目指すは超サイヤ人   作:ひつまぶし。

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 まずはエイプリルフール、騙して申し訳ない。作者の遊びに付き合っていただいてどうもありがとう。
 そして案の定、にぃちゃんの復活を希望する方が。だが出番はもうない(フラグ)

 ここでもう明かしておきます。劇場版のドラゴンボールのオリジナルキャラクターはクウラ以外にも出します。正義のサイヤ人の集大成、ゴッドと来ればやはりあの方の出番でしょう。チートの権化、ブロリストの教祖。

 今回はクウラ戦。劇場版と劇場版を掛け算にすると凄い絶望になるこの理不尽さ。





第十話 超絶望

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、終わった終わった」

 

 

 ゴキゴキと軋む肩の骨に首の骨。肩が凝って仕方がない。グルグルと腕を回しながらひと仕事終えた後は少しだけの休憩を挟んでの腕を鈍らせない為の特訓をする。悟空の超サイヤ人を見てから更なる改良を重ねたトレーニングルームは全てがグレードアップしている。

 まるでパワプロだな、と考えながら下半身を意識する修行をしようと心に決める。足腰を鍛えれば基盤を鍛えられるはずだから。

 ちょくちょく地球に遊びに行く際に悟空以外のドラゴンボールのメンバーと交流をして親交を深める事ができ、ちょっとした技を教えてもらったりした。基礎の部分はできていたから本家のアドバイスを加えて改良するだけで完成できた。皆に悟空よりも酷いと言われた時は本当に反応に困った。悪い意味なのか、良い意味なのかわからないんだもの。

 

 カウントダウンを刻む腕時計を見る。デジタル式の時計は刻一刻と時間を減らし、タイムリミットの残りを告げる。地球のカプセルコーポレーションのブルマにもらったものだが、このタイムリミットがゼロになると機能が変わって打ち込まれた座標までの距離を自動的に教えてくれるものに変わるらしい。

 あれ、とどうやって座標を告げるのだろうかと疑問を感じた。地球の軌道衛星上に人工衛星らしきものはあったが覚えている人工衛星とはデザインが異なるものだったので最初は何だろうかと触れたものだ。

 ブルマによればその座標に小さなビーコンを打ち込んであるからそのビーコンが発するパターンを腕時計が感知して座標までの距離を知らせる、という機能らしい。ジッカ人も驚く科学力だった。流石はブルマと言えばいいのだろうか。ドラゴンボールを捜すドラゴンレーダーもジッカ人が唸るほどの発明らしいからな。とある分野ではジッカ人をも凌ぐブルマ凄いわ。

 

 

「人造人間が現れるまでもう時間がないな」

 

 

 そろそろ悟空も修行の仕上げに入っているだろう。決戦の前に彼の体をスキャンして病気になるかを調べなければ。バタフライエフェクトのせいで別の病気になる可能性も捨てきれないからな。

 久しぶりに孫家とも会いたい。他の面々、特にブルマと交流する事が多かったから悟空とはほとんど会っていない。もう少し言えばブルマの子、ベジータの子でもあるトランクスの姿も見れた。未来が変わるって事はないらしい事に少し安心した。

 ブルマと仲良くなったのをきっかけに、ベジータともブルマを通じて目に見えぬ交流をする事になった。それとなくブルマに修行に適している星を教え、ブルマがベジータをそこに誘導する。ナメック星に向かう際にサイヤ人のポッド型宇宙船を改造した事があり、その設計を生かして改良型を造り出した。エンジンが問題だったがジッカ人特製のトンデモエンジンで問題は解決した。

 時々ベジータがわからないようにベジータの使う宇宙船を介してブルマとは連絡している。ジッカ人でのトレーニングメニューを渡したが果たしてベジータはそれを忠実にしてくれるだろうか。

 

 ベジータはおいておいて、俺の修行だ。赤いサイヤ人を課題にしているが未だに変身できない。あれが夢幻かと思ったが、確かに全能感に似たものを感じたから存在はしているはずなんだ。

 赤いサイヤ人になった際に勘違いしたらしい悟空から界王拳は教わっている。界王様直伝の界王拳より少し改良している技にしている。体に負担が掛かるのは良い修行になるがやり過ぎると女閻魔大王が手招きするのを見る羽目になるから御免被りたい。段々と色仕掛けまでしだしたぞあの痴女閻魔。そんなに俺に死ねと言いたいのか。地獄行きかよ畜生。

 赤いサイヤ人を目指しつつ今は体を鍛える事を重点に置いている。下半身と上半身を均等に鍛えて徐々に素の戦闘力を伸ばしていく事にしたわけなんだがトレーニングルームと共に戦闘力を測るスカウターの性能が上がるわ上がる。一億程度しかわからない戦闘力がどんどん詳しく正確に測れるようにバージョンアップしていくもんだからジッカ人の気合の入れようが半端じゃない。

 

 

「お腹が空いたな。腹が減った」

 

 

 そういえば三日くらいメシ食べてないわ。腹ごしらえでもするか。

 

 サイヤ人の欲求に逆らわずに素直に食欲を満たそうと食堂に足を向ける。初めの第一歩を踏み出そうと足を動かした瞬間、凄まじい気を背後から感じた。背後とは言っても遠い距離から感じた。

 

 

「――フリーザ? 悟空が殺したはず――」

 

 

 そこでハッと人造人間と同じぐらい大事な問題がある事を思い出した。凄まじい気はあのフリーザに似たものでフロスト一族の誰かである事はすぐにわかった。そして、その正体も何となく予想はできる。

 劇場版のオリジナルキャラクター、フリーザの兄という最悪な設定を持つクウラだ。フリーザに似て、尚且つフリーザよりも強い気を持つ者といえばクウラ以外に思い当たらない。感じる気から察するに、クウラは誰かと戦っている。多分、悟空だろう。劇場版と同じ展開であれば、だが。

 瞬間移動の準備に行う二本の指をくっつけた手で米神に触れる動作をし、目をゆっくりと閉じる。余計な五感を遮断して第六感とも言える気の探知を行い、現状がどうなのかを探る。

 

 ……クウラの気はフリーザよりも上。戦っている相手の気を探れば超サイヤ人の独特な気を感じる。相手は悟空で間違いないだろう。超サイヤ人に変身してフリーザよりも一つ上の変身をしたクウラと戦っているらしい。

 だが妙だ。悟空は本来の歴史よりも鍛えられて戦闘力も大幅に上がっているはずなのに何故クウラよりも感じる気が小さい? 手加減をしている? 舐めプをするサイヤ人だが、フリーザの兄相手に手加減をする余裕はない事は悟空自身もわかっているはずだ。となると。

 

 

「悟空よりも、クウラが強いのか?」

 

 

 馬鹿な。ありえない。あの悟空だぞ? 劇場版では超サイヤ人になった後は圧倒できるはずなのに負けているのはどう考えてもおかしい。

 何らかの出来事があって、クウラが悟空よりも上の戦闘力を保持するようになった。と考えるのが今の状況では妥当な考えだろう。歴史が変わるのは俺としては喜ばしくない。援護に向かった方がいいだろう。

 悟空の気の近くに飛ぶように瞬間移動を行い、亜空間に突入して場所を移す事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほぼ目に飛び込んだ光景に反応し、反射的にかかと落としをお見舞いした。コンバットモード、戦闘形態とも言える刺々しい姿をしているクウラの背後から不意打ちを浴びせるように脳天を狙う。

 下に落ちるクウラを無視し、服がボロボロな悟空の首根っこを掴んで距離を取る。少しだけ持ち上げて米俵を担ぐように悟空を持ち、クウラに見えない場所に隠れた。滝壺の中の洞窟にいれば現状を聞くだけの時間は作れるだろう。

 

 

「おい悟空。大丈夫か悟空」

 

 

 ペシペシと超サイヤ人の悟空の頬を叩く。かなり疲弊している様子で息を荒く繰り返している。頭からも血が流れ、浅くない傷を負っているのがすぐにわかった。

 

 

「わかるか? 俺の声が聞こえるならこれを口の中に入れろ。苦いが痛みがマシになる」

 

 

 偶々、使おうと思って持って来ていた薬を悟空の口に持っていく。仙豆とは違って苦い、不味い、微妙の三拍子が揃う薬だが傷は塞がって体力は回復できるから今はこれを飲ませて話を聞きたい。

 かなりボロボロだ。瞬間移動をしてこっちに来た時に見えた光景も、今の悟空ではありえないものだったから驚いた。クウラに首を掴まれ、トドメをさされるか否かの絶妙な瞬間だったから。これが意味するのはクウラが悟空を蹂躙したということ。悟空よりもクウラが強いと言える何よりの証明だ。

 

 

「ぐぎっ……え、エリンか?」

「ああ。大丈夫か? どこか痛むか?」

「へ、へへっ。これくらい、へっちゃらだ。何度も、経験しているからな」

 

 

 ゴリゴリと奥歯で薬の木の実を削っているらしい悟空は超サイヤ人が解けていた。瞳の目も若干揺れて虚ろになっている事から、かなり頭部にダメージを受けているらしい。

 それにしても信じられん。悟空がここまで反撃を許すとは。どんなに実力に差があっても“負けない”戦いができるはずの悟空が。著しく気も減っているので分け与えて自然回復を促す事を忘れずに、悟空の体の中に気を送れば呼吸が少しだけ楽になったようだ。

 

 

「今の状況を見てもお前は重症だ。まだ戦えると訴えても俺は許さん。あのフリーザに似た奴は俺が相手をする」

「む、無理だ。く、クウラの奴、神精樹の実ってのを食いやがった。まだまだ、強くなっぞ……!」

「 」

 

 

 え? 真性受(難聴)?

 

 

「し、神精樹の実?」

「ああ。クウラが言ってた。一つ食らう毎に星の力が我が身に宿るってよ。悔しいけどオラ一人じゃ相手になんねぇ。エリン、オラと一緒に戦う方が良い。じゃねぇとおめぇまで殺されちまう」

「……よし。少し待て」

 

 

 神精樹の実。ドラゴンボールを見た俺としてはドラゴンボールZ初期でのチートアイテムとも言える一品。星の命を喰らい尽くした大樹が実らせる果実であり、それを食らえば星の命そのものが食った者に宿る。

 これを使ったのは悟空と似た容貌のターレスと呼ばれるサイヤ人の生き残り。ベジータと同じように残酷な性格をしている奴であり、劇場版では地球に神精樹の種を蒔いて実を作ろうとして悟空に討たれた。しかし、悟空はターレスを知らないようである。

 まさか、ターレスは出なくて神精樹だけは出てきているのか? 宇宙の地上げ屋にも似た事をしていたフロスト一族の事を考えれば、神精樹の事を知っていてもおかしくない。悪評を聞くと、かなりの数の神精樹を持っているかもしれない。

 

 クソ。だとすれば最悪だぞ。ただでさえ強い奴が神精樹の実なんてものを使っているとすれば火を見るよりも明らかだ。大きな差は更に大きくなり、立場がひっくり返される。クウラが悟空を圧倒できたのもそのおかげだろう。

 どうする? 超サイヤ人の悟空と互角の俺が戦っても悟空と同じ結末になる。悟空にはない俺だけの技を駆使しても勝てるかどうか。

 

 

「……それでもやるしかない」

 

 

 フロスト一族の駆逐は俺の役目だ。フリーザは悟空、コルド大王はトランクスに倒してもらったがクウラは俺がやらねば。悟空に無理をさせて死なれても困る。

 

 

「俺はクウラの相手をする」

「だ、駄目だ。オラでも勝てないのにおめぇがやっても……!」

「なら早急に回復しろ。その薬を全部砕ききって戦えるのなら援護に来い」

 

 

 それだけを告げると、悟空の居場所がわからないように瞬間移動で外に出る。飛んだ先にはクウラが悟空を探しているらしかった。忙しなく顔を動かして周りを見渡している。

 こっそりと少しでもダメージを与えようと背後に回る。瞬間移動する際に生じる空間の揺らぎらしきものをクウラが察知したらしく、素早く後ろを振り返って俺と目が合う。だがそれでも――!

 

 

「でぃやっ!!」

 

 

 瞬間的に最大の戦闘力まで気を引き上げると、ベジットが使っていたスピリッツソードと同じ原理を用いてキックブレードを繰り出す。薄く、鋭く。大業物のひと振りのように剣士として生涯最高の一撃を意識して横に払う。

 ズバッと何かを切断する音が耳に届く。延長した足の感覚が何かを斬った感覚が残る。クウラの肩パットみたいな部分の一部分が斬り飛ばされているらしい。クウラの一部が重力に従って落ちていくのを確認した後は休まず連撃を加える。

 腰を回転させ、そのままの勢いでクウラに殴りかかる。だが、流石はクウラといったところかその一撃を防がれる。

 

 

「貴様……その尻尾、サイヤ人か」

「貴様こそ。フロスト一族のクウラか」

「ほう? 自己紹介はいらんようだな。我が愚弟を倒した超サイヤ人とやらがどうなのか見に来たがとんだ期待外れだ。確かに強かったが……さて、貴様はどうだ? 名も知らぬサイヤ人」

 

 

 バッとほぼ同時に拳を振るう。流れるように互いにそれぞれの攻撃を繰り出し、ラッシュで応戦し合う。こういう時に備えて動体視力を鍛えて良かったと思う。後は勘があればこのラッシュに有利だろう。

 勘と言っても戦闘経験だな。悟空との経験がここで役に立っている。超サイヤ人の悟空は元々戦闘センスの塊だったのが研ぎ澄まされた存在だからか、ラッシュもかなり得意としている。あれだけ読み切ってもその上を行くのだから厄介だ。でもだからこそ、良い経験になる。

 ラッシュの合間に、右脚をしなやかに動かしてクウラの左腕全体を絡めるように固める。脇の下に爪先を立てて動かせないようにすると、右脚に気と力を込めてへし折ろうと試みる。フリーザとかクウラに骨があるのかはわからんが、折れなくとも関節を外す事はできるはずだ。多分。

 

 

「ほう。人の割には柔らかい体をしている」

「えぇ……」

 

 

 クウラは平然としている。ミシミシと何かが軋む音は聞こえるが、痛そうにはしていない。それどころか飄々とした態度でエネルギー波を溜め始めていた。柔らかい体を生かし、蛇のようにシュルシュルとクウラの腕を這って背後に回る。それと同時にクウラのエネルギー波が放たれて俺がいた空間を通過する。あぶねっ。

 お返しとばかりに背後から気弾を撃つ。クリムゾンレッドと言えるような赤い色の気弾が掌から休みなく解き放たれ、クウラの背中を直撃する。効いているかはわからないがそれでもダメージを、と攻撃を続ける。気弾に使った気は大気に漂う戦闘の余波の気を掻き集めて回復する。実質、MP消費なしの魔法を使っているものだ。

 

 

「痒い。温い。その程度の力か」

「お望み通りに痛いモンをやるよボケ」

 

 

 掻き集めた気は身の中に取り込んでも有り余る。気弾で消費するよりも回復するスピードが上なため、別の手段を用いる事も可能だ。そう、それはまるで――。

 

 

「前倒しだがビックバンかめはめ波だっ」

 

 

 気弾を放つ手とは反対の手で気を留めて掻き集めた気を集中させる。超サイヤ人4ゴジータ、未来の最強のフュージョン戦士の必殺技と見間違う赤い気の太陽がクウラの背後に集まっていた。ゴジータのそれと比べると威力はかなりどころか比べる事も烏滸がましいレベルだがクウラに対しては有効打になるはずだ。

 赤いビックバンかめはめ波の準備もある程度整い、ぶっぱなす時になるとクウラはそれを食い止めようと反撃に出る。裏拳と言えるパンチが俺の顔面スレスレに迫ってきたのを視認すると同時に、瞬間移動を行う。

 

 

「かかったなクウラ!」

 

 

 発射! と地表より少し上で浮きながら赤いビックバンかめはめ波を撃つ。地球に向けて撃つとゲームのように地球に穴が空いてしまう。地球への被害も考えて撃たないと……と考えたところで前から思っていた事を思い出した。

 宇宙に向けて撃った必殺技のせいでどっかの星が爆発してるんじゃなかろうか。特に魔人ブウとかセルの時にどっかの星が消えているんじゃないだろうかと心配になっている。

 まあ、今は気にする必要もないか。今はクウラを倒す事だけを考えよう。

 

 凄まじい音を立てて解放された赤いビックバンかめはめ波は前方の空間の全てを薙ぎ払わんと放たれ、クウラを消し飛ばそうと迫る。超サイヤ人悟空と同等の気、それと悟空が界王様から教わった元気玉と界王拳の上位に位置する技を用いれば悟空よりは良い戦いはできるはずだ。そう思いたいだけかもしれないが。

 だがしかし。元気玉にはラスボス絶対殺すマンの補正があるから似た系統で上と来れば大丈夫だ。多分。

 

 

「どうだオラァ! ……あっ」

 

 

 言い切って気付いた。これはやってないフラグだ。

 

 

「ふ、ふふふふ。今のは効いたぞサイヤ人」

「あちゃー」

 

 

 ナンテコッタイと頭を抱える。フラグが立ったからか、赤いビックバンかめはめ波を受けたクウラはダメージらしいダメージを負いながらも健在だった。漂うクウラは何てことはないフリをしながらも憤怒に満ちた表情をしているようだった。ただ怒らせただけなのかもしれん。

 というかタフ過ぎクウラ。神精樹の実を食ってるからか、凄まじい強さを手に入れているようだ。あれでトドメが差せないようでは万事休す、となるのだろうが今の俺ならやれる。

 ダメージを受けているクウラに向き合うように気を高める。見慣れた気のオーラが体から噴き出し、体を包む。徐々に体に力が漲り、戦闘態勢に入る。クウラも怒りに身を任せるようにフリーザに似たオーラが噴き出し、クウラの怒りがどれほどのものかがわかるほど大きなオーラとなる。

 合図をしたわけでもないのに同時に飛び出してそれぞれ攻撃を仕掛ける。俺は蹴り、クウラは殴る。二人共クリーンヒットしたが、クウラのパンチはラッシュの時と比べると重さが軽くなって痛みも軽減されている。気が弱まって戦闘力が下がっているらしかった。

 

 

「おやおや? クウラ、パンチが軽くなってんぞ?」

「ふんっ。良いハンデだろう」

「負け惜しみか?」

「俺にはまだ神精樹の実がある。食らえばますます貴様の勝ち目が無くなるぞ」

「それを聞いて大人しく食わせるとでも思うのか?」

 

 

 食べる前に瞬間移動で掠め取れば或いは。

 ふんっ、と気合を入れてクウラを殴り飛ばす。海老反りをするように顔が後ろに仰け反り、クウラは苦悶の声を出す。手加減はしないとばかりにラッシュを繰り出す。パンチパンチキックパンチキックキックと流れるようにコンボを繋げ、ダメージを蓄積させる。重点的に顔と腹を狙って。

 更にラッシュを繋げるようにクウラの尻尾を絡め取り、弱ジャブをクウラの顎を浴びせる。ビシビシビシとリズム良く殴ればクウラの顔が段々血に汚れていく。ジャブの合間に肘で頭を揺らすように左に、右に腕を動かして更にダメージを。

 

 

「あの一撃が効いてるようだなクウラ。動きが鈍いぞ」

「くっ、くくくく。面白い。面白いぞサイヤ人。このクウラをここまで追い詰めるとは」

「そんな体たらくで偉そうにできるなクウラ。もう少しで死ぬんだぞ」

「……どうやら貴様はこの俺が“本気を出して”これだと思っているようだな。だが問おう。

 い つ か ら 俺 が 本 気 を 出 し て い る と 言 っ た ?」

 

 

 えっと声を漏らす前に今までにない強烈な痛みが顔面を襲った。鼻から血が流れていると感じたのは一拍置いて体。それから殴られたと自覚した。突然の事で頭が混乱して反応が遅れた。

 

 

「見せてやろう。このクウラの最終変身の真のフルパワーを。超サイヤ人、ソンゴクウですら手も足も出ない圧倒的なパワーを。かあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 ズドンと凄まじいパワーがクウラから放たれる。その余波が思考を無理矢理正常に戻し、現実に引き戻される事になった。

 何だ。この力は。知らない知らない。こんな力は知らない。クウラはここまで強かったのか? 神精樹の実の力はこれほどの――。

 

 

「神精樹の実の力は素晴らしい。ここまでの力を得られたのだからな……さあ、貴様も超サイヤ人のように甚振ってやろう」

 

 

 いつの間にか俺の体は震えていた。何に震えていたのかはわからない。だけど、この戦いは俺に何かを教えてくれる大事な一戦である事をハッキリと認識できた。

 この状況を言うのなら――真の絶望は、始まったばかり。

 

 

 

 

 

 

 





 クウラ × 神精樹の実 = デデーン。

 というわけでクウラ登場に加えて劇場版の設定、神精樹の実の登場。食べた事で悟空は敗れ、クウラはパワーアップ。メタルクウラ並の戦闘力まで引き上がったこの絶望。

 神精樹の実の設定としては、ある程度の戦闘力をノーリスクで引き上げるチートアイテムです。これを食ったターレスという劇場版の悟空似のキャラクターは19万の戦闘力が上がったという推定数値があります。
 しかし、全宇宙の支配者であるフロスト一族の一員であるクウラは神精樹を実らせる条件に適した星を見つけた為に、悟空を圧倒出来るだけの力を得る事ができたというのが今回の神精樹の実の設定です。

 どうやってパワーアップさせよう。と考えたらクソゲー仕様になってしまった。ここからエリンがどのように戦うのかご期待下さい。

 ちなみにビックバンかめはめ波が雑魚いという感想は禁句です。





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