キャプテン・アメリカ the first Reincarnater   作:天戒騎士

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長く時間が掛かってしまい誠に申し訳ありません。
何もしないより、何かした方が良いと思ったので、とりあえず投稿します。


兵士の追憶

第二話 兵士の追憶

 

 上着を着てジムの外に出てみたら黒い車と、その傍に黒いスーツを身にまとった男性が立っていた。僕はその男性に声を掛けた。すると男性も僕を見ながら話しかけてきた。

 

「あなたは?」

「私はフィル・コールソン。S.H.I.E.L.D.のエージェントをしている。フューリー長官に君の案内を頼まれたんだ」

 言っていなかったが、僕に任務にことを教えてくれた黒人男性の名前はニック・フューリー。正しくはニコラス・J・フューリー。僕を見つけたS.H.I.E.L.D.という組織の長官を務めている。あと左目のアイパッチが特徴である。

 

「まずは車に乗ってくれ、作戦本部まで私が送ろう」

「わかった。ありがとうございます」

持っていた荷物を後部座席に置き、助手席に座ろうとドアを開けて中をのぞいてみたら。

「うわ・・」

「?どうかしたのかい」

「あ、いや昔と今とでは全然違うなぁと思って」

 昔はここまで豪華な造りにはなっていなかったらな。

「やはり、驚くことばかりか?」

「何が」

「目が覚めた途端、自分がまるで別世界にいるみたいな感じだったのかと思って」

「ああ、フューリーから聞いたのか・・」

 あの人喋るときは喋って、喋らない時はあまり喋らないんだよな・・

「作戦本部まで時間がある、少し眠ったらどうだ」

「・・そうだな、そうさせてもらうよ」

僕はフィルの厚意に甘えて、少し眠ることにした。座席の倒し方を教わり少し横になって眠りに入ろうとした。さっき一生分寝たとフューリーに言ったのに、ここで寝てしまったらいい加減な奴だと思われないだろうか。

 瞼を閉じて考え事をしていたら、自然と昔のことを思い出していた。自分がこの世界に生まれた時のこと、そしてアメリカに渡り彼らに出会い、キャプテン・アメリカと呼ばれるようになるまでのことを・・・

 

 

 突然だが、僕は転生者である。この一言だけでどれだけの人間がこいつは痛い人間だと思うだろう。かくいう自分もそう思っている。普通に生まれ普通に学校に通い、大学を卒業して就職も何とかできたのに、仕事中に交通事故にあってそのまま帰らない人間になってしまった。客観的に見た僕の人生だ。主観で見るより客観で見たら、どれだけ恵まれた生活を送っていたのだろう。

 そもそも、なぜ自分の人生を客観的に見ることが出来るのか。それはこのミスター・ブラックという人物が僕にそれを見せていたからである。

 

「貴方は、ごく普通の人生を歩んできたのですね・・」

「・・貴方はいったい何なんだ?・・」

「それでいて、少し正義感が強いところがある。しかしそれを前面に出してしまうと周りからおかしい人と勘違いされてしまう」

「・・何が言いたいんだ・・」

「貴方の心とこの空間が一緒だと言うことですよ。この空間は私が話しかける人間の心によって変わります。大抵は真っ白の空間なんですが、貴方のように真っ黒の空間は初めてです」

 僕たちは今この真っ黒な空間にいる。ここで目を覚ました時はとても驚いた。でも真っ暗に自分の体ははっきりと見えていた。それどころかミスター・ブラックが身にまとっている黒い服装もはっきりと見える。そんなことよりもだ。

「僕の心と同じ?それって・・」

「簡単にいうと、貴方の心はとても閉鎖的と言うことです」

「僕の心が閉鎖的?」

「本当なら、あなたは自分の正義に従って生きていたいという感情が、気持ちがある。しかしそれを前面にだすことはない。なぜか。答えは先程も言ったように、自分がおかしな人間と言われるのが怖かったからだ。あなたのいた世界では正義という言葉を口にしてしまえば、正義の味方と見られる。しかし明確な正義を持たない貴方がそんなことを言ってしまえば、変に思われる。日本人は周りと違うことをしているだけで変人扱いを受けますからね。貴方も変人と思われないために家族や友人、知人。果てには自分の心にさえ嘘を言って自分をごまかしながら自分を守って生きている。ある意味ではとても人間らしいですよ・・」

「・・・」

ミスター・ブラックの言葉に僕は何も言えなかった。そうだ。彼の言う通り、それが自分なんだ。自分の正義を信じて動き、誰かのために生きていたい、生前はそう考えていて警察官になれればと思っていた。でも僕は勉強が出来なくて全く知識を身に着けることが出来なかった。だからやる前に諦めた。

「ですが、その諦めも見方を変えればただの臆病者の考えに思えますよ」

ミスター・ブラックはそう言っている。そう。彼の言っていることは正しい。僕は臆病者だ、失敗することを恐れて自ら行動もしない弱い者だ。だけどそれは僕だけではないだろう。

「確かに貴方の言う通りだ。でもそれは人間・・いや、人類すべてに言えるでしょう」

「・・視野も狭くなりすぎると、哀れに思いますね・・」

「貴方は結局僕をどうしたいんだ・・それともう1つ。貴方はいったい何なんだ」

「・・私は貴方にやり直すチャンスを与えようと思いましてね・・と言うのは建前で本当は貴方に頼みたいことがあるのです」

「頼みたいこと?」

「ある世界で生まれ変わってほしいのです」

「生まれ変わる?・・何を言っているんだか」

「簡単に言いますと小説などでよくある転生ですよ。ある世界に転生しそこで生きて欲しいのです」

「・・ふざけているとしか思えないんですけど、それに僕みたいな人生を送ったやつより、もっと嫌な人生を送った人にチャンスを与えたらどうなんですか」

「ほう、嫌な人生を送った人というのは?

「・・望まない人生を送った人たちだ」

「あぁ、確かにそうですね。彼らにもチャンスを与えるべきでしょうね。それより、なぜ貴方は彼らにチャンスを与えるべきだと思ったのですか」

「それは・・さっきも言ったように望まぬ・・」

「嘘ですね」

僕が喋っている最中にミスター・ブラックが遮った。

「それは嘘です。本当は自分より弱者だと思ったからです。ここでも嘘を言って自分はまともだと証明するつもりですか」

「違う。僕は嘘なんか」

「だとしたらこの空間に少しは変化が現れるはずです。なのに全く変わった様子がない。つまり貴方はまだ嘘をついているということです」

嘘だと・・僕は嘘なんて・・

「他人からの評価で全てを決めてきた男という訳ですか、何とも哀れなものですね。貴方には自分が無い」

「・・・」

「常識なら、世間なら、家族なら、友人ならとすべて他人の評価を出してきている。貴方には自分の気持ちが、感情がまるでない」

「別に珍しいことではないだろう。今の社会は自分を殺すことで成り立っている」

「ほら、もうすでに『今の社会』という言葉を使ったではありませんか。自分が無い人間の言う言葉などあまり信用できませんね」

「・・・」

ミスター・ブラックの言葉でとうとう僕は何も言い返せなくなった。彼の言っていることは間違っていないと思うからだ。なぜそう思うのかはわからない、ただ直感で正しいと思ったのだ。

「私の言葉を聞いて正しいと思ったのなら、貴方はますます自分が無い人間だという証明になりますね」

「・・ならどうすればいい」

「こればかりは自分で考えるしかありません。自分で考えて行動し、その積み重ねが人間を作っていくのですから」

 自分を作ることが出来るのは自分だけ・・

「もし、自分を作っていきたいと思うのなら私の話に少しは耳を傾けるのがいいと思いますよ。もちろんどうするかは貴方次第ですけどね」

 もし自分を作り、自分が思ったように生きることが出来るのなら、後悔しない生き方が出来るのだろうか。やってみないことにはわからない。

「やってみてもいいのだろうか・・僕みたいな人間が・・」

だけど、やはり思ってしまう僕みたいな人間がこのようなチャンスを掴んでいいのかと

「周りのことを意識しているみたいですが、今はそんなものは関係ありません。貴方がどうしたいのかが重要なのです」

「僕がどうしたいのか・・」

「そうです」

僕がどうしたいか・・はっきりとは分からない。でも、何かを変えたいと思う心はあるような感じがする。

「わかりました。貴方がくれるそのチャンス、受けます」

「引き受けてくれますか」

「はっきりとこうしたいと言うのはまだありません。でも何もしないままじゃだめだと思ったから・・」

「今は難しく考えるより、思ったことに従った方が良いでしょう・・・では良き人生を・・」

その言葉を最後になんだか自分の意識が薄らいでいくような感覚を味わった。なんだかお決まりの展開を感じつつ、これから訪れる新しい人生に少しの不安と興奮を感じながら僕はゆっくりと意識を手放したのだった。

 

 この時の僕が今の僕を見たらなんと思うだろうか、ヒーローと言われている自分を見て喜ぶのだろうか、悲しむのだろうか。なんにせよヒーローと呼ばれるようになるまでこの時の僕は、予想はおろか考えてもみなかった。

 


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