白肌娘がダンジョンで活躍するのは間違っているだろうか   作:粉プリン

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第5話

「………………ん」

 

今日もいつも通り起きてランニングをする。いつものコースを進んでいるとふと、何処からか視線を感じた気がした。周りを見渡したが特に怪しい場所は……あった。遠くに見える白亜の摩天楼の上、多分最上部辺りかと予想をつけた。勿論ここからじゃ向こうの様子は見えないしいるかどうかも分からないから軽く手を振るだけにしておく。そのままランニングを続けると通りの真ん中でキョロキョロしている白髪の少年がいた。あまりに不自然すぎたため周りから注目されている。そこに酒場の売り子のような少女がバスケットを渡していた。そんな光景を見つつ家に帰るとシャワーを浴び朝食を作る。今日は材料が余っていたから卵を使った。ご飯に目玉焼きにサラダとごく普通の朝食が出来たがカリタスも自分も好き嫌いはないからこれで十分だ。その後、起きてきたカリタスと食事を済ませてダンジョンに向かう。と、そこで目にした武器屋に目を引く槌があった。先端に取り付けられた赤い玉が白い貴金属の素材で幾何学的に覆われ、持ち手の部分になにやら呪文のようなものが刻まれている物だ。つけてある値札に目を通すと6000ヴァリスと他の商品よりも断然に安かったが何故か誰もそれに手をつける気配はなかった。

 

「………………これ」

 

不思議に思ったがそれ以前になにか惹かれるものを感じ取り店員にその槌を購入することを告げた。

 

「えっと……売り手が言うのも何ですけど、それは買わないほうがよろしいかと」

 

店員曰く、この槌を購入していった物は皆ダンジョンで血塗れで死んでいるという曰く付きの武器だった。しかも血に濡れたのに槌自体は白いままで逆に先端の赤い玉はドス黒く輝きを増していく、まるで武器が血を吸い取って成長していると噂になりそれ以来誰も手にすることがなくなったと。

 

「………………買う」

 

「分かりました……、一応止めましたからね?」

 

それでも店員の反対を押し切り槌を購入した。名前は『紅水華』と書かれていて誰が名付けたかもわかっていないらしい。だが、血という単語が私と何処か共鳴しているようで買ったことは後悔はしていない。カリタスには告げていないけど軽く練習がてらダンジョンに潜ってみることにした。昨日みたいにレアモンスターに遭遇すると流石に不味いので今日は二、三層辺りで止めておくことにする。

 

 

ーーーーーー

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ーー

 

 

ダンジョンに潜ってみて分かったことが一つ、明らかにモンスターとのエンカウント率が上がっていた。角を曲がればすぐ壁に亀裂が走る。通路の向こう側に進んでいたモンスターがいきなりこちらに向かってくるなど不可解なほどにモンスターが寄ってきた。これがおそらく店員の言ってた噂の正体なのだろう。しかもこっちは初めての二刀流に挑戦している。槌だけでも良かったがそれだと今までよりも軽すぎるのでバランスを調整する意味で斧も持ってみたが逆にバランスを取るのが難しい。斧を振り回すと片手故に大雑把な攻撃にどうしてもなりがちだ。槌を振ってみるとこちらは狙い通りにいくが攻撃終わりに斧に引っ張られ体勢を崩しかける。先ほどからこの隙をモンスターに殺られかけているのでこちらも充分注意する点だった。

 

「………………終わった」

 

そんなモンスター大連戦も佳境に入り、ついに辺りのモンスターは狩りつくしたのか出てこなくなった。今もこの層の何処かでは生まれているだろうがしばらくは休憩できそうだ。と思っていたが座っている壁の反対側にヒビが入ったため休憩は終わりだ。斧と槌を構えて待つと、ちいさな鳥が出てきた。それだけかと思ったがよく見ると羽が虹色に輝き、嘴も光沢のある光が見えるためレアモンスターのようだ。まだ見たことのない初めてのモンスターにあったから倒してみたいが相手は空中を素早く飛んでいる。今の私では攻撃を掠めることもできそうにない。と、そこでふと目をやると左手に持つ槌が震えたような気がした。見ると刻まれている文字が白く光って文字が浮かび上がった。目を奪われた私は気づけばその文字を読んでいた。

 

『種は水を吸い取らず、葉は光を浴びず、花は誰にも見られず、やがて全て枯れ果てる』

 

そこまで唱えると突如、槌の先端の赤い玉から黒い蛇のような煙が這い出てきた。その煙は鳥めがけて向かうと鳥を囲む様に動いた。機敏な動きで逃げようとする鳥だが、それ以上の速さで煙が追いついた。すると鳥は突然痙攣しだすといきなり地に堕ちた。近づいて見てみると死んでいるらしかった。落ちた時に死んだのではなくさっきの煙に原因があるとみたほうが早そうだ、実際鳥に外傷はない。

 

「………………帰ろう」

 

何やら面倒なことになったと思いつつ、この事をカリタスに相談するため一回ダンジョンから出た。特に寄るところもなかったがダンジョンでそこそこ時間を消費していたのか家に着くと夜だった。どうやら夢中になって昼も忘れてダンジョンに潜っていたようだ。

 

「あっ!やっと帰ってきた!少し帰りが遅すぎるよ、すごい心配してたんだからちゃんと何があったのか全部白状してもらうから覚悟しておいてね!先ずはシャワー浴びて来なよ!」

 

帰って早速カリタスに怒られてしまったのでさっさと体を洗い流してダンジョンで起きたことを説明した。

 

「うーん……白い煙に触れたら鳥が死んだと。結局その鳥はどうなったの?」

 

「………………魔石とドロップ」

 

「それご果たして偶然なのかその煙によるものなのか、いまいち釈然としないねぇ……」

 

「………………ステイタスは?」

 

「ん?……そっかその手があったね。確かにステイタスを更新してみれば何かわかるかもしれないね!」

 

早速カリタスにステイタスを更新してもらうと何故かカリタスが震えていた。

 

「………………何があった?」

 

「ティア、君何か変なもの食べたりとか変なものに触ったりとかしてない?」

 

「………………その槌、曰く付き」

 

「……君のスキルなんだけれどね、増えてるんだよ。しかも魔法まで発現してる」

 

新しくなったステイタスを書き記した紙をカリタスから貰った。

 

 

ティア・センティシスハート

Lv1

力:C621→C663

耐久:I18→I18

器用:A810→A875

敏捷:C672→B709

魔力:I47→G211

《魔法》【ホワイトデス・ブレス】

・即死魔法

・敵に対する殺意がないと失敗(ファンブル)

・ドロップに対する確率を大幅に高める

・詠唱式【種は水を吸い取らず、葉は光を浴びず、花は誰にも見られず、やがて全て枯れ果てる】

 

《スキル》【血霧孤高(ナイトメア・フルーレ)

・早熟する

・血を浴び続ける限り効果持続

・孤高の存在で在ることにより効果向上

 

貴方は死に、私は生きる(デス・アンド・ライフ)

・継承する

・殺すことにより能力が一時的に向上

・血を浴びることで効果向上

 

可愛い美味しいシロウサギサン(キリング・ラビット)

・誘き寄せる

・孤独でいることにより効果持続

・一定量の敵を殺すことにより効果向上

 

 

どうやらまた厄介な事に巻き込まれたようだ。この間のレアモンスターと言いつくづくついていないと感じる今日この頃であった。


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