最近友達の一色いろはがあざとくない件について 作:ぶーちゃん☆
【★☆祝!100万UA突破☆★】
というわけで本当にありがとうございました☆
最後に投稿してから早半年弱。読者さまにじわりじわりと読んでいただきまして、ついにUAが100万回を突破しました!
で、先に謝罪しておきます><
今回記念に更新したくせに、なんと新作ではありません……orz
まぁタイトルを見たら分かるとは思いますが(汗)
ただの第1話のリメイクなので(全て一から書き直しではありますが内容はほぼ変わらず)、別に今さら1話なんざ読みたくねぇよ!アホか。という読者さまはバックでお願いいたします……っ!
キンコンカンと日本全国お馴染みの鐘が校内に鳴り響き、ようやくお待ちかねのランチタイムが始まる。
「ぶへぇぇ〜……お腹減ったぁ〜……」
「ちょっと香織、あんたも一応女なんだから、ぶへぇ〜は無いでしょぶへぇ〜は」
「あと減った、じゃなくて空いたって言いなよ〜? ホンっト女の子捨ててるよねー」
「うっさいよあんたら! 一応でもなけりゃ捨ててもいないわっ。どっからどう見てもリア充満喫美少女女子高生でしょーが」
「はいはい」「そーですね」
「ぐぬぬ……」
友人共の心無い悪態に、解せん……と苦虫を噛み潰している美少女女子高生こと私 家堀香織は、県内有数の進学校とも名高い千葉県立総武高校に通う、才色兼備なリア充女子である。ウホッ! 人生勝ち組すぎて敗北を知りたい!
……すみませんそこそこ盛りました。まぁまぁ才色兼備程度な認識でオナシャス。ちなみに二学期の期末の順位は後ろから数えた方が早いかもっ♪ (白目)
「香織そこ椅子邪魔〜。そっちにどけてー」
「かしこまっ☆」
「……」「……」
と、まぁそんなどこにでも居るような私は(才色兼備投げ出すの早すぎィィ!)、中学からの友人でもある笠屋紗弥加・大友智子にとても痛いものでも見るかのような生暖かい目で見られつつ、今日もいつものように机を移動してランチの準備を済ませた。やはり解せん。
「ごめーん、ちょっと午後の会議用の書類整理してたら遅くなっちゃったー」
おっと、ランチの準備が終わった頃にようやく現れましたもう一人の友達の紹介もせねばなるまいね。
この子の名前は一色いろは。
私と紗弥加と智子とで四人グループを組んでいる中の一人であり、なんと一年生にして生徒会長という重責を担う女の子。
校内で知らぬ者など居ない、我が校の超有名美少女生徒会長なのだ!
× × ×
この一色いろはという女、一年生にして生徒会長という肩書きを手に入れた上、恵まれた容姿と人当たりの良いふわぽわ空気(男限定)を遺憾なく発揮し、今や総武三巨頭(雪ノ下雪乃、葉山隼人、一色いろは)と呼ばれる程の大物なのである。
ちなみに三巨頭なんて呼んでるのは今のところ私くらいですがなにか?
……え? 三巨頭とか名付けてる辺りがすでにオタ臭いって? いやいや私オタとかじゃないんで。
んん! ま、まぁそれはそうと、そんな一色いろはを一言で言い表わすとするのなら…………そう、あざとい。
恵まれた容姿に加えて天性の男たらしの才能の持ち主で、クラスどころか学年中にファンが居るほどの小悪魔系美少女。
いや、サッカー部の女マネなんていう青春真っ盛りな事もやってるから、上級生にもファンなんていくらでも居るんだろう。
もっとも最近はあんま部活には顔出してないみたいだけど。
狡賢く打算的な『わたし可愛いアピール』に、まわりの男共のお手玉感はそりゃもう半端ない。
そのジャグラーっぷりはマジで凄くて、意中の男子をタラシ込まれた女子は両手の指じゃ数えきれないほどなんじゃないかしら?
もちろんそれにより恨みも手広く買っちゃってて、実はいろはが生徒会長になっちゃったのは、いろはへの妬みつらみからくる報復だったりするんだよね。
てかそんな女となんで私たちはグループを組んでんの? って話なんだけど、まぁぶっちゃけ、最初は打算もありました。なんなら打算しかないまである。
私、紗弥加、智子は中学時代からずっとグループ組んでたんだけど、決してクラス内No.1カーストってわけでは無かった。
まぁいわゆる序列二番目くらい?
それはそもそも私たちがトップカーストとかに興味無かったからで、トップを狙おうと思えばいつでも出来たのさ。だって沙也加も智子も美人だし人気者だし。
ただいかんせんトップに興味無くて、どんなに人気があってもあんま興味の無い女子も男子もグループに入れないでいたから、グループ自体がデカくならずにトップにはなれなかったのよね。
でもこの一年C組内カーストに関してはちょっと諸事情があって「トップになったるで!」と一念発起し、そこに白羽の矢が立ったのがいろはっつうワケなのでありますよ。なにせ男子人気“だけ”はクラスNo.1だったから、この子を引き込んじゃえばすぐにトップになれるんじゃね? って。
女子にはすこぶる嫌われてたのが不安要素ではあったけど、ま、そこはアレですよ。いざとなれば切り捨てちゃえばいーじゃない? ってね!
やだ! 超打算まみれ!
てなわけで、そんな軽ーい気持ちでグループに入れてみたんだけど、いざ腹を割って話してみたら意外や意外かなりいいヤツだし気が合うしで、今やすっかり仲良し四人組って感じです♪ 女の友情って美しい! (嘘つけ)
でもいろはをいいヤツって理解出来たのは当の私たちだけの話であって、やっぱ他の女子にはずっと嫌われっぱなしのままで、二学期の中頃には弄りという名の嫌がらせで、気が付いたらいろはは生徒会長に立候補“させられていた”のです。
とまぁ最初は望まないカタチで会長になっちゃったわけだけど、こいつはそんな逆境を逆手に取って、今や押しも押されぬ有名人に登り詰めちゃったんだから、やはりこいつはマジで侮れない……恐るべしいろはす!
──でもね、そんないろはの様子が最近ちょっとおかしいんだよね。
どうおかしいのかと言うと、一色いろはの代名詞ともいうべき“あざとさ”がすっかりとナリを潜めている。端的に言うと……一色いろはがあざとくない!
あれはそう、三学期初日からすでにおかしくなっていた。
いや、いま思えば、もしかしたら二学期の終わり……そう、生徒会長に就任してから初めての仕事でもあった他校との合同イベント辺りから、徐々におかしくなっていってたのかも。
以前ならどんな時でも己の可愛さを周りにアピールする努力を厭わなかった。
甘ぁい猫なで声で朝から男子のご機嫌を伺い、甘ぁい魅惑的スマイルで悩殺。
困り事あらば甘えた態度で男に媚び、休日の買い物には男を荷物持ちに利用する日々。
でも、今はもうそんな素振りはほとんど無い。
もちろんそこは一色いろはである。それでも通常の女子よりはよっぽど男を利用しようと努めるのだが、そこには以前のようなあざとさは無いのよねー。
なんていうか、仲が悪くなったとかそういうんじゃなくて……クラスの男子に興味を失っちゃったって感じ……?
三学期初日からかなりの謎行動で、クラス全体がふよふよと大量に疑問符を浮かべてたんだけど、そんなおかしさが決定的になったのはつい先日のお話である。
その日は朝からD組の中西翔太君が愛しのいろはを訪ねて来たのだ。
中西君は爽やかイケメンでもありバスケ部次期エースとも目される、学年でもトップを誇る人気者。
そんな人気者な中西君がいろはの術中にハマった事で、クラスどころか学年でも一色いろはアンチの流れが決定的になったまである。
いろは的にも中西君はお気に入りの荷物持ちだったようで、数多くの荷物持ちの中でもその利用頻度はトップクラス。
戸部先輩か中西君かってくらいによくご利用……お出掛けしてました☆
……う、うん、生徒会長強制立候補とか、やっぱ自業自得だわいろはすよ……!
でもここ最近めっきりいろはからのお声が掛からなくなった事が不安で不満だったらしく、ついに痺れを切らした中西君が朝からいろはを強襲したってわけなのよ。
『なぁいろはー、最近全然遊んでないじゃ〜ん。そろそろ次の休みにでも遊びに行かない? 俺、いくらでも買い物付き合っちゃうよ?』
自分のウリが『買い物付き合っちゃうよ?』とか言ってる時点でお察しというか、完全にお得意様である。
あのときはあまりの切なさに私も胸を傷めたもんだよ……
でもそんな憐れでいじらしい中西君に対し、いろははあざとい笑顔をするでも猫なで声で惑わすでもなく、普っ通ーの笑顔で淡々とこう言い放ったのだ。
『あ、ごめんね翔太君。最近生徒会の仕事忙しいしそっちに集中したいから、もう“そういうの”やめたんだー。今までありがとー』
まさかの全拒否!!
今までありがとーって、あんた卒業しちゃうアイドルグループメンバーかなんかかよ。みんなの事は嫌いになっても、わたしの事だけは嫌いにならないでくだしゃい!
これには中西君もクラスの連中も絶句。
中西君は人気者の自覚もあるし周りの目も気にしてか「そ、そっか」と、あくまでも爽やかな笑顔を崩さず教室出てったけど、その小さくなった背中はマジ哀れ……
ま、いろはは元々葉山先輩狙いなのは有名だったし、それを知った上で自ら買い物の付き合いを申し出てたんだから、いずれこうなる事なんて分かっていただろうにねぇ。
……そのうちいい事あるよ中西君っ! あざとい女には気を付けなはれやっ?
× × ×
「つーかさ、いろは最近真面目に生徒会活動してるよね」
「ねっ! お昼休みなのにまだ書類準備してるとか、なんかもう誰? って感じー」
お待ちかねの昼休みに仕事を被らせてまで頑張っているいろはに、たまごサンドにかぶり付きながら紗弥加が疑問を投げ掛けると、すかさず智子が黒さを出す。
こいつも昔っからふわぽわ系に見せかけた腹黒女だからなー。
「ちょっと智子それは失礼じゃない? わたし、超真面目な模範生徒だしー」
「いやそれはない」「またまたぁ」「無理あっから」
「ぶぅ〜」
元おな中トリオからの息の合った突っ込みに、いろははぷくーっと頬を膨らます。
最近男子に対してあざとくないとはいえ、こういうひとつひとつの所作はどうしてもあざとさが滲み出すのよね。やはり息を吐くようにあざとさを振り撒いてきたこれまでの十六年間は嘘を吐かないのか。
とはいえこのあざとさは男に対してとは違うものであり、私たち友達との間で交わされる、いわばお約束めいたものでしかない。あくまでも“小悪魔系美少女一色いろはのあざとさ”とは別物なのだ。
よし! ここはモノのついでに、今まで疑問に思ってた事を聞いてみましょうかね。
「てかさぁ、ぶっちゃけ最近いろはってちょっと変わったよねー」
「へ? ……ふぇ?」
私からの質問がよっぽど予想外の不意打ちだったのか、きょとんと首をかしげるいろは。わざわざ言い直さなくてもよろしくてよ?。
「だよねー」「私もそう思ってたー」
知らぬは本人ばかりか、きょとんと首をかしげるご本人様の横では、紗弥加も智子も深く深くうなずいている。
そんな私たちの様子に戸惑いながらも、いろはは訝しげに問いかけてきた。
「えっと……ちなみにどの辺が?」
「「「男にあざとくなくなった」」」
間髪入れずに即答した私たちに、いろははまたもやたこはすにメガシンカっ!
「別にわたしあざとくないですー! つねに素ですー」
「「「あ、そう言うのいいんで」」」
いろはのあざとい対応に対しての私たちはなんというシンクロ率か! 使徒も泣きながら裸足で逃げ出すレベル。
むーっ! と相変わらず頬を膨らませるいろはだけど、しばらく膨らんで満足すると、んー……と人差し指を顎に添えてわたし考えてますポーズを繰り出す。
「……あれかもね。興味対象が変わった……? のかも」
「興味対象?」
「うん。ま、わたし自身は自覚があるわけじゃないけど。ホラ、今まではちょっといいなって思った男の子にはとりあえず手を出……手を繋ぎたいかなー? なんて思ってたトコあるけどー」
お前いま手を出すって言い掛けたろ。このふわぽよビッチめが!
「最近は……まぁ、そういう気持ちが薄れてきたのかもね。なんだかんだ言って生徒会結構楽しいしさー、だったら今までみたいに興味の無い男の子と無駄な時間過ごすくらいなら、もっと違うトコに集中したいかなー? って?」
そっか、そういう事なんだね〜。
……って軽く流せない程の聞き捨てならないセリフをいけしゃあしゃあと吐きましたよこの女!
興味無い男の子と無駄な時間過ごしてた自覚あんなら、最初から思わせ振りな態度取らないだげてよぉ! ほらほら、紗弥加達もドン引きしてっから!
「……やっぱお前地獄に落ちろ、このガッカリふわぽよめっ」
「は? いやいや意味分かんないし。そもそもガッカリとか残念とか香織にだけは言われたくないんですけどー」
「残念じゃないやい!」
だいたい残念だなんて一言も言ってねーし!
やはり解せん……! と、いろはに呪咀の念を送りつつ、箸でつんつんと卵焼きを弄んでいた時だった。
ふと視界の端の方で、見知らぬ男子生徒がクラスの男子を扉の近くで呼んでいるのが見えたのだ。
ふむ、呼び出してる男子も呼び出されてる男子も地味系だし、地味友かなんかかしらん?
でも……あれ? 最初は見知らぬって思ったけども、よくよく見たらちょっと見覚えあんなぁ。ん〜、どこでだっけ……?
「あ」
そうそう! 確かいろはが生徒会選挙のゴタゴタがあった辺りで、まさに今と同じようにいろはを訪ねてきた……確か二年生だったっけ?
もしかしたら生徒会の人なのかな?
……ああ、そういえばあの時はいろはの表情七変化は凄かったなぁ。
二年生のお客さんが来てるとか聞いた途端に、目をキラン☆と輝かせてグルンっと凄まじい勢いで振り向いたかと思ったら、一瞬だけ悲壮感漂うガッカリ顔を晒したのよね。
でもそこはさすがいろはす抜け目ない。次の瞬間には営業スマイル張りつけて、可愛さ全開でパタパタと走ってったっけ。
ま、おおかた二年生が来てるって聞いて、まさか葉山先輩っ!? って期待したんだろうけど、流石にあの落胆丸出しのガッカリ面は無いわ。あんたいくらなんでも先輩には敬意を表しなさいよ、ほんの少しくらいでもさ。
いろはの表情変化を目の当たりにしたあの二年生の引きつった表情っていったらもうね。ついちょっとプークスクスしちゃったじゃない。
申し訳ない見知らぬ先輩よ……! だってちょっと面白かったんですもの!
ふむ、もしかしたらあの先輩は、ああ見えていろはの魔性に騙されていない人種なのかしら?
あの二年生が今日もいろはに用事があるんなら、またあんな七変化を見せてくれんのかしら? とハラハラして見ていると、やっぱりクラスの地味男子がオドオドといろはに声を掛けてきた。 ああ……普段私らトップカースト女子グループに話しかける事なんてないから超緊張しちゃってるんだねごめんねー?
やはりあの二年生はいろはに用事があったらしく、この女は予想通り二年生に呼ばれてるって言われたその瞬間……
キラっ! と!
グルンっ! と!
そしてそう! ガッカ…………あ、れ……?
え? な、なにその顔……?
あの悲壮感漂うガッカリ顔はどこいっちゃったの? 超嬉しそうに表情緩めちゃってるんですけどこの子!
……あっれ〜? 訪ねてきたの前と同じ先輩だよね……? 見間違い……ではない……よね?
いろはは二年生男子の姿をバッチリ認識すると、すでに地味男子など視界に入ってないかのようにスッと横を通り過ぎると、パタパタと一直線に二年生男子へと駆けよった。そして……
「せーんぱぁい! どぉしたんですかぁ?」
甘っまーい! 甘すぎるよぅ!
その二年生男子へと掛けた第一声は、ひと月以上ぶりに聞いたいろはの甘い甘い猫なで声。
え、なにその甘え声!? 思わず砂糖吐いちゃうかと思ったわ! ここ最近とんと聞いてなかったっていうギャップも相まって、その糖度はブラックコーヒーが勝手にMAXコーヒーへとジョブチェンジしちゃうレベル。
クラスの連中もそんないろはの様子にビックリして何事かと様子を伺ってるから、おのずと教室内はしんと静まり返り、いろは達の会話がよく聞こえるのでした。
──思えばこれが私の盗ちょ……盗み聞き生活の始まりである。言い直した意味ない☆
家堀さんは聞いている!
× × ×
「先輩がわざわざわたしのクラスに来るなんて珍しくないですかぁ?」
可愛さ(あざとさ)全開で謎の先輩に自分を目一杯アピるいろは。
マジでこんないろは見んの久しぶり。……いや、以前毎日のように目にしてたいろはよりも、なんていうか……ずっと可愛い。
でもそんないろはを前にしたこの先輩はあからさまに「うっわ……」って顔を前面に押し出して一言。
「あざとい」
……へぇ、やっぱあの先輩は『いろは』をちゃんと見てるんだ……
だからなのかな、いろはがあんなに楽しそうなのは。
「むー、だから素ですー! 第一声があざといとかマジで酷くないですかぁ……? っと、そんなことより何かわたしにご用ですか? …………あ! もしかしてぼっちランチが寂しくて、可愛い後輩と一緒にお昼したくなっちゃいました?」
「あん? プロぼっちなめんなよ? 何年お一人様ランチを楽しんできたと思ってんだ。一人飯が寂しいのなんて小学校低学年のときにはすでに卒業してるわ」
……プロぼっちってなんですか……そして卒業早っ!
「購買行こうとしたら平塚先生に捕まっちまったんだよ……なんか来週のマラソン大会の件で生徒会に緊急召集が掛かったらしくてな。……で、ついでだから一色呼んできてくれって命令された。マジ勘弁してくれ」
「えー……仕事の話ですかー? ホントつまんない先輩ですね」
「いやいや、貴重な時間割いてわざわざ呼びに来てやったのに俺が責められんの?」
「貴重って言ったって、どうせ一人寂しく味気ない購買パン食べるだけじゃないですか」
おぅふ……いろはす辛辣ぅ!
その先輩今に泣いちゃうんじゃないかしら。
「まぁ別に否定はしないが」
泣くどころか迷いなく肯定しちゃった! あの人ぼっち精神ブレないですなぁ……
「まぁそんな事より……」
斬り捨て御免すぎだよいろはす! 辻斬り侍だってもうちょっと遠慮するから!
「先輩、さっきからなんでキョドってるんですかぁ? 照れっぷりがちょっと気持ち悪くて見てられないんですけど」
そう言ったいろはは、にまにまと悪戯っぽく微笑んで先輩を覗きこむ。
「……うっせ、一年生の教室来て女子を呼び出すなんて、俺には難易度高すぎて結構緊張してんだよ。……あとストレートに気持ち悪いとか地味に傷付くからね?」
「ごめんなさい我慢して直視します」
「……ねぇ酷くない? お前年下とはいえ女子じゃなかったらそろそろぶっ飛ばしてるとこだわ。年下男子……てか大志だったら今ごろ東京湾直行まである」
「タイシ? タイシって誰ですか?」
「そんなの今どうでもよくない?」
ホントにどうでもいいですよね。
でもなぜだかいろはさんが聞く耳を持たず、ただただ先輩からの返答を待っている。
これはあれかな? 自分以外に仲の良い後輩が居るなんて聞いてないから気になるって感じなのかな?
そんな、答えを聞くまでは頑として動こうとしないいろはに、先輩は面倒くさそうに頭をがしがしと掻いた。
「チッ……あー、うちのクラスの川……川……川島? って確かお前どっかで一回会ったことあったよな。あいつの弟だ」
「あぁ……川なんとかさんって、クリスマスイベントの時に保育園で会った恐い人ですよね? ……………てか、なんで先輩ぼっちの癖して女子の弟さんをファーストネームで呼ぶほど親密な仲なんですかー……? もしかして先輩……川なんとかさんと結構仲良かったりするんですかー……?」
お、おやおや……? いろはさんの声が途中から急に冷たくなりましたが……
な、なんか寒いよぅ……!
「は? ちげぇよ。大志は妹の友だ……いや、妹にまとわりつく毒虫だ」
「……シスコン?」
低っく! 声低いよいろはす!
でもそんな冷え冷えとしたドン引きの眼差しを向けながらも、なんだかちょっとホッとしてるように見えるのは気のせいですかねぇ?
「……ていうか妹さんて小町ちゃんの事ですよねー? そろそろ紹介してくださいよぉ、わたしだけなんですよー? 小町ちゃんに会った事ないの」
「私だけもなにも別にお前関係なくない? ……そもそもお前と小町なんて恐くて会わせらんねぇっつの。ただでさえ小町もあざといのに、さらにあざとい一色なんかと会わせたら、あざとシスターズ結成しちゃって不幸な未来しか見えん」
「わたしと小町ちゃんでシスターズって…………はっ! それってもしかしてプロポーズのつもりですかどさくさに紛れて小町ちゃんのお義姉ちゃんになってくれとか言ってますかさすがにそれは色々と大事な事をすっ飛ばしすぎじゃないですかねもうちょっと良く考え直してから出直してきて下さい、ごめんなさい」
すげーな、この振り芸……言い出し始めから丁寧にペコリと頭を下げるまでの流れに息つく暇がないじゃない。
てか最終的には出直してきて下さいとか言っちゃってんよこの子。……ってあれ? これ振ってなくない? まさかの交際要求やり直しである。
………………あっ(察し)
でもどうやらこの怒涛の振り(?)芸は慣れたモノなようで、この先輩は辟易とした表情を隠そうともせずに軽い対応を返す。
「はいはいそうですね……。あ、そういやいつまでもお前と話してる暇なんかねぇんだよ。早く購買行かないとパン無くなっちまうわ」
凄いなぁ、今の振り芸に対してこの対応。慣れすぎでしょ……
この人たち普段からこんな会話ばっかしてるのかしらん。
しかしいろはには今の先輩の何気ないセリフに思うところがあったご様子。
ピコーンと頭上に豆電球を光らすと、ぴこっと人差し指を立てて楽しそうにこんな提案を議会に提出した。
「あ、だったらお仕事が終わったらわたしのお弁当分けてあげますよ。どうですか? 可愛い可愛い後輩と一緒にごはんを食べれるまたとないチャンスですよー?」
ニヤニヤと先輩をお誘いするいろはす。
いやん! いろはすったら結構肉食ねぇ!
「いやいらねぇよ。一色のあざとさ100%の少量弁当なんか分けてもらっちゃったら、お前の旺盛な食欲が満たされなくて午後の授業で腹鳴りまくって、クラスメイトの皆さんに迷惑掛けちゃうし」
ほぇ〜……いろはからのお昼のお誘いをこうも無碍に断るとは……ほとんどの男子だったら泣いて喜びそうなところなのに……
やはりあなどれないな、この男!
「……せんぱーい、それもうセクハラの域なんですけどー……。どうしよう、わたし先輩にクラスメイトの前でセクハラされて辱めを受けちゃいましたって奉仕部で発表しちゃいそう」
「勘弁してくださいすみませんでした」
あなどれないと感心してたのに、次の瞬間には土下座も辞さない勢いで後輩に即謝罪する上級生と、そんな上級生を満足げに見下ろすという見事な構図である。
それにしても……ホ、ホウシブ? なにそれ悪の秘密結社かなんか? そんなに恐怖の対象なのん?
「……と、とにかくだ。俺もう行くからな。パン売り切れてたらどうしてくれんだよ。……つーかお前も早く生徒会室行ってくんない? ……お前が遅いと俺が平塚先生からお叱りを受けるんだからな、物理的な」
ホウシブへのチクリに恐れおののいたのか、はたまたホントに購買の心配なのか、そう言って先輩は逃げ出した!
「え!? ちょ、ちょっと待ってください、一緒に行きましょうよぉ!」
しかしいろはさんは逃がさない! 縋りつかんばかりに先輩の袖をちょこんと摘む。
「……いやなんでだよ、俺別に生徒会室行かないし」
「えぇー……? で、でもちょっとそこまででもいいから一緒に行きましょうよー!」
「生徒会室と購買逆方向じゃねぇか……じゃあな」
「ちょ! ちょっとー!!」
おっと! 可愛く摘んでいた袖をあっさり振り払われたいろはが、凄い勢いで私たちのもとへと駆け寄ってきた!
そしてせかせかと机の上の食べ掛けのお弁当をお片付け。
「みんなごめーん! 生徒会の仕事入っちゃったから、わたしもう行くねー!」
「う、うんがんばってねー……」「がんばってねー……」「い、行ってらー……」
光の早さで教室を飛び出すと、『生徒会の仕事が入った』いろははなんの迷いもなく生徒会室とは“真逆”の方向へと大爆走。そしてまるで甘えん坊な少女のように、甘ったるい声で喚きながら去っていくのだった。
「……もぉ、待ってくださいよー! せんぱぁい!」
なにあれ可愛い。
……えっと、んーと……………………マジ……?
いろはのあまりにも分かりやすい乙女ちっくな求愛行動に、私たち……いやいやクラス全体が、ただただいろはの小さくなっていく声と背中を見送るのことしか出来ないのでした……っ。
ちょっといろはすさんや!? あんたコレ帰ってきたらただじゃ済まないわよ!?
というわけでありがとうございました!
いやホントすみません……ただの加筆修正にしとけよって話ですよね(;_;)
ずっと100万UA突破でなにかやりたかったんですけど、なにせ原作最新刊が一向に出ないもので新作には手が出せませんでした(゚□゚;)
原作設定・あざとくない本編設定完全無視のifでも良かったのかなぁ……
で、なんかやれないかなー……?と超久しぶりに1話を読んでみたら香織があまりにも別人だったんで、じゃあ今のキャラ付けが済んだ香織達で1話を書き直ししてみたらちょっと面白いかな〜と思い、一からすべて書き直してみました。
ほぼ同じ内容なのに文字数が倍になったのはご愛嬌(白目)
もしこちらの方がよければ旧1話と差し替えようかなーとか、こっちはあくまでもリメイクという事で、人生初小説記念としてやっぱ旧は旧のまま残しとこうかなー、とか考えております。
そんなこんなで、処女作でもありますこのあざとくない件が、たった39話しか無いというのにまさかのUA100万回突破しました!という有り難いご報告を兼ねてのリメイク更新でした。本当に本当にありがとうございました☆