100万Gの男が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執り、借金の返済をします。 作:Z/Xプレイヤー26
リニアの最後尾を奪還したクロウ達は、敵から銃を奪い、体勢を整える。
「さぁて…次の車両にも間違いなく敵は居るな…速攻で敵を無力化しねぇと、乗客に被害が出る…銃を持ってるから、最悪遠距離から無力化出来るが…」
「ええ、間違いなく銃声に気付いて、他の車両の敵も出てくるわ…」
クロウ達が計画を立てていると、乗客の一人がクロウ達に声をかける。
「なぁ、あんた達…さっきの動き…只者じゃないのは分かったが…もしかして、艦娘なのか?そんで、そっちの兄ちゃんは提督さんか?」
声をかけられたクロウ達は頷いた。すると男は嬉しそうに握手を求めてきた。
「本当に艦娘なのか!!一度だけでも会ってみたかったんだよ!!握手をしてくれ!!いつも海を守ってくれてありがとう!!俺は漁師なんだ!!」
差し出された男の手を、大和が握ろうとする。
「別に私達は大した事をしている訳では…」
しかし大和の手を、クロウが止めた。
「どうしたんですか?クロウ提督?」
「な、なんだよ…もしかして、お嬢ちゃんの手を握られるのに嫉妬してるのか?ハハッ!!提督さんも男だからな!!」
嫉妬と言う言葉に大和は顔を赤くしたが、クロウは男の腕を強く握った。
「イデデデデ!!痛いぜ!?いきなり何すんだよ!?」
「ちょ!?クロウっち!?何してんの!?」
「クロウさん…?まさか本当に嫉妬していますの?」
鈴谷と熊野がクロウを止めに入るが、クロウは力を緩める様子はなかった。
「ちょ…加賀さん!?青葉っち!?菊月も!!何で見てるだけなの!?止めるの手伝ってよ!!敵が気付いちゃうって!!」
鈴谷が必死に加賀達に頼むが、加賀達は動かなかった。
「あんた…何を隠し持ってやがる?大和に何をしようとした?」
クロウが男に尋ねるが、男は黙っていた…クロウが更に腕を強く握るが、男は眉一つ動かさなかった。
「………黙秘かしら?頭にきました…少し強いお仕置きが必要の様ね?」
「その様だな…私がやろうか?」
「青葉…ちょっとイラッとしちゃってます…」
加賀達が男に近づくと、男は舌打ちをした。
「チッ…何が宇宙を支配するイディクスだ…使えねぇ…シラケちまった…ここは帰るとするか。じゃあな、異世界から来た提督さん!!いや、揺れる天秤のスフィアリアクター…クロウ・ブルースト…」
男はクロウの手を振りほどき、黒い霧になって消えた…
「………何?今の…?ワケわかんない…」
「逃げられたわね…駄目男?」
「だな…。さてと…消えたのは、あの男だけじゃ無さそうだぜ?」
クロウが辺りを見渡すと、男だけでは無く、乗客、そして、捕縛した筈の敵も消えていた。
「全てがまやかし…だった様ね…一体何なのかしら…?」
「さあな…友好的な奴では無いだろうな…」
(スフィアの事を知っていた…厄介な奴も居るみたいだな…ん?)
クロウがあの男が立っていた場所に、何が落ちているのを発見する。
「何だ?これ?」
「注射器…だな…」
菊月がクロウの拾った物を見て、注射器と判断した。
「まさか…これを私に刺そうとしたんでしょうか…?」
注射器を見て、大和が震える。
「恐らくはそうですね…本当に…一体何者なんでしょうかね?」
全員が考え込むが、鈴谷がハッと顔をあげる。
「どうした!?何か分かったのか!?」
クロウが鈴谷に問い掛ける。
「あの時、車内放送で話してた声って、多分イディクスって奴の仲間だよね?」
「ええ、普通に考えれば、そうね…」
鈴谷の言葉に、加賀は同意を述べた。
「でさ?車内放送が出来るのって、運転席だよね?」
「そうだな。殆んどの車両はその筈だ」
そして、鈴谷は一呼吸置いて話す。
「運転士も消えてたら…ヤバくない?」
「「…………あ」」
全員が固まる…そして…
「運転席を確認しろーーーー!!」
クロウが叫ぶと同時に、クロウ達は走り出した。
「ヤバい!!消えてたら確実にアウトだ!!見た感じ乗員も居ねぇ!!これはヤバい!!」
「クロウ提督!!」
「どうだ!?居たか!?」
加賀の声に、クロウは運転士の有無を確認した。
「居ないわ!!」
「アウトォ!!運転席のドアを蹴破れ!!」
「オッケー!!必殺!!甲板ニーソキック!!」
鈴谷が運転席のドアを蹴破る。
「クロウっち!?運転出来んの!?」
「大体は前に使ってたシャトルと変わらねぇよ!!ユニバーサルスタンダードってヤツだ!!」
クロウは操縦席に座る。
(よっしゃ!!問題はねぇな…あいつらが細工をしてなければの話だが…)
「チッ!!もう駅が見えて来やがった!!スピード落とすぜ!!」
駅のホームでは、駅員達が慌ただしくしている。車庫に入っていたリニアが無人の状態で走り出したとの連絡があったからだ。そして、この駅の手前の駅で乗客を乗せたと言う情報まであったため、大騒ぎになっている。
「チッ!!止まりやがれ!!」
クロウがブレーキを作動させる。すると徐々にだが、速度が落ちていく。
「どうやら細工はされてねぇな…よし、駅に止まるぜ…」
半分近く、駅のホームからずれていたが、無事に停車した。
そのあと、リニアを降りたクロウ達は、警察の事情聴取を受けた。海軍の提督と、艦娘であったため、長くはならなかったが、半日近く掛かってしまい、結局近くの旅館で泊まる事になった。
「はぁ…熱海に着いたのは良いが、光子力研究所は明日だな…」
クロウが深いため息を吐く。
「ですねぇ…念のために、今日と、明日が非番の艦娘を選んで良かったですね…」
「そうね…まさかあんな事になるとは思わなかったけど…警察もイディクスについて調べるらしいけれど…宛にはならないわね…」
加賀と青葉もため息を吐く…
「あまりため息を吐かないでくれ…私まで…あぁ…トイレは何処だ?…………何だ?その視線は…?」
クロウは尊敬の眼差しで見ていたが、艦娘達は笑いを堪えていた。そして、その視線で菊月は思い出したのか、赤い顔をする。
「っ!!あれは…その…あれだ!!囮の為であってだな…!!」
慌てる菊月に対して、クロウは肩に手を置き…
「呆れる程有効な囮だったぜ!!」
止めの一言を放った。
「うっ…クロウの…ばかぁ…グスン…」
泣き出す菊月にクロウは慌てる。
「おいおい!?何で泣くんだよ!?」
「幼女を泣かせるクロウ司令官…一枚頂きます!!」パシャ
青葉が菊月を泣かせるクロウの写真を撮る。
「今すぐ消せ!!何をする気だよ!?」
「いえいえ…今日の朝に撮ったクロウ司令官のパジャマ写真とセットで売ろうかと…」
「パジャマ写真?青葉…一枚いくらかしら?」
早速加賀が食い付いた…そんな馬鹿な話をしながら、クロウ達は旅館で休息を取った。
旅館はあの旅館ではありません…