目指すは超サイヤ人   作:ひつまぶし。

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 久しぶりなんでサブタイなし。エタっててごめんね。





十五話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベジータ!」

「わかってる!」

「俺も行きます!」

 

 

 瞬間移動を終え、目の前の光景を確認次第、三人が飛び込む。遅れて俺も飛び出そうとしたが、三人のサポートに回る事にした。

 考えていた通り、大きな力の正体は第二形態のセルだった。第二形態になっているという事は17号は奴に吸い込まれたというのか。歴史の展開が早過ぎる。

 危険だと察知したのはセルから発せられる歪な気の集合体を感じたからだろう。悟空の気、ベジータの気、ピッコロの気、更にはフリーザにコルド大王の気まで感じるのだから敵と判断するには十分な材料だろう。途中で超サイヤ人に変身して突撃する三人は同時に攻撃を仕掛ける。

 

 

「だありゃあああっ!」

「はああああっ!」

「せやああああっ!」

 

 

 最高のタイミングとは言わないが、絶妙なタイミングでの同時攻撃は避けられないだろう。第二形態のセルとはいえ、強くなった悟空とベジータに少しだけ強くなったトランクスが相手なら大丈夫なはずだ。

 だが、そんな予感もすぐに裏切られる。セルの周りを覆うエネルギーフィールドが展開され、三人の攻撃を受け止める。しかもトランクスの剣を折る始末。どれだけ固いのだ。

 これはいかん、とバリア破壊の技の用意をしながら俺も飛び込む。気を集中させて腰を回転させながら歯を食い縛る。

 バリン、といとも簡単にエネルギーフィールドは消え去る。三人の間をすり抜けて蹴り砕いた蹴りはそのまま中のセルにダメージを与える。

 

 

「流石だなエリン」

「ボサッとするなカカロット!」

「うわっ、ちょ、ベジータ!?」

 

 

 伝家の宝刀、グミ撃ち(片手バージョン)。マシンガンのような気弾に驚く。俺まで巻き添えにするつもりかと訴えようとしたが首の横と脇の隙間を抜けて気弾が通り抜け、近くにいるセルを叩く。

 俺も続くのだ、とトランクスが追撃を始め堪らなくなった俺は瞬間移動で悟空の後ろに飛んだ。

 

 

「あっぶねぇ」

「エリン。奴は危険だ。オラ達も続くぞっ!」

「オーバーキルはあんまり好きじゃないがこの場合はしょうがないっ!」

 

 

 早過ぎるセルの成長と覚醒。このまま完全体にさせると厄介な事になる。比較的弱い今の状態を叩いて出オチにしてやろう!

 かめはめ波の格好を悟空と共に構え、気弾を放つ。青と赤の大きな気弾がセルに当たり、大爆発を起こす。ベジータとトランクスの気弾が止みそうにないのはストレス発散だろうか。

 

 

「やれやれ。いきなりご挨拶だな」

 

 

 この独特なボイス。日曜アニメでよく聞いた声に少しだけ体がブルリと震える。日曜日によく聞いた声に感動した。

 煙が晴れ、現れたのは第二形態のセル。不敵の笑みを浮かべ、ボディの埃を払っている。どうやらそんなにダメージは入っていないようだ。

 

 

「孫悟空、ベジータ。そしてトランクス」

 

 

 順番に超サイヤ人の面々を指差し、最後に俺を指で示す。不思議そうな顔をして人差し指を出した手を翻して正体を明かすように迫る。

 

 

「そしてお前だ。その尻尾を考えれば孫悟空達と同じサイヤ人だろう。だが、データはない。何者だ」

「内緒。歪な気をしている奴と友好的に接するとでも?」

「それもそうだな」

 

 

 クックックッと笑いを堪えるようにセルは肩を震わせる。何かやばい。このセルはクウラみたいに強さがダンチのように感じる。感じられる気は色々と感じるが、歪なもの。よくよく探ってみると、更に違和感があった。

 第二形態になった影響か、チグハグな積み木を綺麗に積み立てて自然なものになってる。それによって相互反応を起こして互いの気が互いを高め合っているように思える。

 人造人間を吸収する際に強くなるだけではなく、結合剤の役割も果たしているらしい。

 

 

「17号を吸収できた。18号も吸収したいが三人の強者に未知なる存在を相手にするのは劣勢……」

 

 

 スッとセルは構える。同時に対抗するように悟空、ベジータ、トランクスも構えるが嫌な予感がした。初の神コロ無双の時から逃げ出す時の既視感を覚えたような――。

 

 

「さらばだ」

「! 目を閉じ――」

「太陽拳ッ!!」

 

 

 逃亡用のチート必殺技である天津飯の太陽拳。デコから強烈な光を発して目を眩ませ、その隙に逃げ出す技をセルが使う。忠告をするが三人はそれを逃れる事ができずにモロに目が眩む事になる。

 俺は咄嗟に目を閉じるが、目を閉じても瞼の裏まで光が届いて目にダメージが行く。理論上は気を込めれば発光量を倍増させる事ができるらしいと天津飯から聞いたが、天津飯は正しかったようだ。目が超痛い。

 

 結果、逃げられてしまい、ベジータがかなり荒れる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アナゴさん暗躍。ドラゴンボールの本来の歴史よりも暗躍していると言えるだろう。なんたって、人造人間はもういないものだと思われているからこその油断によって、17号はセルに吸収されてしまっているのだから。

 それよりもいくら今の時期とはいえ、かなりのパワーアップをしている超サイヤ人二人に超サイヤ人を相手にしてあそこまで完璧に防げるほどの力がセルにはあったのだろうか、と疑問が浮かぶ。それも第二形態。

 

 

「気持ち悪い気配を持ってやがったな」

「悟空さんの気、他の皆さんの気まで感じられました」

「それにフリーザの野郎もだ」

 

 

 かなり混ざりすぎて気持ち悪くなるぐらいだった。悟空と俺の気の感知能力をもってして、ざっと十人以上の気が混ざっているのがわかった。その中にはフロスト一族の二人もいたが、クウラはなかった。太陽に飛ばしたから採取する間もなかったのだろうと推測。クウラまで取り込まれていたら無理ゲーになってた。

 一旦、セルの捜索は打ち切ってカプセルコーポレーションで会議をしている。超サイヤ人に変身できる三人と輪を作って話すのは何か興奮する。ちょいと前までは悟空達って憧れだったしなぁ。

 

 それにしてもセル、少し強くないか? 人のエネルギーを吸えばパワーアップするのはわかっていたが、僅かな気の乱れを悟空が見逃すだろうか。時期的にもまだ神コロと激突するぐらいなのに。

 これは少し調べないといけないかもしれん。歪んだ歴史の波が新しい歪みを生んでいるかもしれない。クウラが超パワーアップした時のように。

 

 

「17号を吸収したって言ってたな」

「! そいつです。そいつが未来を破壊した奴等なんです」

「ん? じゃあ、オラが壊した連中は違うのか? ちょいと前に逃がした人造人間が未来を壊したっちゅー奴等なんか?」

「それにしては妙に歯応えのない連中だったがな」

 

 

 腕を組んで鼻を鳴らすベジータ。確かに競争できるだけの余裕を持てる感じに戦ってたもんね。悟空も同様。

 トランクスが凄い顔になってる。驚きのあまりにイケメンの顔がとんでもない事になっている。そりゃ、自分があれだけ必死に修行しても勝てない相手をボコボコにするんだから内心、微妙な感じだよね。すまんトランクス。また俺が悪いんだ。

 

 

「18号もいるって事を考えるとアイツはそっちも吸収しようとするだろう。急激な気の爆発を考えると奴はまだまだ強くなるぞ」

「食い止めないとまずいぞ。悟空、ベジータにトランクスの攻撃を防ぐような奴がパワーアップするなら今のままじゃ簡単に未来の再現になる。

 これは仕事云々言ってる場合じゃない。暫くは俺も地球に残ってあの化け物を探すよ」

「エリンがいるなら心強い。オラじゃ、見つけるのは難しいしな」

 

 

 頼られるって素晴らしい。今まで何度も頼られた事はあるが、やはり悟空に頼られると嬉しいものだ。

 

 

「本当にこいつは下級戦士なのか? カカロットといい、下級戦士がエリートを容易く実力で上回るとは普通ありえないんだぞ貴様等」

「努力次第でなんともなるさそりゃ」

「そもそも下級戦士か上級戦士かもわからん」

 

 

 所謂、爪弾き者だし。エリンの家系は。ベジータのように祖先に王族がいるわけでもないと思うんだが、そのルーツもある地点で途切れるようにわからなくなったからな。調べようがない。

 特別なサイヤ人ではあるはず。超サイヤ人にはなれなくても、赤いサイヤ人という特別な変身をするのだから特別な血筋ではあるはずなんだが。それもかなり。もしかすると伝説の超サイヤ人レベルの眉唾物のサイヤ人の歴史の始まりに関係しているかもしれない、と最近は確信を持っている。

 悟空もベジータも王族とか関係なしに特別な血筋である可能性も考えられる。でもバーダックもベジータ王も死んでるしなぁ。調べるのは難しいぞ。

 

 

「俺の家系は普通のサイヤ人一族と違って正義のサイヤ人を名乗る特別なものだから階級は関係ないかもしれん。というかそのエリートの別け方が間違ってるんじゃないの?」

「……」

「ベジータがだんまりになっちまったぞ」

 

 

 図星だったようですな。特に悟空が良い例だし。

 頭が痛い、といった素振りを見せるベジータも考えさせられているのだろう。自分の父、自分の王族が定めたであろうエリートの枠組みが根本的に間違っていたのではないだろうか、と思ってるんだろうな。

 惑星ベジータが滅ぶ時にたった一人で戦ったであろう悟空の父親のバーダックも奮闘してたし。他のエリートさんはどうしたのかは知らんが必死で抵抗していたバーダックは他のサイヤ人よりも誇り高きサイヤ人だったと言えるはず。息子はそれを知っているかはわからんが。

 

 

「ま。そこは追々。気になるのがあの化け物の気なんだが、悟空の超サイヤ人のパワーを僅かに感じられたぞ」

 

 

 サイヤ人の細胞を持つんだから順当にパワーアップすれば超サイヤ人の気くらいは放つようになるが、セルを知ってるのは怪しいからそういう事にしておこう。嘘を言ってるわけじゃないし。

 

 

「奴からカカロットの気を感じた。となれば超サイヤ人の気を感じられるようになるのはなんら不思議ではなかろう。それに17号を吸収したと言っていた。それによって超サイヤ人に変身できる段階に達した、と考えるのが現段階では最も自然だ」

「そもそも超サイヤ人の事もあんまりわかってないんじゃ推測もできないと思いますが」

「オラが初めて変身した時は夢中だったしなぁ」

「超サイヤ人に変身できない仲間外れの俺へのあてつけか」

「変身できない貴様が悪い」

 

 

 ベジータの毒舌は態度が柔らかくなっても健在なようだ。全部俺が悪いみたいに言うんじゃねーよ。そもそも変身できるお前らがおかしいんだろうが。突然変異種と言っても過言じゃないんだぞ。

 代わりに赤いサイヤ人になれる俺の方がもっと特別って事にしておこう。話題をセルに移す事にする。

 

 人造人間がレッドリボン軍のドクターゲロに造られた前提は皆、知っている。頭の良いベジータは人造人間に関係する事から、化け物であるセルもドクターゲロに関連していると見抜いた。そこはかとなく臭わせようとした俺の苦労はしなくてもいいようである。

 というかベジータって名探偵みたいだな。普段のイメージを考えると、ガラッと変わる。有能過ぎて頭が下がるばかりだ。

 更にベジータは人造人間の17号と18号は部品ではないか、とも推理している。鋭すぎて未来を知っているのではないかと疑うレベルだ。セルがパワーアップするのにわざわざ完全な機械体から生物的な要素を混ぜたナンバリング人造人間を設計しているのだからベジータの推理は正しいと言える。

 

 

「当分は動けない。暫くは貴様の探知能力が頼りだ」

「頑張る。取り敢えず衛星軌道上まで上昇して感知範囲を広げてみる」

「えいせいきどうじょう? 食えるのか?」

 

 

 ベジータの有能さが際立つと逆に悟空のポンコツ具合が浮き彫りになるわ。戦いの事になると天才と言えるのに教養とかになると本当にポンコツなんだな。チチは悟空に基本教養を身に付けさせなかったのだろうか?

 やらせてもすぐにめげるのが見えるから無理か。

 

 

「人工衛星が通る宇宙の一定の高度のこと。そこなら星全体を調べられる……要は高い場所にいれば探しやすいってこと」

「そっか。それなら神様んトコに行けば探せるんじゃねえか?」

「ああ、ナメック星人の見た目をした地球の神様のいる場所か」

 

 

 すっかり忘れていた。修行をした場所でもあるのに。確かにあそこなら覗くだけでも見つけられるかも。

 目を強化する、感知能力・第六感を鋭くして探す手段を持つ俺だからこそこんな事ができてしまうわけだが、もしかすると地球の神様も同じ事ができるかもしれない。任せても大丈夫ではなかろうか。

 となると、暫くの間は赤いサイヤ人の練度を上げる作業の続きをするのが最善になるか。セルのパワーが未知数な今、切り札になる赤いサイヤ人は完璧なものにしておきたい。

 

 となると、当分はセルの搜索と精神鍛錬だな。赤いサイヤ人は心の持ちようで変わる上に、明鏡止水の如く静かな心が必要になるだろうとは予想はできるし。

 

 

「連絡は逐次入れる」

 

 

 ピッと人差し指と中指をくっつけた指を悟空、ベジータ、トランクスの順に額に触れる。ベジータが鬱陶しそうにしていたのが印象的だった。何も言わない俺も悪いが。

 目を閉じて触れた指を自分の米神に触れる。精神を落ち着かせ、心を無にするように統一させる。

 

 

『マイクテスト。マイテスマイテス』

 

「! 頭に声が?」

「界王様のと同じか」

 

『そう。テレパシー。少し前に習得した』

 

 

 赤いサイヤ人の制御の過程で他人の気にパスを繋げる術を体得した。瞬間移動の要領で技術を発展させればこのように他人の気を通じて頭の中に入る事は可能になる。それはテレパシーという技になった。

 これなら連絡を機器を中継せずに取れる。着信拒否もできないクソ仕様だからテレパシーを受け取る側はいい迷惑になるだろうが許してくれ、と頼んでおいた。

 

 しかしベジータに腹パンされる始末。どうやら許してくれないらしい。

 

 

「俺はトランクスといる。何かあればあいつから伝言は聞くから俺の頭に入れるんじゃないぞ。すれば殺す」

「い、いえっさー」

「俺も地味に嫌なんですが」

 

 

 一緒に反対する辺り、親子とわかるっぽい。それよりも一緒にいる発言からトランクスがとても嬉しそうにしているのが隠せていないぞ。死んだはずの父親と話せるだけでも十分なのに交流を試みるのだから嬉しくもなるだろう。

 未来のブルマから聞いたベジータの人物像とは違う事はどう思っているだろう。地獄に落ちるようなクソ野郎と聞いていたはず……だと思うんだが。そろそろ記憶が摩耗してきた。

 

 

「揃いにも揃って軟弱者め」

「普通は受け入れないと思いますが」

「電話機とか使わない凄く便利な技だろうに」

「そもそも電話とか使わん」

 

 

 変なところで意地っ張りなベジータである。電話を使わないと言う割にはネコマジン……マナーモード……うっ、頭がっ。

 わけのわからないビジョンが見えた気がしたが疲れが溜まってるのだろうと頭を振って消す。取り敢えずベジータとトランクスはテレパシーは嫌、と。じゃあどうやって連絡をすればいいのだ!

 

 

「オラが聞いたら瞬間移動で迎えに行くぞ。多分、あの変な奴を見つけたらエリンは真っ先に駆け付けるだろ? 気も探りやすいからそっちの方がいいんじゃねえか?」

 

 

 ベジータのほれ見ろ顔がうざったい。嘲笑うかのような顔にイラッとしてきた。

 

 

「ベジータとトランクスは瞬間移動は使えねぇし、そっちの方が早くなんねえか?」

「まったくもって正論です。はい」

「じゃ、そういう事だな。オラは探している間はアレを完成させる修行をすっか」

「アレ、ですか?」

 

 

 にひっと笑う悟空は自信満々に人差し指を立てると、問い掛けるトランクスに答える。その答えは、これからの超サイヤ人の歴史の新しい始まりとも言えるものであろう。

 

 

「超サイヤ人を超えた超サイヤ人だ」

 

 

 ……ベジータのあの笑顔がなければ歴史的な場面だったろうになぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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