二人の『ゼロ』   作:銀剣士

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この回はマチ姐さんのお話


番外編
ヴァリエール領・フォンティーヌ領


「ミス・ロングビル、請求の方は承りました。しかし……こちらのルイズお嬢様の『使い魔の女性を公爵家の雇いにする』と言うのは、奥様か旦那様に申し上げて頂けないことには……」

 

だよねぇ……修繕費用に関しては公爵家には既に慣れたもので、執事長かメイド長に通せば良いとなったのは……あの子が何回目かの爆発起こして本塔にヒビ入れた時だったっけねぇ……

 

「わかりました、では至急公爵様か公爵婦人への取り次ぎをお願い致しますわ」

 

「申し訳ありません、旦那様は奥様と共に数日前から王城に出向いておりまして、御帰宅は早くとも明日以降となっております」

 

公爵夫妻が揃って登城?何でまた……まあ、居ないってんなら待たせて貰うことにしようかねぇ、ジジイには手紙の一つ飛ばしゃ良いさね。

 

「ではカトレアお嬢様の所へ御出下さい、ティファニア様もお喜びになられるでしょう」

 

昨年の今頃だったねぇ、ジジイ……オールド・オスマンとコッパゲ……ミスタ・コルベールの協力の元、ウエストウッドの子供達とテファをここ、ヴァリエール領内の更に内地、ラ・フォンティーヌ領に移住させられたのは。

 

ガタゴトと移動する馬車の中、ぼんやりと外を眺め、暇をもて余す。

 

アルビオンに居た頃にゃ考えらんないね……こんな平和を享受出来る日が来るなんてさ。

 

……アルビオン王家への恨み辛みは燻っている。

 

忘れたくても……いや、私が忘れるつもりが無いのだろう。

 

けど……今更仇を討って、なんになるってんだい……

 

あの娘が幸せなら良いんだ、わざわざ危ない橋なんて渡る事もない。

 

デモ、アイツラハ、私カラ、大切ナモノヲ、奪ッターー

 

 

 

ーー元々、フォンティーヌ領主館と言うものは無かったと言う。

 

領地管理を行う筈の領主は原因不明の病の為、床につく時間が起きている時間より長かったのだと教えられたのは、いつの頃だったか。

 

でも、ある日を境に病は治まり、時間と共に体力も付き、本人の希望もあって立派な領主の舘が建てられたのはつい最近の事。

 

「本人の希望は動物達と穏やかに過ごせれば質素な建物で良いって話だったらしいけど……」

 

馬車の窓から見える景色のその中に、その邸は建つ。

 

見た目から既に質素とは思えないその邸は、中も結構凄い。

 

恐らく領主の飼う動物の体のサイズに合わせたものなのだろう、廊下も天井も扉も、とにかく大きいのだ。

 

そして、その邸に私の『家族』も暮らしている。

 

「カトレア様、困らせてなきゃ良いんだけどねぇチビ共は」

 

苦笑を浮かべたマチルダを乗せて、ガタゴトと、馬車は進んでいくーー




短い?済まぬ……済まぬ……

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