ゼロの使い魔で割りとハードモード   作:しうか

9 / 52
おおっと! しうかの筆が進んでストックが一つふえた!

と言うわけで上げますねー。
しばらくタネ蒔きつつネタ回が続きます。

えーっと、こんなのクロアじゃねぇ!? とか思うかと思いますが、えーっと、うーんと……。ええ、気にしないでください^^


8 次期当主と不思議な出来事

 あれからひと月近く経ち、そろそろクラウスの婚約式だ。

 

 特に俺はやることが無いので、日がな一日資料作りに没頭していた。いや、俺も晴れ着のように正装を新調することになり、一日ほどカスティグリア家専属のデザイナー専門メイジやらお針子さんメイジ等が来たが……。すごいね? メイジでもそういう人がいるんだね? そういえばこの世界の生産は結構メイジに頼ってますからね。いますよね。でもお高いんでしょう? クラウスの本気度がわかった気がした。

 

 クラウスよ。自分の婚約式にこんな兄にもそれほど出てもらいたいとか、かわいすぎるだろう。何? 俺の攻略フラグ立ててるの? 俺まさかのチョロイン? いや、実際チョロいとは思うが……。ただの仲の良い兄弟でお願いします。でも君の婚約式でしょう? 相思相愛の相手がいるんでしょう? 

 

 その上身内に手を出すとはカスティグリア家の次代の当主はバケモノか!? いや、冗談です。はい。

 

 さて、問題の資料作りだがめっきり進まない。とりあえずカワイイ弟のため、安静にしつつだったので、あの婚約式を伝えられた日から三週間ほど経った頃にようやく一つ書きあがった。クラウスが見舞いに来た時に見せたら、

 

 「兄さん。安静にしててくれって言ったよね? 善処するって言ったよね? あれ嘘なの?」

 

 と、クラウスにしてはかなりマジで怒られた。いや本当さ。安静にしてたさ。善処するという意味も間違ってないだろう? いや、そこまで怒られるとは思っていなかったよ。ごめん。

 

 「いや、安静にしてたからこのペースなのだがな……。それで婚約式があるとは言え、クラウスの気分転換に資料を読んではいかがかと、一応渡しておこうと思ってな。」

 

 そう言うとため息を吐いて資料を受け取った。「空対空ミサイルの赤外線追尾方式の原理」や空飛ぶへび君(ファンタジー式ミサイル)の原案や代案、改造案や実験、検証、初期開発案などが盛り込まれており実はかなり分厚い。ギーシュにあげた資料を余裕で越えている。

 

 ぶっちゃけ対艦攻撃や対地攻撃なら今のところ風竜隊やフネによる無誘導爆弾投下でいいだろうが、相手も竜を持っている可能性が高い。

 

 今回のものはそれに対する空対空戦闘のみで使うものだ。当初の予定では「戦闘機動で優位に立ち、メイジの魔法で相手のメイジを各個撃破していく」と、いう方針だったのだが、コルベールに実際に会ってから少し考えを変えた。

 

 赤外線を使ったミサイルは基本的に物体が出す赤外線波長で対象を判断するので、かなり検証が難しい。むしろそれを測定する機械というかマジックアイテムから作らなければならない。

 

 そして、大抵の竜に関する赤外線データが必要になり、敵味方識別用マーカーの設定やフレアなどの防御方法や回避方法なども必要だろう。一応双方ともトリステイン陣営だが、コルベールが作ってくる可能性が高いからな。相手が撃つ対フネ用のファンタジーミサイル防御システムもブドウ弾(散弾)での撃墜を前提に考えておいた。

 

 最初は投下物やダミーミサイルでテストを繰り返すことになりそうで、恐ろしく時間がかかるだろう。まぁ来年のアルビオン戦役に間に合えば御の字だし、間に合わなくても主人公達が何とかするだろう。

 

 まぁ代案にはファンタジー式の視線誘導方式なんかがあったらいいなーとも書いておいた。そちらの防御案は相手の目潰しが前提になるので、フラッシュみたいな感じになると思う。よく考えればファイアー・ボールも誘導できるらしいしね。あってもおかしくないよね? 

 

 しかし、場合によっては敵になる可能性もあるゼロ戦にも使えそうだな。というか、タルブ村にあるであろうゼロ戦の機銃だけでも欲しい。ぶっちゃけ全部欲しいけど、機銃だけでも欲しい。機銃の構造を見たり、弾の10発ほどだけでも回収できないだろうか。というかゼロ戦って機銃複数積んでたよね? ついでに前世のwiki先生が欲しい。

 

 それにジュラルミンやその他金属も錬金が得意なメイジならアレを見本に作れないだろうか。取り外しても問題ない金属部品とかないだろうか……。ギリギリカスティグリアでも手が届きそうなちょうどいい中間技術に素材、当時考え抜かれた工夫が盛り込まれた―――あ、エンジンは無理かも。星型エンジンとか全く覚えてないし、利点や欠点とか細かい部品の作用とかほとんど知らない。

 

 しかし、そう考えるとまさにアレはお宝の山なのだが……。 

 

 ちなみに、この領地では精度は低いが、無誘導爆弾などを作るため工作機械がすでに何種類か作られている。溶接技術は知識がほとんどあやふやだし、温度管理や材料選定をどうしていいかわからないので工作機械としてはまだ手が出ていない。ぶっちゃけ火の系統メイジのブレイド頼りで興味ある人が何人か研究している段階だ。

 

 しかし、見本があればぶっちゃけ劣化版機銃が作れるはずだ。一から十まで錬金でやろうとしたからコルベールは弾すら作れなかった。だが、カスティグリアは作れる。命中精度を犠牲にして暴発や弾詰まりしないよう、かなりゆとりのある安全設計にすれば作れるはずだ。重量制限の厳しい戦闘機に載せるわけではないので、大きく、重くなってもそれほど問題はないだろう。それにアレがあれば後込め式の大砲やセミオートやフルオートの銃もだな……。

 

 巨大な原作ブレイクとの葛藤が今まさに……。見学だけでもタルブ村行っちゃおうかなー。シエスタに会いに来たとか、本場のヨシェナベ食べに来たとか、タルブ村の名産品に興味があるとかシレっと言えばごまかせそうだし……。風竜隊借りれば半日だし……。

 

 しかし、俺が原作前や原作途中で死んだら主人公達やゼロ戦がないと最悪トリステインが滅びる可能性がある。機銃一機、弾の10発が分け目になる可能性も否定できない。カスティグリアの為にも最低限この保険は出来るだけ維持するべきだろう。

 

 でもなぁ……見学使節団とかダメだろうか。開発関連の土メイジ総動員して滞在とか……。などと、ゼロ戦やタルブ村に想いを馳せていると、

 

 ―――クラウスから笑顔で無慈悲な宣告がなされた。

 

 「兄さん……。また何か考えているね? ふふっ、姉さんから聞いたシエスタ嬢の気持ちがわかった気がしたよ。というわけで、次期当主権限として甚だ遺憾ではあるけど、今まで制限していなかった羊皮紙の枚数を婚約式までこれから渡す一枚に制限させていただくね。この屋敷にいる全員にちゃんと周知しておくから兄さんは何も心配しないでいいよ?

 それならゆっくり安静にできるだろう? はい、どうぞ? あとは回収させてもらうね。」

 

 笑顔は本来攻撃的なものであり……(略)。とか弟を観察しながら考えている時間は無い。もはやコンマ一秒を争う早急な対処が必要だ!

 

 「え……。な、なんという!? ちょ、ちょっと待つんだ、俺の自慢の弟よ。それでは俺が暇……いや、時間があま……いや、カスティグリアの将来のためにだな……。」そうなんとか混乱する頭で弁解を始めると、

 

 「カスティグリアの将来のためにも今は婚約式の方が大事だからね。さぁちゃんと安静にするんだよ? 兄さん。ではまた様子を見に来るね。」と、あっさり出て行った……。

 

 おおぅ。なんという……。どうやら婚約式まで隠し通しプレゼントとして渡すのが正解だったようだ。前回彼の誕生会で同じようなプレゼントだったのと、今までにない傑作が書きあがった達成感と、研究に時間がかかりそうだからという理由でつい渡してしまったのが悔やまれる。

 

 しかし、幸いなことに、考える事リストは羊皮紙の数にカウントされていなかったようで残されている。これならこの一枚を出来るだけ節約して使えばかなりの時間をつぶしつつ書き進められるはずだ―――絵や図が少なくて済むものならかなりの量がな……。ククク、次代の当主殿もマダマダあま……

 

 「あ、兄さん。ごめん、忘れ物。このリストも預かっておくね。大丈夫、婚約式が終わったらちゃんと返すと約束するよ。」と、出て行ったはずのクラウスが戻ってきて俺の手元にある考える事リストを回収して出て行った。

 

 のおおおおおお!!!!!! これではこの一枚の羊皮紙は何か思いついたときのメモにしか使えないじゃないか! まさか出て行ったフリをしてこっそり監視していたのか!? 

 

 しかも、さっきまでリストを眺めていたはずなのに、あまりのショックで記憶から消えている……だと……!? ええい、俺の記憶力弱補正はバケモノか! 

 

 燃え尽きた……ああ、完全に燃え尽きたさ……。今ならベッドの上でうなだれた真っ白クロアがご覧になれるだろう……。そういえば目を閉じれば薄い金髪以外元々ほとんど白っぽいですね。ええ、忘れてました。

 

 しかし、なんという時間差攻撃……。若干十四歳にしてこの巧みで隙のない時間差攻撃を即座に選択し、虚弱で心の弱い実の兄に対して何の躊躇いもなく実行してくるとは……。恐ろしい……、恐ろしい人間がカスティグリアの次代の当主になるようだ……。カスティグリアよ、俺の屍を越えてゆけ! いや、ごめん。俺が悪いんですね。わかってます。普通に兄思いのいい弟だと思います。……しょんぼり。

 

 ふむ。しかし、何とか別の方法はないだろうか。

 

 シーツに書くとか、自分の身体に書くとか、部屋の床や壁に書くとか、サイドテーブルに書くとか―――バレた時が色々ヤバそうだ。次!

 

 ブレイドを思いっきり延ばして壁に彫り込むとか、地面にファイアー・ボールで文字を書いて風竜隊に持ってきてもらうとか(確か周知は屋敷内だけのはず)―――そういえば俺、屋敷で魔法を一人で使っちゃダメでしたね。次!

 

 某蛇さんのようにスニーキングミッションで目標物の奪取を図る……見つかって怒られるか行き倒れる未来しか浮かばない。むしろなぜこんな案が浮かんだんだ? 次!

 

 単語の文字数を削って短縮語にして書き込める数を増やす―――読み方忘れて解読不能に陥りそうですね。

 

 ううむ。ダメだ、手詰まりだ。こんなときは大抵おかしい案でもバカな案でも気にせず書きまくってソクラテス問答法に頼るのが多いのだが、それをこの羊皮紙一枚でやるには答えが見つからなかったときのリスクが高すぎる。せめてメモスペースくらいは残しておきたいし、もっと有効なことに使いたい。

 

 ちょっと落ち着いて考えよう。こんなときはモンモランシーの香水で気力と体調の回復を図ろう。最新型の彼女用試作香水でいいだろう。確か長期休暇に入る直前に渡されたものだ。忙しくて今回初めて開けるのだが、よくこんなにバリエーションを思いつくものだ。しかも全てモンモランシーに合うのが不思議だし、なんだかこの香水を開けるだけでモンモランシーが目に浮かぶから不思議だ。もしかしてマジックアイテムの領域に入っているのではないだろうか。

 

 原作のギーシュが「君だと思って」とか言ってた気がするが、―――いやモンモランシーがギーシュがそう言ってたじゃない! って言ったんだっけ? ―――確かにそう言えるだけのものではある。むしろトリステイン魔法学院で最も貴重なレアアイテムかもしれん。

 

 あ、そういや、ギーシュもモンモランシーの香水持ってるのかな? いや、さすがに持ってるだろう。今度ギーシュ用に作ってもらったモンモランシー特製香水とかあったら見せてもらおう。男性用でも色々あるのだろうか、どういう基準で種類を変えるのか違いが気になる。

 

 ああ、メモがしたい。思いつきメモがしたい。しかし、今は我慢だ。せめてもう少し思いつきが増えてからにしたい。

 

 しかし、ソクラテス問答法か……。よく考えたら何も資料に拘らなくても良いのではないか? ええ、ちょっといい考え浮かびました。ここは俺の知識力アップ兼友情を深めるアイテムを作ろうではありませんか。

 

 そう、確かギーシュがモンモランシーを褒めるときの語彙力に問題があったハズだ。前にもほんのり思い出した気がするから恐らく確かだろう。そして、もしその語彙力がアップすれば、ギーシュとモンモランシーの仲も発展しやすいだろう。彼女は現在、その優しさが邪魔をして俺の心配ばかりでチャンスを逃しているという感が否めない。いや、自意識過剰かもしれんが、ここまでギーシュからモンモランシーの名前が出ないのは完全に出遅れているのではないだろうか……。

 

 確かにモンモランシーはとてもステキで魅力的だし、あの芸術的な細く輝く金糸のような髪をキレイに巻いたロング縦ロールヘアも実際見るととてもキレイで目を開けているのが辛いほどの光を纏う。性格も優しくて清楚で芯も強い、確固たる趣味を持っていて、向上心も高いすばらしい女性だ。

 

 青く輝く瞳も、彼女の包容力と優しさを思わせるような、多くの生き物が住まいその全てを包み込む深海と、広大な空のように孤高であり、しかし、この世の全てを見守るという彼女の清楚でいて気高いところを表しており、その海と空の二つのいいところを合わせたような、この世にたった二つしかない宝石と言えるだろう。

 

 そんな彼女の一番の魅力はその見た目や性格も重要だが、何よりその二つが合わさることにより生まれる奇跡。―――そう、相手を労わり気遣う姿や少しツンと突き放したりしながらも崩さない貴族としての姿勢、そして何よりもそんな世界にたった一つしかない貴重な生ける宝石が褒められて照れて赤くなったときなどはまさに奇跡の産物と言えるだろう。

 

 そんな彼女が膝丈より少し長めで深い紺色のワンピース型メイド服&黒く細いリボンの付いたシルクで作られふんわりとしたドロワーズ&ヒラヒラの多いエプロンドレス(背後のリボン大き目)&黒いリボンの付いた刺繍が多めの白いヘッドドレスなんかを着て、薄暗い部屋で俺の目の前に来て少し恥ずかしそうにターンなんかしてちらっと見えたら吐血して即死する自信がある。

 

 異論は認める。人の趣向はそれぞれだしな……。セーラー服派の才人には悪いが、俺はメイド服&ドロワーズ派だ。いや、セーラー服も確かに抗いがたい……ふむ。セーラー服にドロワーズと言うのはどうだろうか、もしかしたら新しい境地が開けるのではなかろうか―――いや、さすがに思考が逸れすぎだろう。真面目に考えていたはずなのだが……。いや、これも真面目に考えれば―――くっ、メモが……しかしこれはたとえメモがあっても書き残す度胸がない! 誰かに見られたら生きていける自信がない! がんばれ! 俺の心のメモ(消耗率高)!

 

 と、とりあえず、しかしだ―――そんな彼女が現在最優良株であるギーシュにアプローチできていない。彼女がアプローチすればギーシュですら瞬殺だろうが、しないのでは可能性は低くなるはずだ。前にも考えた気がするが、原作から考えても今現在ハルケギニアで考えても、彼女に一番お似合いなのはギーシュin常時惚れ薬だろう。この考えは今でも変わらない。

 

 そして、惚れ薬代も今のカスティグリア家の風石の産出量から考えれば何とかなるはずだ。ぶっちゃけアンドバリの指輪を取り返した後ならギーシュに常時使うくらいなら量産も可能かもしれない。

 

 いや、どっかの湖(名前忘れた)の水の精霊にフレイム・ボールを大量にぶち込んで蒸発させると脅すか!? いやいやいやいや、それでは逆にあの包容力無限大のモンモランシーでもさすがに怒らせてしまいそうだ。むしろ原料から研究するべきかもしれない。

 

 ―――そう、備えは重要だ。いつ彼女の聖戦(ギーシュへの攻勢)が始まっても良い様にカスティグリアの総力を挙げて水の精霊の涙の買占め&研究の優先順位を最大限上げておく必要があるだろう。

 

 彼女がアプローチをいつするのかは彼女のタイミングになるだろうが、そこから一気に発展させるべく、ギーシュの彼女を褒めるための語彙力を上げておくのはかなり有効ではないだろうか。つまり、ギーシュの語彙力だけで足りないのなら俺も考えればいいじゃない!

 

 そしておあつらえ向きに香水もあるし、叶うはずのない恋心もある。そう、要は使いようなのだよ。ちょっと心が痛いがこれも友と彼女の幸せを思えばだな……。やっぱちょっと辛い。

 

 ふむ。失恋を癒すには新しい恋という感じの表現だか言葉が前世にあった気がする。ほとんど信用できないが、今はそれにすがろう。そして、将来的にもし俺でも構わないという女性が現れた時にもそれは役立つ。その女性用にアレンジすればいいわけだからして、リスト化してしておく価値はあるはずだ。

 

 しかも量産してマルコに流すのもアリだ。むしろ彼が一番有効に活用してくれるかもしれない。ぶっちゃけプレイボーイを自称するギーシュの方が能力が高くてしかるべきなのだが、彼に足りないのならばしょうがない。

 

 ってアレ? いつの間にか結構ペンが進んでますね……? まさか資料作りを我慢しすぎたせいで禁断症状でしょうか。それはそれでヤバイですね。矯正しないと今後の人生で何かが終わりそうです。初期症状は恐らく腱鞘炎的な……。

 

 いやまぁ彼女を褒める言葉を羅列していくのも味気ないですし、ギーシュ君作成ラブレターの原稿にでもしてもらいましょう。ざっと読み返しましたが、思考を完全にそのまま書いているわけではなさそうですし、結構抜けているところもあります。ギリギリセーフでしょうか。セーラー服とか資料を作る理由なんかはあまり書いてありませんから問題はないっぽいですね。

 

 ただ、ちょっと辛いところとかメイド服のくだりが書いてあったので気合で削りましょう。くっ、虚弱体質が辛い……結構かすれただけだった。まぁ後でスープを飲むスプーンかなんかで削り取りましょう。ナイフなんかがあるといいんですけどね。

 

 しかしまぁ削ったとしてもこのまま渡すのはさすがに恥ずかしいですからね、思いつきメモってことでゴリゴリ書いていきましょう。もはや対モンモランシー用ソクラテス問答法ですからね。

 

 バージョン変更や、彼女を飾るにふさわしい単語、後なんですかね? ぶっちゃけラブレターとか書いた事ありませんし、こういうのはギーシュの方が詳しいはずなんですが……ってクラウスがいるじゃないか。学院入学前に相思相愛で婚約者を決める恋愛のプロが身近に……。って彼に聞くのはちょっと兄としての沽券にかかわりますからな。もっと切羽詰まってからにしましょう。

 

 ふむ。そういえば昔(前世)人を褒めるときに大抵誰も褒めないところを褒めるとポイントアップが望めると聞いたことがあるような気がしなくもない。モンモランシーの誰も褒めない密かな魅力かー。いやむしろ褒められないところってどこ? 存在するの? 砂漠で落とした麦一粒探すようなものですね? わかります。

 

 うーん。そういえば余り一緒いることは出来てないからかもしれないけれど、彼女が褒められているところを聞いたことがない。マルコ辺りに調査を依頼するべきだろうか。彼は前回のフリッグの舞踏会での観察眼はすばらしいものがあった。むしろこの三人の中で選美眼が一番磨かれているのは彼ではないだろうか。

 

 いや、逸れたな。なんか今日は逸れやすい。何か原因があるのだろうか。とりあえずモンモランシーの香水追加でリラックスしよう。ふぅ……。

 

 で、なんだっけ。そうそう、モンモランシーの魅力ね。うーん。でもあのときのドレス姿は本当にきれいだったなー。記憶力弱補正の俺でも目に焼き付けられたのか? 今ならちゃんと思い出せる。あー。一緒に踊れたらなー。でも無理だしなー。というかもし俺が踊れたとしても、モンモランシーはギーシュと踊らなきゃダメじゃん! 踊れなくても関係ないね! くっ、辛い。むしろ見れないだけ幸せなのかもしれない。友達とだとしてもだな……優良物件だとしてもだな……。マジ惚れ薬ギーシュに飲ませるか? むしろそれが手っ取り早く思えてきた。

 

 って、また削る箇所が増えてしまった。カリカリカリカリ……今切実にナイフが欲しい。むぅ……というか何で俺こんなに悩んでるんだ? モリモリ気が向くままに書けばいいじゃない! 行けばわかるさ、なんとかかんとかっていう言葉もあった気がするし。まぁ俺の場合、多分行った先は、この先崖崩れ注意か、落石注意か、なぜか1歩目でよろけて崖を転がり落ちるか、渡ってる途中でつり橋落下だがな! あはははは!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――いつの間にか寝ていたようだ。簡易テーブルに突っ伏していた。妙なテンションでゴリゴリ何か書いていた記憶があるのだがどうも思い出せない。くっ、俺の記憶力弱補正が辛い!

 

 えーっと、なんだっけ……って羊皮紙が無いじゃないか。ラスト一枚にされてたのに―――マジどこ行った? アレ無いとちょっとこの先厳しいですよ? いや、割と本気で……。ベッドの中や簡易テーブルの周りを探すが見つからない。サイドテーブルに置いてあるわけが……ってありましたな。ええ、まっさらな羊皮紙が―――まさかの寝落ちですか? 

 

 何か書いてた気がしたが夢なのか? いや、夢ならば! そう、夢ならばだ! もっと前からでも良かったんじゃないでしょうか! 主に無慈悲な宣言なんかが無かった事になっているくらい前でも!

 

 まぁ現実逃避はやめよう。とりあえず一枚は残ったんだ。前向きに生きよう。というかどこから夢だったんだ? 何かをノリノリでゴリゴリ書いていた記憶はあるんだが……、やはり本当に夢のようだ。となると? あまりのショックで突っ伏した感じかな? この虚弱さならありえないと断言できないのが厳しい。それほどショックだったか、俺よ。

 

 うーん。ああ、そうだ。ちょうどいい題材があるじゃないですかー。もしクラウスの婚約式にイベント補正で出れなかったときのためにお祝いの言葉を考えておきましょう。父上辺りがきっと読んでくれることでしょう。

 

 しかしお相手の名前も知らない。困った。これはかなり困った。とりあえずクラウスの紹介とかなのだろうか。ふむ。

 

 クラウスの紹介か。兄としては誇れる弟なのだが、他から見たらどうなんだろう。今現在は領地の経営も安定しているようだし、カスティグリアでも独自の戦力を持ちつつある。安全面でもかなり高い方だろう。そして、あの資料が全て網羅されたときにはもはや数世代先の技術力になっている自信がある。あれがあればクラウスもかなりの功績を残せるのではないだろうか。

 

 問題はこれから先に起こる、レコン・キスタの反乱から始まる戦乱だが、今のところ虚無の力がなくてもカスティグリア家は乗り切れる可能性が高い。一応安全策は取っているし、保険もある。最早俺がいつ死んだとしても大丈夫だろう。しかし、できるだけ安全対策は取っておくべきだ。カスティグリアが戦争に参加しようがしまいが、最終的にロマリアの聖戦発動で巻き込まれる可能性が高い。

 

 一番有効な手段はレコン・キスタを完膚までに殲滅し、ガリアが介入する前に終わらせること。それが無理だった場合でも、なんとかカスティグリア単独でアルビオンの領地を分割してもらうことが重要だ。そう。唯一の安全地帯はアルビオンだと思われる。アルビオンでカスティグリア領の人々が全員移住しても自給自足が確立されれば聖戦に参加せずとも問題はない。

 

 いや、後々は知らんが、乗り切ることはできるだろう。クラウスも不幸な時代に生まれたものだ。しかし強く生きて欲しいものである。父上とクラウスの代でカスティグリアは急激に力を付けるだろう。その力を何に使うかは任せるが、一応防衛寄りに提案はしてある。最低限カスティグリア領民は守りきりたい。そしてクラウスのお嫁さんの領地も……。

 

 まぁこんなところか? というか、あまりいい感じの紹介というかカスティグリアの紹介と先の戦争予告じゃないか。ああ、これはダメだな。気絶したショックが後を引いてるのだろうか。

 

 ぶっちゃけこれは燃やしたいくらいひどい。なんか効率的に削れる道具はないだろうか。まぁ無理だとは思うがサイドテーブルの角で平面を一気に削ろう。ゾーリゾーリ……。うむ、あまり削れない。とりあえず解読はかなり不可能に近いくらいにはなったが再利用は少し厳しい。

 

 まぁとりあえずクラウスの良いところをエピソード交じりでガンガン書いておこう。次期当主だしな。いや、押し付けて悪いが、君しかいないと思うよ? 欠点はそうだな……。うーん。ぶっちゃけ見当たらない。真面目で思いやりのある頭のいいギーシュを実体化したようなみたいなヤツだからな。

 

 あ、欠点ありましたね。羊皮紙返してください。束で! 切実に束で! リストでも構いません! ってあー。また結構使っちゃたな。もう不貞寝しよう。後はもうメモスペースだっ!

 

 というわけで簡易テーブルを片付け、モンモランシーに最初に会ったときに彼女が使っていた香水を少し嗅いでベッドにもぐりこんだ。せめて良い夢見れますように……。

 

 

 




クロア は こんらん した

むしろ日ごろ混乱を無理やり理性で抑えてる設定ですが、ネタばれ?^^;

 この辺りから私の筆がガツッと止まりました。ええ、しばらく難産回が続きます。心もかなりゴリゴリ削り取られましたが皆さんの温かい感想や応援、アドバイスなどに助けていただきました。

本当にありがとうございます。

次回までちょっとなんというか
次! 続きはCMの後でくらいもやっとするから早く次! 
って感じを受けてしまわれるかもしれませんが、お待ちいただけると幸いです。

次回をおたのしみにー!

していただけると歓喜にむせび泣きます;;

追記:ええ、書き忘れました。一応! モンモンの香水は惚れ薬ではないよ? うん。一応。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。