【完結】serial experiments S. A. C   作:藍色

3 / 8
第3話

「昨日、また死亡者が出たわ」

ぐるりとミーティングルームの課員たちを見渡す。

「ということはそろそろ突っ込んで調べていいってことだな?」

「そうなるわね」

ふう、と溜息をつく。

まだ深くは調べなくていい、と指示したのは自分だ。

今回の被害を悔やむよりもひたすら前を向いて解決することが早急な課題のはず。

 

「少佐、聞き込みによると死亡者に共通する点はやはり『デスゲーム』のようです。それから…どうもヘビーユーザー且つ他のプレイヤーから疎ましく思われていたようで」

「あなた、聞き込みをしていたのよね?何故他のプレイヤーからの意見がわかったのかしら」

「ワイヤードを使用するのは主にティーンエイジャー。そして、その年頃は学校での接触だけではなく電脳空間においても接触を行いコミュニケーションをはかるって寸法です」

学校という特殊な空間、か。

 

「少佐。後でlainというアカウントにちょっと突っ込んで貰いたいんだがいいか?」

「わかったわ」

目下の課題はlain。

lainが何者なのかそれが判らなくても接触をはかれば事件の阻止が出来るはず。

希望的観測はよくないのだけれどね。

 

 

 

 

 

 

 

「なにこれ…『電脳空間ワイヤードでの事件解決にご協力下さい』って。……事件?ワイヤードで何が起こってるの?」

lainは飛ぶ。

かつて作った自分の世界へと。

 

『おっ、lainだ!』

『初めて見たー』

『女の子?』

『久しぶりlain』

『あれがここの…』

『ていうかあの動き凄くない?』

『やっぱりデスゲーム絡みじゃね』

『人が死んだしなー』

『デスゲーム?』

『lainー』

「そう、デスゲームで人が死んでるの。何故?私はそんなこと望んでない」

(本当に?)

 

はっと後ろを振り返る。

幻聴だったのだろうか、そこには何も存在していない。

 

 

 

 

 

 

 

「少佐!ワイヤードにlainが現れました!」

「今すぐ潜入するぞ!体を頼む!」

もしもの時のために頼み、すぐにワイヤードへ飛ぶ。

 

『あなたがlain?』

管理者というよりも一般プレイヤーの方が似合いそうな女の子のアバター。

左のもみあげだけが長く結ばれている。

『そうだけど。あなた、誰?』

『私は、今このワイヤードで起こっている事件について調べている者よ』

『もしかして、デスゲームの?』

『そう。あなたに聞きたいことがあるの。いいかしら?』

『私は、何も知らないよ。それでも、いい?』

『勿論』

電脳空間内での書き換えが行われる。

雑多なざわめきがある空間から2人しかいない空間へと。

 

『……見事なものね』

『ううん、こんなの、全然だから』

lainは首を横にふる。

『肉体がない場所の書き換えなんてどうとでもなるから』

『それにしても凄いわよ』

そう。

草薙も電脳空間の書き換えが出来るからこそ、このlainの実力がかなりのものであることが判っていた。

ワイヤードというプログラムを外殻だけ見た時とはまた違う実力を感じた。

 

『それで、何を聞きたいの?』

『今起こっている事件。デスゲームでの死人が連続して起こっているのは知っているかしら』

『…メッセージが届いたから。今から調べようと思ってたの』

『メッセージ?』

『あれは貴方のメッセージじゃなかったの?"電脳空間ワイヤードでの事件解決にご協力下さい"って』

公安9課はそんなメッセージを送っていない。

その特性上、存在しない組織であるということになっているからだ。

『そのメッセージ、何処から届いたのかわかるかしら』

もしかしたら犯人からの挑発かもしれない。

しかしその甘さが特定に繋がる。

『うん。色んなサーバーを経由してたからちょっと面倒だったけど……』

 

 

 

『存在しない組織、公安9課。そこからのメッセージだったよ』

 

 

 

 

 

 

 

「少佐!どうだった?」

「lainに会って話したわ……思ってたのよりずっと凄い実力よ」

草薙は目を閉じて天をあおぐ。

「そして……」

一呼吸空ける。

「事件の犯人はここの存在を知っているわ」

 

「嘘だろ…?」

「いくら国が腐っても9課の存在なんて普通は知らねえぜ」

驚き、戸惑う。

「私がlainに接触する少し前にlainのもとにメッセージが届いたらしいの。出元は、ここ、9課」

「俺達はメッセージなんて送ってねーぞ」

「ということは……」

 

 

 

「そう。犯人が私達9課とlainに宣戦布告をしているということよ」




lainのあの万能感はなかなか書き表せないなあ……
そして9課の荒々しさとかも難しい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。