100万Gの男が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執り、借金の返済をします。 作:Z/Xプレイヤー26
木曾達に案内され、提督室の前にクロウは居た。クロウは少し鎮守府内での居心地が悪かった…周りが女性だらけなのだ。クロウは女嫌いである…別に女性を蔑視したり、女性が苦手な訳でもない…ただ、前に所属していた部隊の隊長が原因であった。
「なあ、木曾?ここが提督室なんだよな?」
「そうだぜ?何か変か?」
扉の前でクロウは嫌な予感がしていた…もしも提督までが女性だったら…クロウの居心地の悪さは最高潮に達する事になる。
「いや、何でもない…」
「そうか?なら入るぞ?」
クロウの了解を得て、木曾は提督室の扉をノックした。
『入れ』
ノックの音を聞いてすぐに、提督室の中から声が聞こえる。どうやら男性の声の様だ。
「木曾、偵察から帰還したぜ…そんでもって、この男が連絡した『次元震』でこの世界に来たって言っている男…」
「クロウ・ブルーストだ…前の世界では、特殊な部隊に居た…腕には自信があるぜ」
クロウが提督に対して自己紹介をする。
「そうか…次元震でか…にわかには信じがたいが…証拠になるような物はあるかね?」
(やはりそう来たか…生憎近所での買い物の途中で次元震に巻き込まれたからな…どうするか…)
クロウが考えていると、提督が話をしだす。
「クロウ君だったね?この際君が居たと言う世界の話でも良い…聞かせてくれるか?」
「それは構わないが…信じられない様な話も多いと思うが…」
「それでも構わないよ…嘘かどうかは、この嘘発見器で解る…」
提督が妙な機械を取り出す…四角い箱にメーターの様な物がついていた。
(明らかに大した物じゃ無さそうだが…まあ、どのみち嘘は言わないつもりだ、問題は無いだろう)
クロウは前に居た世界の話をした。多元世界の事…破界事変の事、再世戦争の事、ガンダムの事、何より…深海棲艦とは無関係である事を話した…
「クロウ…流石にそんな戯れ言は俺は信じないぞ…?それに、その多元世界とやらになってるなら、俺達の世界もかなり変わっている筈だぜ?歴史にも載ってないしな…そんな大事があったとは思えないが…」
実際、木曾の反応は当然と言えた。この世界では次元震が起こるのも珍しく、深海棲艦以外に大きな変化は少なくとも、1000年は起きていなかった。
「時空振動弾の影響が少なかったか、それとも、そもそもの時間の流れが違うのかは分からねぇが…俺の話は事実だ…証明は俺自身が出来る訳じゃねが…」
「ふむ…クロウ君の話を聞く限りは、深海棲艦とは無関係だと言う話だが…嘘発見器にも反応は無いから、事実なんだろう」
提督の言葉を聞いて、クロウが何とも言えない様な表情をする。
「クロウ君…何か言いたそうだね?」
「……俺が言うのも何かと思うが…その嘘発見器…信頼出来るのかと…」
「何を言うのかね!!この嘘発見器は最新鋭でな!!…………あっ…電源入ってなかった…」
提督の爆弾発言に、クロウは叫んだ。
「マジかよ!?また同じ説明をしないとならないのか!?」
「本当に申し訳ない…そうだ…」
「『そうだ…』じゃねえよ!?出来れば思い出したくない事もあるんだぜ!?」
自分を見失って、エスターを次元獣にしてしまった事などは、クロウにとっては思い出したくない過去である。
「しかしな…ここは我慢してくれたまえ!!君も潔白を証明したいだろう?」
「悪びれねぇな!?よく提督なんてやれてるな!!何でクビにならねえんだ…」
項垂れるクロウを見て不憫に思ったのか、木曾がクロウの肩に手を置き、励ました。
「クロウは悪くない…俺からも頼むから、もう一度だけ…な?」
「仕方ねえな…」
木曾の頼みを聞いてクロウはまたも説明を始めた。
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「って訳だ…」
「うん…嘘発見器に反応は無い、さっきの話と同じで矛盾もない、クロウ君…君は深海棲艦とは無関係なのを信じよう!!」
「良かったな!!クロウ!!」
説明が終わり、深海棲艦とは無関係なのを証明出来たクロウは、安堵の溜め息を吐いた。
「それにしても…深海棲艦とは無関係とは言え…君の話は信じがたい物が多いな…殆んどが深海棲艦とは比較にならない危機的状況…更には凄まじい力の兵器や…異星人までもが居るとは、興味深い…」
提督が面白そうだと言わんばかりに、クロウ居た世界の話をまとめた…
「所でクロウ君…君は提督の仕事に興味があるかね?」
「は?」
いきなりの提督の言葉に、クロウは意味が分からず、間抜けな声をだした。
「提督?どういうつもりだ?まさか、提督不在の鎮守府にクロウを宛がうつもりか?」
「え、なんだそれ…スゲェ怖いんだが…俺は指揮官ってタイプじゃないしな、前線で戦う方が性に合ってるぜ」
木曾の予想を聞いて、クロウは不安に駆られた…
「まあまあ…そう言わないでくれ、それにな?提督の適性が有るかどうかを測らせて貰うだけだよ…何しろ、こっちもかなりの人手不足でね?少しでも優秀な人材は必要なんだよ」
「そ、それはそうかも知れないが…もし、適性が有ったら、指揮を強制させられるのか!?」
クロウは焦った…この鎮守府内を見て、艦娘がどういった存在なのかを、薄々感じていたからである。
(提督なんかになっちまったら…艦娘だらけの場所に居なきゃならなくなっちまう!!俺の予感が正しければ…艦娘は読んで字の如く…軍艦の娘…つまり女しか居ねぇ!!そんな所に居られるかよ!!)
「クロウ君…君にも悪い話では無いだろう?行く宛の無い君に…住む場所に仕事まで与えるんだからな?」
「そ、それは…確かに…だが、提督の適正が無ければどうするんだ?」
そう、あくまでもこの話はクロウに提督の適正が有ればの話である。無ければ、行く宛の無いクロウがどうなるかは、分からない。
「大丈夫だ、提督の適正が無ければ、私のボディーガードでもして貰うさ」
「そ、そうか…正直そっちの方が俺は有りがたいんだが」
クロウが提督になるのを、見るからに嫌がっているのを見てなのか、木曾がクロウに質問をする。
「クロウは提督になるのは嫌なのか?」
「そうだな…自分勝手な理由で申し訳ないが…俺は女嫌いなんだよ…」
「ほう!それは意外だな?クロウ君はモテそうに見えるが…」
クロウの女嫌い発言を聞いて、提督がクロウを茶化す様に笑う。
「まあ、女嫌いでも関係無いだろう?艦娘は見た目こそは女性でも、本質は兵器だからな…そこら辺は割り切らないと、提督はやれないよ?私も割り切るのに随分と苦労したよ?クロウ君も苦労するかもね?『クロウ』だけに…!!」
提督の最後の一言に、提督室の空気が凍りついた…
「……………ゴホン…とりあえず、クロウ君…この機械に手を入れてみてくれないか?」
提督がまたも機械を取り出す…今度はかなり大きく、メーターも巨大だ。
「こ、これは?」
クロウが恐る恐る訊ねる。
「これは提督の適性を測る機械でね?その正確さは今の所は100%だ!!因みに『とっても高価』だから…壊したら『弁償』だよ…?」
その言葉を聞いて、クロウの体から尋常じゃない汗が吹き出す…
「……検査は…パスで!!マジで!!ボディーガードでお願いします!!」
クロウの土下座を無視して、提督は話を進める…
「提督の適性が有るとされるのは200からだね。因みに私の数値は450だ…そして現在の確認されている最高値は、大本営の元帥の870だよ。じゃあ、測ろうか!!」
「無視!?俺の話は無視!?」
クロウの手を、提督は無理矢理機械に捩じ込んだ…
『ソクテイチュウ…』
機械の音声が流れる…その間クロウは…
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
声にならない叫びをあげていた…
「ク、クロウ!?一体どうした!?尋常じゃない取り乱し方だぞ!?」
「嫌゛だ!!もう借金は嫌゛だ!!」
木曾の声はクロウには届いていなかった。
クロウは分かっていた…この機械に手を入れたら最後…
『テイトクテキセイチ…1000……2000…3000…』
「馬鹿な!?3000!?有り得ない!!」
まだまだ数値が上がっていく…
『ソクテイフノウ…ガガガ…ガガガ…ガ…』
「不味い!!爆発する!!」
提督がクロウの手を機械から引き抜いた瞬間に…機械が爆発した…
「や゛っ゛ばり゛があ゛ぁ!!」
クロウ大泣き…
「………………」
「………………」
泣いているクロウを見て、貰い泣きしそうになっている木曾…
「クロウ君…君に提督の適性が有るのは分かった…済まないが…測定器の事もあるし…うん…ゴメンね?宜しくお願い…」
こうしてクロウは提督になる事になりました…半分は提督の責任なので、半額は提督が出す事になりました…しかしクロウの借金は、日本円で一億円…果たして返せるのか…
「おかしい…今までで一番理不尽だぜ…」
半分どころか100%提督の責任な気がします…