鳴上悠と艦隊これくしょん   作:岳海

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う~む、また遅くなってしまぅた…しかも長い。



第十二話 It's not over yet.

「うおおおおおおお!!!!」

 雄たけびを上げながら、全体重を乗せた右フックを、バイザー部分目掛けて振り下ろす。が、寸前でつま先を滑らせ、『スカッ』と拳が空回りして天龍に当たることなく前方につんのめり、盛大にこける。

 

バシャァァァン!

 

 

「ごぼぉっ!?」

 

 顔面が叩きつけられる音と、海水が髪と顔全体を冷たくぬらす感触…ああ、頭が海水に浸かっているんだなと理解する。

 …そういえば、林間学校でもこんな風になったっけ…そして上流から流れる諸金の………!

 ほろ苦い思い出が脳裏から蘇りそうになったとき、背後から凄まじい殺気を感じて、慌てて右方向へ海面を転がるようにして起き上がる!

 

バシャアアアア!!!!!

 

「うおっ!?」

 

 轟音の衝撃と、反射運動が手伝って跳ねるようにそこから移動する。あと一歩遅かったら海面諸共、身体も木っ端微塵になるところだった。

 

「はわ…はわわわわ…はわ…」

 

 遠くで電もはわわわ言って慄いている。未だに動悸の収まらない心臓に手を当てながら状況を確認する。

 数m先のボロボロの状態の天龍が、バイザー越しでこちらに向かって顔を向けている。恐らく、殴ろうとして盛大にこけた所を、狙い撃ちしようとしたのだろう。艤装についている砲塔が、煙を吐き出しているのがそれを物

語っている。

 

「こんな時に昔のことを思い出すなんて、もしかしたら俺は走馬灯の一歩手前を見たのかもしれない。去年の事が

思い出されるのは悪くないけれど、どうせなら死ぬなら仲間に囲まれながらか、『お兄ちゃん大好き』とか言われながら逝きたいもんだ。お前はどう思う?」

 

 艤装の砲を構えた状態の天龍に尋ねてみるも、応答なし。『馬鹿かテメエは。頭に蛆でも湧いてんじゃねえのか?』と、普段の天龍が言いそうな返事を期待してみたけど、相も変わらず深海凄艦特有の、薄暗い霧が出るような不気味な立ち振る舞いと、頑なな沈黙。まるで俺と話す時の天龍そのものか、もしくはお互いを受け入れられないシャドウ(本体)のよう……いや、今の場合はそれ以上だ。意味は違うけれど、言わざる、聞かざる、見えざるの三猿みたいだ。本来は悪いものを言わないように、聞かないように、見えないように、という意味なのにそれが自分を隠すために置き換わるなんて皮肉なものだ。

 もう、天龍の意思は残っていないのか?そんな考えがちらっと脳裏を通り過ぎる。

 …いいや、そんなはずはない。先程電達に向けて放った砲撃はギリギリの所で逸れた。まだ残っているはずなんだ、彼女の意思というものが。勿論それはただ単純に向こうが砲撃を外しただけという可能性もあるけれど…だけれど!

 

 改めて自分と天龍の位置を確認する。…50mといったところか?さっき殴りかかって砲撃をかわし続けているうちに、何時の間にこんなに離れてしまったのか?

 天龍が再び艤装についている砲塔を構える。飽くまでただただ機械的に俺を殺すだけか?だがな…。

 

「アリ・ダンスが出来るのはイザナギだけじゃないって事すら(・・・・・・・・・・・・)忘れた…かぁ!?」

 

 喋っている途中で砲撃するのを、済んでの所で滑るようにかわす。ペルソナの影響で身体能力も上がってなかったら今頃、俺の上半身と下半身が、某お髭の男爵みたいに真っ二つになっていただろう。俺の後方で飛沫を上げながら沈んでいく砲弾を横目で見ながら、全速力で天龍の元へ駆ける!

 

「待っていろ、今すぐそっちまで行くからな!」

 

 そう言いながら接近してくる俺を『はい、そうですかと』とただ待っていてはくれないらしい。今度は足元の海面に向かって次々と何かを打ち出す。海中なのと波で分かりにくいが、白い何かが計6発、こちらに向かって潜水で泳ぐように、こちらに向かってくる。

「…まさか、魚雷か!?」

 こちらに向かってくるのが何なのかを悟ると同時に、避けようと方向転換しようとすると、そうはさせじと天龍のほうからも砲撃を再開する!俺の周辺を狙うように次々と打ち出される執拗な攻撃に、動くこともままならない!頭コチコチなくせに、こういうところは柔軟らしいななアイツ!

 そうこう考えている間にも、白い魚雷が肉眼でも分かりやすく捉えられる距離まで近づいくる…!

「っ、イザナギ!」

 咄嗟に後方に下がりながら、頭上に待機しているイザナギに合図を送り、持っている矛を俺と魚雷の間の海面に投げ込む!放たれた魚雷は、本来の標的の俺にぶつかることなく幅広の刃に阻まれ、その場で爆散。すさまじい爆発でイザナギの矛が折れるんじゃないかと心配になったが、次第に煙から露になったその姿を見て杞憂だったとほっと胸をなでおろし、そしてすぐに天龍の元へ再び駆ける。

 再び俺に向かって砲撃を再開!しかし今度は矛を回収したイザナギが中間に立ち、『虚言のアブルリー』を払い落とすかのように、次々と飛んでくる弾を海中へ叩き落しながらじりじりと距離を詰めていき、俺もその後ろから接近する。卑怯なのか情けないのか複雑な気分だが、これで相手の砲撃を気にせず距離を詰めれる!

 そんなことを繰り返しながら、砲撃とそれを弾く金属音の不協和音が鳴り響く事数分、漸く天龍との距離まであと数mの所まで接近する。

 

「そろそろいいな…イザナギ!」

 

 砲撃が一旦止んだ頃合を見計らって、叫びながら、前方のイザナギの元へ駆け出す。合図を受けたイザナギがまるで横胴を繰り出そうとするかのように、刃を水平にしながら後方に向ける。

 そして素早くイザナギの刃の上に、五条橋で欄干の上を飛び回った義経宜しく着地、そして…。

 

「い……けぇぇ!!!!!」

 

 号令と共に、イザナギが刃の上に乗った俺を天龍の方目掛けてに思い切り飛ばす!『シャッフルタイム』を繰り返して極限まで強化したイザナギのパワーが俺を上空へと放り投げる!Gの負荷が多少なりとも傷ついた体に襲い掛かるも、根性で何とかする!

 こうすれば、天龍に一気に近づくことが出来る!

 やがて吹っ飛ばされた俺の体が、緩やかな放物線を描いて頂点に到達。そこは、ちょうど天龍の真上!そこから落下しながら天龍のバイザー目掛けて拳を…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 視界の遥か先では、深海凄艦(天龍さん)が鉄(くろがね)を吐き出し、お兄さんが時にはかわし、イザナギさんに叩き落してもらいながらも真っ直ぐに、目標にむかって突き進んでいく。

 勇敢な人なのか…それとも自棄を起こしただけなのか? 

 唯一の武器であり切り札でもあるあの異形の巨人を、精々弾除けかサポートのみに徹し、自身の両の拳だけで立ち向かっていくなんて…艦娘の戦いの観点から見れば正気の沙汰ではない。一体何を考えてわざわざあんな真似をしたのだろうか? 

 …と、何も知らない人達からみればこんな事を思うんだろうな。

 首だけを後ろに回す。相変わらず満身創痍の体の古鷹さんが、口を半開きに瞼を閉じている。出血の所為か、顔色も血の気が薄く青みがかかり始め、口と、お兄さんの上着が巻かれた胴体からは血が滲んでいる。本当に生きているのかと疑いたくなる有様だが、体が沈まずに海面に仰向けに浮いていられるのは艤装が役割を果たしているから…辛うじてだがまだ息はあるということだ。

 勿論、それでも危険な状態にあるのは間違いない。少し目を離した隙に、いつの間にか姿がない…なんてことが起こっていても不思議ではない。なんの慰めにもならないだろうけれど、せめて沈ませはしないという抵抗だけでもと、彼女の冷たくなりかけている手を必死に握り締める。

 ……こんな事ぐらいしか出来ない自分を歯がゆく思いながら。

 いいや、私が出て行ってもかえって足手纏いになるだけ…お兄さんも言っていた。俺に任せろと、だからいいんだ。これが最善の方法なんだ…その…筈…だ。

  

 

「い……けぇぇ!!!!!」

 

 お兄さんが叫び声をあげているのが聞こえて頭を上げる。いつの間にか、お兄さんが上空高く飛びながら、その下にいる天龍さんに向かって文字通り急降下していった。その勢いをつけて思いっきり殴りつけるのか、もしくはそのまま着地して懐に潜り込むのか?

 未だにあの人が何をしたいのかよくわからないけれど、いずれにせよこれで天龍さんに再び近づくことが出来る!不思議と、握る拳が熱くなっていくのが感じられる。

 

「……ぁ……ぇ…」

 

 後ろから、服が引っ張られる感触、そして小さなか細い声。

 

「っ!?古鷹さん!?目を覚ましたのです!?」

「だ……ぇ……ゴホッ!ゴホッ!」

 

 不意に振り返り、気絶していたと思っていた古鷹さんが、わずかに目を開いてこちらの服の裾を引っ張っているのを見て僅かに驚きの声が漏れる。口の端から血を流し、息も絶え絶えになりながらも必死に口と、目が、必死に何かを訴えかけるようにしている。

 

「だ、駄目なのです、喋らないで!傷に触って…」

「だ………め……」

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

「……軽巡『ツ級』に上空攻撃を仕掛けては…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ババババババババババババババババババババ!!!!!

 

 

 

 

 先程の砲撃戦とは違う、まるでマシンガンのような音……機銃!?

 慌てて古鷹さんから目を離して振り返ると、空に向かって両腕の艤装を構える『ツ級』…そして。

 

「ッ!?」

 

 一瞬、いつの間にか空に昇ったイザナギさんが降りてきたと思った。そうであって欲しかった。けれども現実と運命はいつも私たちに冷たく残酷だった。私の都合のいい期待は、馴染みのある姿が視界に映ったのと同時に、積み上げた積み木みたいに粉々にされたのを感じた。

 龍田さんが『食べられて』しまう瞬間、お姉ちゃん達がいなくなってしまう姿…。

 そして今、上空から、全身から焦げたような煙を漂わせながら、力なく頭から墜落していくあの人の姿が…私の知りうる限りの『最悪(トラウマ)』と重なって映る………。

 後ろで古鷹さんが何か喋っている。か細い声だったけれど、不思議と私の鼓膜をはっきりと揺らした。

 ……終わったと。

 声も出なかった、泣き喚く声すらあげようとも思わなかった。古鷹さんの手を握る感触すら感じなかった。

 

「天龍……さん」

 

 かつて天龍さん“だった”存在がこちらに向き直り、ゆっくりとこちらに向かってくる。先程お兄さんを撃ち落したばかりの、腕や肩についている砲塔の照準をこちらに合わせながら………私たちも“アレ”で撃ち殺すのだろうか?まさか一度ならず二度までも天龍さんに砲を向けられることになるなんて…再びあの人は、ギリギリの所で照準をはずしてくれるのだろうか?

 無駄だと分かりつつも、古鷹さんを後ろに庇うようにする。何にも出来ない私でも、せめて盾くらいになら…。

 電ちゃん…と掠れた声で、古鷹さんが私を呼ぶ声が聞こえてきた。恐らく古鷹さんも、私と同じように数秒後に起こる出来事に対して諦めと観念が生まれたのだろうか?

 

 

 ガシャコン。遠くで天龍さんが砲塔を構えなおすその姿に、思わず身構える。銃殺刑に処される人達は、今の私と同じような気持ちだったのだろうか?お腹に穴が開いて死んでしまった暁ちゃんも、こんな気持ちだったのかな?

 口の中に溜まってきた唾液を思わず飲み込み、ゴクリと喉が鳴る。もう終わりだ、観念の文字が頭の中に浮かび上がり、ゆっくりと目を閉じ、顔を俯かせる。

 

 

 ………。

 …………。

 ……………。

 ………………。

 …………………?

 

 

 目を閉じても、何時まで経っても砲撃はやってこない。いや、もしかしたら気づかないうちに私たちは天国へ行ってしまったのだろうか?

 

 ザバァァァァァァ!!

 

「っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「銃で撃たれるのは、これで三回目か?一回目は禍津稲羽市で拳銃、二回目はGWの時の事件でマシンガン、ガトリング、ロケットランチャーにミサイルに巨大ビーム砲…どう考えても、普通の高校生が遭遇する機会と代物ではないけどな…」

 

 弾けるような水音、そして聞き覚えのある逞しい声。古鷹さんが私の手を強く握り返す感触が合図のように伝わり、閉じていた眼を開き顔を上げると……。

 

 

「お前が、今ぶつかり合う相手はそっちじゃないだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勘というのは、案外馬鹿には出来ないものだ。これも去年の事件を乗り越えて培った物の一つかもしれない。もっとも、この分野は千枝の方が、たまに陽介がネタにするくらい優れていたな。

 あの時、機銃らしきものを天龍が構えたのを目視した瞬間……そうだな、例えるなら頭の中に『防御しろ』という文字が閃光のように走ったような感覚という表現が近いのかな?その瞬間、『意志』というものをぶっ飛ばして反射的に、盾になるようすぐ目の前に、『イザナギ』を召喚した。

 その結果、『弾丸が体を直撃する』という結果から逃れることが出来た。勿論、痛みやダメージは『イザナギ』を通じて本体の俺にフィードバックするものの、直接弾丸を喰らうという自体は回避することが出来た。それでも、すごく痛いし、おまけにまたしても服はずぶ濡れ、艤装は……砲が使えなくなってしまった程度か?弾の大きさの割には思ったほど被害が少ない。ペルソナで身体強化されているせいもあるんだろうけど、元々直接攻撃するためのものではなかったのかもしれない。…それでも痛みが走った瞬間一瞬、意識が飛んでしまったけれど…。

 

「『イザナギ』」

 

 イザナギを召喚して、天龍の後ろに立たせる。天龍が反応して対応しようとするも、今一歩遅し。イザナギが両肩の艤装についている連装砲塔を掴むと、俺もそれに習って巨大な両手の艤装についている魚雷発射管と砲塔を、思い切り握り締める。

 当然、天龍はそうはさせじと思い切り暴れる。それは痛みのためか、もしくは拘束を解こうとしての行動なのか。振りほどこうと揺らされるたびに、先程のフィードバックのダメージが響く……が、ここは放さない!

 

 

 天龍は先程の戦闘で浅くはないダメージを負って、今の深海凄艦状態でもそれを引きずっている。そしてそれは装備している艤装にも反映されていて、もしかしたら今の状態でならこの邪魔っけな艤装を引き剥がせるかもしれない。いつまでも体が吹っ飛ばされそうな砲撃をバカスカ打ち込まれてちゃあ、こっちの体が持たない…。

 もしかしたら、その艤装を引っぺがすことで元に戻るかも?という可能性も無きにあらずだしな。

 

「ぎいいいいいぃぃぃ……!!!」

 

 両腕と両肩の筋肉に力を篭めると、力んだ所為かますます痛みが強まるが懸命に堪える。両の手をしっかり掴んだまま両の足で踏ん張って、全体重を前のほうへかける。腕の力ではない、体全体で砲塔をへし折るイメージ!

 やがて拘束されながらも、腕の砲塔の一つがゆっくりと動いて、こちらに向かって放たれそうになるのを視界に捉える…。苦し紛れの行動か、それとも『とっとと放さないと顔面を吹っ飛ばすぞ!』と脅しているのか?どちらにせよ、この至近距離から放たれれば回避するのは不可能だな。

 …ノーサンキューだし、今更それで怯むと思ったら大間違いだがな!

 

「おおおああああぁぁぁ…!!!!」

 

 それすらも構わずに、雄たけびを上げながらますます力を篭めていく。それに呼応して、装着している艤装が熱とけたたましい高い音を出しながら、激しい機械音を出している。すると少しずつ、掴んでいる砲塔が曲がっていくのが感じられる。

 …俺のやることを艤装が察知して艤装が激しい反応を示したのか、それとも、『元の持ち主』がまた俺に力を貸してくれたのか?

 

 

 

 

 

「世話に、なりっぱなしだな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『い~え~?どういたしまして~』

 

 

 

 

 

 

 

 びしり、めきゃ、ぶちん、べりょぉ、ぼきゃぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

 鈍い金属音とも、何かが千切れた音とも耳障りな“その音”ははっきりと聞こえた。例えようがない不協和音をその場に響かせながら、イザナギとほぼ同じタイミングでへし折られ、千切れていく装備と艤装。俺を狙っていた両手の砲塔は発射されることなく、くっついていた艤装ごとぽちゃんと、海の中に消えていく。案外、やればできるもんだな。去年から著しく筋肉が付いたお陰か、それともペルソナの影響のお陰か、もしくは装備している艤装の影響かな?はたまた全部か。

 同時に、両腕の上腕三頭筋部分から電流が走ったような……両手の爪からは通風にでもかかったような激痛がそれぞれ襲い掛かり、堪えきれずに顔を歪ませてしまう。指を見ると、、両手全部の指が剥がれて血が流れ出し、ぽたぽたと赤い雫が足元の海を赤く染める。見ているだけで、別の意味で顔が歪みそうだ。腕の痛みは、筋肉痛か?

 天龍の方はどうなのかと視線を向ける。両肩部分の艤装は砲塔と共に全てイザナギに剥がされ両腕についていた艤装の右腕部分は完全に剥がされ、左腕は綺麗には剥がせなかったものの、残っている砲塔はグニャリと曲がってもはや使い物にならないというのは素人目に見ても分かる。肉体と艤装が一体化しているんじゃないかと思うほどガッチリくっついていたみたいだけれど痛くなかったのかな?少なくとも外傷の類は見当たらないが、一体化しているというよりは、強力な磁石でくっつき合っているという表現が正しいのかな?こちらとち違ってあまり痛がってなさそうだし…。そして、全部ではないとはいえ、天龍の体自体にあまり変化がない所を見ると、艤装を全部剥がせば元に戻るかもという目論見は諦めたほうがよさそうだな。

 まぁ、なんにせよ天龍自体を無力化することに関しては、成功したと考えていいだろう。払った代償が、俺の爪とついでに筋肉痛というのはちょっと割に合わないかもしれないけれど…

 

「なんにせよ、これでやっとゆっくり話が出来そうだな?」

「………」

「艤装、派手に剥がしてしまったけれど痛くなかったか?今、痛覚があるかどうかわからないけれど悪かったな、こうでもしないとお前は話を聞いてくれなさそうだからな。そういうところは、元のお前と今のお前も変わらないな」

 

 相変わらずの無言。バイザーの裏側でどんな表情を浮かべていることすら分からない。どころか、ずっと棒立ちになってずっとこちらを見ている。バイザーがあるから目はどうなっているかわからないけれど…。

 …案外、心の奥底では『余計なお世話だ』とか毒づいているのかもしれないな。

 

「…意外とシャイな奴だな?勝気な性格の割にはそういう可愛いところもあるなんて意外…というのも失礼だな。八十稲羽に来る前の俺も似たようなものだったしな」

「………」

「ちょっと昔話をしてしまうとだな、仕事の都合上仕方ないとはいえ引越しばかりで、友達もまともにできなかったな。親も家にいないことがほとんどだったし、一人でいることばっかりが多いから多少の成績と、自炊の能力だけが身についちゃって…肝心の『欲しいもの』は手に入らなかったな……」

 

 上着を少し破って剥がれた両手部分に巻きつけながら淡々と話す。遠くにいる電は俺の負傷を見て、まるで自分こそ全ての爪を剥がされたように顔を歪めているが、突然俺が喋りだした会話に今は少し戸惑っている様子だ。邪○眼ちゃんは……相変わらずだな、意識があるのかないのか…死にかけているところ悪いが、もう少しの辛抱だ。本当に申し訳ないが、勘弁してくれ。

 

「でな、ちょっとした転機があったのは高校二年にあがるときだ。しつこいくらい話題に出した、ちょうど去年の事だ。大変だったよ、転校してよく知りもしない親戚の家を頼って知らない田舎町だ、その時は知らない人と触れ合うのが今と違って苦手だったし、これからの一年間に不安しかなかった。おまけにちょうど同じタイミングで殺人事件に関わったりしてさ、大変だったよ…今の俺の『能力(ペルソナ)』もその時に偶然得たものだ」

 

 歩み寄るような、ゆっくりとしたスピードで天龍に近づく。びくりと反応したものの、攻撃どころか逃げるような素振りも今のところないのが幸いか。

 

「色々大変なこともあったけれども、本当にあの街にこれてよかった。初めて『生きている』ということを実感した感じがした…。あの一年間があったから、今の『鳴上悠』という『俺』が出来たんだ……」

 

 話している最中で不覚にも、自分の目頭が熱くなってくるのが感じられた。腕や撃たれた痛み、爪の剥がれた痛みが分からなくなってしまうほどに…。

 自問する、どうして俺は今天龍にこんな事を話しているのだろうか?どうして、俺は先程の天龍の発言で自分でも驚くほどに、あんなにも怒ったのだろう…。

 …決まっている。

 ちらりと、電を一瞥する。目が合うと、少し戸惑うような素振りを見せる。

 

「いつだって俺を強くしてくれた大事なもの、気づいていないだけでお前にだってあるだろ?手を伸ばせばすぐ近くに……今は手の届かないところにある俺なんかと違って…」

 

 本心じゃなくても、許せなかったんだ。あいつのあの時の言葉が…昔の俺ならいざしらず『今の』俺には…残酷すぎたんだ…。

 

「いい加減、気づけよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 私のほうを一瞥したお兄さんの顔、すごく悲しそうだった…。あんなに強いはずのお兄さんが、まるで一回りも二回りも小さくなってしまったと一瞬錯覚すら覚えてしまうほどに…あんな姿、初めてみた…。

 そういえばここに来るまでの間ちらっと聞いたけれども、あの人が自分の事を話すのはこれが始めてかもしれない。

 さっきから、どこか無理している気がしたり、いきなり殴り合いをするとか宣言したり、天龍さんの艤装を剥がしたりして話し合ったり(というかお兄さんの方が喋っているだけだけれど)…何か策があるとかいっていたけれど、今となってはそれの他にも何か別の意思というものが感じられる気がする。

 

『俺を強くしてくれた大事なもの、気づいていないだけでお前にだってあるだろ、手を伸ばせばすぐ近くに……今は手の届かないところにある俺なんかと違って…』

 

 あの人の言葉が頭の中にこびり付いて離れない…天龍さんにあって、今のお兄さんには無い物…。

 

 

 

 

 

 

 

ゴシャアアアア!!!!

 

「!」

 

 鈍い音が響いて顔を上げる!

 

「あっ……」

 

 眼に映ったのは、巨大な両手を組ませている天龍さんと、頭から流血しながら崩れ落ちようとするお兄さんの姿だった。

 その姿を見てすぐに察する。恐らく、ハンマーのように組ませた両手を頭上高く構えてそれをあの人の頭上に振り下ろしたのだろう!武装はないとはいえ、ここにいる古鷹さんが大破するほどの膂力、それをよりにもよって、まともに頭に喰らってしまったら……!

 バシャアアアアンと、そのままうつ伏せに海の上に倒れこむお兄さん。頭から垂れる出血が海の上にどんどん流れていく様が、嫌な予感を髣髴とさせる。

 

 

「あ、あああ………」

 

 倒れたまま微動だにしないお兄さん。まさか、死んでしまったのだろうか?いや、艤装はまだ動いているから恐らくはまだ生きている。けれど、だからといって無事であるはずがない…!例えあのイザナギさんを宿して、他の人よりも丈夫な体になっているとはいえ…。

 

 

 

「お、お兄さ……」

 

 

 お兄さんは倒れ伏したまま、ピクリとも動かない。天龍さんはゆっくりと倒れているお兄さんに近づいていく。まさか、止めを刺すつもりなのだろうか!?

 い、行かないと…助けないと…。

 頭で必死に体に命令をする。けれど、足が動いてくれない。怪我をした訳でもないというのに…足が竦んで動かない…。

 

「て、天龍さん、お、お願い…」

 

 もはや、情けなく懇願するしか私には出来なかった。やがて、天龍さんが巨大な手をお兄さん向かって伸ばし…。

 

 

 

 

 

ドォォォッォォォォォ!!!!

 

「きゃっ!?」

 

 思わず耳を塞ぎ、眼を強く閉じる。そして、すぐに耳を塞いだままゆっくりと眼を開く。

 

「っ!?」

 響く砲撃、お兄さんと天龍さんの周りに高い水柱が次々と起こる。それと同時に、艦載機による爆撃。一体何処から!?しかもあの艦載機は深海凄艦のじゃない…!

 

 

 

「こ、今度は一体……」

 

 

 

 

「あー外しちゃった!これが知られたらあの口煩いのに『これだから五航戦は…』とかまたぶちぶちいわれるよー!という訳で黙ってて~、姉ぇ」

「はいはい…」

「もう!、何外してるのよ!いくら建造されたばかりとはいえ!」

「うう…ごめんよぉ…姉ちゃん」

「もう、北上さんなら外さないだろうに…」 

 

 遠くから声がして、慌てて振り返る。

 後ろのほうから、六人の人影がやって来る。胴着みたいなのを着けたのが2人あれは…正規空母?クリーム色のと、水色のラインが入った白のセーラー服をそれぞれ着ているのが2人…軽巡か雷巡?そして…。

 

「古鷹ァ!」

「古鷹さん!」

 

 6人の中の2人が列を離れて、未だ呆気に捉われているこちらに、大急ぎでやって来る。すぐ傍までやって来て、私の事が眼に入っていないかのように、後ろにいる古鷹さんの下へ駆け寄る。一人は色の薄い黒髪で、古鷹さんと同じ格好をした人、もう一人はピンク色の髪を束ねている古鷹さんとは別のセーラー服を着ていた。が、倒れ伏している古鷹さんを見るなり、どちらも顔を真っ青にしていた。

 ……この人達、もしかして古鷹さんの仲間!?

 

「古鷹さん、しっかりしてください!古鷹さぁん!!」

「……お……ば……?」

「古鷹さぁん!!」

「ちょっとごめん!どいてもらえる!?」

 

 眼をわずかに開き、弱々しく返事を返す古鷹さんの姿に、とうとう涙が零れるも、もう一人の重巡が私ともう一人の相方に対して多少強い口調で口早に言い、思わず退く。するとどこからか緑色の水筒のようなものを出して大慌てで古鷹さんに振り掛ける。おそらく高速修復材かな?中身が古鷹さんに振りかけられると全快、とまでは行かないものの、幾分は出血が抑えられ、顔色がよくなった気がする。ひとまずは命の危機からは脱したのだろう。よかった…。安堵のため息が零れる。

 

「貴方が助けてくれたんですか?礼が遅れて申し訳ありません、ありがとうございます!!」

 

 先程のピンク髪の方が涙を指で拭いながらこちらに頭を下げる。もう一人も、それに倣ってこちらに頭を下げる。…厳密には私が助けたわけじゃないんだけれど…なんだか複雑…。

 

 

 

 

「ってか偵察隊の報告と随分数と艦種が違うみたいだけれど?」

 

 返答をしようとした所に、胴着姿のツインテールの方が声をあげるのが聞こえてそちらに向く。

 

「軽巡『ツ級』って…空母の大敵じゃん!でもなんか艤装が剥がされてるし、やけにボロボロだし…しかもなんか艤

装を装備している男の人が倒れているけれどどういう状況?」

「そうね、色々疑問はあるけれど……ひとまず敵の撃破が優先ね!相手も向かって来てるしね!」

「だね!」

 

 はっと思いながら見てみると、倒れているお兄さんを跨いで、天龍さんが何の武器も持たずにこちらに近寄ってくる!胴着姿の2人がそれを確認すると、頷きあいそれぞれ弓を構えて矢を引き絞る。

 

「ふっ、『飛んで火にいる夏の虫』とはこのことね!今度は外さないでよ?一気に片付けるから!」

「あ、ああ!」

 

 胴着姿の2人がそれぞれ矢を構え、残りのセーラー服の2人が魚雷発射管を構える。あの四人、まさか天龍さんを!?この状況を知って知ってか知らずかどんどん近寄ってくる!

 

「まっ、待ってください!」

 

 慌ててかけた静止の声に、武器を構えた四人と、近くにいる重巡の2人がこちらに困惑の視線を向ける。

 

「駆逐艦?何よ、邪魔しないで!」

「そ、その深海凄艦は軽巡の天龍さんなのです!」

「っ!?」

「こんな姿になってしまいましたけれども、その人は電の仲間なのです!まだ……まだ助かる方法があるかもしれないのです!お願いです!どうか……どうか!!」

 

 水上の上で土下座する。服が濡れる、が知ったところじゃない。また顔が涙で濡れそうになる、天龍さんが助かるならいくらでもみっともない顔を見せてやる。

 

「艦娘?あの深海凄艦が…?」

「まさか、深海凄艦の正体が艦娘って噂は…本当に?」

 

 近くの重巡2人が驚きで顔を見合わせている。武器を構えた当人達も困惑でお互いと、天龍さんのほうを見比べ

ている。

 

「突然こんな事を言われてもびっくりするでしょうけれども、本当なのです。お願いですから、天龍さんを…天龍さんを殺さないで…そこで倒れているその人も、最後までその可能性を信じて……だから」

 

 もう一度、深々と頭を下げる。このまま天龍さんが殺されていいはずがない。お兄さんだってそれを信じて身を投げてくれた!このまま、むざむざ殺されるだけなんて…。

 

 

 

 が、その願いは粉々に打ち砕かれた。

 

 

「…だから何よ」

「!?」

「いくら元が艦娘だろうと、今は深海凄艦。深海凄艦は、倒さなくてはいけない…!それぐらいあんたにだって分かっているでしょう!?」

 

 クリーム色のセーラー服を着た人が遠くから、厳しい顔でこちらを見下ろしている。

 

「死に掛けとはいえ、またいつ傷を癒して厄介な敵になるかは分からない、ここで見逃して殺されるまでの間、どれだけの犠牲を生むか分かってんのアンタ!?」

「で、でも…。」

「この『元』艦娘だって、生きていればそういう風にいっていると思うけどね!?」

「そ、そんな…そんなこと…」

 

『轟沈が怖くて艦娘やってラレるか!死ヌマデ戦わせろォ!それが“俺達”の本分…!!』

 

 

 脳裏に浮かぶ先程の天龍さんの言葉。そんなこと…だとしたら、お兄さんは何の為にここまで頑張ったというの?いなくなったら遺された人達は…。

 

「…加古さん、青葉さん、その子を…」

「っ!?」

 

 銀髪の胴着姿の正規空母さんが幾ばくかの逡巡の後、眼を閉じ首を振りながら私の近くの重巡さんに命令する。

2人とも意図を汲み取ったのか、顔を強張らせる。

 

「まっ、待ってくださ…きゃっ!」

 やがて2人に腕を捕まれ拘束させれる…私に対して申し訳なさそうなを浮かべながら。

「な、何を…!?」

「貴方の言いたいことは分かります。許しを請うつもりも…ないです…ごめんなさい」

「悪く、思わないでね…」

「!!」

 

 そういって正規空母の人は弓を、クリーム色のセーラー服の人は魚雷をそれぞれ天龍さんに向ける。ツインテールの正規空母さんも戸惑うような顔で私と姉を見比べた後、再び彼女も弓を引き絞る。

 …残る一人を除いて。

 

「………」

「何やってるのよ?いつまでそこで突っ立てるつもり?」

「け、けど…姉ちゃん」

「やるのよ。ヒヨっ子とはいえあんただって自分のやる事を分かっているんでしょ?」

「………っ」

「…やりなさい」

 

 あえて、天龍さんを見つめもう一人を見ないように言い放つ。

 天龍さんに雰囲気の似ていたセーラー服の軽巡の人は、最後まで構えることを渋っていたものの、やがてぼそぼそと何か口走ると、帽子で目線を隠したまま天龍さんに向けて持っている砲を構える。

 

「せめて、苦しまないように一瞬で楽にします…いいわね」

「うん…」

 

 

 

「やめてぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 叫びも虚しく、正規空母組の手から矢が放たれ、軽巡と雷巡のコンビからも魚雷が発射される。

 やがて放たれた2本の矢は、艦上爆撃機『彗星』に姿を変えて真っ直ぐ天龍さんの頭上へと飛んでいく。お兄さんによって艤装を剥がされ対空能力を失った天龍さんは為すすべなく、ただやって来る戦闘機を眺め、平行してやってくる魚雷にすら対応せずそのまま……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4つの爆発が、天龍さんがいたであろう場所を襲う。

 

 

 

 

 

 

 

「終わったわね…」

 

 爆発が漸く収まった頃、誰かがそうポツリと漏らす。未だ爆心地からは爆撃の後の煙が立ち込めてどうなっているのかは分からない。

 確実なのは、あれほどの攻撃を受けて生きているもの等居ないということだけが、呆然とする頭の片隅でやけに冷静に捉えることができた。

 

「翔鶴姉……」

「…ひとまず任務完了といったところね。古鷹さんを連れて早く帰還しましょう」

 

 正規空母の姉のほうが、感情を表には出さずに勤めて冷静にそう言い放つ。戸惑いつつも、妹らしきもう一人が力なく頷く。

 やがて私を拘束していた重巡の二人組みが、私から手を放してすくっと立ち上がる。もう一度申し訳なさそうにごめんなさいと小さく零しながら…。

 それに応える余裕すら、私にはなかったけれど…。

 

 

「天龍…さ……」

 

 

 

 

 

『全部、貴方のせいなのです』

「!?」

 

 突然、響く声に周囲を振り返る。しかし、誰も彼も私に声をかけている様子はない。一体何処から!?

 

『天龍さんが『あんな姿』になって沈む羽目になったのも…本来無関係なお兄さんが今死に掛けているのも…おねえちゃん達が居なくなってしまったのも、全部全部…貴方が、弱いからなのです』

「っ!?」

 

 違う、そんなんじゃない。周囲の人達はこの声に反応を示していない。この感じ、まるで頭の中に響いてくるような…それにこのすごく聞き覚えのある声って…!

 

『私は足手纏いだ、何の役にも立たない…そんな都合のいい呪文のように馬鹿みたいに繰り返して…自覚しているくせに変えようとする意思も見出せず、誰かが助けてくれることを期待して何もせずただ見ているだけ…』

「………っ」

『そしてこの結果がこれなのです。こんなことなら無様な姿になろうとも、あの二人と一緒に心中したほうがまだマシだったんじゃないですか?少なくとも、まだ納得のいく結果になっていたんじゃなかったんですか?例え、自己満足であろうと』

「そ、そんな……そんなこと…!」

 

 触れられたくない部分を巧みに狙い撃ちしてくる、一体何なのこの声は!?幻聴!?いや、それにしては…。

 呼吸が荒くなっていく…体の震えが止まらない…ああ、お兄さんも言っていたじゃないか、息を、吐いて…!

 

『ああ、貴方の考えが手に取るように分かるのです。苦しい、苦しい……なんで自分は無力なんだろう。惨めで、弱くて、狡賢くて…結局は、自分の事しか考えてない…!』

「っ……!」

 

 違う!そうじゃない!そうじゃないのに…なのに…。

 

『悔しいでしょう?『私』の言いたいことを全力で否定したい。なのに、それができない。心のどこかでそれを認めているから…』

「………っ」

『でも、そんな貴方事がよく分かります。だって私は……』

「やめて!!」

 

 聞きたくない!聞きたくない!もう嫌だ!誰か誰か!!

 どうして…どうして…?

 

『認めて?『私』を見て?私だけが、貴方を助けられますから…』

「っ!?」

 

 先程とは違った、優しく、心地よい、声。

 

『『私』を、受け入れて欲しいのです?そうすれば…』

「………」

『もう、こんな『苦しい』事から抜け出せられるから……』

「……!」 

 

 ボンヤリと頭の中に鮮明に浮かんでくる姿。そして、“それ”を感じた時心の中で納得がいった。ああ、やっぱりそうなんだ。

 

「もう、苦しまなくていいのです?」

 

『そうなのです』

 

「もう、悩まなくてもいいのです?」

 

『ええ、だから……』

 

 

 

 

『私を……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

バァァァァァァ!!!!

 

 突然の爆音に、その場の全員が身構え、私も驚いて顔を上げる。

 まるで、深い眠りから突然覚めたかのように、はっきりと意識が覚醒する!

 

「っ!こ、今度は何!?」

 

 誰かがパニック状態で叫んだ。その声を皮切りに全員が戦闘態勢に戻る!

 

 

 

 

 

 

 

「まだだ…」

 

 

 再び、聞きおぼえのある声にはっとなる。それと同時に、爆撃によって発生した煙が段々晴れていき…。

 

「あっ…」

「何…あれ…!?」

 

 ツインテールの正規空母が、先程の爆心地を見て驚愕の声をあげ、全員の目がそこに釘付けになる。段々と晴れていく煙の中から出てきたのは…。

 

 棒立ちになっている天龍さんを護るように両手を広げているイザナギさん…そしてその後ろから…。

 

「まだ、やれる……!」

 

 何度傷つきながらも、何度でも立ち上がって私たちを護ってくれたあの人が…!

 

「お兄…さん!」




???「ほ~らほ~ら、僕と一緒に封印になってよ~。ワイルドなんでしょ?」(アイアンクローされながら手招き)
番長「だが断る」
???「え~んシクシク」(棒読み)



この次の話で、深海凄艦化編は終了の予定です。多分。

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