100万Gの男が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執り、借金の返済をします。   作:Z/Xプレイヤー26

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100万Gの男、限界が来る。

早朝の鎮守府で…悲劇は起こった…

 

「うわああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

クロウの部屋から、とてつもない叫び声が聞こえた。

その声を聞いた艦娘達は何事かと思い、飛び起きた。

最初にクロウの部屋に到着したのは、早朝の見回りをしていた吹雪であった。

 

「クロウ司令官!!大丈夫ですか!?失礼しますね!!」

 

吹雪がクロウの部屋に入ると、そこにはクロウを抱き枕にするような状態で眠っている金剛の姿があった。抱き枕状態のクロウは尋常ではなく震えていた…

 

「金剛おおぉぉぉぉ!!離れてくれぇぇぇぇ!!」

 

発狂状態のクロウを見て、吹雪が金剛を引き離そうとする。

 

「金剛さん、離れて下さい!司令官が死んでしまいます!!冗談抜きに!!」

 

力一杯に引っ張る吹雪であったが、金剛の力が強く、吹雪の力ではビクともしなかった。

 

「提督のHeartを掴むのは私ネー!!」

 

「離せぇぇぇぇ!!起きてるなら、離れやがれ!!」

 

「NO!!食らい付いたら、離さないネー!!」

 

更に強く抱き締める金剛。

 

「ぎゃあああぁぁぁぁ!!」

 

「…………朝から煩い」

 

クロウの叫び声を聞いて、起きたらしい加賀が金剛をひっぺがす…

 

「何するネ!!」

 

「煩い…」

 

そのまま加賀は金剛を引きずって出ていった。

 

「司令官、大丈夫ですか!?」

 

「あばばばばばばば」

 

クロウが正気に戻ったのは、30分後だった。現在は提督室で吹雪に謝罪していた。

 

「…………………悪い、吹雪…取り乱した…」

 

「司令官の女嫌いは本当だったんですね…何だかんだで皆への気配りとか出来てましたし…照れ隠しかと…」

 

それを聞いて、更に落ち込むクロウ。

 

「お、落ち込まないで下さい!あっ、でも…さっきもいった通り、司令官が女嫌いの事を、照れ隠しに使っていると思っている人達は多いですよ?早急に手を打たないと、今日みたいになっちゃう可能性が…」

 

「うっ…だがよ?四方八方を女に囲まれている鎮守府じゃあな…」

 

「そうですよねー…どうしましょうか…」

 

二人揃って頭を抱えていると、菊月が提督室に入ってくる。

 

「失礼する…明日の遠征についてだが…ん?何をしているんだ?二人揃って…」

 

「あっ、菊月ちゃん…実は…」

 

吹雪は菊月に今日の朝に有ったことを説明した。

 

「ああ…だから、金剛は加賀に怯えていたのか…それにしても、提督がその様な事では困るな。第一に、女嫌いと言う割りに、女に甘いのが悪いんだ…前の世界ではどうだったかは知らないが、ここでは男はお前一人と言っても過言ではない…唯一の男ともなれば、女嫌いだろうと、何だろうと接触は免れないのだ。」

 

「だからこそ、部下と上司の関係だとはっきりと解らせる為に、規律の厳しい鎮守府が殆んどだと言うのに…」

 

「堅苦しいのは苦手なんだよ…」

 

クロウは苦笑いしながら言った…

 

「堅苦しいのが嫌と言われてもな…………そうだな…クロウ、どの辺りまでなら、異性との接触は可能なのだ?今から質問する。可能か、不可能かで答えてくれ。」

 

「解った。」

 

「では、ひとつ目…二人きりでの会話は?」

 

「問題ない」

 

「手を繋ぐのは?」

 

「…………恋愛関係とか関係無いなら、何とか我慢出来ると思う。」

 

「我慢してか…ふむ、抱き付くとかは…」

 

「今日、金剛にされて死にかけた。」

 

「………私も後で金剛に仕置きをしておこう…。ん…大体理解した…手を繋ぐのが関の山だな…。普通なら、手を繋ぐ事もそうそう有ることでは無いが…金剛や、それ以外にも積極的な艦娘は多い。更には自覚も無いような奴らもな。」

 

菊月の分析と忠告を聞き、クロウは更に頭を抱えて唸り出した。

 

「どうすりゃ良いんだよ…こうなったら、常にブラスタを展開して、直接の接触を防ぐか…?」

 

「うーん…それだと、書類仕事の時に不便ですし、何より変ですよ?」

 

「だよな…、金剛には常々注意をしてるんだがな…まさか、寝てる時に来るとは、鍵もかけてた筈なんだが…」

 

「金剛には言っても聞かないだろう…あれが金剛の自然体な姿…つまり、あれを抑制するとなると、彼女の意思を殺しかねない…勿論クロウ…お前はそんなのはしたくは無いのだろう?」

菊月の言葉に頷くクロウ。

 

「ああ、そう言うのは俺の主義に反するからな…それに、戦闘の時に全力で戦えなくなると、金剛自身が危ないからな…」

 

「優しいな?(この男は、その優しさが女を惹き付けると言う事を自覚していないのだろうな…)」

 

「優しさなんかじゃねぇ…仲間に死なれるのが嫌なだけだ。誰でもそうだろ?」

 

「………………捨て艦なんて、日常茶飯事…ですよ。」

吹雪が小さな声で呟いた。

 

「吹雪…」

 

「あっ勿論、鎮守府の司令官の全員が全員そんなことをしている訳じゃ無いのは知っていますけど…なんと言うか…」

 

クロウには吹雪の気持ちが解った。クロウも女が全員マリリンの様な人では無いのは知っていたが、一度植え付けられたトラウマや、偏見は簡単には拭えない物である。

 

「………女嫌い…克服しないとな。」

 

「司令官…?」

 

「そうと決まったなら、私にいい考えが有る…」

 

菊月は自信満々に…フラグを建てた。

 

「クロウ、取り敢えず、お前は女に免疫をつけるべきだ…分かるな?」

 

「あ、ああ…だが、一体どうやって…」

 

「デートだ。」

 

「「は?」」

 

その時、一瞬時間が止まった。

 

「ん?聞こえなかったか?デートだ。女と二人で遊びに行けば良い。荒療治ではあるが、手っ取り早い。なに、心配するな…相手はこの菊月が決めてやる!!戦艦に乗ったつもりで安心していろ。」

 

「いやいや!?ちょっと待てよ!!もうちょっと、段階を踏もうぜ!?いきなりデートは無理だろ!!」

 

必死に止めようとするクロウに対して、菊月は正論で押し潰す。

 

「周りは女ばかり…所謂ハーレムと言われる状況だぞ?その中の一人と出掛けるだけの事だ。何を今更…」

 

「ぐっ…だがよ…」

 

「司令官…多分、詰んでます…こういった状態の菊月ちゃんは無敵に近いです…大人しく従わないと、余計なオプション的な物が増えますよ…ここはどうにか、軽く済むようにした方が無難です。」

 

小声でクロウにアドバイスする吹雪。一度スイッチが入るとやたらと強くなる…そんな人種を何人も見てきたクロウは、大人しく従う事にした。

 

「………相手は誰なんだ?」

 

「明日には決めておくさ。遠征の書類はここに置いておく。目を通しておいてくれ…では、失礼する。」

 

書類をクロウに渡し、菊月は提督室を出ていった。その姿を、クロウと吹雪は、呆然と見ている事しか出来なかった…

 

「俺、明日…生きて帰れるかな…」

 

「お、大袈裟ですよ…菊月ちゃんは優秀ですし、きっと大丈夫ですよ!!………多分…」

 

クロウの不安は膨れ上がった…


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