ゼロの使い魔で割りとハードモード   作:しうか

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ついに原作突入しました! 
助走が長かったですね^^;



16 原作突入と対策

 そして授業初日の本来予定されていた使い魔の召喚の日。俺は前日から体調を崩して寝込むことになった。くっ、やはりイベント補正か!? だがやはりここは……。と、思ったらプリシラが見てきてくれるそうだ。

 

 おお、これは大変ありがたいです。

 

 『プリシラ、それじゃあ悪いけどお願いするね?』

 

 『構わないわ。任せておいて、ご主人様。』

 

 プリシラにお願いすると快く引き受けてくれて、窓が勝手に開いて彼女が飛んで行った。そしてそのあと勝手に窓が閉まった。

 

 あ、あれ? 何か今ちょっと不思議な現象が……。

 

 と、とりあえずプリシラの報告を聞きつつ安静にすることにした。

 

 

 

 

 ベッドで横になりながらこっそりプリシラとの会話を楽しんでいる。シエスタはちょうど遅めのお昼を摂りに厨房へ、モンモランシーは俺のことを心配しつつも使い魔を召喚の場へ、ルーシア姉さんとクラウスは授業なので現在はこっそり寝たフリをしている。

 

 ギーシュやマルコも昨日はお見舞いに来てくれた。モンモランシーもそうだが、プリシラは大変彼らの受けがよく、早く自分の使い魔が欲しいと言っていた。

 

 確か原作での、モンモランシーの使い魔は黄色いカエルのロビン。黒い斑点があったようななかったような。他からの受けはあまりよくないようだが、黄色いカエルはかわいいしキレイだと思うので俺としては問題ない。

 むしろ鳥や魚などに襲われないかが心配だ。水の精霊の涙が必要になり、ラグドリアン湖で水の精霊との橋渡しを使い魔のカエルに頼んでいたが、アロワナやでかいナマズなんかが棲んでいたらきっとひと飲みなのではないだろうか。使い魔を失った彼女の泣く姿は見たくないのでむしろファイアー・ボールで呼び出した方が……いや、逸れたな。

 

 ギーシュの使い魔はジャイアントモール、つまり巨大モグラという人間ほどの大きさがあるモグラで名前はヴェルダンデ。確か地中を進む速度が馬並みに速いとか……ぜひ風石採掘現場で働いて欲しい一匹だ。あれ? 深すぎて届かなかったんだっけ? まぁいいか。

 

 マルコの使い魔はなんかフクロウだった気がするのだが、全く覚えていない。マルコすまん。

 

 ついでに有名というかよく出てくるのがタバサ嬢のシルフィードとキュルケ嬢のフレイムだ。

 シルフィードは全長6mほどの風竜。カスティグリアにいる個体よりかなり小さいが、実は風韻竜で会話と先住魔法の行使が可能な珍しい竜である。主に主人公たちの足となっていた。実際タバサ嬢は移動手段が欲しくて彼女が呼ばれたという説もあったような気がする。

 フレイムはトラほどの大きさがある火トカゲで口や尻尾から火が出てたような……実はあまり印象にない。火竜山脈出身のレアモノという評価だった気がする。

 

 そして最後にミス・ヴァリエールが召喚する平賀才人(地球、日本出身)なのだが、確か平均的な高校生でヌケてるとか落ち着きが無いとかそんな評価だったと思う。まぁそのおかげでこちらの世界に順応できるわけなのだが、いや、順応できたのか? 少々疑問は残るが順応したことにしよう。

 しかし、個人的に考えるとカエルから風韻竜まで幅広いとは言え、使い魔として一緒くたにされるのは哀れかもしれない。いや、地上で一番栄えてるのは人間だ。まぁこの世界での価値基準で見るとただの平民より風韻竜や火竜山脈のレアモノの方が高いかもしれんが、強く生きて欲しいものである。

 

 

 

 さて、プリシラが現場に着いたようなので、プリシラの実況でこのライブラジオを楽しもうかと思います。

 現在プリシラはモンモランシーの肩に止まっているようで、モンモランシーから「あら、心配して見に来てくれたの?」と話しかけられ頭をそっと撫でられているそうです。仲が良くてよいですね。ええ。

 

 俺の影響を一番受けているであろうギーシュやマルコ、そしてモンモランシーが何を呼び出すのか少し気になる。いや、今日中に全員呼び出されるわけだから純粋に楽しもう。召喚が始まり、一つ問題点が発覚した。そう、プリシラは動物の名前がわからないのである。いや俺もわからんが、モンモランシーがこっそり「あれは○○かしらね?」とかそういう声を出してくれて、それをプリシラが俺に教えてくれている。彼女がいてくれなかったら不明のまま終わるところだった。

 

 ある程度召喚が進み、知り合いメンバー中で一番手はギーシュだった。

 彼が召喚を終えると、やはりジャイアントモールだったらしく、「ああ、なんてつぶらであいらし瞳なんだ」と口説いているらしい。(アイ)(eye)を掛けて……いや、いいか。うん。

 

 しかしギーシュが原作そのままだと全員そのまま行く可能性も出てきた。それはそれでいいのだが、ちょっとした変化というかだな……。と思っていたら次はマルコだった。しかし、彼はフクロウだったけ? という程度の印象なので違いがわからない。純粋に楽しもう。

 

 マルコが呼び出したのは40サントほどのムクドリのような鳥らしい、プリシラに配色を尋ねるとおなかの部分が淡い白、翼と背部は黒っぽい色をしており、クチバシは黄色なのだが先端が赤いらしい。なんかカラフルな鳥ですかね? 同じ鳥仲間としてちょっと興味が沸きました。

 

 次はモンモランシーで「じゃあ行ってくるわね。」と声をかけたあとプリシラはマルコの頭上に移動したようで

 

 『モンモランシーの順番のようだからマルコの上に移動したわ。「おや、ああ、そうか、モンモランシーの番だからこっちに来たんだね?」今のはマルコよ。』

 

 といわれたそうだ。マルコの鳥とも話せるようで、『この子がよろしくっていってくれたわ。』とプリシラが言っていた。ふむ。もしかしたら後で餌や生活環境を考えるのに便利かもしれない。一応プリシラにその鳥に餌と整えて欲しい生活環境を聞いてみてくれと言ってベッドから起き上がってメモしておいた。

 

 『「おお、モンモランシー嬢も鳥のようだね。クロアの影響かな? 僕達の中で3人目だ。」だそうよ。』

 

 ぶっ! え、えーっと? と、鳥ですか? 水の精霊とのコンタクトはどうなるんでしょうか。やはりファイアー・ボールですかね?

 

 『「ああ、あの鳥はとてもなんというかキレイだね。いや僕の鳥やプリシラもとてもステキだけど、三羽とも違った特徴があって興味深いね。」』

 

 ふむ。プリシラから特徴を聞いてみると、60サントほどの鳥で直立しているようだ。羽から背中にかけて青とも緑とも言いにくい柔らかい光沢を持った色でおなかの部分はふわふわしており、真っ白だそうだ。あと足に水かきが付いているらしい。配色からカワセミやインコ、はたまたケツァールあたりかと思ったが、たしかそれらの候補には水かきは無かったはずだ。カワセミやケツァールは大きさが全然違う。ファンタジー特有種だろか。

 しかし60サントほどで直立となるとペンギンやそれに類する鳥の可能性も出てきた。となると潜水も可能なのか? 水かきがあるという事は水上、または水中での活動が可能と考えて間違いないだろう。見た目の説明を受けて考えているうちにモンモランシーが契約を終えて戻ったようで、プリシラも移動した。

 

 『モンモランシーのところへ戻ったわ。「ふふ。私もクロアとお揃いで嬉しいわ。後で見せに行くって伝えてちょうだいね。」と、いうわけで伝えたわよ?』

 

 と本当に嬉しそうな声が聞こえてきた。くっ、まさかのプリシラを通して遠距離攻撃とは……しかもこの威力……だと……!? し、しかし耐えねば、ここは耐えねば。追撃は無いはずだ。

 

 プリシラがモンモランシーの使い魔への聴取を始めたので、とりあえず意識が飛ばないように気をつけつつメモを取る。どうやら今までは海や湖に潜って魚を獲って食べていたらしい。カモ? それともやはり潜水系の鳥だろうか。後者なら水の精霊との橋渡しもできそうだな。少し気になる。個人的にはすごい気になる。

 そして、モンモランシーの使い魔からプリシラが聞いたことをまとめて再び考えていると、

 

 『「あれはサラマンダーだったかしら? キュルケやるわねぇ。」あ、アレ食べた事あるかもしれないわ。』

 

 というプリシラを通したモンモランシーの驚きを含んだセリフとプリシラの怖い話が聞こえてきた。プリシラあれ食べれるの? サラマンダー大きいんじゃなかったでしたっけ? ああ、そういえば尻尾燃えてるのか。尻尾かじったのかな? そのくらいなら問題ないか。―――多分。い、一応許可があるまで他人の使い魔は食べないようにプリシラに伝えておいた。

 

 しかし、キュルケ嬢は原作と同じようだ。ちなみに火トカゲはサラマンダーとも呼ばれている。しかし、前世の知識ではサラマンダーはサンショウウオのことでもあり、サラマンダーと聞くと、トカゲというより両生類というイメージが……。と考えていると今度はタバサ嬢が風韻竜を引き当てたらしい。

 

 『「あら、風竜ね。カスティグリアの風竜より小さいかしら。でも風竜も便利でいいわね。」』

 

 ふむ。やはりタバサ嬢はシルフィードかな? 

 

 

 『「最後はルイズね。多分失敗するけど大丈夫なのかしら。」』

 

 そして、プリシラが言うには大きな爆発が起こってるらしい。やはりまだ虚無に覚醒してないから難易度が高いのだろうか。

 

 『「あれ、平民? なのかしら? 珍しいわね。」』

 

 というモンモランシーの声をプリシラが伝えてくれた。ふむ。しかし、平民まではクリアか。あとは原作オリジナルの平賀才人ご本人ならクリアだが、もう少し確認することがある。

 まずは平賀才人かどうか。これはまぁ見た目と名前でわかるだろう。そして次が少し難問だ。転生者かどうか、特殊能力を持ってるかどうか、前世の記憶などを持っているかどうかである。

 

 プリシラに召喚された平民の見た目と言動を優先で知らせてくれと頼んだ。耳は良いようでモンモランシーのところからでも拾えるらしい。プリシラからの報告では頭髪は黒、服は青と白のパーカー(プリシラの説明から推測)、と、今のところ概ね当てはまってはいる。

 

 『ピンクメス「あんた誰?」 黒オス「誰って、俺は平賀才人。」 ピンクメス「どこの平民?」』

 

 淡々とした感じでプリシラの声が続く。な、なんというかピンクメスとか黒オスとか……、いや、彼女たちは紹介してないからまぁしょうがないといえばしょうがないのか。とりあえずずっと聞いていると、特に今のところおかしな点はない。そして順調に原作を消化しながらミス・ヴァリエールのファーストキスを犠牲にしたコントラクト・サーヴァントも終わったらしいのでプリシラにお礼を言って戻ってきてもらう。

 

 話の内容から転生者やこの作品の記憶を持っているという疑念はほとんど無くなったと言っていいだろう。いや、完全完璧な原作知識を持っていてセリフをトレースしている可能性も否定できないか。確認方法を考える必要があるかもしれん。先ほどまでは見た目が大体同じなら、そして服装が同じで、銃や武器、さらにはこちらで役立ちそうな物などを持っていなければ原作のオリジナル平賀才人確定でいいと考えていたが、意外と穴があったようだ……。

 

 ちょうどシエスタもお昼から戻ってきたのでとりあえず才人への賄い料理のことを頼もう。「シエス―――」

 

 「クロア様! 起きていてはダメですよ! 安静にって言われてたじゃないですか。ああ、また書き物なんかして……。」

 

 名前を呼んでいる途中にささっと接近され、横から肩を支えられてゆっくりベッドに押し倒された。髪が挟まらないようにうなじから上にそっと髪を流してくれた。いや、自分でもできるんだけどね。最近たまにこうやって寝かされます。いや、自分で横になれるんだけどね!

 そしてプリシラから聞いた事を書いたメモが回収されサイドテーブルに置かれ、テーブルから一脚椅子を持ってきて枕元に置いて座った。

 

 しかし、頼みごとをこのタイミングで切り出すのはきついかもしれん。せめて平民が召喚されたという話をモンモランシーやギーシュたちから聞いてからの方がいいだろう。こっそりプリシラに教えてもらってましたとか言ったらシエスタに怒られるかもしれん。ちょうどそっとプリシラも戻ってきて、天蓋のカーテンを掛けている上の部分に止まった。

 

 「えーと、シエスタ。一体何を?」

 

 話があるのだろうか。ひたすらこちらを見てるが特に表情の変化はない。

 

 「クロア様が安静にしていられるよう。見守らせていただいております。」

 

 ちょっとよくわからない。それだと普通は安静にできないのでは!?

 

 「いや、ちょっとえーっと、それだとあの、安静にできないのでは?」

 

 「いえ、目を離すとすぐ起きてしまわれるようなので見守らせていただきます。」

 

 ふむ。シエスタがほんのり怒ってるようにも見えるが、実際俺の体調は朝からかなり悪い。どのくらい悪いかと言うと、頭痛、喉の腫れ、呼吸も困難でぜぇぜぇ言ってるし、咳がしたいけどできない、四肢の関節が熱を持って痛い、意識は朦朧として恐らく一人で立つとめまいで倒れるだろう。と言った感じだ。まぁ前世でいうと重めの風邪かインフルエンザのような症状だろうが、残念ながらそのような病気ではない。

 

 いや、幸運なことなのかもしれない。風邪やインフルエンザならシエスタやモンモランシーにうつる心配が出てくるが、ここ15年ほどの経験上、誰かに感染することはないとわかっている。

 

 「シエスタ、心配かけて悪いね。ただ、これから授業が終わったらモンモランシーや他の友人が訪ねてくるかもしれない。その時に話したいことがあるんだ。起こしてもらって構わないかな?」

 

 「ちゃんとお休みになるなら、そのお話のあともちゃんとお休みになるのでしたら起こしてさしあげなくもありません。」

 

 くっ、主従逆転してる気がしなくも……。いや、たまにこんな感じか? ふむ。しかし問題はなさそうだ。ここは条件を飲んで頼もう。

 

 「わかった。よろしく頼むよ。シエスタ。」

 

 そう言って目を瞑り、お休みモードに入ると意外と無理をしていたのかあっという間に寝入った。

 

 

 

 

 

 

 

 少し体を揺すられる感覚と、モンモランシーのヒーリングの詠唱の声が聞こえ、意識が浮上した。目を開けてみるとシエスタが俺の体を揺すっていて、モンモランシーが心配そうな顔でヒーリングをかけてくれている姿が目に入った。

 

 「ああ、起きたよ。ありがとう。」

 

 そう、声をかけると「モンモランシー様がいらっしゃいました」と言ってシエスタが下がった。

 

 「クロア。大丈夫? じゃなさそうに見えるけど、お話があるって聞いたから……。」

 

 と、モンモランシーは心配そうに寝る前シエスタが座っていた椅子に座り、そっと横になっている俺の額に手をあてた。ひんやりしていてやわらかくてとても気持ちがいい。

 

 「ああ、プリシラに聞いた。君が召喚した使い魔はとても美しいそうだね。きっと輝くように美しい君にふさわしい鳥なのだろうね。本当はすぐにでも見たいのだけど今いないということはお預けかな? 体調がよくなったらぜひ見せて欲しい。

 あと、これから使い魔について調べるのだろう? そこにプリシラが君の使い魔とマルコの使い魔に聞いた餌や望みの生活環境について聞いてくれたものをメモした羊皮紙がある。書き分けていないがぜひ二人で役に立てて欲しい。

 それで、平民が召喚されたようだが様子はどうだった? 君が見たところを教えて欲しい。」

 

 と、聞くと一瞬眉を寄せ、

 

 「ええ、ありがとう。あとでもよかったのに。」

 

 と少し悲しそうな顔をしたあと、ちょっと考えるようなしぐさをしてから召喚された平民に関する彼女の初見を教えてくれた。彼女が見たところ、ただの平民にしては服の仕立てがよく、見たことのない形だったそうだ。恐らくその仕立ての良さから貴族であるミス・ヴァリエールが用意したと思われたのかもしれない。

 

 背の高さはキュルケと同じくらいらしいのでギーシュよりは低いだろう。黒い髪に黒い目。これはシエスタと同じだし、肌の感じも似てるといえば似てるかな? と言った感じだそうだ。そういえばシエスタの曾爺さんは大日本帝国海軍の少尉殿でしたな。

 そして彼が平民と貴族という言葉を知らない、ということに少し違和感を感じたそうだ。モンモランシーの観察眼には恐れ入る。

 あと彼の左手にコルベール先生も見たことが無いルーンが現れており、先生にスケッチされていたそうだ。

 

 ガンダールヴも確定。と、なるとやはりオリジナルですかね? 心配しすぎですかね? 

 

 だがしかし、ここに転生した人間が一人いるし、実際原作との乖離は結構ある。油断はいけない。ヤツは平賀才人に完全な原作知識と前世の知識を持ったまま転生した転生者で、その完全な原作に沿って今のところそれを消化しており、実はどこかでひっくり返すために、三歳から全ての武術を嗜み、もはや指先一つで爆破可能な人間凶器になっている可能性も否定できん。

 

 そう、油断はいけないのである。原作の才人とこちらの才人の違いをどこで見極めるか、そこが重要なのだが、未だにいい案が浮かばない。

 

 もし転生者ならまず召喚に向けて体か知識を鍛えるだろう。俺なら間違いなくそうする。ただ、俺の場合原作まで3年しかなかったことを考えると、彼は召喚された直後の爆発などで憑依して原作まで1秒もなかった、という究極の事態も無くはない。もしコレだったら事前の強化は無理だ。そして、その場合、まず俺とモンモランシーが婚約していることに疑問を持つだろう。

 

 もし、彼が生まれた直後か比較的若い時期に転生したのであれば、地球での自己強化のための訓練で原作に影響があったという判断をすることもなくはないが、完全に原作のまま生きており、原作突入時に憑依転生を果たしたなら確実に疑問を持つはずだ。その場合こちらへのアプローチもあるかもしれない。その辺りでまずは判断しよう。

 

 恐らく対象は俺かモンモランシー、次点でマルコだろうか。俺は本来原作には登場しないキャラだが、画面外にいたとも捕らえることができる、しかし、モンモランシーの婚約者ということで興味を持つだろう。モンモランシーに関してはカエルではなく鳥を召喚している。マルコについてはわかりにくいだろうが、原作と違いかなりいいヤツになってるし、ギーシュもその点では変わらないか。

 

 この考え方だとむしろ対象や方法を絞りきれない気がしてきた。アプローチを変えてみよう。まず、原作通りなら問題ない。これは基本的に原作の根幹イベントを順調に消化しているか確認するだけでいいだろう。

 

 問題なのは、完全な原作知識と、もしかしたらチート能力を持った転生者や憑依者だった場合なのだが、俺ならばどうするか……原作通りに進めるのがまず安全だが、モンモランシーの攻略を優先しつつ自分の理想であり究極のメイド服とドロワーズを追い求めるだろう。そしてラグドリアン湖で―――いや、逸れたな。

 もしハーレム思考を持った人間だった場合、片っ端からアプローチをかけるか、気に入っているキャラの攻略を即座に開始するだろう。

 

 そうだ、忘れていたが確か原作オリジナル才人だった場合、巨乳派であったはずだ。

 

 それも鑑みて考えた場合、ヒロインであるミス・ヴァリエール、割と大きいシエスタ、更に大きいキュルケあたりまでなら原作改変の影響で手を出す可能性はある。しかしここでいきなり、恐らく最小のタバサ、スレンダーで理想的なプロポーションと美を誇るまさに生きた奇跡の宝石であるモンモランシー辺りに積極的にアプローチするようなら怪しいと見ていい。

 

 ついでにミス・ロングビルも背景や能力を知っていれば手元に欲しくなるかもしれん。

 いや、しかしミス・ロングビルとシエスタは同じくらいか? もっとはっきり見ておけばよかったかもしれない。いやまぁ、近づかないと見えないのだが……。となると、ミス・ロングビルにアプローチを掛けられるとかなり判断が難しくなるな。ふむ、そして彼女の後ろにはこの作品最大を誇るティファニアが控えている。こちらの早期攻略を目指すならミス・ロングビルの保護に乗り出すはずだ。その辺りで判断しよう。

 

 ―――大体まとまったようだ。

 

 「ああ、モンモランシーありがとう。少しシエスタに頼みたいことがある。呼んでいただけないだろうか。」

 

 そういうと、モンモランシーはシエスタに声をかけた。

 

 「シエスタ。これから少し妙なことを頼むが聞いて欲しい。ミス・ヴァリエールのことだ、もしかしたら使い魔の平民の、そうだな、本当にもしかしたらだが、懲罰的な意味や使い魔の躾として彼の食事を抜く可能性がある。

 モンモランシーの初見から外国人、もしくは平民でない可能性がある。特別、そう、貴族や教師、目上の人を相手にするように振舞う必要は全くないが、それでも一応“無理やり呼び出され無理やり使い魔にされたちょっと可哀相な平民”として彼がもし食堂で食事を抜かれるようなことがあったら俺の名前を出さずにそれとなく君の知り合いのコックにでも頼んで賄いでも食べさせてあげてほしい。もしお金が必要ならば俺の名前でカスティグリアにつけておいてくれ。」

 

 熱のせいか、イマイチまとまりが悪いというか、練りが甘いというか、穴がありそうだが恐らく原作通りなら本来明日の昼、才人は昼飯を抜かれ、シエスタに賄いを貰い、感謝した才人がシエスタを手伝いギーシュとの決闘という流れになるはずだ。ここにシエスタを配置しておかないと初めからご破算になる可能性が出てくる。アニメ版だと最初のシエスタとの邂逅は朝の洗濯らしいが、そこは問題ないだろう。

 

 「わかりました。そのときはコックのマルトーさんに頼んでみますからクロア様はご心配なさらず、おやすみください。」

 

 と言って心配そうな顔を少し伏せカーテシーをしてくれた。

 

 「モンモランシー、君はもしかしたら興味を持つかもしれないけど、彼については今のところあまり俺たちのような貴族が直接手を出さない方がいいかもしれない。ミス・ヴァリエールの使い魔だからね。元々彼女と親交があるのなら構わないかもしれないが、急に接近すると怪しまれるかもしれない。」

 

 そこまで言うと、

 

 「わかったわ。クロア。何をそんなに心配してるのかわからないけど、大丈夫よ。私もいるしシエスタもプリシラもいる、ルーシアさんやクラウスさん、ギーシュにマルコもあなたの味方よ。今はゆっくりおやすみなさい?」

 

 と言って頭を撫でてくれた。「ああ、モンモランシーありがとう」と言ったところで頭に感じる頭痛とそれを癒すかのような柔らかい感触に眠りの中に落ちて行った。

 

 

 

 

 

 




ええ、突入しました。
次回あたりからサイト君が絡んだ話が増えます!
やっべー。恋愛成分カット難しくなってるよorz

次回おたのしみにー!

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