ゼロの使い魔で割りとハードモード   作:しうか

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ギーシュとマルコの魔改造が いま はじまる!(いや、もう結構されてね?)

理論に穴がありまくり! 説明も適当! 
これが限界だったんでさぁ;;
ファンタジーだと思って見逃してくだせぇ;;
ワルキューレってどうやって作ってるんですかね?
記憶からスパッと抜けてて確認しようにもできませんでしたorz

あっれー? 一日寝込んだら記憶がリセットされちゃったぞー?
あああああ! ネタが! ネタが!

という感じなったことありません? 私は何度かあります。



7 魔改造と帰郷そして

 

 学院の医務室に勤務する水メイジから安静期間も解除されたのだが、残念ながら謹慎中の身なので授業には出れない。ミスタ・ギトーには数日前に心を込めて風系統をいくつかの持論を踏まえて絶賛し、ギトー先生のかっこいいとこ見てみたかったなー。みたいな感じのことを貴族流にアレンジしたものを送らせていただいた。ちなみに返事を貰うことができ、

 

 「そうかね、そうかね! 今度機会があれば見せてあげることも(やぶさ)かではないよ!

 ああ、君の風に対する情熱と賞賛は確かに受け取った。君はその才能が全く無いこと残念に思っているようだし、私も君に同情の念を禁じえないが、余り気を落とさないでくれたまへ。

 火の系統しか使えないという君に、それほど風系統への理解があるのはとてもすばらしいことだよ。それに君の虚弱さは私も聞いている。それらを踏まえて、君への慰めになれば良いのだが、もし今後授業に余り出れず、実技で全く結果を残せなかったとしても、風系統の卒業までの成績は全て合格にしておいてあげよう。」

 

 みたいな感じだった。本当にすばらしい先生だ。実際に見たことも会った事もないが……。

 

 彼はコルベールと比べると、どちらかと言うと研究者というより本当に教師だ。実戦に弱いとしても風系統の教師としてだけ見るならかなりいい先生だと思う。彼の風の系統に対する情熱はすばらしく、彼がもし火の系統で、その担当教師だったら恐らく今頃俺の使える系統魔法の数が倍くらいになっていてもおかしくないほどだ。マジコルベール使えない。

 

 マルコが見舞いと称してシエスタの紅茶を飲みに来た時に、「ミスタ・ギトーへのお礼状を書いたのだがどうやって渡そう?」と、いう話をちょっと下心を添えてしてみた。すると、気のいい友である彼が届けてくれると申し出てくれた。彼にお礼を言い、ついでにその話をしたら、ミスタ・ギトーはあの襲撃であまりいいところは無かったそうだが、

 

 「教師としてなら確かにすばらしいかもしれないね。僕もおあつらえ向きにちょうど風の系統だし、彼に教えを請うのもいいかもしれないね。」と、言っていた。

 

 ついでに先のミスタ・ギトーからの返事もマルコが届けてくれた。そのときに聞いた話では「確かに風の系統魔法を教えるのがとても上手で熱心な先生だったよ。少々狭量なところがあるかもしれないが、かなり上達したという確かな手ごたえを感じられた。君の言うとおり風系統専門の教師としてならすばらしい人かもしれないね。」というようなことを言っていた。時々ミスタ・ギトーの個人レッスンを受けているらしい。いいなー。

 

 そしてそれをマルコから聞いたギーシュが土の系統の担当である『赤土』シュヴルーズのところへ行ったらしいのだが微妙だったそうだ。なんか真ちゅうの錬金を自慢されたり、ひたすら土や砂を錬金して錬金できる「土や砂や石の種類」が増えたそうだ。そして色々な石や土のサンプルを見せてくれた。いや、いいじゃんね? 

 

 「ギーシュ、前に俺は君にガラスが作れるか聞いたことがあると思うのだが、覚えているかい?」

 

 「ああ、忘れもしないよ。君に初めてあった日だからね。ただ、アレから何度か挑戦してみたのだが、思うような物が全く出来なくてね。 透明なガラスというものはドットの僕には難しいものなのかもしれないね。」

 

 あれから何度か挑戦してくれていたみたいだ。本当にギーシュは良いヤツだな。お返しと言ってはなんだが、恐らくではあるが『赤土』殿の教育方針を教えておこう。ギーシュに合うかどうかは別だが……。ギーシュはどちらかと言うとゴーレム作って兵隊として使う方が好きそうだし、彼女の方針はどちらかと言うと材料追求型だろう。

 

 そう、考えつつギーシュが見せてくれたサンプルの中からガラスの原料っぽい珪砂、シリカっぽい砂をチョイスし、シリカ多めで良く混ぜて紙の上に適当に載せる。

 

 「さぁギーシュ、無色透明なガラスをイメージしてこれをガラスに錬金してみてくれ。」そう言うと、ギーシュは「ああ、いいとも。」と少し疑問を浮かべながら錬金した。

 

 そして彼の錬金によって作り出されたものは、適当に混ぜて盛られたそのままの形でかなり透明度の高いガラスだった。さすがファンタジー。適当っぷりが半端ない。実際シリカや珪砂かどうか定かでないのに出来てしまった。まぁ石から真ちゅうができる世界だしな。あまり気にしないようにしよう。

 

 「なんだ、できるじゃないか、友よ。」と笑いながら言うと、錬金した本人がビックリしていたようで、「あ? え? ああ、何でできたんだろう。」と言っている。

 

 「ギーシュ。持論で悪いが納得できそうな理由を聞いてみるかい?」と言うと、「友よ! ぜひ聞かせてくれたまえ!」とすごい食いつきを見せた。

 

 恐らくだがドットの場合、原子や分子の結合数から始まり、最終的に状態変化までの中に制限があり、スクウェアで最終的にほとんど可能、虚無で制限なしとかそんな感じだろう。だが、原子も分子も化学式もない時代にこれを説明するのは難しい。しかもぶっちゃけ化学式ほとんど覚えてない。

 

 「ギーシュ。まず基本的なことだ。氷をそのまま放置すると水になるだろう? それをまた冷やせば氷になることはわかるよな?」

 

 「ああ、当然だとも。」そう言いながら、馬鹿にするでもなくちゃんと真面目に聞いてくれる。いや、ここから躓いたら「こおりとみずのちがいをみてみよう」とかそういう感じになってしまうからこちらとしてもありがたい。

 

 「そして更に熱すると湯気が出るのはわかるよな? つまり、同じ水でも温度の違いで氷、水、湯気になるわけだ。」

 

 ギーシュは「うむ。確かにそうだね。」と、言いながらタイミングを見計らってシエスタが出してくれた紅茶に口をつける。俺もシエスタにお礼を言って口をつける。

 

 「つまりさっき俺が適当(・・)に選んだ堅くて白っぽい砂が水で、ギーシュが錬金をかけた事により、ガラスという氷の状態に必要なものが追加され、温度変化を起こしたとしたら。

 ―――つまりこの紅茶をガラスだとして、水という砂を沸騰させ熱湯にして、そこに紅茶の葉が入り、シエスタがカップに注いでくれて葉が取り除かれた状態が錬金の本質だとしたら……。どうだ? 

 恐らくで申し訳ないのだが、土のドットの錬金に関してだが、ギーシュの青銅のように得意なものと、ガラスのように不得意な物があったとして、ギーシュの不得意な物も、水や葉を準備しておけば錬金できると考えれば納得できないか?」

 

 「こじ付けも甚だしいかもしれないが……。」と言いながら紅茶を飲むと、

 

 「おお、友よ。そう考えれば確かにつじつまが合う気がしなくも無い。しかし、では赤土殿のようにトライアングルのメイジが金を錬金で作れないのはなぜだい? 金に近い素材があればできるということだろう?」と、ギーシュが聞き返した。なんとなく伝わったかな? 余り自信がないのはこちらも同じだが……。

 

 「ああ、そうだね。ただこの水が本当にそれに合ったものかが問題なのだよ。同じ“氷”でも『水から作った氷』と『油から作った氷』では溶かした時の物質は全く別のものだろう? それと同じさ。ここにある砂や土、石はきっとその水に相当するものだろう。そして金自体が水である可能性が高い。

 そして、沸騰させたり葉を入れたりカップに注いだりする行程だけでなく、水を作り出すところからが錬金のドットやトライアングルのような錬度の差が出るのだろう。実際ギーシュは水が無くても青銅のゴーレムを作って動かせるわけだからね? 俺としてはどちらもすごいと思うが、恐らく赤土殿は錬金を研究するのが本分なのかもしれないね。赤土殿がギーシュに合わないのは方向性が違うからだと思うよ。」

 

 穴がありまくりだがここは詭弁で通そう。なんせファンタジーだからな。ぶっちゃけ何でもアリだ。説明をしながらちょっと訳がわからなくなってきたのをごまかすために適当に切り上げて紅茶を飲む。

 

 「そうか、なるほど。しかし、僕に合うような教師が見つかるだろうか。こうなるとマルコが少しうらやましくなってしまうね。」そう、ギーシュは考えながら少し気落ちした。

 

 いや、すごい身近にトライアングルのゴーレム使いが……。しかし言えない。言ってはいけない気がする。ミス・ロングビルをカスティグリアに引き込めればかなりの戦力アップ&諸々の問題が解決するのだが、かなりハードルが高い。

 

 いや、彼女が捕まったときに本来救出するワルドより早く脱獄させればいいのだろうが、アルビオンのこともあるし、もしワルドの偏在に見つかったら俺が勝てる保障もない。というか、確実にマークされるだろう。むしろ、その前にそこまでたどり着けるかもかなり怪しい。

 

 襲撃のときに彼女を拉致するのもアリだし、直接ティファニアを連れ去るのもアリだが、領地に降りかかるリスクから考えるとそこまで欲しい戦力ではない。いや、実際美人だけどさ。年齢離れすぎだしさ。

 

 「そうだね。もしギーシュがゴーレムに関してさらに追求していきたいというのであれば、俺は友として助力したいところだが、実際君がワルキューレを出したところを残念ながらしっかりと見たことがないからね。俺の助力を受けて貰えるというのであれば、ここで一体出してみてくれないか? もしかしたら良い案が浮かぶかもしれない。」

 

 「そうか! 友よ。ぜひ頼む。」と言って、一度外に出てワルキューレと一緒に戻ってきた。

 

 青銅のゴーレムなのだが実際に見るとかなり芸が細かい。戦闘能力や防御能力を度返しした見た目重視のゴーレムだ。そういえば彫刻とか上手いっていう設定があったような……。

 

 そんなことを考えながらワルキューレを観察したり腕を持って動かしてみたり、ギーシュに軽く断ってから腕をブレイドで真っ二つにしてみたりどんどん分解していった。俺のブレイドは現在約1mまで縮小可能だ。メイル? 個人的には未だにメートルの方が目算しやすいのだよ。力学系の計算は全てmks単位系だしな。わざわざ変換するのも面倒くさい。いや、資料に載せて見せるときは変換式も適当に盛り込んで、「要、実験による検証」とか入れているが……。

 

 「あ、ああ、あの、と、ととと友よ。僕のワルキューレがとんでもないことになっている気がするのだがね?」と、なんかギーシュが言っているがそれどころではない。小説やアニメだけでは分からないゴーレムの神秘に迫っている最中なのだ。友とはいえ邪魔しないでいただきたい。

 

 「気にするな、友よ。これもワルキューレが強く美しく生まれ変わるためだ。」と、適当に言いながらどんどん分解していく。もはや某人型戦闘用ロボットのプラモデルを買ってきてパーツを全てゲートから切り放したような感じになっている。

 

 やはり中空か。関節部分は謎が多いが、魔力で維持していたのだろう。もはや切り離されているが……。簡単に測定や、形状をメモしていき、床に落としたりシエスタに鉄製のフライパン(なぜかあった)で叩いてもらってみたりしながら分析を続ける。同じ青銅の十円玉は、こうも簡単には割れたり曲がったりしないと思うのだが、成分がかなり違うのだろう。あちらはほとんど銅だしな。ううむ。興味深い。

 

 「あああああ! ワルキューレ! シエスタ嬢! やめてくれたまえよ!」

 

 ギーシュが何か言っているが気にしてはいけない。彼はちょっとナルシストだ。きっと無機物恋人設定のワルキューレを想うどこかの主人公のような感じで劇を開始したに決まっている。それはそれで見てみたい物語だが今はスルーだ。きっと反応したら負けだ。

 

 よし。大体終わったはずだ。まぁこれはすでに量産型だからな。データ不足があればあとでもいいだろう。

 

 「ギーシュ、終わったぞ。おお、どうした友よ。なぜ泣いているんだい? 悲しい事があったのかい?」

 

 「ああ、今ワルキューレが……。」そういいながら割りと本気で泣いている。

 

 「ああ、ギーシュすまない。これ戻せないか?」そういうと、ギーシュは薔薇の杖を振って一度消してから戻した。ふむ。やはりゴーレムはすごいな。消失、出現まで出来るとは……。

 一応完成図も正面、背面、側面を軽くスケッチした。

 

 「それで、何かわかったかい?」そう、ハンカチで涙を拭きながらギーシュが尋ねてきた。

 

 「うむ。喜びたまえ、我が友ギーシュ。今まさに俺の頭の中にはすでに弱点を補う改良案や更に強化するための構造が山のように、それこそ溢れるほど浮かんでいるよ。」

 

 そう言いながら思い浮かんだことのリストだけを作っていく。構造や検証実験の方法、機能性の向上案、武器やそれに伴う利点と欠点、そして有効と思われる戦術や訓練方法など、ああ、あと三面図の見方も一応書いておくか。しかし、本当に多いな……。しかし、ロボットは男の子のロマンだからしょうがない。ガリアの王様も虚無なのに将来ロボットにハマっていたはずだ。

 

 「そうか! それならば僕のワルキューレが犠牲になった意味もあるかもしれないね! ぜひ教えてくれたまえよ!」とギーシュが明るい笑顔で言ったので、資料を作って送るからしばらく待っていてくれと頼んだ。

 

 長期休暇まで残された日数は少ないが、現在謹慎中でやることも無い。日々ワルキューレの改良案のリストを片っ端から資料にしていく。何度かシエスタに心配されたが、ベッドに入ってもこっそりメモを作っているのが見つかって怒られて以来、着替え以外で厚い天蓋のカーテンを閉めるのを禁止された。なんという……。

 

 何とか最終日の昼に書き終わり、シエスタにギーシュを呼んでもらって手渡した。ちなみに図案が多いので両面使っても百枚を余裕で超えている。まぁぶっちゃけ数えてないが、重ねるとかなり分厚くて重い。

 

 「さぁ、友よ。お待ちかねの新型ワルキューレ改造案だ。ぜひ受け取ってくれたまえ。」と笑顔で渡すと、「こ、こんなにあるのかい? 予想以上だよ。友よ。ありがたく受け取らせてもらうよ。」と言ってちょっと引きながら少し引きつった笑顔で受け取った。

 

 いや、もっと喜んで欲しかったのだが……、分解されたのがショックだったのかな? まぁいいか。

 

 そうして翌日、長期休暇が始まり実家から風竜隊がお迎えにやってきた。シエスタは長期休暇中はタルブ村へ戻るという予定を聞いていたので、ついでにタルブ村まで送ることになっている。

 

 ルーシア姉さんと俺と、シエスタの三人をそれぞれメイジが操る三匹の風竜に運ばれ、それを護衛するように五匹の風竜が周りを飛ぶ。いつの間に増えたし……。

 

 あっという間にタルブに着き、シエスタを草原で降ろして、再び飛び立つ。物珍しかったのだろう、タルブ村の平民がワラワラと集まってきて、シエスタを囲みつつこちらを眺めているようだ。ぶっちゃけほとんど見えんが一緒に乗ってるメイジがそう言っている。

 

 「クロア坊ちゃん。カスティグリアはこの3ヶ月ですごい変化しましたよ。きっと驚きますよ。」とか言ってる。いや、驚くかもしれないけど明るい日はほとんど見えないからね? それに元々のカスティグリア領も知らないからね? それほど驚かないかもよ? 

 

 「そうか、それは楽しみだな。」そう言いながらカスティグリアを目指す。そして、一度タルブ村に寄ったので、お昼過ぎごろに屋敷に着いた。いや、距離から考えてかなり速度上がってないかい? 前回は直行したのに半日かかったと思うのだが……。

 

 屋敷の門のすぐ前に着陸し、風竜から降ろしてもらい、いつものメイドさんに肩を借りながら屋敷の門をくぐったところで、まぶしくて影がボーっと見える出迎えの方々に挨拶をしようとしたら、ヒザから急に力が抜けて、いきなりぶっ倒れて気絶した。竜に乗っているだけで疲れたのか? 解せぬ。―――ああ、そういえば昨日まで資料作りしてましたね。

 

 

 起きたら屋敷のベッドの中だった。荷解き作業はメイドさんがしてくれたらしく、モンモランシーから貰って学院に持って行った香水も学院に行く前のようにサイドテーブルに配置されている。増えた分も少しあるが、大体貰った順番なのでそのあたりは適当に並べたようだ。

 

 部屋はほとんど真っ暗だが、常夜灯のような光がほのかにサイドテーブルを照らしている。今が夜中なのか昼間なのかわからないのがちょっとした悩みだが、日中なら恐らく何度か様子を見に来てくれるだろう。とりあえず部屋を少し明るくするためにマジックアイテムを点けて、ベッドの背もたれに寄りかかる。

 

 まぁ今回は多分昨日までの寝不足が原因だろう。こっそり寝たフリをしてシエスタが休んだあと、起きだして極わずかな光の中で資料を作りまくっていたからな。ギーシュに説明する時間を取れなかったのだけが心残りだが、個人的には丁寧に書いたつもりだし図案も多かったから解読してくれることを祈る。

 

 ちなみにメインは中の空洞部分に(はり)をめぐらせ、トラス構造で衝撃や圧力の分散をメインにしているのだが、増やせば増やすほど重くなるし、少なすぎては意味があまりない、その辺りの調整というかギーシュの好みがわからないので、かなりのパターンを作成した。

 

 装甲である外装も二重構造になっており、中間部分は衝撃を逃がすためにくの字パターンを多く仕込んである。外装に直撃した物体はまず表面で止まるか反れればいいが、外装の表面を貫通した場合、まず外装とパターンの間に補充する軟体の物質(多数候補を書いた)により衝撃を分散されつつ、パターンによって進路変更を余技なくされる。そこも貫いた場合でも逆側で止まるだろう。稼働が難しくなるだろうが、腕部や脚部以外なら差して問題はあるまい。

 

 一応防御に関して最高の性能を誇る設計案は自動小銃はもちろん、重機関銃でも貫通が難しいと思われる。ただ、計算上なので、先のものよりも遥かに射程距離が短く貫通力の低いこの時代の大砲とかの直撃を貰えば、貫通はしないだろうが固定されていないワルキューレが空を飛ぶと思う。ふむ。せっかくだから領地用にも防御装甲案を作っておくか。

 

 サイドテーブルから羊皮紙を取り、資料の作成を始める。そういえば空飛ぶへび君の設計とか考えてた頃がありましたね。その辺りも書いておきましょう。問題は推進剤やロケットに付ける翼や……ってマジックアイテムとかファンタジーの世界でしたね。なんかファンタジーっぽい物で代用できないですかね。

 

 その辺りの案と「空対空ミサイルの赤外線追尾方式の原理」の記憶を引っ張り出して、ゴリゴリ書き続ける。ふむ。実は俺資料つくりが好きなのかね? こう、なんていうか現代知識とファンタジーの融合とかロマンだよね。

 

 ああ、ロマンついでに「戦車を作ってみよう」みたいな感じのヤツも作るか。先込め式だが大砲はあるんだからベースがあればいけるだろう。単なる盾代わりでもいいしな。大体、風石がわんさか取れるんだし、それを使えば分厚い装甲でも浮かせて移動が出来そうで夢がひろがりんぐだな……。ロボット? 俺はもうただの男の子ではないのだよ! その辺りはギーシュに任せた。

 

 ふむ。このフロートシステムはかっこいいかもしれない。ぶっちゃけ“脳が逝かれた開発者の作ったハイスピードアクションロボットゲーム”では最軽量最高速度フロートでガンガン飛ばしていた。あの制御が困難な物を制御する快感が……って前世の知識か。それも案として盛り込んでおこう。というか馬車いらなくなりそうだな。いや風石高いらしいから必要か。

 

 ああ、というか以前も考えた気がするが蒸気機関のプロペラでも風石あれば空飛べるんじゃね? アレは確か蒸気の圧力でシリンダーを前後させて、その運動をクランクを使って回転運動にしてって感じだったな。ああ、でも水を回収できないと水切れで動かないとかあるのか? ジェットエンジンみたいに後ろに出せばかっこいいと思ったのだが……前に作ったかもしれんが作ったかどうかすら覚えてない。一応資料を作るか。

 

 と、寝起きからなんとなく思いついたことを書いていき、資料のリストを作って、順番に詳しく書き記していく。しばらくはこれらの資料作りで時間をつぶせるだろう。

 

 大体一つの資料を作るのに一週間以上かかりそうだし、クラウスがまた見舞いに来てくれて長期休みを資料作りだけに消費するとは思えない。まぁ説明する時間も必要だろうしな。

 

 そう、色々考えながら羊皮紙にゴリゴリと書き込んでいると、控えめなノックの音が聞こえた。書きながら「どうぞー。」と言うと、メイドさんが入ってきた。

 

 「クロア坊ちゃま。お目覚めになられましたか。私も含め、皆さん心配しておりました。ご家族の方を呼んでまいります。」と言って、出て行った。さすがに慣れたものである。お礼を言う暇もなかった。

 

 そして入ってきたのはルーシア姉さんとクラウスだった。

 

 「おお、クラウス、久しぶりだな。今帰ったぞ。」と笑顔で言うと、

 

 「兄さんが帰ってきたのは正確には3日前だよ!?」とつっこまれた。

 

 そして、ルーシア姉さんに「またこんな物書いて。シエスタに聞いたわよ? あなたが根詰めすぎで止めても聞いてくれないから心配だって。今回倒れたのもそのせいでしょう?」と、ほんのり笑顔で怒られた。笑顔は本来攻撃的なものであり……という解説が頭をよぎった。

 

 くっ、シエスタ……お前もか。って悪いのは俺ですね。シエスタは心配してくれてむしろありがたいです。

 

 そして、帰って来た日からの事を聞いてから、クラウスがカスティグリア領の話を始めた。

 アレからまだ三ヶ月しか経っていないのだが、風石の産出量が恐ろしく多いらしい。最初はどかっと売って領地改革の投資分を稼いだのだが、出来るだけ値崩れを防ぐため、現在は輸出はほどほどにして、風石を使った領地改革や戦力の拡充に勤しんでいるらしい。

 

 風石採掘の初期費用や自由落下爆弾などの開発費、そして風竜隊の創設費や維持費や、メイジの雇用費などはもう回収済みで、風竜隊の拡充やその他施設の改良、量産に取り組んでいるらしい。今のところ農業関連設備が後回しにされ、簡単な設計の脱穀機くらいしか作られていない。今まで棒で叩いてたらしい。恐るべし、ファンタジー。

 

 ああ、そういえば俺の決闘騒ぎがあったときはさすがに驚いたそうだ。第一報は王城に勤めている両親がクルデンホルフ大公国経由で知らされ、オールドオスマンからの説明が王城と実家であるここに送られ、クラウスも知るところとなり、風竜隊が編隊を組んでクラウスを王城へ送り、そこで話し合ったらしい。そして王城の貴族の意見が割れて、軽く脅してから三人と風竜隊がカスティグリアに戻り、防衛準備を急いだらしい。本当にやる気だったんですね。

 

 そして、後日オスマンから処分内容が送られてきて、そこに書いてあったのが俺がサインした内容とオスマンからの学院としての管理不足に関する謝罪が含まれていたため、杖を収めたそうだ。というか俺が説得するという話ではなかったのか? 手間が省けていいのだが……。

 

 一応俺が説得することを了承しているということも書いてあったため、全くこれに関してはすることが無くなった。両親もすでに納得しているらしい。

 

 あと、来年はクラウスが学院に入学予定ということで、少し学院のことを聞かれた。そういえばクラウスも土系統か。軽く赤土殿の研究方針や、そこから新しくできた友達のギーシュ、マルコの話、俺を支えてくれるシエスタの話、たまに文通や授業で会うモンモランシーの話をしておいた。

 

 モンモランシーは基本的に授業や香水くらいしか接点が無いが、まぁ男子寮だから仕方ないね? と言ったら、まぁ兄さんだからね? と言われた。

 

 ああ、虚弱だからな。通えないさ……。それに、クラウスだって男子寮に入るんだぞ?

 はっ、コイツもしかして……早くも女子寮に通う計画を綿密に立てているのか!? さすが次代のカスティグリアを背負って立つ男。未来予測や計画期間の長さが半端ないぜ。ここは兄として女性寮の見取り図や潜入方法をギーシュ辺りに調べて貰って資料を作っておくべきだろうか?

 

 しかし、来年はカスティグリア姉弟が三人とも学院に集うのか。姉さんが三年、俺が二年、クラウスが一年。そういえば今年の俺の入学と共に姉さんは進級試験で使い魔を召還したはずだ。その辺りまだ聞いてなかったな。しかし、今さら聞きづらい感も……。という念が通じたのか、

 

 「そういえば姉さん、使い魔はなんだったの?」とクラウスが聞いてくれた。姉さんの使い魔はジャイアントヒッポポタムス、つまり巨大なカバらしい。あまりにでかいので普段は学院の近くの川に放し飼いにしているそうだ。皮膚がすごく分厚く頑丈なので、そのまま数匹の風竜で運んでもらい、現在は家の近くの池に生息しているらしい。呼べば来るそうだ。

 

 「見たいなら呼ぶわよ? 見たい? 見たいわよね? じゃっくぅ~!」と返事も聞かずに呼ぶと、少しして外からドドドドドドドという音と振動が伝わってきた。窓を開けてまぶしい中見てみると、かなり早いスピードでこちらへ突っこんでくる動物がいる。

 

 そして姉さんがフライで外にでてジャックと呼ばれた巨大カバに乗ると、遠目でも大きさがわかる。軽く全長10m以上ある。重さは知らん。知らんが、ゾウより重いのではなかろうか。さすがファンタジー半端ないっす。姉さんは使い魔を溺愛しているようで、ひたすらコミュニケーションを楽しんでいる。いや、かわいいと思うけどね? 前世でもカバ好きだったし。

 

 「で、でかいな。マジででかいな。」そうつぶやくと、隣から「うん。あんな動物初めて見たよ。」とクラウスが応えた。ファンタジー出身のクラウスもでかいと思うのか。さすがだ。というかアレさ、風竜が運べる重さなの? 不思議でしょうがない。

 

 とりあえず、クラウスがルーシア姉さんを大声で何度か呼んでみたがジャックとの世界に入り込んでしまったようで反応が無かったため窓を閉め、カーテンを閉め二人で話すことにした。

 

 「そういえば兄さん。大事な話なんだけどさ。婚約者が決まりそうなんだけど、どう思う?」

 

と、クラウスが真面目な顔をして聞いてきた。ふむ、婚約者か。確かにクラウスはまだ若いとはいえ、この世界での婚約はかなり早いことが多い。だが、恐ろしく早いのは主に女性で一桁歳とか余裕でありそうだ。えっと、俺が今年15歳だからクラウスは14歳か? 学院を出ると17~18歳だしな。14で婚約、18歳までに結婚って感じか? そう考えるとこの世界なら別段早すぎるとも思えない。

 

 しかし、相手は誰なんだ? 誕生会パーティとかで知り合ったのだろうか。学院への入学前に決めてしまうとは、ギーシュやマルコですらまだ相手を学院で探している段階だと思うのに、さすがクラウスと言わざるを得ない。兄とは性能が段違いだZE

 

 「ふむ。別に遅くも早くもなくていいんじゃないか? むしろ相手方の家とこちらの家が了承するならば協力関係も築きやすいしな。しかし、相手の女性とはどんな感じなんだ?」

 

 そう聞くと、安心したような顔をしたあと、少し考えるような顔をしてから状況を教えてくれた。

 

 「うーん……。まぁ双方かなり好ましく思っていると思うよ? カスティグリア家としては問題ない相手だし、あちらから見ると少し問題があるかもしれないけどそれを補って余りある魅力がこの家にはあるから大丈夫じゃないかな? 父上も相手方は家族全員かなり乗り気だと言っていたし……。」

 

 ふむ。まぁ双方の家が乗り気で両思いなら貴族としては珍しいほどの良縁ではないだろうか。さすが自慢の弟クラウスである。これでカスティグリア家の次期当主も安泰だな。

 

 「そうか。ならば何も問題ないのではないか? むしろ顔を知らなかったり、歳が親子ほど離れていたり、何かしらどちらかが不満を持ちつつも親に決められた婚約などが貴族の婚約だ。むしろ、クラウスが判断する限りだが、当人同士が両思いで双方の家が乗り気なのはかなり珍しい良縁ではないか?」

 

 そういうと、「おお、兄さんもそう思うかい? それなら安心だよ。」と言って笑った。そして婚約式は今回の長期休暇中に行うらしい。相手方がこちらに来るそうだ。どんな人が来るのか楽しみだな。ただ、相手が一人娘なので、場合によってはカスティグリア家が吸収する形で領地を統合することや、子供が生まれた場合の条件など、色々なことが検討され、出し尽くされた全ての状況での条件などは全て円満解決済みだそうだ。

 

 しかし、相手がこちらの吸収での領地の統合も辞さないとは……。恐るべし、カスティグリア家。と、いうかそれなら俺に聞く必要ないじゃんね? ああ、でもいくら虚弱とはいえ家族で俺だけ知らないというのも色々問題アリか……。ちなみに姉さんはすでに知っている、というか話し合いに加わっていたらしい。

 

 「しかし、年齢的には姉さんが先ではないのかね?」そう聞くと、姉さんは今までそういう相手に縁が全くなく、引き続き良縁を探しているらしい……。

 

 「というか、兄さん誰かいない?」と、聞かれたがギーシュとマルコしか友達と言える存在がいない。そしてギーシュは優良物件だが四男で恐らくモンモランシーの婿候補だろうし、マルコは長男だが腹が出ているしそれほど顔もいいというわけではないと思う。

 

 いいヤツなんだが、姉さんに合うだろうか。とても優しくて、向上心があって、かなりいいヤツなんだが、正直なところ見た目はギーシュや他のヤツに劣ると言わざるを得ない。

 

 「いや、一応、いるには、いる……。いるんだが少し問題が有る気がするので胸を張って推薦は出来んかもしれん。」と言うと、一応聞かせてと言われたので、マルコを紹介しておいた。

 

 彼の家柄や俺から見た彼の性格や良いところを片っ端あげて、決闘騒ぎの後も俺の宣誓の証言や護衛にギーシュと共にいち早く名乗り出てくれたりしたエピソードをあげたりしてから、「だが、しかしな……」と推薦しづらい理由(身体的特徴など)も、ちゃんと言っておいた。あとついでに原作から考えられる性癖というか特殊な趣味なども、「あくまで俺の勘で全く根拠がないが、もしかしたらあるかもしれん。」と伝えておいた。

 

 すまん、マルコ。客観的に見ただけで本心じゃないんだ! 本当にすまん。相手が姉さんじゃなければ黙っていたのだが、まことに申し訳ない。いや、義理の兄弟になるのは吝かではないのだがね。むしろ歓迎したいところなのだがね……。

 

 「あとは、狙い目としたらグラモン家の跡継ぎあたりか?」そう聞くと、姉さんの好みではないらしい。「嫌々ながら売れ残りそうなら我慢する」というレベルだそうだ。いや、一族揃ってハンサムじゃなかったっけ? 「そんなにひどいの?」と聞いたら、社交界では結構人気があるし、向こうも悪く思ってないみたいだけど姉さんの好みには合わないそうだ。

 

 なんという高望みだろうか。ルーシア姉さんが恐ろしい。

 

 ちなみに婚約式は来月の頭だそうだ。「兄さんはイベントに弱いんだからしばらく身体に気をつけて安静にしていてよ?」と言われた。うむ。弟の晴れ姿を見逃すのは兄としての矜持に反するからな。「うむ。善処しよう。」と言っておいた。……いいえっていう意味でしたっけ? 気のせいです。資料作りがあるのですが一応それなりに安静にしておきます。

 

 

 

 

 

 

 




えっと、お楽しみいただけたでしょうか。

ええ、ちょっと後書き変えました。
読者の方にお聞きしたい事をたまに活動報告に載せるので気づいた方はアンケートにお答えしていただけるとありがたいです。

できれば次回もおたのしみにー!

追伸:メールで教えていただいてたいへんありがとうございました。(てへっ


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