですね、それくらいなら。」

 

そうして二人が選んだ映画は…『メタ○マン』

 

~映画上映中~

 

『其処までだ、残念だったな!!』

 

「……………」

 

「……………」

 

『それじゃあ僕は一生このままですか!?』

 

『申し訳無い…そうだ。』

 

「……………」

 

「……………」

 

『そんな!!僕の両親は生け贄ですか!?』

 

『本当に申し訳無い。』

 

「……………」

 

「……………」

 

『このチップを差し込めば、スーツの更なる機能が解放される。』

 

『それは凄い!!一体何が出来るんです!?』

 

『私にも分からん。』

 

「……………」

 

「……………」

 

~映画上映後~

 

「……………」

 

「……………」

 

「………次は服屋にでも行こうと思ってるんだが…」

 

「………はい。行きましょう。」

 

映画の感想を言わない二人はそのまま次の目的地、服屋に向かった。

 

「そう言えば扶桑だけじゃねぇが、艦娘ってのは同じ服を何着も持ってんのか?」

 

「そうですよ。潜水艦の皆さんは『提督指定の水着』を着ていますし…ご存知無いんですか?」

 

「………俺、水着を指定した覚えなんかねぇぜ…前のスットコドッコイが決めたんじゃ無いのか?」

 

前の提督の話を聞いた途端、扶桑の表情が暗くなる。

 

(やべぇ…なんか地雷踏んだか?加賀さんは無能とか言ってたしな。陸奥を轟沈まで追い込んだのも前の提督の指揮って話だしな。前の提督の話は禁句だな…)

 

「あー…なんだ、悪かった。」

 

「?何がでしょうか?ああ、前の提督の話はするべきでは無かったとお考えですか?」

 

「あ、ああ…違うのか?」

 

扶桑の意外な態度に、クロウは思わず質問してしまった。

 

「別に加賀さんが仰る程、無能では無かったですよ…資金力はかなりの物でしたし、陸奥さんへの指揮は確かに悪かったと思いますが…。『吹雪さんや、菊月さんが元々居た鎮守府』の提督よりはまともだと思いますよ。」

 

「待て、吹雪や菊月が元々居た鎮守府?アイツ等は別の鎮守府の出身なのか?」

 

「はい。所謂ブラック鎮守府の出ですよ。吹雪さんは強い娘ですから、いえ、強がってるだけかも知れませんけれど…菊月さんは強がってる余裕すらありませんでしたから…」

 

(辛い過去…か。)

 

「服屋で話す話じゃ無いな。それに、その事は本人たちから聞くとするか。他人が勝手に話して良い事じゃ無いな。」

 

「…そうですね。そろそろ帰りましょうか…」

 

「あー…一応夕飯も食って行こうぜ?」

 

(切り出し難い様な表情ですね…リハビリは…順調…でしょうか?)

 

返事が無い扶桑を見て、クロウは若干不安になる。

 

「…嫌なら別に構わねぇんだが。」

 

「あ、いえ、御免なさい、是非ご一緒させて下さい。」

 

「あ、ああ…んじゃあ、行こうぜ。」

 

優しい笑顔で答える扶桑に対して安堵するクロウ。しかし、同時にクロウは違和感を感じていた。

 

(何だ?この違和感は…扶桑ってこんなに明るかったか?)

 

「…………どうしました?」

 

「いや、何でもねぇよ…」

 

(……気付いてはいない様ですね…まだ違和感程度ですか。)

 

そのまま、扶桑とクロウは夕食を食べて、鎮守府へ戻った。その後、デートの事を加賀に黙っていたクロウは、地獄を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~???~

 

薄暗い部屋で話す影が3つ…

 

「どうでした?クロウさんは…」

 

「私に違和感を感じた、といった所ですね…」

 

「そうか…流石はクロウだ…艦娘の知識も殆んど無いと言うのに、扶桑の違和感に気付くとは。」

 

「………深海棲艦だけでなく、イディクス…でしたか?変な組織も居ますし、クロウさんの力は必要ですからね。私達『原初の艦娘』である私達も頑張らないといけませんね。」

 

「はい。」

 

「フッ…」

 

3人が部屋を出ようとしたその時、部屋の灯りがついた。

 

「「「!?」」」

 

「貴女達…こんな暗い部屋で何をやっているの?」

 

灯りをつけたのは加賀だった。

 

「加賀!?どうしてこの場所が!?まさか、今の私達の話を聞いていたのか!?」

 

慌てる菊月を見て、加賀が溜め息を吐く。

 

「はぁ…貴女達、所謂オリジナルの艦娘って皆こんな感じなのかしら…私のオリジナル…考えたくも無いわね。」

 

溜め息を吐く加賀を見て、大和が口を尖らせる。

 

「私達の『暗躍ごっこ』の邪魔をしないで下さいよ。」

 

「そうですよ…案外楽しいですよ。加賀さんも如何ですか?」

 

扶桑の提案に、またも加賀は溜め息を吐く。

 

「遠慮しておくわ。」

 

オリジナルの艦娘。それは、それぞれの艦娘の根源となった艦娘である。オリジナルは量産されている艦娘と性格が若干異なる。例に挙げると、大和の一人称は『大和』であるのに対して、オリジナルの大和は『私』が一人称である。しかし、それは育っていった環境にも左右されるため、量産されている大和の中にも、一人称が『私』の大和も存在している。

 

「もう消灯時間よ…貴女達も早く寝なさい。」

 

そう言って、加賀は3人をそれぞれの部屋へ帰していった。

 

「………艦隊のアイドル…加賀さんだよっ☆………無いわね。」

 

誰も居ない部屋で、加賀は赤面していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「青葉…見ちゃいました!!」

 

「…………………………」

 

「あ」

 

青葉は入渠した。




次回はいよいよ陸軍視察が始まります!!

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