白肌娘がダンジョンで活躍するのは間違っているだろうか   作:粉プリン

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第3話

ウォーシャドウを倒した後もモンスターは次々迷宮から産み出される。五層から先はモンスターの生出頻度が格段に上がるため迷宮内を歩けばそこら中からモンスターが襲って来る。それを切り捨て、回避し、時には斧の腹部分で防ぎモンスターを倒していった。しばらく歩いて行くとようやく七層に通じる階段がある広間に出た。

そのまま降りようとすると突然大きな地鳴りが響いた。いや、よく聞くと音は地面からではなく天井から聞こえていた。上を見ると広間の天井にこれまでとは比べ物にならないほど大きなひび割れが起きた。この層の階層主でも出てきたのかと思ったがどうやらそれ以上に厄介なことになった。ひび割れの中から巨大な複眼が出てきた。顔の部分についた八つの赤い瞳がギョロリとこちらを見てきた。そのままひび割れは大きくなりついに天井が完全に裂けてモンスターの全貌が明らかになった。顔の部分に八つの赤い瞳、口には大きな牙が並び、こちらを踏みつぶさんと蠢く脚の数々。蜘蛛のような見た目をしたモンスターだが、冒険者からはこう呼ばれていた。

 

曰く、ラミスゲル『初心者殺し』(ビギナーキラー)

 

比較的上層で不定期に現れるモンスターは目撃情報が少ないレアなモンスターの一種だ。階層主程ではないがこの層に来始めた冒険者では余程のことがない限り太刀打ち出来ない。そしてこのモンスターの特徴として

 

ヒュビュル

 

口から吐き出された高粘度の糸が広間の入り口を閉ざした。獲物を絶対に逃さずここから出る方法は目の前のモンスターを倒すのみという逃走手段を潰しに来ることが初心者殺したる所以だった。糸は炎で溶けるがそんなものは持ってないので脱出は不可能だ。ラミスゲルは巨体に似合わず脚が速いため反対側の階段を目指すことも出来ない。ラミスゲルは獲物が掛かった事に喜んでいるのか口をギチギチと鳴らしながら飛び掛ってきた。こんな巨体の突進など受けきれるはずが無いため横に思っいっきり飛んで回避。一瞬後に轟音が鳴りさっきまでいた場所の壁が綺麗に減り込んでいた。ラミスゲルはダメージも無い様子で今度は長い脚を振って斬りかかってきた。向こうのほうがリーチが圧倒的に長いので今度はギリギリまで待って躱し、斧で脚を斬りつけるが表面の皮膚が硬く碌なダメージが通らなかった。そうしてお互いに決定打にかける攻撃をしていると、壁からまた新しいモンスターが出てくる。六層で見たウォーシャドウや蜥蜴のような体をしたダンジョンリザード、大きな目玉に触腕が生えたイービルアイ。どれもこれも今ここで出てこられるのは限りなくタイミングが悪かった。がこの場に限ってのみは有利に働くかもしれない。

 

「………………ふ」

 

その場からバックジャンプで飛び退き、近くにいたイービルアイを両断した。丸い身体が破裂し血が振りかかるが敢えてそれを受け、後ろから来たウォーシャドウに振り向いた。伸びてくる爪を柄で防ぎ、そのまま流すようにウォーシャドウの懐に潜り込み左肩から右脚にかけて斬りつけた。血飛沫を上げて崩れ落ちるウォーシャドウを蹴り飛ばし、正面のイービルアイの目玉にナイフを投げ込む。視界を奪われ翻弄するイービルアイを踏み台にして飛び上がるとラミスゲルの顔面に思いっきり斧を振り下ろした。先程までは弾かれ、傷もつかなかったラミスゲルの外殻がまるでバターを熱したナイフで切り裂くかの如く、抵抗なく刃が通った。ラミスゲルも自慢の装甲が意味をなくしたことに気づき慌てている様だが、ここまで来て逃がすようなミスはしない。周りのモンスターを薙ぎ払い、血を浴びながら前に進む。せめてもの抵抗として口から吐き出された糸が私を絡めとろうとするが、既に加速体制に入っていた私を通り越すように糸が飛び、助走をつけて植えに飛び上がる。そのまま首元に刃を当てると円を描くようにして頭を削ぎ落した。

 

「グァァァアアアア…………」

 

ラミスゲルは断末魔を上げながら地面に倒れ伏した。その巨体に押し潰される者や、ラミスゲルが倒されたことを知り逃げようとする者もいたがまだ部屋の入り口は糸で閉じているのだ。しかも私がいるのはちょうど階段側、逃す手はない。残っていたモンスターも丁寧に倒し終えるとようやくラミスゲルの体が消滅した。倒れていたところに拳ほどの大きさの魔石の欠片があった。それに近くにはラミスゲルの複眼と思われる赤く輝く石が落ちていた。ドロップアイテムと合わせてもこれで今日の武器台が浮くかもしれない。七層に行って武器の試しをしようと思っていたが予想外の結果になった為ここで引き返すことにした。


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