流星のロックマン Arrange The Original 作:悲傷
そのため、今回は用語説明が多くなります。原作を知っている方にはちょっと読むのが辛いかもしれませんが、復習程度に考えていただければ助かります。
インターネット。それは人類の英知の結晶だった。
そうだったのは200年ほど前の話。時の英雄であり、優秀な科学者だった光熱斗博士の理論を元に、今はそれに代わる物が世界中に駆け廻らされていた。
――電波――
有線のインターネットと違い、無線で使用できるこれは、半無限に伸ばすことができる。世界中に張り巡らされた電波は、情報ネットワークの多様化と高性能化に大きく貢献し、様々な電子機器の操作と、それぞれの専門分野をこなす疑似人格プログラム、”ナビ”の制御に使われ、世界の基盤を支えている。
そして、その電波は地球の周りを回っている三つの人工衛星。ペガサス、レオ、ドラゴンによって管理されている。この三つが今の地球を支えていると言っても過言ではない。
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公園の隅っこに設置された自動販売機が見えた。様々な冷たいジュースや暖冷に分けられたコーヒーなどが並べられている。この自動販売機も電波と繋がっており、温度のコントロールや売り上げデータの送信などに利用されている。その前を通り過ぎようとした直後に、それはビービーと嫌な音を立てた。
「……故障? いや、電波ウィルスだな」
機械に詳しいスバルには、すぐに故障の原因が分かった。
電波ウィルス。3年ほど前に突如出現し、この便利な電波で支えられた世界の妨げをするようになったお邪魔虫だ。
「バトルカード キャノン!」
この時代の携帯端末、トランサーに大砲のような絵がプリントされたカードを通す。
バトルカード。電波ウィルスを退治するために作られたデータだ。データがトランサーに読みこまれる。トランサーから電波を放ち、目の前で騒ぐ機械にさっきのデータを送信した。とたんに不快な音は止み、おとなしくなった。正常に動き出したようだ。自分の推察は正しかったらしい。
「さてと、展望台に行こう」
辺りが順調に暗くなってきている。星がちらつき始めた空模様を見て、足を速めた。
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展望台の入口が見えてきたとき、ちょうど良い天気だとつぶやいた。雲も月も見えない。絶好の天体観測日和だ。
「これなら、父さんを……」
淡い期待を持つが、すぐに首を横に振る。大きすぎる期待を持っても、それが裏切られたら……それがこの少年の考え方だ。さっさと入口をくぐろうとする。
「ちょっと待ちなさいっ!」
甲高い声が静かな夜に響いた。
「星河スバル君ね?」
聞いたことのない声に自分の名前を呼ばれた。振り返ると、妙な三人組がこっちに近づいてきていた。
先頭に立って歩いてくるのは自分と同じくらいの年齢の女の子だ。蛇を思わせるようなきつい目をしている。それ以上に目を引くのが、その金色の髪型だ。どうやってセットしているのだろう。後ろ髪を綺麗に二つの縦ロールにしており、二つのドリルがぶら下がっているように見える。
先ほどの気の強そうな声と口調からすると、声をかけたのはこの女の子のようだ。その両脇を二人の男の子が固めている。
片方は……中学生ぐらいだろうか? 見上げるような身長と、負けずと飛びでたお腹に目が行く。
逆隣には、小学校低学年の子がいる。身長からすると、多分2,3年生だろう。大きいメガネが特徴的だ。
腰巾着っぽいその二人は見事なまでに対称的だった。そんな子分を連れた女の子は、スバルの前まで来るとどこか優雅さを感じさせる歩みを止める。近くで見ると、自分よりも少し身長が高い。この態度と最初に声をかけた時の命令口調から高圧的な女のようだ。威圧感のある目が射抜いてくる。
「あなたね? 私のクラスの不登校児っていうのは? 私は『白金ルナ』!。あなたのクラスの学級委員長なのよっ! こっちは同じクラスの牛島ゴン太と最小院キザマロ」
なんと3人とも自分と同じ小学5年生だった。そのことに驚きながらも、目の前の学級委員長に無言で目をやる。めんどくさい。眼でそれを全力で表現してやる。
「おいこのやろう! 黙ってないで、何か言ったらどうなんだ!? モヤシやろう!!」
ちょっと低い声でゴン太という肥満児が言う。スバルの線の細い体格と堅過ぎて治らない寝癖を、細長いモヤシとそれから生えているひょろっとした毛をかけたらしい。見かけと違って頭の回転は良いのだろうか?
「委員長が直々に声を掛けてくださっているのですよ!」
隣のちっちゃい奴がキーキーと声を上げる。こっちは女の子と間違えそうなくらい声が高い。どこまでも対称的な子分その1とその2だ。
「……僕になんのようじ?」
次は声も交えて表現する。めんどくさいと。
「明日から学校に来なさい!」
「……ハァ!?」
命令された。初対面の人にだ。多分、今日一番となる大声を上げてしまう。
「私は何事もパーフェクトじゃなきゃ気が済まないの。その私が学級委員長を務めるクラスに欠員がいるなんて許せないの! って言うわけで、明日から学校に来なさい」
無茶苦茶だ。自分勝手にもほどがある。どうやら最初の認識は間違っていたようだ。それ以上だった。いつの時代のお嬢様かと疑ってしまう。
「……悪いけど、僕に関わらないで」
「なんだとこのモヤシ!」
「委員長がせっかく誘ってくださっているんですよ!」
この二人はそれしか言えないのだろうか? ギャーギャー騒ぐ二人をルナは抑えた。
「と言うわけで、明日から来なさい」
こっちの言うことには一切聞く耳持たないらしい。この三人とは関わらない方が良い。なにより、本当にめんどくさい。そう判断し、無視して展望台の階段を登り始めた。
置いてかれたルナ達は、その後姿を見送った。
「星河スバル……」
「一筋縄ではいかなみたいですね?」
ようやく小さい方の子分、キザマロが眼鏡を上げながら別の言葉を口にした。
「どうするんだよ、委員長?」
大きい方も、ようやく別の台詞が出た。どうやら、モーとしか言えない牛よりは知能があるようだ。
「とりあえず、今日は引き下がりましょう?」
そのとき、最小院キザマロの眼鏡がキュピーンと光を放った。
「そうです! 今日学校で習った”ブラザーバンド”の宿題を送りましょう!?」
「なるほどね! ”ブラザー”に興味を持ってくれれば、あの子も友達欲しさに学校に来てくれるかもしれないわ!」
「……どういうことだ?」
前言撤回。やっぱり牛島ゴン太の知能は低かった。そんなデカブツはほっといて、白金ルナは小さいほうの子分と相談を始めていた。
ここで、しっかりと謝罪と言い訳をしておきます。
ルナ、ゴン太、キザマロが好きで、気を悪くした方々、すいませんでした。
いや、私はこの三人大好きですよ! けど、途中まではこの三人ギャグ担当じゃないですか? と言うわけで、文章で散々けなしました。
途中からはかっこよくなりますよ!?