鳴上悠と艦隊これくしょん   作:岳海

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少しは・・・物語進みます!!
文章おかしい?そっとしておけ!!
あと、妖精さんの台詞を標準語に直しました!!ついでにおまけもあるよ!


第四話 Don't be silly

『深海凄艦』どこからともなく突如、この世界に現れた異形の存在。一説によると、海に眠る怨念が、過去に沈んだ軍艦に取り憑いた存在であると言う。それぞれが異なる姿を持ち、ある者は異形の存在であったり、ある者は美しい人間の女性とそう変わらないという姿形の違いはあれ、全てにおけるわかりやすい共通点は唯1つ『我々人類にとって危険な敵である』ということ。馬鹿馬鹿しいほどに単純でわかりやすい話だ。

彼らは強力すぎた。一般の重火器や兵器では全く歯が立たず、ましてや唯の人間では立ち向かったところで戦いにもならない。竹やりで軍艦に挑むような、それほどまでの力の差があったのだ。このままいけば奴らになす術もなく、やがて人類はただ破滅の時を待つのみというのは誰の目から見ても明かだった。誰もが絶望を抱えながら終末をただ待つのみ・・・そんな時だった。

『深海凄艦』と同じようにどこからともなく突然現れ、『深海棲艦』に唯一対抗しえる存在が現れた。人間の武器が全く通用しなかった『深海棲艦』に対しての対抗手段、かつての艦の名前と力を持つ美しき乙女達。誰が最初に言い出したのか、人々はそんな彼女達をこう呼んだ・・・。

―――『艦娘』と・・・。

『深海棲艦』と同じように何時生まれ、そしてどうして生まれたのか?同じ時期に彼女を補佐するために現れた『妖精』共々、未だに分かっていない。そんな謎を残したまま、『艦娘』と『深海棲艦』達は日夜、終わらない戦いを続けている・・・。

 

先程妖精から聞いた『深海棲艦』と『艦娘』についての情報を思い出しながら、後姿で座っている電を眺めていた。

そしてその艦娘を統括するのが『提督』と呼ばれる軍の将官、もしくは佐官クラスの人間で、世界中に点在している『鎮守府』『泊地』『基地』といった拠点で艦娘達を纏め上げ、海からやって来る脅威に備えていると言う・・・。かつてはこの基地も、その一つだという。

 

 

 

 

「これだけあれば、足りるでしょうか?」

思考を打ち切って、電のほうを見る。電が先程から集めているもの―――森に生えている花を俺に向かってみせる。菊によく似た、薄い紫色の花だった。

「これは・・・『シオンの花』か。こんな時期に普通なら咲いていないはずなんだが・・・よくこんなところに咲いていたな」

「シオン?」

電が首を傾げる。

「薄い紫色をしているから、紫苑(しおん)という名前がついた菊科の花だ。鬼の醜草(おにのしこぐさ)や十五夜草(じゅうごやそう)という別名もあるんだが花言葉が・・・『貴方を忘れない』」

電が驚いたように目を見開かせる。

「お兄さんは物知りなんですね。お花の事をそんなに詳しく・・・」

「昔、『できる!家庭菜園』という本に花の生育方法も載ってあったのを覚えていてな・・・その時は『花は野菜じゃないだろ』という突っ込みを浮かべながら読んだものだけどね・・・ハイカラだろ?」

「ハイカラなのです!」

こういう知識が、いつどこで役に立つか分からないものだ。かなり複雑な気分だけどな・・・。そういいながら俺が摘んだばかりの花を電に見せる。

「俺もぴったりの花を見つけた。『百日草』だ。これは仏花としても利用されていてな・・・『友を偲ぶ』という花言葉がある」

「そうなんですか・・・」

嬉しいような・・・悲しいような・・・複雑な笑みを浮かべながら俺の持つ花を見つめる電。

「これだけあれば、多分足りるだろう。戻ろうか」

「なのです!」

兵器とは思えぬ悲しみを堪えた健気な笑顔が、太陽の射さない森に一輪咲いた・・・。

 

 

 

「お花、摘んできたのです。お姉ちゃんを連れ帰ってくれたお兄さんと見つけてきたのです・・・」

基地のはずれにある森から、基地内の墓地へ戻って電と共に花を捧げる。昨日連れてきた例の少女の墓の前で、紫苑と百日草を一輪づつ供えながら電が『姉』に向かって話しかける。

「知っていましたか?紫苑と百日草というらしいのです。『一人前のレディ』なら、覚えておいて損はないと思うのです・・・さっき電とお兄さんが近くの森の中で摘んできたのです」

「せっかくの墓に、何も供えてないのは寂しいからな・・・せめて、花だけでもと思って」

そう言って、目を閉じながら両手を合わせる。俺もそれに倣って同じように手を合わせる。数十秒間黙祷が続き、やがて目を開いて目の前の墓に視線を戻す。

「このお墓は、君が建てたのかい?」

「天龍さんと、妖精さん達とで建てたのです。電と同じように天龍さんもすごく辛そうな顔で建てていたのです・・・」

「そうか・・・彼女達が」

こくりと肯定の意で頷く。俯いていて表情が見えない。

「この下で眠っている『暁』ちゃんと電を含む、第六駆逐隊のお世話をしていたのは天龍さんと龍田さんでしたから・・・だから他の艦娘さん達に比べてお付き合いが長かったのです・・・だからその分、ますます辛い気持ちだったと思います・・・他のお姉ちゃんや、龍田さんの事もありましたから・・・」

スカートの裾を握り締め、こみ上げる物を堪えるかのような言葉が、小さく・・・しかしなぜかはっきりと墓地に広がる。

「よく、私達姉妹と天龍さんと龍田さんで遠征に出かけたりしました。ほ・・他の艦娘さんたちから「また遠征?頑張ってね?天龍先生」とから・・・かわれたりしてムキになっていたり、そ・・・それを妹の龍田さんが便乗した・・・り時には・・・窘め・・・たりして・・・」

後半になるにつれて嗚咽が混じり、言葉が途切れ途切れになる。

仲間・・・かけがえのない『絆』を結んだ人たちを引き裂かれる気持ちとはどんなものなのだろう・・・?

目を閉じて考える・・・『幾千の呪言』によって次々と飲み込まれる仲間達・・・、『絆』を育んだ者達と望まぬ戦いを強いられた、人の心を持った機械の乙女・・・・。

その様子が脳裏に浮かび無意識に、俺も拳強く握り締めていた・・・。

 

 

 

 

『貴方は、ここの地域が何処なのか知っていますか?』

『ああ、すまない・・・ここに来たばかりでよく分からないんだ・・・』

『この周辺の海域は、“北方海域”の入り口の3-1―――『モーレイ海』と呼ばれている海域です。』

『“北方海域?”“モーレイ海”?』

青髪の妖精がこくりと頷く。

『ある程度の錬度のある提督や艦娘さんでも、おいそれと通過できない場所でもあります・・・何故だと思います?』

・・・そりゃあ、真っ先に考えつく単純な答えと言えば。

『ここの、『深海凄艦』とやらが強いから?』

『“羅針盤”という要素も加わりますが、大まかな原因はそのとおりです。で、大本営はここの攻略を、『前の提督』に命じたのです』

『この海域の攻略に成功すれば、海軍にとっても大きなアドバンテージになりますからね。提督自身にとっても、さらなる昇進に繋がると思ったのでしょう、その話を喜んで引き受けました』

『・・・もういいよ,そこからの展開は予想できた』

四人の妖精たちは目を丸くさせてこちらを見る。今の話と天龍のやり取りでそこから先は予想できる。それに妖精たちにとってもあまりいい話ではなさそうだしな、喋るごとに元気をなくしていっている。これ以上語らせるのは酷だ。

『・・・教えてくれてありがとう。辛い事を思い出させちゃったな』

 

 

大方、この海域に出没する『深海凄艦』の連日のようにやってくる猛烈な襲撃に、一人、また一人と艦娘達が『轟沈』していき、戦線を保てず敗色濃厚とみるや、この基地の『提督』はついにこの基地を放棄する事を決意。基地に僅かに残る『艦娘』達を囮に、数人の部下を連れて脱出した・・・そんなところだろう。細かい詳細は聞いてないけど・・・いや、聞きたくない。どうせ反吐が出そうな話だろうから・・・彼女達も話したくないだろう。聞いておいて何なんだと思うかもしれないけれど・・・。

 

 

「そういえば、お礼を言ってませんでしたね・・・」

俯いていた電が、いつの間にかこちらを見ている。悲しみを押し殺したような笑顔を貼り付けて。

「暁ちゃんの事、ありがとうございます。お姉ちゃんを運んでくれただけでなく、その死を悲しんでくれたのです」

少し、複雑な気分を覚える。しかし電はそれでもありがとうございましたと膝を折って丁寧に頭を下げる。

「お礼なんて・・・俺は実質何にもしてないよ。君のお姉さん助けることが出来たわけでもないし・・・このお墓を作ったのも君達だ。お礼を言われる立場なんかじゃ・・・その言葉は天龍や妖精達に言ってやってくれ・・・」

「お花供えようといったのはお兄さんでしょう?それだけでも、ここで眠っている皆は喜んでくれるはずです。・・・少なくとも・・・・電は感謝しているのです!」

・・・彼女の健気な笑顔が心に突き刺さる。その顔を直視できずに思わず目を逸らす。

違う・・・違うんだよ。俺は本当に何もしていない。花を摘んだのだってきっと、君の姉に対する負い目を誤魔化すためで・・・そうだよ、そうに違いない。君のその笑顔が、俺には逆に辛過ぎるんだ・・・だから、そんな顔を向けないでくれ・・・。

「どうしたんですか?辛そうな顔をして?」

「・・・そんな顔に見えるかい?いつもどおりだと思うのだけれども」

首を傾げる電に、視線を逸らしたまま投げやりに答える。

「・・・ところで話は変わりますが、お兄さんにもお話があります」

突然変った声色に、思わず振り返る。さっきまでの笑顔からうって変わって真剣な表情を浮かべてこちらを見ていた。その様子に相手に気づかれないくらい少しだけたじろぐ。

「               」

 

その告白を一陣の風が吹き、かき消した。

 

 

 

基地の一室

 

「畜生・・・」

とある部屋の主が、小さく悪態をつく。

鳴上にあてがわれた部屋よりも室内の破損具合が多く荷物が散らばっており、整理整頓が苦手であろうその部屋の持ち主の大雑把な性格が反映されたような部屋だった。

所々に傷や若干の凹みが目立つ片手サイズの砲身や機銃がなぜか床に転がっており、何かの棚の上に奇妙な剣が飾られていて、あとは若干の着替えやボロボロのベッドがあるだけの、殺風景どころか、近寄りがたい雰囲気を放っている部屋。

「なんなんだよアイツ・・・言いたい放題・・・」

部屋の主――天龍は一人、ベッドの上でいわゆる体育座りをしながら面白くもない表情で苛立っていた。

頭に浮かぶのは昨日から突然来た来訪者―――鳴上との、先程のやり取りだった。

昨日までみっともなく喚いていた人物に、知ったような口で好き放題言われて言い返せなかった挙句に、こちらが掴みかかると逆に投げ飛ばされたあの事が、ちくりちくりと頭に取れない針でも刺されたかのように、天龍の頭から離れなかった。なぜか?自分の知っている、あの唾棄すべきあの『提督』と同じ人間なのに・・・。

あの憎むべき『提督』の事は嫌でも覚えている。自分では何も出来ないくせに、偉そうに自分達を顎で使っときながら耳にするのは罵詈雑言の言葉。憎しみや殺意を抱いた事は毎日のようにあっても、尊敬なんてこれっぽっちもなかった。しまいにはあの『提督』もその取り巻き共も、わが身かわいさに自分達『艦娘』も、妖精達も、何もかも投げ出して逃げ出しやがった・・・人間なんてそんなもんなんだ。どいつもこいつも糞ったれの屑だ、あの男だってそうに決まっている。だからあの人間共に代わって憎しみをぶつける様に辛辣な態度をとったり殺す様なつもりで相対して、縮こまって情けない様を見て「ああ、やっぱり人間なんてこんなもんだ」と思うつもりでいた・・・。

なのに、あの男・・・びびるどころか、真っ直ぐ俺の目を見て逆に噛み付いてきやがった。俺が放った理屈を次々と言い負かすように・・・あの『提督』共にはない“何か”に言い返せなかった・・・。

それにあの目・・・なんだろう、うまくいえないがその、なんとなくあの目を見ているとまるでこっちの心を見透かされるような・・・殺意と憎しみでぐちゃぐちゃになった心の中に波紋を起こされた様な・・・。

違う・・・・。

「違う・・・違う、違う!違う!!違う!!!違う!!!!」

そんな事はない、そんなわけがない!!『艦娘』である自分が『人間』に恐れを抱いただと!?

違う、断じて違う!!あんなのは気の迷いだ、気のせいだ!こちらに追い詰められて勝手に開き直っただけだ!そんな見たことない初めての反応に少し面食らっただけだ!あいつだって、所詮自分が見てきた人間と根っこは一緒だ!!そうに決まっている!!

「その・・・筈だ・・・」

頭ではそう理解しようとしているのに、なぜか言葉の最後に力が篭らない・・・何なんだ一体・・・

・・・そういえば、もう1つ気がかりな事があったな。

そうだ、あの時だ。こちらが襟首を掴んで持ち上げてやった時だ。あの男は“自分の手を強引にはがして投げ飛ばしやがった”

自分に限らず『艦娘』は、人間以上の身体能力を持ちそこいらの人間ではまともに勝ち目はないはず。現に昔、人間の兵隊相手に1体1で戦って完膚なきまでに叩きのめした事がある。自分の腕の二倍の太さがあろう“現役バリバリ”の軍隊相手にだ。もちろん力でも相手を上回っていた。

なのにアイツ、信じられない事に大の大人でもかなわない『艦娘』の自分の腕を・・・“力任せに引き剥がしたあげくに投げ飛ばしやがった”。どういうことだ?そんなこと初めてだ。

あの男・・・一体何者なんだ?本当に人間か?まるで・・・。

そう思った時だった。

 

ドンドンドン!!!

 

急にドアが叩きつけられる音にびくりとするも、何事かとベッドから降りてドアへと走る。

 

「天龍さん!!」

ドアを開け、声のしたほうを見ると、工廠妖精が真っ青な顔でこちらに向かって声を張り上げている。

「なんだ!?一体どうした!?」

「大変です!!この基地に備えつけられている『電探(でんたん)』ヲを操作していたら・・・・!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだと!?」

妖精からの突然の報告に、驚きの声を隠せなかった。

 

 

 

 

カモメが飛んでいる。いや、もしかしたらウミネコかな?こんなところにもいるんだな・・・。

電と別れてから一人何をするでもなく、少女を見つけたあの砂浜でただ座り込んで海を眺めていた。昼は過ぎて昼食はとっていないが、不思議と何かを腹に入れる気分にはならなかった。

昨日と同じように波は、穏やかな細波をたてて1/fのゆらぎを奏でている。何も知らずにこれだけみると、本当に穏やかな海なんだけどな・・・。

しかしここはただの海ではない。この静かな海には、鮫や鯱なんかよりも恐ろしい『深海棲艦』という魔物が住み着いている。迂闊に海水浴をしようものなら、あっという間に海の藻屑にされてしまうだろう、昨日見たあの暁とかいう少女みたいに・・・思い出すだけでもまた嫌な気持ちになりそうだ。

そして『深海棲艦』の戦いに敗れた僅かに生き残った艦娘が、身を寄せ合うようにこの島から動けず、奴らの襲撃に日夜怯えている・・・か。彼女達にとっては、この島は監獄か鳥篭といったところか?笑えないな。

・・・逃げる事もできず、死ぬとわかっていて粗末な装備を手に戦いに臨むというのは、どんな気持ちなんだろう。押し寄せる大群を前にちっぽけな武器を振るって目の前の2,3匹は倒しても、後から沸いてくる十や百や千の大群に押しつぶされる・・・『俺達』には想像もつかない戦い、いや、もはやそれは戦いと言えるのだろうか?恐怖を押し殺して命を投げ出すような戦い方を、『俺達』は出来るのだろうか?自分はどうだ?

 

『『深海棲艦』と戦って死ぬのは『艦娘(オレたち)』の本分であり本望だ・・・』

 

「違う、そんなの・・・間違っている・・・!」

 

偽善だとか綺麗ごとと言われても構わない・・・!そんな、そんなの・・・!!死んで全うできる事なんてあるもんか・・・!

「もし、もし俺が『提督』だったなら俺は・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォォォン!!!

 

「うお!?」

突然、何かが轟音を立てて俺の真横の砂浜に突き刺さる!あまりの衝撃と音に俺の体が咄嗟に飛びのく!次の瞬間には腰が抜けている状態から立て直し、前方の音の原因を見据える。

 

「こ、こいつは・・・!?」

 

 

『ヌゥゥ・・・』

一言で言うならそいつは、甲皮で覆われたデカイ顔に人間の手足が生えたような奇妙なフォルムをしていた。猫や犬くらいなら丸呑みに出来るんじゃないかと思えるような大きな口と、これまたデカイ歯が自慢だとアピールするように見せびらし、右目にあたる部分にはなぜか砲塔が伸びている。・・・さっきの轟音はそこから出したのか?そしてなぜかこいつも赤黒い靄か・・・オーラ?を出していた。よく見れば目も発光するように赤いし。

そう思っている中、そいつはザバザバァ!と次々と海面から同じ奴が何体も出てきた。そして同じようにそいつらも奇声を上げるや否や、海岸から上がり、こちらのいる砂浜まで近づいてくる。どうでもいいけど、何体も並んでいると気持ち悪いな。人間みたいな手足がついてる分拍車がかかっているし・・・。

それにしても、昨日の奴と違うようだがまさかコイツも・・・?

 

『キシャアアアア!!!!』

 

突然、そのうちの1体が、昨日の黒いのと同じような奇声を上げると何処からか出したのか、こちらに向かって何か小さいものを高速で俺に向かって飛ばす。反応も出来ずに呆然とそれが来るのをただ待ち受けて・・・。

 

 

 

 

 

「あ、危ない!」

呆気にとられている俺を庇うように、小さな影が俺の前に躍りだし・・・。

ドォォォン!!

「キャアアア!!」

その小さな何かの爆撃のような物を俺の身代わりに食らい、数mは吹っ飛ばされていった。頭の髪留めがバラリと落ちて、アップにしていた髪の毛が解ける。見覚えのある姿だ

「い、電!?」

思わず彼女を呼び捨てて、吹き飛ばされた電の元へ駆け出す。後ろから何かの攻撃が俺を狙うものの、ジグザグに動く事でなんとか回避し倒れている電の元へ辿り着きその小さな体を持ち上げる。

「電!大丈夫か!?」

「はは・・・呼び捨てで・・・呼んでもらえたのです。なんだか・・・少し嬉しいです・・・」

口から血を垂らして力なく笑いながら、ゆっくりとこちらを見上げる。セーラー服は所々焦げて、いたるところに痛々しい火傷の痕が浮かんでいる。人間ならすぐにでも、病院に連れて行かないとマズイレベルだ。俺を庇うために、こんな・・・酷い傷を・・。

「なぜ・・・どうしてこんな所に!?」

「『暁』ちゃんが見つかった場所を・・・もう一度見ようと・・・そうしたらお兄さんが『軽空母ヌ級』・・・しかもエリートに襲われているのを・・・ゴホッ!ゴホッ!」

「電!!」

軽空母ヌ級、エリート、聞きなれない単語に疑問が浮かぶも今はそれどころではない。

 

「なんで・・・どうしてこんな小さな体で俺を・・・」

 

「・・・人間さん達を守るのが・・・電達の役目です・・・だから・・・気にしないで」

「・・・!!!」

掠れた声で、満足そうに断言する。その言葉に目を見開く。後ろで砂浜を踏みしめる音が聞こえ、ヌ級と呼ばれた化け物たちが俺たちに向かって一歩一歩近づいてくる。が、今の俺にはその音がとても遠くの出来事に感じられる。

「人間の・・・お兄さんでは、深海・・凄艦には・・逃げて・・ください。一刻も・・・早く、基地に・・・戻って、それから天龍さんと妖精さんたちに・・・」

力なく手を伸ばして、俺の手を握る。こんな姿になってなお、俺なんかの心配を・・・。

「さあ・・・急いで・・・」

もはや死相すら近づいているような力ない笑顔を俺に向ける。その姿は、昨日の『暁』と呼ばれた少女の姿と重なる。

 

これが、これが艦娘の正しい姿と言うのか?俺たち人間の勝手な都合でこんな化け物と戦わされて、それでも尚自分の命を犠牲にして・・・!?

これが、この『世界』のあるべき姿だと言うのか・・・!?

これが・・・この世界の『真実』だと・・・・!?

 

 

 

 

『悪い事はいいません。遅くても明日にはこの島から去ってください。ここにいると危ないです』

『・・・なんだって!?どういうことだ!!』

『少し前なら、連日のように深海凄艦が押し寄せてきましたが、この基地が陥落したと満足したのかここしばらくは目立った襲撃はありません。ですが、いつまた攻めてくるか分かりません。だから今のうちに・・・」

『待て、君達はどうするんだ?ここにいたら君達だって・・・』

『電達はここから離れられません。いや、離れたくありません。皆が眠っているこの基地を・・・守って行きたいんです』

『!』

『そんな簡単に、命を無駄にするな!』と言いたいんでしょう?何となく分かるのです。お兄さんは優しい人ですから』

『!』

『でも、もういいのです。『向こう』に行けばきっともう戦わなくて済むのです・・・お姉ちゃんたちにも会えます・・・だから・・・私たちの事は気にしないでください』

『電ちゃん・・・』

『電達の『提督』さんは、お世辞にもいい人とは言えませんでした・・・でも、お兄さんはいい人なのです。死なせたくないんです・・・明日にでもこの基地にある船を使ってここから脱出してください・・・お願いします、お兄さんは生きてください・・・』

 

 

 

 

先程の墓での会話が脳裏に蘇る。

艦娘は人間のために命を捨てるのが当たり前・・・!?目の前の無垢で幼い少女も、そういう理由で俺を助けたのだと・・・!?艦娘に生まれたと言う、そんな理由で・・・!?彼女の姉妹や、他の者達もそういう理由で・・・!?

「ふざけるな・・・!!」

俺の呟きに、電がどこか戸惑うような視線を見せ、そしてすぐに驚愕に顔を染める。

「う・・うしろ・・・!!」

後ろから例の小さいものが突進してくるのを感じられる。それに気づいた電が大声を上げそうになり・・・!!

 

 

 

 

 

「え・・・・!?」

電の空気が抜けたような唖然とした声が、驚愕の顔と共に出てくる。

 

 

 

「空気読めよお前ら・・・!!!」

 

 

 

顔を電に向けたまま、後ろ向きでその小さなものを掴む!電が驚いているのを余所に、俺は握り締めたその小さな何かを観察する。

ああ、昔の横シューティングゲームで出てきそうなメカっぽいフォルムをしているな。これにもなんか小さな歯がついてる・・・。

「・・・こんなもので、俺たちを殺そうとしていたのか?」

いつもより低い声を出しながら、その何かを砂浜の上に落として足で踏み潰す!意外と脆く、すぐにショートしたように火花を出した後ぺしゃんこになってしまった。

 

『キシャアアアアア!!!!』

 

とその光景を見た(目なんかあるのか謎だけど)ヌ級と呼ばれた奴らは奇声と共に、全員が一斉に同じような何かを大量に空に打ち上げる。すぐさま、空の一部分がその小さな何かによって埋め尽くされる。

「あああ・・・・」

その光景を、絶望したかのように倒れている電が見上げる。もう駄目だ・・とか思っているのかな?

「お、お願いです。い、今からでも・・・お兄さんだけでも・・・」

「喋るな、傷に触る」

震えながら電が放った言葉を一蹴し、再び電に向けてしゃがみこむ。

 

「“       ”」

 

電には聞こえないくらいそう呟くと共に、電の体に手を当てると暖かい光が電の体を包み込む。

「!?え・・!?」

光が止んだ途端に、電が驚いて自分の体を見る。

服の破れはそのままだが、先程までの傷と火傷が、まるで嘘のように消え去り、先程の死相もすっかり消え去り、電の顔色も血色良くなっていた。

「そ、そんな!電は確かにあんなに・・・」

「電」

電が驚いてこちらを見る、と途端に今度はどこか怯えたように俺の顔を見る。・・・今の俺ってどんな顔してるのかな?あまり考えないでおこう。

「色々聞きたい事はあるだろうが後にしよう。それと、あとでお説教を覚悟しておいてくれ」

そういい残して立ち上がり、ヌ級のほうへ振り返って歩き出す。今度はこっちの事を待ってくれたのか?律儀だ、と褒める気にもならないけど。

「・・・残念だがお前らは説教では済ませられないな。それが通用するかどうかはわからないし、そんなもんでは済まされないことをお前らはしたんだからな・・・」

『キシャアアアアア!!!!』

拳を鳴らしながら、一歩一歩ヌ級に向かって歩を進め、それに対して威嚇するように奇声を上げるヌ級。俺の言葉を理解しているのか?ま、どっちでもいいけど。

「だ、駄目です!!人間の貴方では勝ち目が!!」

「大丈夫」

『キシャアアア!!!」

瞬間、百を越えるような小さなメカが俺に向かって一斉に向かってくる。電が声にならない叫びを上げている。・・・“愛用の武器”がないのが痛いけどまあいい。

「3分以内に終わらせる」

 

・・・俺の目の前に、青い光を放ちながら一枚のカードが眼前まで降り注ぎ、それを“いつものように握りつぶした”

 

 

 




妖精さんの科白が面倒でち・・・。だから直しました!!


読者の皆さんに迷惑をかけたお詫びと言っては何ですが、思いついた事を・・・シリアスが壊れる可能性があるので、それでもOKという方は自己責任で下をスクロールしてください。































さあ、この物語の提督の話を聞いて、貴方達はどう思いましたか?とある田舎町の少年少女に感想を聞きました。

Y・H君「許せねえ!殺人事件の犯人と同じくらい・・・いや以上のクソヤローだ!」
T・Sさん「ひど過ぎるよ!そんな奴見かけたら、1に顔面に靴跡つける!2に顔面に靴跡つけて3に花村の尻みたいにして4に霧雨昇天撃からどーん!してやる!!」
Y・Aさん「腐った部分を炎で焼いたら、マシになるのかな・・・!?(コンセントレイトの準備)」
K・T君「その野郎、バッキバキにすり潰していいスか・・・!?(拳を鳴らしながら)」
R・Kさん「テレビ局にそのネタばら撒いて、二度と表歩けないようにしてやるんだから!!」
K君「カワイ子ちゃん達にそんなことするなんて・・・クマの明日の為にが炸裂するクマ!」
N・Sさん「その悪事を徹底的に暴きだして、二度と立ち直れないようにしてやりますよ!」
Mさん「まじさいてーさいあくろくでなしのげどうぶるーす。いっそ『テレビの中』に放り込む?」
Rさん「そのゴンタクレに、ウチの徹底的指導食らわしたるわ!チェーンナックルや!!(でかい両手斧持ち出す)」

えー・・・力強いアンケートありがとうございました・・・。

Y・H君「おい、所で悠!お前またなんかハーレム繰り出す気だろ!?羨ましいんだよ!俺にも一人位紹介しろっつうの!!俺達相棒だろ!?」
T・Sさん「鳴上君!とにかく肉だよ!?肉を食べるのだ!肉のパワーを信じるのじゃぞ!?」
Y・Aさん「鳴上君!遠くから応援するくらいしか出来ないけど頑張ってね!」
K・T君「先輩!どんな事があっても先輩ならやり遂げられるって信じてるっス!ビシッと漢見せてやって下さい!」
R・Kさん「ちょっと先輩!私という者がいるんだから他の女の子とあまりイチャイチャしないでよ!?あと、絶対元気な顔を私に見せに会いに来てね!今度新作の曲を披露しちゃうんだから!先輩愛してるー!!」
K君「センセー!センセーのワイルドパワーを見せてやるクマ!!後、クマにもプリティーなベイベーちゃんを紹介してほしいクマ!!」
N・Sさん「先輩、貴方なら大丈夫と思いますが・・・どうかお気をつけて、また会える日を待ってます」
Mさん「・・・勝手にぽっくり死んだら許さないんだから。絶対、また会いに来て・・・」
Rさん「鳴上君頑張ってなー!ウチらも遠くからやけど応援してるから!!」



T・Sさん「所で・・・なんであんただけ違う趣旨入っているんだっつーの!?」
Y・Aさん「サイテー」
Y・H君「い、いや、その、ちょっと本心が入ったというかなんというか・・・(ゴッドハンド)ギャアアアアアアアアアア!!!!!!」


・・・そっとしておこう。

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